平岡優也

平岡優也

【平岡優也 インタビュー】
実話を歌い込んだバラードで、
シンガーとして次のステージへ

今年に入ってから立て続けにアッパーな楽曲をシングルとしてリリースしてきた、平岡優也の新曲はファン待望のバラードナンバー「ソングレター」。《「会いに行くから」それが最後の言葉だっけな》というショッキングな歌い出しから始まる今作に込めた想い、さらには10月12日にリリースするミニアルバム『∞ - infinity -』にも少し触れながら、本人に話を訊いた。

今回は歌い出しと
1行目に命を懸けた

今年は「春舞」(3月発表の配信シングル)、「ビギナーズ」(6月発表の配信シングル)に続いて、今作の「ソングレター」とリリースが続いていますね。

短いスパンで出させてもらっていますよね。10月にミニアルバム『∞ - infinity -』を出すので、そこに向かって新曲のデモをいろいろ作っておりまして。前2作のシングルがアップテンポだったので、今回は夏の終わりにバラードを出したいなと思い、ミニアルバムの中から「ソングレター」をシングルとしてリリースすることにしました。

今作は書き下ろしの新曲なのですね。

そうです。「春舞」のようにサビだけTikTokに上げていたという曲ではなく、ゼロから作りました。

この曲は《「会いに行くから」それが最後の言葉だっけな》というショッキングな歌い出しから始まりますが、これはフィクションですか? それともノンフィクションですか?

ノンフィクション…実体験です。誰しも生きていれば人との別れというのは経験すると思うのですが…今作は思ったことをそのまま歌にしました。“ソングレター”というタイトルは訳すと“歌の手紙”で、いつも曲のタイトルは最後につけるんですけど、この曲は制作作業の中間ぐらいにはタイトルが出てきていたんです。

平岡さんとしては新しいパターンですね。

はい。ただ、その時は“レターソング”だったんです。それで意味を調べてみたら、結婚式の時に両親へ向けて読む手紙のことだと知って。これがウエディングソングだったらそれで良かったんですけど、そうではないのでワードを入れ替えて“ソングレター”にしたんです。

中間地点ですでにタイトルが浮かんでいたということは、曲先ではなくて曲も歌詞も同時にできていった感じですか?

Aメロの一番最初に今も自分の心に深く残っているワードを書いているんですけど、そこからメロディーと歌詞を一緒に作っていきましたね。

Aメロの冒頭にこういう歌詞を持ってきたのは、何か理由があるのでしょうか?

昨今、音楽はサブスクで聴くという方がどんどん増えてきているじゃないですか。そのせいか、あるアレンジャーさんが“最近の人はイントロを飛ばして聴く”とおっしゃっていて。確かにサブスクの試聴を聴いていても、イントロをコンパクトにしているアーティストが多いんですよ。昔のようにイントロを作り込んだ楽曲は少なくなってきているという印象があって。だから、この曲もイントロをすっ飛ばして歌始まりにしました。ワードも一番最初に一番届けたいものを書こうと考え、それは何だろうかと思った時に、あの冒頭の1行が出てきたんですね。本当はイントロがちゃんとある曲が好きなんですけど、新曲が毎週たくさんリリースされる中で、僕を知らない人に曲を聴いてもらうためには曲が流れた瞬間に“この人の声、いいな”とか“この歌詞、いいな”と思ってもらわないと、“もう10秒聴いてみよう”にはならないんですよね。だから、今回は歌い出しと1行目に命を懸けました。

なるほど。サブスク世代へアプローチするための戦略として持ってきたと。

はい。世の中の流れに合わせた結果だと思います。

この冒頭の1行にある《「会いに行くから」》が、本当に最後の言葉になってしまったのですか?

そうなんです。“会いに行くね”みたいなメッセージをLINEでもらって、それが最後になりましたね。“またね”と言っていたのに2度と会えなかったという経験は僕だけじゃなく、みなさんにもあるかもしれない。今のご時世、人に会うのも難しくて、数年会えていない人とかが、みなさんにもいらっしゃると思うんです。僕も実家に帰れてないですからね。そうなると、一番最後に会った時に言った言葉が最後の言葉になってしまったっていうのが、今の時代だからこそあると思うんですね。

確かにそうですね。衝撃的な一行ではありますけど、同じ体験をされた方は今のご時世を考えればたくさんいらっしゃってもおかしくないですね。

そうなんですよ。

では、平岡さん自身このようなつらい経験をされて、それを歌にしていく作業というのは、過去を回想し、痛みを伴う作業だったのではないでしょうか?

僕はライヴをイメージして曲を作っていくから、この楽曲もライヴで歌っているイメージを膨らませながら作りました。楽曲が壮大なのでライヴの最後に歌っているイメージを想像したんですけど、こういう歌詞なので全体的にマイナスな感情、おセンチな気持ちになりがちで。

曲調もバラードですしね。

でも、“この曲、悲しい”“つらすぎる”というような悲しい歌では終わらせたくなくて、最後は温かい気持ちで終わらせたかったんです。“そうだよな、出会えた良かったんだよな“と。別れてしまってもう会えないけど、出会えたことが自分にとって一番いい出来事だったと思わせてくれるような感謝の気持ちで最後のワードは書いていきましたね。“別れてしまってもう会えないけど、今思うことは“ありがとう”だよ”というのが、この曲で伝えたかったところです 。

“なぜいなくなったんだ?”と嘆くだけの歌にはしたくなかったということですね。

あの体験から数年経っていなかったら、そう書いていたかもしれませんが…ただ、今も解決までは至っていないんですよね。僕を含めて、そういう別れを経験した人に“僕もそうだったから、いつかはこう思えるようになるんだよ”と伝えたいと思って。だから、確かに僕の中では悲しい出来事ではありますけど、今はその気持ちのかたちが感謝の気持ちに変わってきているので、悲しいバラードではありますけど、わりと前向きな別れの歌なんです。

悲しい曲調ではあるけれども、前向きな別れのバラードということですね。

そうです。例えば誰かと喧嘩をした時に、リアルタイムでは“なんだ、あいつムカつくなぁ”というような感情が爆発してしまうと思うんです。でも、一日経って冷静になって考えると“あの言葉は言わなくても良かったのにな”とか“ああいう言い方をしなくてもな”とか、自分のことを俯瞰で見られるようになるじゃないですか。だから、この体験もリアルタイムではもちろん自分は悲しかったし、絶望の中にいたのは確かです。

突っ込んだことを訊いちゃいますけど、その方は自死でいなくなられたのでしょうか?

そうです。だから、その直後は本当に“どうして?”“なんで?”と頭の中は“?”ばかりでした。でも、考えても分からないんですよね。今を生きている人たちがどう頑張ってもどう考えても、いなくなった人はもう戻ってはこない。“じゃあ、今の僕が思うことってなんだろう?”と考えたら、感謝の気持ちしかなかった。

それで“ありがとう”という気持ちを歌の中で手紙にして書いたと。

はい。今も笑い話にはならないですけど、生きている人たちは“その人のぶんまで”と思いながら生きていくしかないんですよね。僕は親族との別れはまだ体験していないんですけど、きっと今後体験することになるじゃないですか。そうなったらもちろん悲しいし、いろんな感情になると思うのですが、生きとし生けるものみんなそういう運命でしょうから。そういう出来事にこの先対面した時、“悲しい”で終わらせて、悲しいままその後の人生を生きていってもしょうがないはずで。生きてくためには仕事はしなきゃいけないし、生活をしていかなきゃいけない。今の自分に吹いている風が向かい風なのか追い風なのか、それをどう解釈するかはその人次第で、その人の生き方次第だと思うんです。この曲は向かい風から始まっていますけど、追い風で歌い終える。そんな歌です。
平岡優也
配信シングル「ソングレター」

OKMusic編集部

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