「ヤバイもの観に来ちゃったな、と思
ってほしい」 堂珍嘉邦×ユナク×ヨ
リコ ジュン(脚本・演出)が語る、
舞台『殺人の告白』

舞台『殺人の告白』が2022年6月17日(金)からサンシャイン劇場で上演される。
新鋭のチョン・ビョンギル監督が、韓国史上最悪の連続殺人事件とも言われている実際に起きた「華城(ファソン)連続殺人事件」からインスピレーションを得て描いたサスペンス作品である、映画『殺人の告白』。2012年に韓国で公開後、270万人突破の大ヒットを記録。2017年には藤原竜也と伊藤英明のダブル主演により映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』としてリメイクもされた人気作だ。本公演は、映画『殺人の告白』の初舞台化作品となる。
時効成立後、突然自らの罪を告白し世間の注目を集める容姿端麗な連続殺人犯と、事件を執拗に追う刑事、そして愛する人を失った残された者たちーー。それぞれの思惑がぶつかり、国を揺るがす犯罪ショーへと発展する。
今回、主演・連続殺人犯イ・ドゥソクを務めるのは、韓国出身の男性ダンスヴォーカルグループ「SUPERNOVA超新星)」のリーダーで、歌手活動以外にもドラマ、映画、そしてミュージカルなどマルチに才能を発揮しているユナク。ドゥソクを追う刑事チェ・ヒョングには、ブロードウェイミュージカル『アナスタシア』やミュージカル『RENT』などに出演し、歌手としてだけではなく俳優としても活躍をみせているCHEMISTRY堂珍嘉邦。ユナクと堂珍、そして脚本・演出・映像を担うヨリコ ジュンの3人にオンラインで想いを聞いた。
堂珍嘉邦
ーー堂珍さんとユナクさんにとって初めてのストレートプレイだそうですが、意気込みを教えてください。
ユナク:ストレートは韓国では経験があるんですけど、日本では初。僕的にはすごく楽しみです。初めてということもありますし、堂珍さんと一緒にできることが嬉しくて!完璧というよりはお客さんが満足できるような芝居とステージを見せられたらいいなと思っています。みんなを信じて頑張っていきたい気持ちです。
堂珍嘉邦(以下、堂珍):刑事役ですが、いろんな事件を解決するだけではなくて、自分の婚約者も殺害されて、自分が被害者側でもある役どころで。事件を解決するために執念を持って挑んでいかなくてはいけないというところで、エネルギーを使うと思います。稽古の段階で、ヨリコさん始め、共演者の皆さんと一緒に作っていけたらいいなと思います。
ーー脚本や演出をする際のポイントは?
ヨリコ ジュン(以下、ヨリコ):もともとこの作品は大好きで、同じ事件をオマージュした『殺人の追憶』を演出させてもらいました。舞台・エンタメとして表現するということでフィクションなんですけど、実際にあった事件を元にしているというところがミソ。
実際に体験をした人たちを描いていますが、ただ怖いものを見せようとは思っていない。なぜその人たちがそうなってしまったのか。もちろん犯人の気持ちを理解させようとは思っていなくて、悲惨な事件を起こした犯人に対する被害者の復讐とか恨む気持ちとかは誰にでも起こりうるんだよ、家族を守ることはこういうことなんだよ、などと思ってもらえたらいいなと思って。そこを重点的に表現できたらいいな。
ーーヨリコさんが演出されるということで、やはり映像がどう絡んでくるのかが興味があります。現段階で何か構想はありますか?
ヨリコ:基本は原作をリスペクトしているので、あまり内容を変えようとは思わないんですよね。ただ、舞台での表現はやはり限られるので、それを逆手にとるというか、「舞台ではこういう風に描いたんだ」と感じられることはしたいなと思います。そこで、映像といういつもやっている手法は取り入れようとは思ってはいますね。
今、脚本を考えながら書いている途中です。多分、お聞きしたい部分は「最後のカーチェイスどうするんだよ」というところですよね?(笑)そこはぎりぎりまで考えようと思います。カーチェイスを見せることが正解じゃないというのは分かると思いますし、それを楽しみにくる人はまずいないと思うので。この作品を選んだ理由や、堂珍さんやユナクさんにやってほしいことはそこではないので。とはいえ、作品のファンの為にも、何かの手法で映像は上手く使っていこうと考えています。
ーー原作がお好きとのこと。原作もしくは事件そのものかもしれませんが、どんなところに興味をひかれるでしょうか?
ヨリコ:殺人鬼をヒーローにした映画もあると思うんですけど、そうでないところにまず惹かれますね。実際にあった事件を描いたものはいっぱいあると思うんですけど、殺人犯を美化して、殺人犯の気持ちも分からなくないよねという作品が多いと思うんです。これは製作者のエゴかもしれませんが。
『殺人の告白』や『殺人の追憶』は被害者がどういう気持ちになっているかというところをーー特に『殺人の追憶』はまだ犯人が捕まっていなかったのでーー被害者の遺族たちはどういう気持ちでいるのかがすごく描かれている。そういう着眼点に惹かれますし、リスペクトがあります。
ーーヨリコさんが堂珍さんとユナクさんそれぞれにどんなことを期待していますか。
ヨリコ:僕は演出する側で、堂珍さんとユナクさんには俳優さんとして出演していただくんですけど、ただ、普段俳優さんだけをやっている人たちと表現すると言うよりも、多分、他の分野で活躍している人たちとお芝居を作ろうということで……なんていうんだろう、ストレートに偏らずにみせれるんじゃないかなという期待は持っています。
つまり、表現方法が僕は僕で学んできたものがあるし、堂珍さんは堂珍さんでユナクさんはユナクさんでそれぞれ活躍されているじゃないですか。ユナクさんは特にご自分で演出もされている。そういう垣根を越えて、堂珍さん、ユナク さん、演出させてもらう僕の3人が主軸となって、稽古場で「こっちの方が格好いいよね」などと言い合いながらできそうな気がするんです。
全く同じ分野にいると、それぞれのモチベーションやプライドがぶつかり合うことがあると思うんですけど、割とそこがなく、楽しくできるんじゃないかなと思っていますね。
ーーちなみに堂珍さんとユナク さんの配役を逆にするということは考えなかった。
ヨリコ:ゼロですね。原作が相当好きなので、そこは僕の中にこだわりがある。
ユナク
ーープロットをお読みになられた感想を伺ってもよろしいでしょうか。
ユナク:僕も韓国で原作を映画館で観ていて、今回の出演が決まってから、もう一度映画を観ました。僕がずっと望んでいた悪役を初めてやるんですよ!悪役がすごくやりたかったんですよ。それだけですごく嬉しくて。どう空気感を持っていくか、楽しみ半分、不安感半分みたいな感じですね。
堂珍:韓国の映画『殺人の告白』を見た時に、エンディングが決して気持ちのいいものではなかったので、そこを舞台の中で、誰にどこに主軸を持っていったら、腑に落ちるか……。まぁ腑に落ちなくてもいいと思うんですけど、そうするために全力を注ぎたいなと思います。
結局ヒョング役は、被害者の皆さんの気持ちを自分が最後行動に移し、みんなの手を汚さない。非常に重たいので、ちゃんと自分の中でプレッシャーがかかってくるようにしたいなぁと思っています。そのためにはどうしたらいいんだろうと考えています。
ーーお二人は今回の稽古場、どんなことが楽しみですか?アーティスト、歌手として、この作品を作りあげていきたいと考えていますか?
堂珍:今回の舞台は特にとにかく正解もないし、ゴールもないしという気がしています。作っていく段階の話なんですけど、僕は再演されたものや海外の作品に出演することが多く、それしか知らないんです。常にフラットで、自分の中ではルールがないから、そこを高め合っていければいいのかな。他に共演される方の中には、役者の方も多いので、きっとヒリヒリする刺激もいただけると思う。いろいろなバランスを見てかなという感じですかね。
ユナク:僕らの仕事って、新しい何かを作るというクリエイティブさが求められる。自分がどこまでできるのかも楽しみだし、新しいスタッフさんと仕事ができて勉強にもなるんじゃないかなという期待感もあります。それに日本語でストレートでどこまで自分ができるのか、どこまで迷惑かけないでできるのかというのもある。
僕は舞台とか演劇とか、昔からの夢だったので、すごくポジティブ。基本的には楽しみなんですよ。ヨリコさんと初めてご一緒して、いろいろ教えてもらえるかなと思うし、初めて堂珍さんと同じステージで共演できるし、素晴らしいスタッフだし、仕事ができるということがとにかく楽しみ。頑張ろうと思っています。自信はあります。
堂珍嘉邦
ーーミュージカル『RENT』ではWキャストとして同じロジャー役を演じていたお二人。お互いの俳優としての魅力は?
ユナク:堂珍さんの芝居は、その時の環境に合わせて、毎日違う何かを必ず表現してくれるんですよね。
その日のテンションやコンディション、堂珍さんの気持ちによって変わると思うんですけど、ライブ感があるんです。決まったルールではなく、その日のロジャーの気持ちによって芝居が変わってくる。そこが魅力的で、こういう表現できるんだとか、こういう芝居ができるんだということを『RENT』のときに見ていて思いました。
堂珍:ありがとうございます!僕、誤魔化すことが得意なだけなので(笑)。ユナクの芝居は、ロジャーの芝居しか見ていないけど、一本気の情熱を感じました。目的のために揺るがない感じ。『RENT』以外で、パフォーマンスなんかを見ていると、実はいろいろな役になれるんだろうなとも思います。
ーー役に引っ張られることはあるんでしょうか?プライベートと役の切り離す作業は大変かと思うのですが、いかがですか?
堂珍:僕はあんまり。引きずることは過去にはあったと思いますけど、いい意味で日常にライトに取り入れて、楽しんじゃっている方なので。そこは自然に任せているという感じですかね。自然に抜ける時は抜ける。稽古から本番、千秋楽を迎えるまではそのモードですけどね。
ユナク:僕は結構集中したいタイプ。今もそうですけど、殺人系のスリラーの映画しか見ていないんですよね、ずっと。資料もすごく探すし、映画とか本とか結構読むタイプなんですよ。前回、堂珍さんと一緒にやっていた『RENT』では、エイズや当時のニューヨークの映画をずっと見て、現場に向かいました。そうして、心の準備とメモリーはつくりますが、ヨリコさんにお任せして、自分だけの「悪」を作っていきたいと思います。
ーー舞台以外でも表現をされているお二人ですが、作品は変わっても、変わらずにある信念や心持ちはありますか?
堂珍:自分で言うのもアレですけど、向上心かな。少しでもよくしたいという。本番が始まってからもそうなんですけど、そこかな。
ユナク:僕はなぜ演劇とか舞台が大好きかと言うと、稽古場とかステージの何ヶ月間、自分がすごくピュアになるから好きなんですよ。新しい人生を過ごしている感じ。ユナクじゃなくて、今回ならドゥンソクとして生きられる感じ。その雰囲気が大好きなんですよね。
ユナク
ーー最後にメッセージをお願いします!
ユナク:日本でも韓国でも映画化されて、知っている方がたくさんいらっしゃると思いますし、『殺人の告白』を楽しみに来てくれたお客さんをがっかりさせないように、全力で、思い切り、つくりあげたいなと思っています。だからぜひ観に来てください!1回だけでなく、3回も4回も見たいなと思われる作品にしたいと思います。
堂珍:設定というか、事実というか、殺人という部分は揺るぎない。とは言いつつ、そこの舞台の中で、何か本当にやっているように見えたいですね。「ヤバイもの観に来ちゃったな」となったらいいな(笑)。それをひっくるめて楽しんでいただけたらいいですね。一人ひとりの背景があってのお話だと思うので、いろいろな人の「今日はこの人」「今日はこの人」という主観を持ってみても面白いかもしれません。感情と感情がぶつかることが想定されると思いますので、そういうエネルギッシュなものを楽しみにしていただけたらいいかなと思います。
ヨリコ:原作も素晴らしいですし、堂珍さん、ユナクさん筆頭に出演者のみなさんがいろいろなジャンルから集結しているところも見どころだと思います。作り手としては毎回120%でやっているんですけど、今回も劣らないように、「お金払ってでも、これを観てよかった」という大前提を必ずクリアするように作っていきたいと思います。僕たちのエゴだけじゃなく作りたいと思います。
取材・文=五月女菜穂

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