THE BAWDIES 原点回帰でガレージパ
ンクを鳴らす、『FREAKS IN THE GAR
AGE - EP』制作のバックグラウンドと
4人のガレージパンク観とは?

THE BAWDIESが、彼らのルーツであるガレージパンクを思う存分に鳴らした最新EP『FREAKS IN THE GARAGE - EP』を5月25日にリリースした。ガレージサウンドにこだわりながら、それだけにとどまらない幅広い楽曲に挑んだ2019年の『Section #11』と2021年の『BLAST OFF!』という2枚のアルバムからの、あまりにも大胆な今回の原点回帰。もちろん、彼らは伊達や酔狂でやっているわけではなく、インタビューでも語っているように、それが『BLAST OFF!』のツアーを経て、彼らが辿りついた今現在のモードであることが重要だ。

ガレージパンクに真正面から取り組みながら、単なる焼き直しで終わらずに、彼らならではと言える唯一無二のものになるところがやはりTHE BAWDIES。
メンバー4人が今回の制作のバックグラウンドと彼らならではのガレージパンク観を語ってくれた。
このモードがこの一作限りのものなのか、この後もしばらく続くのか、それはさておき、今回の原点回帰をきっかけに、さらなる気づきもあったようだ。デビューから13年、KEEP ON ROCKIN’ を掲げるTHE BAWDIESの活動はここからますます勢いを増していきそうだ。
なお、今回のEPにはTHE BAWDIESのメンバーと親交が深い映像作家、渡部フランケンがEPの制作に密着した60分超えのドキュメントムービー「FRANKEN MOVIE III -THE BIRTH OF “FREAKS IN THE GARAGE”- 」を収録したDVDがカップリングされる。
――前作の『BLAST OFF!』は、それまでTHE BAWDIESが開けてこなかった引き出しを存分に開けた作品でしたが、そこから原点であるガレージパンクに回帰する振り幅の極端さにシビれました。
ROY(Vo, Ba):ははは。
――今回の『FREAKS IN THE GARAGE – EP』は、その『BLAST OFF!』をひっさげてのツアーが大きなインスピレーションになっているそうですね?
ROY:そうなんです。『BLAST OFF!』の一つ前の『Section #11』のツアーがコロナ禍のせいで途中で中止になってしまって、最後まで回りきれなかった悔しさがあったんです。それを経ての27本のロングツアーだったので、回りきれるのか?という不安もありつつ、1月30日のツアーファイナルまで完走できたということと、コロナ禍ということで、今までとライブのやり方は変わってはいたんですけど、お客さんの反応は変わってなかったというか、目の前で音が鳴っていることを本当に歓んでくれていることが実感できたんですよ。もちろん、声は出せないけど、僕らの演奏がしっかり伝わっていることも、それに対してお客さんが返してくれていることも感じられたので。やっぱり生で伝えていかなきゃいけないって、改めて音を鳴らす歓びを感じながら、バンドを始めた時の気持ちも蘇ってきたんです。
――あぁ、なるほど。
ROY:それと同時に、ツアーを終えたとき、この日本にはロックンロールがもっと必要なんじゃないかとも思いました。まだまだ状況はわからないけど、伝えることをあきらめちゃいけない。もう1回、ツアーを回りたいとメンバー全員が思いました。ツアーを完走して、燃え尽きたという感じでは全然なくて、まだまだやりたいという熱が残っていたんですよ。
MARCY(Dr, Cho):ライブができるってことがありがたかったし、いろいろなところに行けて、久しぶりに観てもらえるってこともうれしかったし。アルバムのツアーじゃなくてもいいから、またすぐにでもツアーをやりたいという気持ちは、もうツアー中からずっとあったんですよ。それぐらい楽しいツアーだったんです。
ROY:だから、ずっと煮えたぎった状態のまま、EPの制作に入れました。
――バンドを始めた頃の気持ちとおっしゃったんですけど、その煮えたぎった状態を作品に落とし込むのであれば、バンドを始めた頃に演奏していたガレージパンクがふさわしいと考えたんですか?
ROY:改めてツアーをするにしても、アルバムツアーは終わってるから、何かをリリースしないと、『BLAST OFF!』のツアーの延長になってしまうので、じゃあ、何を作ろうか?ってなった時に、もちろん『Section #11』も、『BLAST OFF!』も、自分たちは気に入っているし、何かが足りなかったってことではないんですけど。自分たちも含め、今の音楽シーンがすごく洗練されているというか、きれいに完成されている音楽が主流になっている。そういう音楽が多いと思ったんです。でも、自分たちの原点であるガレージパンクは、それとは真逆というか、未完成であることに美学を求める音楽なんです。きれいに完成された音楽が溢れているところで、そういう音楽を鳴らしたら、衝撃が走るんじゃないかと思いました。今までは自分たちの原点であるガレージパンクの魅力を、現代の人たちにわかりやすく伝えるために自分たちのフィルターを通して表現していたんですけど、今回は、どうやったら伝わりやすいかなんてことは無視して、自分たちが愛しているものをそのまま鳴らしたほうが、違和感も含め、衝撃に繋がるんじゃないかと考えて、制作に入っていきました。
――EPの制作に密着したドキュメンタリー「FRANKEN MOVIE III -THE BIRTH OF “FREAKS IN THE GARAGE”-」のティーザーがYouTubeにアップされていますが、その中で、TAXMANさんが「メジャーにいる人がこんなことをやったらおもしろいじゃないですか」とおっしゃっていたのですが、その“こんなこと”というのは、洗練された音楽が溢れている中でガレージパンクをそのまま鳴らすことだったわけですね?
TAXMAN(Gt, Vo):そうですね。とは言え、僕らが好きなガレージパンクや50年代のブラックミュージックをそのままやったら、さすがに「ボーカルが歪みすぎていて、よくわからないから、もうちょっと聴きやすくしてほしい」って言われるかなって思ったんですけど、レコード会社から「その感じでやろう」って言ってもらえたんですよ。それも大きかったと思うし、それができるのがやっぱりTHE BAWDIESの強みだとも思うし。そういう意味で、おもしろいって言ったんですけど、いろいろなバンドがいるメジャーシーンにおいても、やっぱり唯一無二な感じはあるんだと思います。
――ところで、さっきのお話からすると、今回の曲作りはツアーが終わってから始めたわけですよね?
ROY:3曲目の「PINCH ME」以外は、そうですね。「PINCH ME」はルーツっぽさが強かったので、『BLAST OFF!』には敢えて入れずに、ルーツっぽいことをやりたくなった時に使おうと思って取っておいたんですよ。
――今回の4曲は何曲ぐらい作った中から選んだのでしょうか?
ROY:それぞれに持ち寄った曲はけっこうありましたけど、デモにしたのはそんなになくて、4~5曲ぐらいの中から、ガレージパンクをしっかり伝えられる曲を選びました。
ROY(Vo, Ba)
世の中に受け入れられない可能性があるものを、これだけ好き放題やらせてもらえるってすごいなと思います。(ROY)
――ガレージパンクはTHE BAWDIESの原点ですし、得意とするところなので、曲作り、アレンジ、レコーディングは、きっとスムーズに進んでいったんじゃないかと思うのですが。
ROY:そうですね。ただ、これまで僕らの中ではガレージパンクをストレートにやっている感覚はなかったんですよね。これまでは、ガレージパンクをTHE BAWDIES流に現代の音楽として、もっと言えば、ポップスとして伝えることをやっていたので。そんな僕たちがガレージパンクをそのままストレートにやるという意味では初めての試みというところもありました。それこそインディーズの1stアルバム(『YESTERDAYAND TODAY』)の頃くらいの気持ちの曲作りだったと思います。レコーディングも「せーの!」でドンとやるだけなので、曲作りもあんまり詰めていかない。ほんとだったら、いろいろ仕掛けを作りたいところなんだけど、仕掛けを作ると、ガレージパンクじゃなくなるというか、完成されていっちゃうから、完成しすぎないように、極力、練習しすぎないように(笑)。だから楽しかったですよ。ほんと、学生の時のような気持ちでやってました。
――完成しすぎないように、練習しすぎないようにっていうのは、逆に難しいんじゃないですか?
ROY:そうですね。60年代のガレージパンクと言われていたアメリカの若者たちは、自分たちがガレージパンクだっていう感覚はなかったと思うんですよ。ただがむしゃらにやってただけだと思うし、しかも、楽器を始めたての人たちもたくさんいたに違いないから、ほんと下手なんですよ(笑)。僕らもうまいかと言ったら、決してそうじゃないんですけど、かつてガレージパンクと言われた少年たちよりは、さすがにうまいので(笑)。だからって、わざと下手にやるのも違うと思うので、できるだけ感情に任せて、何テイクもやらないようにしました。テイクを重ねると、慣れてきちゃうんですよね。
――うまいかと言ったら、決してそうじゃないとおっしゃいましたけど、そんなことはないと思いますよ。
ROY:いやいやいや(笑)。
TAXMAN:雰囲気でごまかしているところはあるよね(笑)。
MARCY:でも、そういうの必要じゃない? (TAXMANに)弾いてないのに弾いてるふりしてるじゃん(笑)。
TAXMAN:顔で弾いてるんだよ。
ROY:一人ひとりがうまいってことはないと思います。ただ、THE BAWDIESはめちゃめちゃうまいわけじゃないけど、きゅっと一つになっている。
JIM(Gt, Cho):仲良しグループだからね。
ROY:そこは一つ特別な感じはあるのかなと思います。
――JIMさん、今回のレコーディングを振り返っていかがでしたか?
JIM:レコーディング中、みんな言ってましたけど、楽しかったですよ。もちろん、これまでの曲をしっかり詰めながら、高いところまで持っていって、完成させるやり方も好きですけど、ほんと、最初にTHE BAWDIESを組んでバーンと鳴らした時の音がちゃんと出てるんじゃないかな。今の時代、テクノロジーの力を借りれば、何でもできちゃうけど、僕らはテクニックではなく、ガレージパンクと言われた人たちが持っていた人間力やエネルギーに衝撃を受けているので。そういうまさにバンドを始めた時の歓びや、ちょっと突っ込んじゃう勢いは今回、音に表れていると思います。昔、よく言ってたんですよ。「裸足で走りだしちゃった感」って。そういう感覚がしっかり出せたし、これだけ長いことTHE BAWDIESをやってきた自分が、まだこんなにフレッシュにバンドをできるってすごい幸せなことだと思いましたし。
――そんなレコーディングの様子は、「FRANKEN MOVIE III」で僕らは見ることができるわけですね?
ROY:はい。曲を書き始める前からというか、僕が曲を書かずにバスケをやっているところにフランケン君から電話がかかってきて、「そろそろ曲を書きましょう!」と怒られるところから、レコーディングが終わるまでを追っかけてくれてるんですよ。僕らはそういうことはしてこなかったし、デモ音源を聴かせるってこともしてこなかったし、あんまり制作過程は見せたくなかったんですけど、「撮らせてほしい」と言われて、思いきって丸裸にされてみました(笑)。フランケン君とは元々、仲が良いんですけど、前回の全県ツアーも自腹で全箇所ついてきてくれたんです。それぐらい熱い男なんですよ。そういう関係性があるからこそ撮れる映像ってあると思うんですよね。僕らも構えることなくカメラの前で自然体を見せられたので、貴重な映像になっていると思います。
TAXMAN(Gt, Vo)
うまくなりすぎないように演奏しようってところで、なるべく早いテイクで決めようってことと、音作りは全曲通して慎重にやりました。(TAXMAN)
――それでは収録曲について、1曲ずつ聞かせてください。1曲目の「ROCKIN’ FROM THE GRAVE」は、まずガレージパンクの名オムニバスシリーズのタイトルを使った《back from the grave》という歌詞に、ガレージファンならニヤリとせずにいられないと思うのですが。ガレージパンクサウンドに50年代のロックンロールへのオマージュを込めたところがおもしろいと思いました。
ROY:ありがとうございます。ガレージパンクをテーマにEPを作ろうとなって、まず書いた曲なんです。世の中に埋もれていたガレージパンクを掘り起こした『Back From The Grave』にリスペクトを捧げつつ、歌詞はロックンロールが死んでしまった世の中だけど、ロックンロール好きが集まって、墓場から行こうぜという気持ちで書きました。
――楽曲やサウンドは、どんなことを意識しましたか?
ROY:僕らの原点は60年代のガレージパンクなんですけど、そこから70年代のパンクを経由して、デヴィル・ドッグスとか、マミーズとか、ロックンロールもやる90年代のガレージパンクバンドの音を参考にしました。60年代のガレージパンクって、3コードのロックンロールをやるバンドって実はそんなにいないんですよ。ソニックスは別ですけど、90年代の香りをさせたいという今回の方向性は、この1曲目で決まりました。
――印象的に鳴っているギターリフが、リッチー・ヴァレンスの「Come On, Let's Go」を連想させますね。
ROY:そうですね。他にもBメロにジェリー・リー・ルイスの歌い回しを入れるなど、所々にオマージュを入れてます。
――50年代のロックンロールのオマージュと言えば、チャック・ベリーの「Johnny B. Goode」を連想させる《Go, zombie, go, go!》という掛け声なんてまさに。演奏面ではどんなことを意識しましたか?
TAXMAN:うまくなりすぎないように演奏しようってところで、やっぱりテイク1に比べて、テイク6とか、7とかになってくると、まとまってはいるんですけど、ちょっとつまらなくなってくる。なので、なるべく早いテイクで決めようってことと、ガレージって言ってもいろいろあって、サイケなのか、ソニックスみたいに50’ sのブラックミュージックから来ているのか、ブリティッシュビートの影響を受けてるのかで、各々の解釈って違うんです。だから、ギターの歪み一つにしても、アンプで歪ませるのか、ファズを掛けるのか、そういう音作りは全曲通して慎重にやりました。さっきROYがマミーズって言ってましたけど、90年代のガレージバンドはわかりやすくファズってイメージがあったので、だったらこの曲はファズで行こうってことで、そのファズもいろいろ試しながら決めました。
――JIMさんも同じように?
JIM:そうですね。アプローチとしては、ただ歪ませるわけではなく、ちゃんと鳴らしたい音の目標があったので、そこにいかに近づけるか考えました。それもエンジニアさんと、「ペダルでやるのではなくて、もっとアンプとマイクが近すぎて、音がクラッシュしちゃうような歪み感が欲しいんですよね」って相談しながら、けっこう時間を掛けてストイックに音作りしたんですよ。それは全員なんですけど、そこができてからはもう、少年に戻ってただプレイする。俺に関しては、いかに気持ちよく突っ走るか。ドラムを追い越してもいいぐらいの気持ちでプレイしました。そんなふうに、ストイックにやるところと楽しむところが分かれてた感じなんですけど、音を詰めている段階も楽しかったんですよ。
――歪みと言えば、(ステレオの)右で鳴っているギターの、ひしゃげた感じの歪みが凄いですね。
JIM:それがさっき言ったクラッシュさせた歪みです。TAXMANの歪みは、ちょっとざらついた音色なんですけど、僕のはブツブツと鳴っている。いろいろ試して、そういう音がいいんじゃないかとなりました。
――MARCYさんはいかがでしたか?
MARCY:僕もテンションを意識しました。音色も基礎的なところは作ったんですけど、基本的には考えすぎないように、テンションや、THE BAWDIESを組んだ時の、下手ながらもやっていたようなノリをドラムで出せたらいいなって考えてました。『BLAST OFF!』のツアーの最初の頃に「THE BAWDIESらしい荒削りなところを、ライブでも出せたらいいね」と言ってたんですけど、そこに繋がってくるEPでもあるんですよ。そこを意識しはじめてから、ツアーもどんどん良くなっていったので、そこをしっかり入れられるように意識しました。それは全曲なんですけど、特にこの曲は、うるさいなって思います。
TAXMAN:8ビートで速い曲なんですけど、「もっと速くしろ、速くしろ」って。でも、ビートが速いと、曲の後半、疲れちゃうじゃないですか。でも、「そこでもう一加速してほしい」って言ったんですよ。
MARCY:速いのが好きなんですよ、この人(笑)。
TAXMAN:みんな好きだよ、速いのは。
MARCY:ドラムだけになるところは特に速いんですよ。でも、そこで失速したらダメだと思って、むしろテンポを上げたように聴こえるくらいがかっこいいんじゃないかって。練習しすぎないようにとは言ってましたけど、さすがにそこは個人練習に入ってやりましたね。
ROY:60年代のガレージパンクってそんな速くないんですけど、パンクを経由した80年代以降のガレージパンクは速いんですよ。その、どちらを取るかというところで、僕らの原点は60年代なんですけど、敢えて今回は90年代のほうがわかりやすく刺激が強い ということで、そちらを選びました。
――ROYさんはどんなアプローチを?
ROY:パンクを経由したガレージパンクってことで、フレーズも動かさずにラモーンズみたいにだだ弾きしました。いつもだったらそれは違うと思ってやらないんですけど、とにかく疾走していく感じで。歌もこだわってないわけではないんですけど、場面場面で変化させないというか、ずっとテンションマックスで歌いきるみたいな感覚で歌いました。
JIM(Gt, Cho)
たぶん、今だからできたっていうのもある。サブスク時代で、逆に振りきれないと目に止まらないところがあるからこそできた作品だと思います。(JIM)
――2曲目の「STAND!」は、ROYさんとJIMさんの作曲ですね。
ROY:JIMが持ってきたデモに僕が歌を乗せたので、すごく新鮮でした。自分が作った曲にメロを付けるのとはまた違う感覚で、メロを付けるのが楽しかったんですよ。JIMから「とにかく激しくしてほしい」と言われてたし、シャウトが合いそうな曲だから、ふんだんにシャウトを入れました。いかにもガレージっぽい進行の曲なので、作っている時から今回のEPの目玉になると思ってました。
――すごくかっこいい曲だと思います。ガレージパンクにサイケ風味とダンサブルなグルーヴが加えられていると思うのですが、ケミカル・ブラザーズの「Setting Sun」やビートルズの「Tomorrow Never Knows」を思わせるビッグビートっぽいドラムと13thフロア・エレヴェーターズやストゥージズを連想させるガレージ/サイケサウンドの組み合わせが新鮮で。ストレートにガレージパンクをやっているとおっしゃっているのに申し訳ないんですけど、これ、最新型のロックなんじゃないかって。
ROY:おぉ~、すごっ。(MARCYに向かって)かっこいい(笑)。
MARCY:いや、作ったの俺じゃないから。
JIM:でも、ドラムは任せてたから(笑)。
MARCY(Dr, Cho)
基本的には考えすぎないように、THE BAWDIESを組んだ時の、下手ながらもやっていたようなノリをドラムで出せたらいいなって。(MARCY)
――あのドラムはMARCYさんのアイデアだったんですね。
MARCY:ざっくりしたイメージはJIMからもらって。
JIM:60’ sのガレージバンドって、意味不明に手数が多い瞬間があるじゃないですか。あの感覚が欲しいということだけ伝えて、「あとは楽しく叩いてね。好きにしてください」って投げちゃいました。そしたら、おもしろいのいっぱい入れてくれて、すごいワクワクしました。
MARCY:JIMがデモを持ってきた時点で、Aメロのリズムがかっこよかったので、それに対して、普通にやったらおもしろくないと思ったんですよ。だから、スタジオでみんなで合わせながら、スネアの数を増やしてみたり、ハイハットの入れ方を工夫してみたりしましたけど、サビに関しては、とにかく手数を多くってオーダーをもらってたので、もうメチャメチャやりましたね。テイクを録っている時も、気持ちいい瞬間がたくさんあったから、楽曲に対してふさわしいものができたんじゃないかなと思ってます。
――ROYさんもこの曲では、うねるようなフレーズを弾いていますね。
ROY:JIMが作ったデモのニュアンスを生かしながら、自分の中にあるサイケなイメージで弾いてみました。歌いながら作っていったので、自然と自分の手癖と合わさって、そういうフレーズになったんだと思います。
JIM:そうなんだよね。「こういうベースラインどう?」って投げても、歌と合体しないんですよ。でも、歌を作っている人が一緒に作ると、めちゃめちゃ気持ちいいものになる。ベース&ボーカルならではの妙が素敵だと思います。
――この曲のサイケデリックなギターソロは?
JIM:TAXMANです。
TAXMAN:デモを聴いて、サイケに行きたいと思いました。ただ、まだサイケに行ききってなかったから、「思いっきりサイケにするのは、どうかな?」って提案して、オマージュも入れつつ弾きました。
ROY:サイケなんだけど、ディック・デイルっぽいんだよね。
TAXMAN:そうそう。でも、ディック・デイルってサーフなのに、なんだかサイケ感があるじゃない? それこそトラッシュメンの「Surfin’ Bird」も漂うようなサイケ感がある。そういう、ちょっとバカっぽいんだけど、エジプトの音階を使うみたいな。そういうのがいいなと思ったんですよ。
『FREAKS IN THE GARAGE - EP』
――3曲目の「PINCH ME」は今回のEPの中では異色と言えるオールディーズなポップソングですね。
ROY:ドゥーワップをイメージして作りました。確かにガレージパンクではないんですけど、ガレージパンクにもいろいろあって。TAXMANもさっき言ってたように、それこそサイケなのか、ブリティッシュビートからの影響なのか、元々、サーフミュージックをやっていたのか、リズム&ブルースをやっていたのか、それによって違うんですけど。ソニックスとか、ウェイラーズとか、僕らが好きなアメリカのノースウエストコーストのバンドはリズム&ブルースもロックンロールもブリッティッシュビートも何でもごちゃ混ぜでやってるんですよ。その感覚が僕は好きなので、このEPに「PINCH ME」が入っていてもいいんじゃないかって。僕らはガレージパンクをそう捉えているので、こういう曲も入れてみました。
――こういうポップソングを書けるところもTHE BAWDIESの強みでもあると思います。そして、4曲目の「BIP BOP BOOM」は、50年代のロックンロールシンガー、ミッキー・ホークスのカバーなのですが、最初に聴いたとき、ミッキー・ホークスのことを知らなかった僕はTHE BAWDIESなりのリトル・リチャードのオマージュとして作った曲なのかなと思いました。その後、クレジットを見たら、ミッキー・ホークスとあって、調べてみたら、ガレージ界隈では有名な曲だそうですね。この曲をカバーしたのは、どんなきっかけから?
ROY:まずカバーを入れたかったんです。なぜかと言うと、今回のEP、ガレージパンクを知らない人たちにも衝撃を与えたいんですけど、同時にガレージシーンの人たちにもTHE BAWDIESが元々、ガレージ畑にいたんだってことと、そのTHE BAWDIESが本気を出すと、これだけできるんだっていうところも見せたいんです。それにはバンドの実力がはっきり表れるカバーがいいんじゃないか。カバーをしっかりできるバンドが少ない日本のガレージシーンで違いを見せるという意味で、カバーを入れたいと思ったんですけど。何をやるかってなった時にソニックスじゃ当たり前すぎるだろうってなって。
――そこで選んだのが、この曲だった、と。
ROY:この曲って、ロカビリーの人たちにもカバーされているんですよ。たぶん、ホークス自身はリトル・リチャードみたいにやりたかったんだと思うんですけど、ただ50年代の白人のミュージシャンなので、どうしてもカントリーの匂いが出てしまう。それでロカビリーの人たちが取り上げたと思うんですけど、ホークスはリズム&ブルースのつもりでやっていたはずなんですよ。ソニックスも同じように黒人のリズム&ブルースに憧れた白人のバンドでしたけど、黒人に憧れた日本人である僕のルーツの中にカントリーはほとんどない。その僕がこの曲をやると、曲が持っているリズム&ブルース色が際立って、ホークスが目指したリズム&ブルースの新しい形が見せられるんじゃないか。そう思って、白人がリトル・リチャードを真似たものを、僕がリトル・リチャードを意識してやるとこうなる! という気持ちでやってみたんです。だから、さっきリトル・リチャードと言ってもらってうれしかったです。
――なるほど。そこまで考えたカバーだったわけですね。ところで、この曲、歪みがエグすぎて、もしTHE BAWDIESのみなさんのことを知らずに聴いていたら、きっとこの人たち、イカれていると思っていたと思います(笑)。
全員:はははは。
ROY:参考にしたのが、バンカー・ヒルなんです。バンカー・ヒルというすごい喉を持った黒人シンガーと、ロックンロールギターのパイオニアであるリンク・レイが「リトル・リチャードを超えるものを作ろう」ってきっと言いながら60年代にレコーディングした音源があるんですけど、それがめちゃめちゃイカれている。僕はそれが当時のロックンロールの中で一番激しいものだと思っているんですけど、それを目指したので、この曲の音もかなり振りきれていると思います。
――そんなEPをひっさげた『FREAKS IN THE GARAGE TOUR』が6月3日から始まるのですが、「ガレージパンクの醍醐味を体感できるツアー!」と謳っているからには、ガレージパンクナンバー満載のライブになるわけですね?
ROY:はい。今までのオリジナル楽曲の中でもガレージ感の強い曲をひっぱり出してきて、やろうと思っています。なので、演奏も今までのツアーとは違って、よりラフというか、ガレージパンク精神あふれるものになると思います。
――今回、インタビューするにあたって、懐かしいと思いながら昔聴いていたガレージパンクの曲をいろいろ聴き返してみたんですけど、ガレージパンクの人たちって何かが圧倒的に欠けているにもかかわらず、過剰というか、トゥーマッチで、クレイジーだなと改めて思いました(笑)。
ROY:だから、当時、売れなかった(笑)。一般的に支持されなかったんですよ。さっきTAXMANも「メジャーでこれをやるからおもしろい」と言ってましたけど、メジャーなんだから、レコード会社もほんとは受け入れられやすいものを出したいと思うんですよ。
JIM:だからメジャーって言うんだと思う(笑)。
ROY:それなのに、世の中に受け入れられない可能性があるものを、実験しようとしているのか、僕らを信じてくれているのかわからないですけど、これだけ好き放題やらせてもらえるってすごいなと思います。
――そんなガレージパンクの本質を、今回の4曲から堪能させてもらいました。そして、決して物足りないわけじゃないんですけど、もっとこういう曲を聴いてみたいと思いました。
JIM:アルバム作ろう(笑)。
ROY:その言葉を待ってましたよ。そのうち、またアルバムを作ると思うんですけど、今回のEPの反応を見てからじゃないと、ゴーサイン出ないと思うので(笑)。でも、もうちょっとこの感じで作りたいなとは思ってます。
JIM:作りたいね。おもしろかったもん。
ROY:じゃあ、やりましょう!
JIM:たぶん、今だからできたっていうのもあるよね。サブスク時代で、逆に振りきれないと、目に止まらないってところがあるからこそできた作品だと思います。

取材・文=山口智男 撮影=大橋祐希

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