舞台「ヴァニタスの手記」-Encore-
開幕 公開ゲネプロの写真&レポート
が到着

2023年3月10日(金)サンシャイン劇場にて、舞台「ヴァニタスの手記」-Encore-が開幕した。
本作は、月刊「ガンガン JOKER」(スクウェア・エニックス刊)にて 2016年より連載中の望月淳による漫画で、TV アニメ化もされた『ヴァニタスの手記』の舞台化作品。
2022年1月に予定していた公演は、事情により1公演のみの上演となったが、このたび「-Encore-(アンコール)」として再演。初日公演に先立ち行われたゲネプロの様子を舞台写真とともにレポート。キャスト・スタッフ一同、万感の思いを込めて本日からの本番に臨む。
物語の舞台は19世紀のパリ。吸血鬼(ヴァンピール)の青年・ノエ(菊池修司)は、恩ある“先生”から頼まれ、あるものを見つけるために飛空船でパリへ向かっていた。あるものとは、童話「蒼月の吸血鬼」に登場する機械仕掛けの魔導書「ヴァニタスの書」。
まもなくパリに到着するかという時、ノエは飛空船の中で呪い持ちの吸血鬼の暴走による事件に巻き込まれる。すると突然、ノエの前に吸血鬼専門の医者を自称する人間・ヴァニタス(植田圭輔)が現れ、あっという間に呪いを治療して事件を解決してしまう。その手には一冊の本が…。その本こそ、ノエの探し求めていた「ヴァニタスの書」だった。
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
ヴァニタスは、吸血鬼はこのままでは呪い持ちの増加とともに滅びゆく運命だ、とノエに語る。高い戦闘力と頑丈な体を持つノエを見込んだヴァニタスは、ノエに力を貸せと言い、2人は共に長い旅を始めることになった。
「オレはオレの選んだ方法でお前たちの意志に関係なく必ず吸血鬼を救ってやる」。ヴァニタスの真の目的は、そしてノエは旅路の果てにいったい何を見つけるのか…。
ほぼ1年越しのアンコール上演となった今作。積み重ねてきた再演への思いと、それぞれが別の現場で得てきた経験値、深め育ててきた「ヴァニタスの手記」原作とキャラクターへの解釈を、カンパニー一同が全力でぶつける公演となった。
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
植田圭輔は、一見軽薄で尊大、しかし重い過去を想像させるヴァニタスを熱演。終盤に向けて少しずつキャラクターの深部を観客に伝え、カンパニーを引っ張りながら物語の世界を深めて表現するさまは見事。昨年の公演よりも、さらにナチュラルにのびのびとヴァニタスを演じることを楽しんでいるように見える。

(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
もう1人の主人公・ノエを演じる菊池修司は、くもりのない真っ直ぐ純真な熱さを持った芝居がノエのキャラクターにマッチ。ヴァニタスを振り回し、振り回されながら謎に足を踏み入れ、自らの過去に向き合い成長していくさまを体当たりで表現している。1年越しにノエを演じられ、本作の舞台に立てる喜びが伝わってくるようだ。また、丘山晴己演じるローランが登場する後半以降は、緊迫感と力を抜いて笑える箇所の緩急がより鋭くなっていく。

(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
舞台美術で特に強い印象を残すのは、ライトに照らされて紅く蒼く浮かぶ月。彼らを見下ろすかのように常に存在している。パリの街並みを模したセットは、時に飛空船の内部となり、大聖堂の地下にもなり、役者の芝居と照明でまったく違う風景に見えるように作られている。ジャンヌ(七木奏音)の紅いガントレット、ローランのデュランダルといった大ぶりな武器も見栄えがする。
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
「ヴァニタスの書」の力の発動時には、映像と照明を併用したアニメーション的な表現が舞台上に再現される。一方、黒い影などの禍々(まがまが)しく襲い来るものは、女性ダンサーたちが高い身体能力で表現。人ならぬ動きで、怪しさ・恐怖・重苦しさを観客に感じさせる芝居を見せる。手段としてデジタルとアナログが融合しているが、受ける印象としては作品の世界観そのままに、アナログのマンパワーの力が強い。

(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
(c)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (c)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会
男性アンサンブル・ダンサーたちも、吸血鬼(ヴァンピール)、狩人(シャスール)の隊員など八面六臂の活躍だ。アンサンブルメンバーがこの「ヴァニタスの手記」の世界観をがっちりと作りこんでいるからこそ、メインキャストたちがそれぞれの役を演じることに集中し、まっとうできている。

脚本は、原作・アニメをベースに、大事なエピソードを積み重ねてヴァニタスとノエの関係性に変化を与え、2人の間に絆を生み出している。特に冒頭とラスト近くのシーンでのノエのセリフは、同じことを口にしていてもヴァニタスへの気持ちの変化が現れていて胸を底からわしづかみにされる気持ちになるだろう。
原作のコミックスファンはもちろん、アニメから入ったファンにとっても嬉しい演出も盛り込まれている。もちろん、原作を知らずに舞台から入っても大丈夫だ。所々に「過去に何があったのだろう…」と想像をかきたてられる描写が差し込まれているので、観劇後は舞台で描かれている先の展開が気になること間違いなしだ。
上演時間は、途中休憩15分を含んで約2時間30分。-Encore-(アンコール)でありながら、昨年の公演日の続きでもあり、菊池が戻っての初演でもある本公演。ノエ役に高本学を迎えて昨年上演できたあの1公演があったからこそ、この物語をさらに多くの人に届けたいというカンパニーの気持ちが強まったのではないかと感じる。
ヴァニタスとノエの関係性の変化、そして旅の始まりと最初のピリオドを劇場で確かめ、見届けてほしい。公演は3月12日(日)まで。千穐楽公演は配信も予定。また、Blu-ray&DVDの発売も決定している。

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