せりふのない2人芝居「子ども達に素
敵な作品を届けたい」 目次立樹×森
田かずよインタビュー

2022年5月28日(土)、5月29日(日)東京芸術劇場 アトリエウエストにて上演される、『フクローじいさんとベル子ちゃん』。この度、作・演出・出演の目次立樹、出演者の森田かずよのオフィシャルインタビューが届いたので紹介する。

劇団ゴジゲンで俳優として活躍し、最近では『おかあさんといっしょ』の人形劇『ファ ンターネ!』の原案・作などの創作もおこなう目次立樹。「次の世代になにを残せるか」を自身の興味とテーマとして、子ども向けの作品づくりに取り組んでいる。2022年5月28・29日に)東京芸術劇場 アトリエウエスト(※無料、要予約)で上演するのが、せりふのないノンバーバル作品『フクロー じいさんとベル子ちゃん』だ。この2人芝居で、相手役にぜひと熱望したのが、ダンサー・俳優また車椅子ユーザーでもあり東京2020パラリンピック開会式でも注目を集めた森田かずよ。
稽古中の彼らに、ふたりの出会い、稽古のようす、作品の魅力や楽しみをおうかがいした。すると、それぞれが見つめる創作のあり方や、芸術表現の未来像が浮かび上がってきた。
森田さんの舞台を観て「ぜひ一緒にやりたい!」と決めた
ーー接点のないおふたりが、なぜ一緒に作品づくりを?
目次:面識はなかったんですけれど、東ちづるさんが主催されている平成まぜこぜ一座の『月夜のからくりハウス』(※)という公演に森田さんが出演しているのを拝見して、ぜひ一緒に何かをやってみたいなと思ったんです。
森田:嬉しいですね。なぜ私に声をかけてくださったんだろうと不思議だったんですけれど、東さんの舞台だったんですね。なおかつ子ども向けの舞台に選んでいただけたことも純粋に嬉しいです。作品は生演奏で、お衣裳も素敵ですし、目次さんと2人で立ってお芝居できることもだし、楽しみだらけです!
目次:よかったです!
※平成まぜこぜ一座の『月夜のからくりハウス』……小人プロレス、車椅子ダンサー、全盲の落語家、寝たきり芸人、糸あやつり人形、ドラァグクイーンなどなど、摩訶不思議なパフォーマーたちがくりひろげるエンターテインメント
ーー森田さんは目次さんの所属する劇団ゴジゲンの舞台をご覧になった時が初対面だそうですね?
森田:はい。観劇後にお会いしたら、舞台の上と印象がまったく違っていてすごくびっくりしました。「あっ、こんなにすごく腰の低い方だったんだ!」って。
目次 :(笑)。
森田:稽古もすごく丁寧にゆっくりひとつずつ進めてくださるので印象がどんどん良いふうに変わっていきます。公演が楽しみですね。
稽古風景 於:アトリエウエスト
大阪──東京。稽古はオンラインでスタートし、初日3日前に合流
ーー稽古はオンラインで始められたそうですが、どう進んでいますか?
目次:森田さんが大阪にいらっしゃるので、現場に入る前にオンラインで打合せをしています。僕はもう会場に入っていて、実際に空間を見ながら「どういうふうに動こうか?」という大まかな段取り確認をしています。(※5/24取材)ただ、せりふがないぶん実際に一緒にやってみないとわからないことが多い。オンラインだとじれったい部分もありますが、事前にできるだけ確認してから、会場ではスムーズに進むように準備しています。
森田:会場は(東京芸術劇場の)アトリエウエストなんですが、私はラッキーなことに向かいのアトリエイーストで公演した経験があったので、会場の広さはイメージができました。オンラインの稽古では動きたいけど動けないもどかしさがありますが、イメージを掴もうと想像をふくらませています。
目次:いつもゴジゲンでは稽古初日に脚本がまだないんです。逆に僕は準備して、きっちり自分のなかで決めておきたい。稽古もダラダラせずに早めに終わったら解散する。このやり方がいいのかはわからないですけど……できる限り準備して臨みたい。小心者なので、慎重になるんです。決めておきたいとはいえ、とりあえず作ってみて、慣れてきたら、皆さんのアイデアを足したり引いたりしていく作業ができたらいいですね。
森田:目次さんがおっしゃるように、時間と場所の制約があることをすごく気にしてくださって稽古を組んでいただいています。明日からは現場にやっと入れるので、そこからガン! とあげていきたいですね。
目次:ありがとうございます!
ーー会場スペースを縦に使って、舞台も客席も横に長細くなりますね。横長のアクティングエリアでどんなパフォーマンスをされるのか気になります。
目次:できる限り大きく動きたいんですよ。そのために舞台を長細く使っています。ただ、コロナ禍で客席から2メートル離さなければならないので舞台に奥行きがあまりなくて横に長く動くので、初期のテレビゲームみたいな感じです(笑)
稽古風景 於:アトリエウエスト
子ども達が楽しめて、次の世代に残る作品にしたい
ーー『フクローじいさんとベル子ちゃん』の着想はどこから?
目次:この作品は、ケチでいろいろ溜め込んでいるおじいちゃんが、次の世代に何かを残すという話です。このテーマにしか興味がないんですよ、僕。日々暮らしているなかで、子ども達に良い作品を残せたらなというモチベーションがすごく大きい。前作では擬人化した戦闘機のおじいさんと若者の話を作ったんですが(『はたらかないせんとうき』2021年4月公開)、リアルな世界観だったので、今度はもっとファンタジーにしたかった。その世界において、森田さんは子ども役としてまさにイメージ通りでした。
ーー森田さんの演じる「ベル子(鈴子)」は小さな女の子ですね。脚本を読んでいかがでしたか?
森田:まずは5歳の役が来たことにすごく驚きました!
目次:(笑)。
森田:できるかなぁと思いました。自分のサイズ的には子どもに見えるかもしれないけど、それ以外の部分で5歳に見えるかなっていう心配はちょっとあります。でもノンバーバルだからこそ、お芝居の制約のようなものがうまく外れるかもしれない。私の身体はみなさんとちょっと違うから、それによって違う世界が見せられるかなという期待もしています。
目次:ノンバーバルの作品なので、せりふをどう表現するかは森田さんにお任せしてるんです。それがすごく素敵で、世界観にぴったりなんですよ。
森田:よかった……!
目次:このベル子ちゃんの「ベル」は、ガランゴロンと鳴る「鐘」なんです。古い時代が終わる合図というモチーフですね。演劇などの芸術表現が次のフェーズに入って欲しい、という願いを込めています。僕は、もっと広くいろんな人が表現に参加して、もっと広がってほしい。まさに森田さんや平成まぜこぜ一座がやっていることを見て「これからはこうだよな!」と感じていたので、今回の作品のイメージが森田さんにぴったりだと思ったんですよね。
森田:すごく嬉しいです。私自身はダンスや平成まぜこぜ一座のような活動を始めてけっこう長いんですけど、なかなか伝わらないところがあります。どうやって変えていけばいいのかを考えながらずっとやってきました。でも今、時代の流れに乗ってきているなとも感じます。ここでもう一つ先に進むためには、私達だけが頑張るのではなくて、いろんな人が一緒に作ったり考えていくことだと思うので、 その機会が増えるといいなと思うんです。
稽古風景 於:アトリエウエスト
身体は人それぞれ。その人に合った創作の場づくりを
森田:今回も目次さんと一緒にやらせていただいて、大阪から東京へ移動しての公演になるなかで、いろいろご相談できていることがとても嬉しいです。そこには私だからこその課題があって、もしこれが他の人であればまた違う課題が起きていくのかもしれない。やはり人と人の間にある課題を解決するには、一緒にやらないと見えてこないですね。
ーー人によって事情も身体も違いますから、森田さんと目次さんのこの座組だからこその、作品づくりや準備への取り組み方があるわけですね。
森田:たとえば私の場合は、医療ケアが必要な人間なんです。これまでは東京にパフォーマンスに行くたびに、自分に必要なものを自分で探したり、ご相談させていただいたりしていました。若い時は自分でなんとかしないといけないと思って、頑張っていたんです。それが今コロナ禍でより大変になってしまった。自分で頑張るのも限界を迎え、今はちゃんと助けてもらいたいことは言うようになりました。
目次:そうだったんですね。
森田:ずっと、障害があるから自分が頑張らないといけない、と思っていたんですよ。でも変わりました。誰かに相談すると一人でやるよりも解決する確率が上がりますし、余計な事にストレスを感じなくてすむようになりました。そのぶん「クオリティを上げよう!」とポジティブに思っています。今回も、最初からご相談できて良かった。
目次:僕たちカンパニー側は、森田さんのそういう事情をまったく知らずにお声がけをしていた。今回を機会に学ばせていただいています。とくに今回は、音楽を担当してくださる森田珠美さんのバンドの中に、たまたま医療関係の方がいらっしゃったので助かりました。
演奏:森田珠美
ーー知識のある方が身近にいるとより良い創作現場になりますね。今回は、その森田珠美さんの生演奏も、とても気になります。
目次:生演奏で、客席の真横で弾いていただきます。もともとのアイデアでは大道芸のパフォーマンスも入れたかったので、生演奏も欲しかった。やっぱり子どもが観るなら、その場で演奏する方が絶対に楽しい。あと、演技と音をあわせるタイミングもかなり多い。僕としても、毎日毎日、音と一緒に演技するのは楽しみですね。
ーーありがとうございます。ふたりのお芝居、生演奏、衣裳……子ども達と楽しめる公演を心待ちにしています!
取材・文=河野桃子

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