ザ・モアイズユーだからこそ届けられ
る“青春”をテーマにした新曲「青に
咲く花」を紐解く

大阪発の3ピースロックバンド“ザ・モアイズユー”が、2022年9月28日(水)にDigital Single「青に咲く花」をリリースした。

“青春”をテーマにした約1年ぶりとなる新曲「青に咲く花」は、“キラキラした青春”とは違った青春を過ごしてきた彼らだからこそ届けられる作品となっており、共感できる人もきっとたくさんいるだろう。
本インタビューでは、前作(アルバム『Storage Time』)リリース以降の約1年間の振り返りや今作の制作過程、そして10月から始まる全国ツアーに向けて話を訊いた。
──アルバム『Storage Time』から1年振りの新曲「青に咲く花」をリリースされますが、この期間はいかがお過ごしでしたか?
本多:リリース自体は1年振りになりますけど、楽曲制作をしたりとか、対バン企画(『モアイズム!!2022』)をリリース以外でもやったりしていて。自分達なりに、アルバムを出した後、次に何を作っていくのかを考えられた時期でもあったので、あっという間だった感じはありますね。
──充実していた感じでしたか。
本多:そうですねぇ……充実していたというかどうかはわからないですけど(笑)。自分達なりにやっていたという感じだったので。それが充実していたかどうかは、今回リリースの曲にかかってくるんかなと思ってます。
──確かにそうですね。オザキさんは1年振り返っていかがですか?
オザキ:あっという間でしたけど、どんな環境であれ、やることはあまり変わらなかったかなって思います。音楽活動をひたむきに続けるというか。曲を作って、まだ難しい環境ではあるけれども、ライブをするということ自体は変わらなかったので。そこは変化なくやってこれたかなとは思ってますね。
──活動の軸は変わらずに続けつつも、『Storage Time』というアルバムは自分達が今までやっていなかったことをやってみるという作品でした。それを経たことで生まれた変化はありましたか?
以登田:やっぱり一番大きいのはライブですかね。僕らはライブも3人の音でずっとやってきましたけど、アルバムでブラスとかキーボードの音を結構入れたので、ライブでも同期とかを使って、今までにないライブの表現ができたなと思いました。それでライブの印象はだいぶ変わったのかなと自分的には思いますね。
──作る曲にも変化が生まれてきたりもしました?
以登田:今回はいろいろ試行錯誤をした感じはありますね。前回は音をいろいろ入れたので、シンプルにいこうと思いつつ、シンプルにしても質素になりすぎないようにとか。その塩梅をいろいろ考えたので、結構悩んだ期間ではありましたね、アルバムを出してからは。
本多:曲自体はずっと作っていたんですけど、ほんまにフラットな状態で作るというよりは、アルバムがあった上で、どう変化をつけて、どう変化をつけないで、ギャップを生みすぎずに、でも驚かせたいという気持ちがあって。だから、ライブでどう表現するのかというよりは、前作をどう超えていくのかを意識していたし、どうしてもちょっと難しく考えてしまっていたところはありましたね。
ザ・モアイズユー
──今回リリースされる「青に咲く花」は、以登田さんの作詞作曲ですが、それこそどういう曲にしようか悩んでいたと。
以登田:自分としてはいい曲ができたなと思ったんですけど、シングルとなると1曲勝負じゃないですか。本当にこの曲でいいのかという葛藤があって。デモをいろんな人に聴いてもらって、「いい」と言ってもらえて自信をもらって、じゃあこれでいこうという感じになりました。
──曲のテーマは青春で、清涼感があって、青空が目に浮かんでくるような雰囲気がありますけど、明るくて元気いっぱい!というよりは、心がじんわりと熱くなるようなものになっていて。でも、なぜいま青春について歌おうと思ったんですか?
以登田:前から青春の曲を書きたいなってずっと思ってたんですよ。銀杏BOYZに影響を受けていたので、いつか書きたいなって思っていて。僕は華やかな学生時代を送っていたわけではなく、本当に平凡な日々をずっと過ごしていたんですけど。でも、今思い返してみると、特に何もするわけでもなく、ただ友達としゃべってるっていう、それこそがよかったなって。だから、夏特有のまぶしさというよりは、儚さなどを表現したいなと思って、そこをこの曲の核にしてました。
──すごく爽やかなサウンドの中に、〈クソみたい〉というワードが飛び込んでくるのもいいですね。
以登田:青春時代のことを歌うとなったら、キラキラした思い出が多いですけど、そんなに充実した青春ではなかったので。でも、そういう部分は体験した僕らにしか歌えないと思って。だから、青春でキラキラした歌ではあるけど、ちゃんと卑屈な部分も出して、僕らと同じ境遇にいる人たちに共感してもらえたらなっていう気持ちもありましたね。
──本多さんと以登田さんって、それこそ銀杏BOYZのコピーバンドやってたんですよね?
本多:そうですね! 高校2年のとき。
──その時代を思い返してみるといかがです? 以登田さんは華やかではなかったとのことでしたけど。
本多:僕もキラキラした青春と言われるような学校生活は送ってなかったと思いますね(笑)。その中で溜まった鬱憤じゃないけど、それを解放してくれて、僕らを救ってくれたのが音楽だったので。だから、「高校時代に何をやってた?」って言われたら、バンドをやっていたってことになるんで、結局今とやってることは変わってないですね(笑)。あんまり学生の頃の思い出ってないよな?
以登田:ないの?
本多:いや、キラキラした思い出というか、いわゆる絵に描いたような青春みたいなやつは……
以登田:ああ。そういうのはまったくなかったな。
ザ・モアイズユー
──オザキさんは学生時代どんな感じだったんです?
オザキ:俺も以登田と一緒ですね。教室の隅で、体育会系の人らが騒いでいるのを横目で見て。若干嫉妬はあったんですけど、なんかこう、同じ人間なのにステータスの差をこんなにも感じるのか、というか(笑)。
本多:あははははは(笑)。相当やったんやな。
オザキ:ヒエラルキーって何?みたいな。そういう腹立たしさみたいなものはありましたね。そういうときに楽器とか音楽と出会って、これで見返してやろうって思っていたのが、僕の青春だったんですけど。だから、あんまりいい学生時代ではなかったかなとは思いますね。なんかちょっとやり直したいなって……
以登田:あははははは(笑)。
オザキ:もう1回やり直して、体育会系の人らと仲良くなりたい。肩組んだりして。
本多:なれるかなぁ。今戻っても、結果教室の隅でイヤホンして音楽聴いてるんじゃないかって気はする。
オザキ:まぁ……間違いないな(笑)。90%そうなる。
以登田:戻りたいなぁ。
本多:うん。戻りたいことには戻りたい。今思うと楽しかったしな。
──でも、バンドをやっていたら注目されたりすることもあったんじゃないですか?
以登田:なかったですねぇ。
──文化祭に出たりとかしてなかったんですか?
以登田:出てなかったですね。学校内でバンドを組んでいたわけではなかったので、みんなの目を惹くステージに立つことはなかったです。
本多:僕もギターやってたけど、ギターをやっているのを学校内で知られるのが恥ずかしくて。「あいつギターやってんの?」って変に思われたらどうしようと思って(苦笑)。軽音部にも入ってなかったし、バンドをやってるのもそこまで大々的に出してる感じではなかったです。
──じゃあ、学校にギターを持っていくなんてもってのほか?
本多:そうですね。でも、どうしても持って行かなあかん日もあって。それがすごい嫌でした。「うわぁ……ギター持ってる……」って思われたらどうしようって。
以登田:俺は逆に、見てくれ!って思いながら行ってたけど、誰にも注目されんかったな(笑)。
──(笑)。オザキさんはバンドで文化祭に出たりとかは?
オザキ:高校を卒業するときにちょっとやりましたね。僕ら1学年360人おったんですけど、最後にホールを借りて何かやろうってなったときに、最後に1回ぐらいバンドしたいなと思って。そしたらたまたま同学年に、ギターを弾いてる動画をYouTubeにアップしてる人がいて。その人とベースができる人を探して、3人でやりましたね。斉藤和義とアジカンやったかな。ラグビー部より盛り上がりましたね。
──ラグビー部の人達は何してたんです?
オザキ:踊って笑いを取る感じだったんですけど、僕らは正々堂々真っ向勝負で。終わった後に体育会系の人らに初めて認められました、人間として(笑)。めちゃくちゃよかった!って。ラグビー部はいらんかった!って言われたときに……
本多:さっきから対比に出てくるラグビー部なんやねん(笑)。
オザキ:僕としてはなんとしてでも存在証明をしたかったんですよね。
ザ・モアイズユー
──なるほど(笑)。では楽曲に話を戻しまして、本多さんは「青に咲く花」にどう臨みましたか?
本多:最初に聴いたときに、青春を歌っているのは一発で分かったんですけど、懐かしさとか切なさがちゃんと入っている、ザ・モアイズユーらしい青春感があるなって。歌詞も最初は今の形じゃなくて、以登田がだいぶ試行錯誤してたんですけど、さっきも話してた〈クソみたいだなって笑う〉というキレイすぎない言葉でちゃんと書かれていて。そこは青春特有の、今青春を生きている人の言葉だなと思ったから、自分なりにどう歌ったらそういうニュアンスが出るのかな?というのを感じながらやってました。
──試行錯誤というお話がありましたけど、歌詞はかなり難産だったと。
以登田:死ぬほど考えましたね。今の自分の立ち位置から思い返して書くのか、その当時に立ち返って書くのか、とか。あと、最初はもっとテンポが遅かったんですよ。もうちょっとゆったりしてたんですけど、アレンジが変わったことでまた歌詞も変えてという感じだったんで、過去最高に時間がかかりました。
本多:レコーディング当日までに間に合わなかったんですよ。何時間やったけ?
以登田:26時間ぶっ続けて作詞してて。お腹空いたらご飯食べて、また書いて。ほんま地獄のような日々でしたね(苦笑)。
──出てこなかった2行というのは?
以登田:2番のサビです。
──〈悩みながら教科書の上で眠る 馬鹿げてる夢も〉というところ?
以登田:そうです。もう考えすぎて、頭が回らなくなってましたね。ほんまに作詞って難しいなって感じましたね。
──時間をかければいいというわけでもないと。オザキさんはどう臨みました?
オザキ:多少アレンジはしましたけど、今回はもうデモ通りにやろうと思って。その通りにできたし、達成感はあるけど、これでいいのかなってまだ若干思ってるところはありますね。これで届くかちょっと心配っていう。
本多:出すまで不安っていうのはあるよな? いいの録れたなと思うけど、結局は聴いてもらって、どう評価してもらうかなので。もちろん自信はあるんだけど、不安がないかと言われたら……っていう。そこは毎回そうですね。
──世に出して、ライブでやってどうなるかっていうところもありますからね。
オザキ:そうそう、そうなんです。
──その新曲を持って、10月からは全国ツアーが決定しています。
本多:普通に各地にライブをしに行くことはありますけど、リリースツアーでいろんなところを回ってライブをするというのは、やっぱり感覚が違いますね。1年振りに全国ツアーをやれるのがほんまに嬉しいですし、リリースした曲をライブで聴いてもらえるのも楽しみです。ファイナルシリーズの大阪も東京も、自分達としては一番大きいキャパにはなるので、そういう意味でもちょっとチャレンジみたいな気持ちが強いツアーやなと思ってますね。
以登田:僕らは地元の大阪でずっとやってきたんで、ファイナルの梅田CLUB QUATTROとかは、ずっと憧れていた場所でもあるし、そこで自分らで企画を打つというのは、楽しみはありつつ、正直不安でいっぱいですね。僕らにしては踏み込んだ大きさのライブハウスなので。
──昨年のリリースツアーは全公演ソールドアウトで、観たいという人達が集まってくれそうな予感もありますけど。
以登田:いやぁ……不安ですね(苦笑)。一生尽きないです、不安は。
オザキ:チャレンジでもあり、覚悟というか。2022年の終わりかけまでツアーが続くので、この1年のすべてを懸けてやってやろうという気持ちのもと、いいライブにできたらなと思っているし、できるように僕らも努力します!
──ザ・モアイズユーのライブはかなりパワフルだし、迫力もあるから、あまり不安がどうこうというのを感じさせないところもあるなと思うんですけど。
オザキ:どうなんでしょうね? なんか、たぶん豹変するんじゃないんですかね。普段隠れている何かが覚醒しているような気はしますけど。
以登田:そうやな。僕、普段注目されるのがすごく苦手なんですよ。大勢の人に目を向けられるとめっちゃ緊張しちゃうけど、ライブになると逆に「見てくれ!」って思いますね。だからそういうステージングにもなったりするし。ライブになると不安も全部消えて、嬉しさとか楽しさが勝ちますね。
──ライブが始まるまでは、みたいな感じなんですか?
以登田:そうですね。始まるまでは緊張と不安がすごいですけど、始まってステージに立った瞬間に豹変しますね。
──スイッチが入る感覚があると。本多さんはどうです?
本多:なんか……二十歳ぐらいの頃にはそういう感覚があったんですよ。自分じゃないものになれるというか。そういうのが歳を重ねるごとになくなっていって。最近はようやくライブ中に楽しいなって思うことが増えたんですけど、数年前とかは、楽しいというよりは戦っているっていう感じだったんですよ。どちらかといったら、不安の中でやっているような感じが強くて。
──なぜまた楽しめるようになったんでしょうね。
本多:なんでなんですかね?(笑) いろんなことを考えすぎてた時期もあったんですよ。次はこうしようというようなことをライブ中に考えてしまって。目の前のお客さんに向けてやることが大事なのに、自分の頭の中ばっかりでやってしまっている感じがあったんですけど、最近は考えすぎずに、なるべく見てくれている人のことを考えたいなって思うようになって。そうなると、前まではこっちをみんなが見てくれていることも、自分達がライブやってるのにそれが不安というか、怖いって思うこともあったんですけど、最近は自分達に向けられている視線に対して、気持ちが乗るっていうことがようやく出てきた感じがありますね。
──ツアーも楽しみにしつつ、まだ話せないこともあると思うんですが、この先のこともいろいろと決まっているんですか?
本多:もう次の曲の話はしてますね。曲自体はまだ決まってはいないんですけど、また頭を抱える時期が近いうちに来るんじゃないかなって(笑)。すんなりできたことがないんで、もしかしたら次のインタビューもまた同じような内容をしゃべってるかもしれないですけど(笑)。
──(笑)。「頭、抱えてました」とか?
本多:「不安で不安で」とか(笑)。でも、楽しみにしていてください!

文=山口哲生 撮影=大橋祐希

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