『73machi Live』2022年7月3日 at 横浜Bay Hall

『73machi Live』2022年7月3日 at 横浜Bay Hall

SPiCYSOL、
サマーパーティー
『73machi Live』で魅せた
ローカリズム×音楽の理想のかたち

 毎年恒例の7月3日=波の日、SPiCYSOLのサマーパーティー「73machi Live」が今年は神奈川・横浜Bay Hallにて開催された。昨年4月にメジャーデビューし、新たなステージで活躍中のSPiCYSOLだが、インディーズ時代から続くこのイベントはいわばバンドの原点。メンバーのうち2人が横浜出身で、3人が茅ヶ崎在住。音楽もライフスタイルもサーフカルチャーをこよなく愛する、彼らのルーツを共有する最高のチャンスだ。

 まずは軽快な四つ打ちのオープニングSE「Traffic Jam (AmPm Remix)」に乗ってバンド登場。と思いきや、KENNY(Vo&Gu)が一人で現れて前半を歌い、後半はバンドの生演奏にチェンジするという洒落た演出に、満員のオーディエンスがいきなり沸く。続く「Playback」は最新EP『TWO』収録、ファンキーなベースラインとループするリズムに合わせて一斉に手が上がり、フロアが揺れる。ライブというよりも、やはりパーティー。アメリカンなカフェテラスの内装を思わせるステージセットの中で、ステージの上も下も楽しむ気満々。空気がグッドバイブレーションに溢れている。

「お久しぶりです! 1年振りの73machiです。今日は来てくれてどうもありがとう。久しぶりということで、懐かしい曲もたくさんやっていきたいと思います」

 インディーズ時代初期の「V.A.CATION」は、西海岸のミクスチャーロックバンドが奏でるメロウなミドルチューンといった風情の愛らしい1曲で、美しいメロディとコーラスが涼しい風をフロアへ送り込む。ぐっと大人びた表情を見せる「#goodday」では、AKUN(Gu)の弾くワウギターのフレーズを中心にキレのあるグルーヴを聴かせ、さらにノンストップで「Mellow Yellow」へ。PETE(Key、Tp)のエレクトリックピアノは午後のまどろみのようにドリーミーで、骨太なAKUNのギターと好対照を成す。ステージ前方に歩み出てソロを決めるAKUNに、喝采の代わりに心のこもった盛大な拍手が送られる。

「毎年7月3日は、お祭りだと思っているので。みんなも楽しみにしてきたと思うけど、俺らも存分に楽しませてもらいます。最後まで一緒に楽しみましょう」

 ここから5曲は、スロー&ミドルチューンを連ねるリラックスタイムで、SPiCYSOLのスローでメロディアスな側面をたっぷりと聴かせてくれる。PETEのエレクトリックピアノとKENNYのボーカルが素晴らしい調和を聴かせるバラード「Bell」は、ワンコーラスだけのショートバージョンだが、ヒートアップした空気を快適にする除湿効果がすごい。KAZUMA(Dr)を中心とした控えめなリズムと、PETEのオルガンが心地よく響く「かくれんぼ」。AKUNのソロギターがツインボーカルのように饒舌にメロディを歌い上げる、せつなさ満点の「Cry No More」。1曲の中で何度もリズムチェンジを重ねながら、ぐいぐいと引き込んでゆく「After Tonight」。そして、この日のための特別なカバーとして用意されたフジファブリック「若者のすべて」。彼らの年代で言うと、二十歳前後にこの歌をリアルタイムで聴いていただろう。遠くノスタルジックな、しかし今も続いているような気がする青春の風景を、せつなさよりも愛おしさを多めに描く。スローテンポの素敵なアレンジ。

 後半戦、まだまだ行けますか? KENNYの元気な呼びかけを合図に、クールダウンした空気を再び上昇させる「BOHO」は、ミラーボールが似合いそうな華やかなディスコチューン。PETEの得意技、いなせなトランペットソロもばっちり決まった。KENNYのアコースティックギターとAKUNのエレクトリックギターのコール&レスポンスから始まった「Honey Flavor」は、オーディエンス全員のクラップとステップで盛り上がる、ミドルテンポのダンスナンバー。フロアのどこを見わたしても、体を動かしていない人は一人もいない。パーティーはそろそろ佳境だ。

「今日はSPiCYSOL史上、曲数が一番多いです。まだまだ行きますからね。ライブ前にリリースした新曲をやります」

 2日前に配信リリースされたばかりの新曲「CHASE」は、KAZUMAのスネアとキック、オーディエンスのクラップが一体化してアッパーなダンスビートを生み出すハッピーな1曲。そして、ぐっとテンポを落としてヒップホップ色を強めた「The Night Is Still Young」、アッパーなポップ&ソウルチューン「Night Cruising」の2曲の主役は、PETEのトランペットだ。縦横無尽にステージを動き回り、オーディエンスの笑顔を引き出すエンターテイナーぶりで、フロアの一体感をぐっと高めるパフォーマンスはさすがの一言。そんな盛り上がりの頂点を記録したあとに、スローでメッセージ色の濃い「LIFE」をしっかりと聴かせる流れもよくできている。理屈抜きで踊れる曲、楽しい曲、気持ちいい曲、騒げる曲が多いSPiCYSOLの中で、「LIFE」のようなパーソナルで内省的な曲はきらりと光る。ラストを飾るAKUNのギターソロにも、強い気持ちがこもっている。

「10月26日、メジャーセカンドアルバム出します。みんなのおかげで、そのアルバムを引っ提げて、全国ツアーも決まりました」

 KENNYからのうれしい発表に応えるこの日一番の熱烈な拍手は、SPiCYSOLへの全幅の愛と共感と期待の表れ。それに応えて「みんなへの感謝を込めて」と前置きして歌った、「Coral」に込めた真心の大きさ。軽やかなレゲエ調のリズムに乗せて、「ありがとう」という極めてありふれた言葉が実感を持って輝く。そしてKENNYの弾くエレクトリックギターのジャジィな響きが美しい、本編ラストを飾る「あの街まで」。それはダンスとクラップで火照った体をさますのにぴったりの、メロウなクロージングチューン。歌詞を♪横浜まで、と替えて歌う姿に大きな拍手が飛ぶ。KENNYの柔らかいファルセットが、しっとりと胸に沁みる。

 アンコールは2曲。1か月前に配信リリースされた新曲「LOUDER」は、KENNYの情感溢れるボーカル力が光る、オルタナティブR&Bとゴスペルソングをミックスしたような味わい深さ。今後SPiCYSOLの代表曲へと育っていくだろう、スケールの大きな1曲だ。そしてMCタイムでは、茅ケ崎在住のメンバーが地元の仲間と協力して制作し、この日特別販売した「オリジナルピストバイク」の抽選会でひと盛り上がり。同じく地元の仲間と作った「オリジナルビール」も、ネット販売と同時に完売するなど、SPiCYSOLの音楽とライフスタイルは地元のカルチャーと結びついてさらに根強いものになってきている。この日の本当のラストチューン「Far Away」の明るいリフレインを聴きながら、この心地よい音楽がどこからやって来るのかをしみじみと思う。それはメンバーの心の中から、住む場所から、愛するカルチャーから、自然に湧き出てくるものだ。そのオーガニックな味わいが、SPiCYSOLを唯一無二の存在にしている。

「ありがとう、SPiCYSOLでした。また逢いましょう!」

 次の目標は、10月26日リリースのメジャーセカンドアルバム。そして11月12日の福岡から始まる、全国5カ所のリリースツアー。ファイナルは12月25日のクリスマス、神奈川・KT Zepp Yokohamaだ。夏の海辺から冬の街へ、SPiCYSOLのドラマは続く。次はどんな景色を見せてくれるのか、半年後の再会が今からもう楽しみだ。

Writer:宮本英夫/Photo:きるけ。

『SPiCYSOL Tour 2022
(ツアータイトル仮)』

11月12日(土) 福岡・スカラエスパシオ
17:00 / 18:00
11月22日(火) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
18:00 / 19:00
12月09日(金) 大阪・バナナホール
18:00 / 19:00
12月17日(土) 北海道・札幌ペニーレーン24
17:00 / 18:00
12月25日(日) 神奈川・KT Zepp Yokohama
17:00 / 18:00

<チケット>
福岡・愛知・大阪・北海道公演:前売り ¥5,000 (ドリンク代別)
神奈川公演:前売り ¥5,500 (ドリンク代別)
・ファンクラブ先行:7/3(日) 21:00 – 7/10(日) 23:59
申し込みはこちら https://spicysol.com/contents/536059

問い合わせ ライブマスターズ 03-6379-4744 (平日12:00 – 17:00)
アルバム『タイトル未定』2022年10月26日(水)発売
    • 【CD+Blu-ray】
    • WPZL-32016~7/¥4,950(税込)
    • 【CD+DVD】
    • WPZL-32018~9/¥3,850(税込)
    •  
    • <収録曲>
    • ■CD
    • Far Away、Bell、Playback、LOWDER、CHASEほか収録予定
    • ■Blu-ray、DVD
    • スペシャルライブムービー収録予定
    •  
    • ◎ご予約はこちらから:https://SPiCYSOL.lnk.to/2ndAL
『73machi Live』2022年7月3日 at 横浜Bay Hall
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OKMusic編集部

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