ダミアン浜田陛下、改臟人間の新譜『
虚無回廊』を聴く(筋トレしながら)
<前編>/金属恵比須・高木大地の<
青少年のためのプログレ入門> 第34

金属恵比須・高木大地の<青少年のためのプログレ入門>

第34回 ダミアン浜田陛下、改臟人間の『虚無回廊』を聴く(筋トレしながら)<前編>
聖飢魔IIの創始者・ダミアン浜田陛下との対談再び。
ご存知の通り、金属恵比須メンバーは陛下に“改臟”されDamian Hamada’ s Creatures(以下D.H.C.)となり、2022年(魔暦24年)7月には初の東名阪ツアーを行なった。
実はその合間に、金属恵比須としてニューアルバムを制作していた。それが2022年12月7日発売の『虚無回廊』である。陛下の影響をふんだんに受け、D.H.C.の音楽性を吸収した今作品。個人的にはバラエティに富む最高傑作と自負しているが、音楽に造詣の深い陛下はどう感じているのだろうか。ということで、魔界にてダミアン浜田陛下と久方ぶりの対談を敢行することにした。
金属恵比須の新譜『虚無回廊』
■陛下、初の東名阪ツアーを語る
高木大地(以下「高木」) 魔暦24年(2022年)7月にD.H.C.は東名阪ツアーを行ないました。
ダミアン浜田陛下(以下「陛下」):この頃はコロナ禍という名のゼウスの史上最大の妨害が猛威を振るっており身の周りにも感染者が出ていたので、メンバーの誰かが感染しライヴが中止にならないかと、リハーサル時から最終日までヒヤヒヤしておった。
高木 メンバーもヒヤヒヤしておりました。私は出演できませんでしたが、渋谷での千穐楽は拝見いたしました。盛り上がりましたね。
陛下 観客の熱量が凄かったな! おかげで私もエネルギーがみなぎり、それを魔力として客席に還元しさらに盛り上がるという魔力の循環が行なわれた。どの地も想い出深い場所であったし、色々な意味でダミ満足なツアーとなった。というわけで、ゼウスとの戦いは我々の勝利で終わったぞ。
高木 陛下も金属恵比須のメンバーも昨年11月のライヴよりものびのびと余裕をもってプレイされていました。重力の克服は完了ですね。
陛下 うむ!
東名阪ツアー『Damian Hamada's Creatures. 魔界小学校 魔王参観日 ~ Devilish Hell Ceremony TOUR ~』告知物

■陛下、金属恵比須のヘビメタ化を予測する
高木 私ども金属恵比須は2022年12月7日にニューアルバム『虚無回廊』を発表いたします。
陛下 まさしく金属恵比須の音そのものだな。ファンの期待を裏切ることは絶対にないだろう。
高木 ありがとうございます。D.H.C.に参加したことによって、金属恵比須が変わったことがあります。それは、担当楽器以外の楽器も弾くということです。栗谷がベースからギターに持ち替えることも日常茶飯事になり、宮嶋もベースやギターを弾いたり、私はキーボードも弾いています。
陛下 そうだったのかっ! 芸達者だな。それにハード・ロック/ヘヴィ・メタル度もアップしているように思えた。
高木 それは当然の成り行きではないかと思っています。陛下とお付き合いを始めてから2年以上。“布教”する改臟人間(=金属恵比須メンバー)がまず”感化”されなければなりませんので、陛下のイディオムは刷り込まれているのであります。
陛下 さすがだな! この調子で行けば、あと数年で金属恵比須はヘヴィメタル・バンドになってしまうかもしれぬな(笑)。それにしても、このアルバムは聴けば聴くほど引き込まれる。耳に残る強烈なリフとメロディのオンパレードじゃないか! 完成度はかなり高いぞ。とんでもない傑作が完成したものだな。なぜこのようなテーマにしたのかね?
高木 金属恵比須がオーケストラと共演したコンサート「小松左京音楽祭」で小松先生の元マネージャー乙部順子さんに出会ったことがきっかけです。乙部さんが私たちの音を気に入ってくださり、「『虚無回廊』のロック版を聴きたいな」と軽く相談されました。そういわれたらやるしかない(笑)。あれやこれやで「小松先生で人生が変わった」と公言する樋口真嗣監督(『シン・ウルトラマン』『シン・ゴジラ』の監督で有名、『日本沈没』も監督を担当)にも帯を書いていただくこととなりました。
アルバム『虚無回廊』収録曲、「魔少女A」PV

■陛下、マキオズを語る
陛下 ライヴで初めて聴いた時は「魔少女A」が気に入ったのだが、スタジオ・レコーディングされたものを改めて何度も聴き返すと「誘蛾灯」が気に入った。名曲だな。70年代の香りがたまらん!
高木 「誘蛾灯」はバンドで綿密に練りました。
陛下 例えるならカルメン・マキ&OZの「閉ざされた町」や初期ブラック・サバス風でもあるが、完全に金属恵比須の楽曲として仕上がっておる。
高木 陛下はマキオズ(カルメン・マキ&OZ)がお好きなのですよね。
陛下 カルメン・マキ&OZはギターのフレーズやメロトロンを使用しているあたりがクリムゾン臭プンプンだし、女性ヴォーカルでもあるし金属恵比須と共通点が結構見られる。世界観のベクトルはまったく違うけどな。聴き比べるとなかなか興味深いぞ。楽曲も好みだが、何といってもカルメン・マキ女史の骨太で音域の広いヴォーカルだな。ダイナミックなヴィブラートも素晴らしい! 日本で彼女を超える女性ロックシンガーは存在しないのではないかとさえ思う。
高木 私もマキオズは大好きでよく聴いていました。ハード・ロック、フォーク、歌謡曲が渾然一体となっていて、いわれてみれば今の金属恵比須にその作風が生かされているかもしれませんね。
陛下 途中からテンポアップし8分の5拍子になる展開が素晴らしい。
高木 これはブラック・サバス的な展開を狙いました。
陛下 最後の「開け胡麻」の部分もイイ! 耳に残るフレーズだ!
高木 小説に出てきた言葉をそのまま引用しています。慣用的表現を歌詞に取り入れて印象深くさせるというのは金属恵比須でよくやるパターンですね。
アルバム『虚無回廊』レコーディング中の金属恵比須(高木大地、栗谷秀貴)

■陛下、冨田勲オマージュに飛びつく
陛下 「人工実存」はこれまたイントロからして最高だな! メロトロンからクリムゾン臭はするが、金属恵比須の個性炸裂だ!
高木 「紅葉狩」以来続く手法です(笑)。
陛下 もしかして「人工実存」は歴史上初の電子楽器であるテルミンを使っておるかね? レッド・ツェッペリンが使っているのを観たことがあるがツェッペリン以上に効果的だと感じた。
高木 お察しの通り。高校入学祝いで購入したものをいまだに使っています。意識したのはピンク・フロイドの「エコーズ」ですね。フロイドで使用したのはテルミンではありませんが。
陛下 「星空に消えた少年」は昭和歌謡またはアニソン風でありながらも、ELPの「悪の教典#9」の香りがプンプンするのJaguar(笑)。狙ったのかね?
高木 もちろん狙いました(笑)。この曲は渡辺宙明先生の作曲指導のアポイントが取れたので急遽作った曲です。1時間半で仕上げました。宙明先生を意識したのでアニソン風になりますね(笑)。が、ただの宙明節では面白くないなと。さまざまな70年代アニソンを聞いて、宮川泰先生がELPの影響を受けた曲があったのでそのテイストも加えてみました。
アルバム『虚無回廊』収録曲、「星空に消えた少年」PV

陛下 「虚無回廊 エンディングテーマ」の冒頭の人工音声っぽいのはなんだ? こんなの冨田勲氏の『惑星』以外で初めて聴いたぞ。
高木 さすが陛下! ミニモーグというシンセサイザーを使用して試行錯誤で作り上げました。私のシンセサイザー人生の原点は冨田勲『惑星』でした。いまだに愛聴盤です。「パピプペ親父」「パピプペ星人」といわれる冨田先生の技法をオマージュしてみました。
陛下 「ゴジラvsキングギドラ メインタイトル」は驚くほどしっかりプログレしているな。よくぞここまで仕上げた! そなた達のアレンジも素晴らしいが、伊福部昭氏の音楽性も改めて素晴らしいと思わされた。冒頭は私の好きなELPの「永遠の謎パート1」を彷彿とさせるな。
高木 伊福部昭先生をプログレでアレンジするというのは、ELPがヒナステラやコープランドなどの現代音楽のアレンジをすることのオマージュです。
陛下 なるほど! そういうことであったか。私が好きなELPの「トッカータ」にも通じるものがある。伊福部昭氏の作品でここまでプログレ色の強いロックアレンジは類を見ない。それにしても『虚無回廊』というテーマからしてスケールが大きすぎる!
高木 どのような時に音楽を聴かれるのですか?
陛下 筋トレ中だ。だが『虚無回廊』はスケールが大きすぎて何だか力を奪われてしまうので、筋トレのBGMにはまったく向かないということもわかった。
アルバム『虚無回廊』レコーディング・スタジオにて
(以下次号)

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