UVERworldのライブには助走もクール
ダウンもない、すべての瞬間でピーク
を振り切った『THE LIVE ~TAKUYA∞
生誕祭~』レポート

THE LIVE ~TAKUYA∞生誕祭~

2022.12.21 横浜アリーナ
12月21日、横浜アリーナで『UVERworld THE LIVE~TAKUYA∞生誕祭~』を観た。前日の公演は、開演10分前に彰(Gt,Pro)が体調不良を訴えて出演不可能になり、急遽5人で乗り切ったという話は直前に知った。状況は流動的で、確定した情報がわからない。ステージ前方を巨大な布が四角く覆う。背後のスクリーンに映る時計が開演時刻に近づく。暗転と同時にSEが流れて拍手が湧き起こる。そして。
幕が切って落とされ、たった一人で「NEVER ENDING WORLD」のソロを弾く彰にスポットが当たる。真太郎(Dr)を乗せたドラムセットがせり上がり、ポップアップで飛び出した克哉(Gt)、信人(Ba)、誠果(Sax,Mp)、そしてTAKUYA∞(Vo)が加わり、爆音と共に「7th Trigger」へなだれこむ。ファンの不安を一掃する最高の演出だ。1曲目から大量のレーザービームとド派手な照明で場内の温度が急上昇し、「CORE PRIDE」を歌い終える前にTAKUYA∞が早くもジャケットを脱ぎ捨てた。「今日は少しくらい声出していいんだって!」と観客を煽る。「ナノ・セカンド」のイントロの、会場を揺るがすような声援を聴くのは久々だ。
「のっけからクライマックスのようにピークまで持って行こうぜ!」
TAKUYA∞に煽られる前から全員がそのつもりだ。クラップとジャンプで一体感がぐんぐん高まる。楽器隊の4人がポジションを変えながら動きまくるアッパーな「IMPACT」から、オートチューンマイクとレギュラーマイクを使い分け、メッセージをじっくり聴かせる「AFTER LIFE」、そしてイントロで豪快に金テープを発射して盛り上げる「在るべき形」へ。「完全体のUVERworldは最高だな!」とTAKUYA∞が叫ぶ。この場にいる全員の思いを代弁してくれている。
声を出せる時間は全体の25%。感染予防ガイドラインに沿った真面目なトークのはずが、お約束の下ネタに着地させる真太郎のMCは今夜も絶好調。「TAKUYA∞くんは自分で一言も言わなかったけど、今日はTAKUYA∞生誕祭です。みんな、それを祝いに来たんやね」と、彼らしい気配りも絶好調。続けて幻想的なスモークの中で歌う「AVALANCHE」、トラップビートとヘヴィロックの融合で押しまくる「Making it Drive」、そして信人のぶっといベースがリードする「One Last Time」。ヒップホップ色の濃い楽曲をたたみかけ、ハイからローまで自由自在のTAKUYA∞のラップも絶好調だ。和風情緒を加えた「Enough-1」のハイテンションもすさまじい。UVERworldのライブには助走もクールダウンもない。すべての瞬間でピークを振り切る全力疾走でライブは進む。
「この2年間、完全封印してた曲、やってもいい?」
TAKUYA∞の言葉に続き、イントロの一音で客席が一気に沸き上がる。曲は「WE ARE GO」だ。壮大なコーラスが観客を巻き込む。信人、彰、誠果がパーカッションに加わった分厚い音の上で、TAKUYA∞がドスの効いたグロウルめいた声で吼える。そして誰もが驚いたのは、久々にライブに登場した「~流れ・空虚・THIS WORD~」だ。「この曲を知ってる人はかなりコアだね」と、TAKUYA∞がニヤリと笑う。「今日はオレのやりたいセットリストをやらせてもらってる」と胸を張る。若いパワーみなぎるアッパーなヘヴィロックに続いて、ロマンチックな「a LOVELY TONE」を選曲する、今日限りのスペシャルなセットリストの意味は聴けばわかる。さっきまで大騒ぎしていた観客が誰も動かずに、愛にあふれた歌詞に耳を傾けている。
TAKUYA∞がライブ前日恒例の10kmランの話をしてる。ライブのたびに10km走って会場に泊まり込む自分を「イッちゃってるよ」と笑ってる。昨日の夜に走った1000人の男CREWのトップタイムが30分を切ってたと驚いてる。パワフルなバンドの周りにはパワフルな人間が集まるということだ。さらにTAKUYA∞が「曲変えていい?」と突然言いだし、「よくあることだよ」と涼しい顔で言う。このバンドの持つバイタリティーは底なしだ。曲は「THE OVER」。誰もが自分を超えられる。それはバンドを愛するすべてのファンへの本気のメッセージ。
痛みがわからないんだったらせめて寄り添ってあげたい。オートチューンを使ったボーカルが壮大なゴスペルクワイヤのように聴こえる「ピグマリオン」。TAKUYA∞を除く5人が丁々発止の楽器バトルを繰り広げるインストチューン「Massive」。着替えを終えて戻って来たTAKUYA∞が「行こうぜ後半戦!」と叫び、再び進撃開始だ。「One stroke for freedom」ではエレクトリックと生をミックスしたドラムセットで真太郎が豪快なビートを叩き出し、彰がステージ中央に飛び出して観客を煽る。「Don't think feel」から「PRAYING RUN」へ、身近にあった出来事から話しはじめて次に歌う曲の歌詞へと見事につなげていく、TAKUYA∞にしかできない煽りMCが火に油をそそぐ。「全部やって確かめりゃいいだろう」。熱すぎるメッセージを全員が声を合わせて叫んでる。「Touch off」では、ステージ前から巨大な炎の柱が立ち上がってステージを紅く染める。
今UVERworldが持ってる曲で一番大切な曲をやります――そんな言葉と共に歌われた「EN」は、UVERworldが、TAKUYA∞が歌い続けてきた人生哲学の粋と言える強力なメッセージチューンだ。オレたちは進み続ける、おまえはどうするんだ? もはやラップとも言えない、すさまじい熱量で繰り出される膨大な言葉の流れと、ドラマチックで壮大なヘヴィロックサウンド。そしてこの日のライブの最後を飾ったのは、未だ音源にはなっていない「Theory」だった。このバンドはオレたちの人生だけど、あなたの人生でもあったことに気づいたんだ。TAKUYA∞の言葉が象徴する、すべてのCREWに向けた感謝と共闘のメッセージ。それは何があっても前進することを決意したバンドからの、これからも共に歩もうという熱いメッセージ。
ライブは終わったがまだお楽しみが控えていた。メンバーと共に見つめるスクリーンで発表された、2023年7月29日の『UVERworld premium THE LIVE at NISSAN STADIUM』、30日の『UVERworld KING’ S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72,000』と、バンド史上最大規模を塗り替える日産スタジアム2Days。「全員でヤバいスタジアムライブをしに行こうぜ!」とTAKUYA∞が叫ぶ。答えの代わりにあたたかい拍手がそれを包み込む。
最後にメンバーが一言ずつ、言葉を残してステージを去る。最高です。TAKUYA∞おめでとう。良いお年を。来年もよろしく。笑顔のメンバーの中で、感極まるように「ありがとう」という一言を絞り出した彰にひときわ盛大な拍手が送られた。年内のライブはまだ続く。来年の目標も決まった。もっと言えば、前日のライブですでに『QUEEN’ S PARTY 女祭り LIVE HOUSE TOUR 2024』と『QUEEN’ S PARTY 女祭りTHE FINAL at HAWAII 2024』の開催も発表されている。1秒ずつ記録を縮めていくランナーのように、バンドは限界の向こうを目指して走る。CREWも走る。UVERworldを巡るRUNは2023年から2024年へ、さらにスピードを上げて続いてゆく。

取材・文=宮本英夫 撮影=田中和子(CAPS)

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