【ライヴレポート】
『逆三角関係』
2023年3月17日 at 新宿BLAZE
9mm Parabellum Bulletが結成19周年の記念日に
HEREと
folcaを迎えて3マンイベント『逆三角関係』を開催した。長きにわたりサポートギタリストの立場で9mmを支えてきた武田将幸と爲川裕也がそれぞれ所属するバンド、HEREとfolcaも2023年で結成15周年とあって、縁の深い3組のアニバーサリーイヤーをまとめて祝う、一夜限りのプレミアムなライヴだ。
■ 9mm Parabellum Bullet ■
2023年3月17日 at 新宿BLAZE/9mm Parabellum Bullet
先陣を切ったのは、9mm Parabellum Bullet。菅原卓郎(Vo&Gu)、滝 善充(Gu)、中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)と、メンバー4人編成で登場というのも嬉しい。まさかのトップバッターでオーディエンスをどよめかせ、ステージが赤い照明で染まる中、「Discommunication」から新宿BLAZE内の熱気を急激に高めていく。いきなりフルスロットルで攻めまくったり、菅原がHEREの「ギラギラBODY&SOUL」を唐突に踊ってみせたり。硬直した価値観を攪乱するこの痛快なパフォーマンスが9mmらしすぎる。
ライティングが青に転じて、お次は「All We Need Is Summer Day」。まさしくマスク着用の上で声出し解禁となった現在のような状況を見越して、あえて盛大なコーラスパートを入れたこの曲が、今ようやく全員で思う存分シンガロングできている。その歓喜の光景には感慨深さしかなかった。最高のリアクションを受け、4人もめちゃくちゃ楽しそう。
“9mm Parabellum Bulletの結成記念日です。ついに19歳になりました。日本のルールで言うと成人できたわけで、やっと打ち上げで酒が飲めます(笑)”と菅原が話したあとは、“新しい季節が来たので、みんなのことをちょっとでも応援したい”と「名もなきヒーロー」へ。
背中を押すメッセージに続いた「Termination」では、再びシンガロングがグッと映えて、滝がギターソロをすこぶる元気に弾き倒すシーンも印象的だった。彼が左腕の不調に見舞われた時期を思い返すと、9mmがこうして健在なのはHEREとfolcaの力がとても大きいのだと改めて実感したりもする。
“今日の3バンドが逆三角関係ということで、僕らもちょっと意味が分かっていないんですが(笑)。その答えはHEREやfolcaが見つけてくれると思います!”と菅原が無茶振りするなど楽しい雰囲気のまま、終始まったく手を緩めず、ファンにはお馴染みの“激つなぎ”でも沸かせながら、メンバーがたびたび“BODY&SOUL”ダンスをシュールに挟みながら、スピード&ラウドチューンを連打していった9mm。ラストは最速BPMの「Punishment」で圧倒的な爆発力とディストーションを放出し、嵐のようにステージを去った。
- 01. Discommunication
- 02. All We Need Is Summer Day
- 03. Answer And Answer
- 04. 名もなきヒーロー
- 05. Termination
- 06. 新しい光
- 07. One More Time
- 08. Black Market Blues
- 09. Punishment
■ HERE ■
2023年3月17日 at 新宿BLAZE/HERE
2番手は歴代の曲名をプリントした新衣装(赤のセットアップ)を纏って現れたHERE。掴みの「はっきよい」から尾形回帰(Vo)による煽動で“イェイ イェイ!!”のコール&レスポンスがあふれると、武田将幸(Gu)と三橋隼人(Gu)のツインギターもホットに唸りを上げ、勢いそのままに9mmのメンバーが推していた「ギラギラBODY&SOUL」へなだれ込む。きらめくミラーボールの下、ラジオ体操のような振付を会場の全員で踊り狂うさまは滑稽で最高。ハイテンションな演奏を支える壱(Ba)と角谷正史(Dr/→SCHOOL←)のサポートも盤石だ。
さらに、folcaの「シリアスミステリアス」と9mmの「Cold Edge」をメドレーで繋ぐ愛情たっぷりのカバーも奏でられると、オーディエンスは拳を突き上げて大喜び。シンガロングが吹き荒れた「己 STAND UP」では、三橋が“爲川裕也にも滝 善充にも負けず劣らないギターソロを!”とけしかけた尾形にジャイアントスイングをされながら弾いてのけるという離れ業も炸裂する。
“家族みたいな3バンドの周年が被るというシンクロは必然なんだと思います。めでたいねー!”と喜ぶ尾形は、続いて“HEREのアルバム制作に協力してくれませんか?”と呼びかけ、新曲「BANG-BANG-ZAI!!」の音源に使う三三七拍子の高速ハンドクラップをその場でライヴレコーディング。映像用に本気でバンザイする画もねだるなど、観客とのコミュニケーションによって一体感を倍増させていく。初披露にして凄まじい盛り上がりを見せた「BANG-BANG-ZAI!!」は今後リリース予定の7thアルバムに収められるので、完成を楽しみにしておこう。
その後も、彼らの情熱に満ちた生きざまが滲む「詩になる」、先程の9mmを彷彿させるほどの大爆発となった「死ぬくらい大好き愛してるバカみたい」などを通して、唯一無二のライヴバンドぶりを改めて証明したHERE。場内をこれでもかというほどに温め、理想的なムードでfolcaにバトンを繋いだ。
- 01. はっきよい
- 02. ギラギラBODY&SOUL
- 03. 「シリアスミステリアス」(folca)〜「Cold Edge」(9mm Parabellum Bullet)
- 04. 己 STAND UP
- 05. BANG-BANG-ZAI!!
- 06. LET'S GO CRAZY
- 07. 詩になる
- 08. 死ぬくらい大好き愛してるバカみたい
■ folca ■
2023年3月17日 at 新宿BLAZE/folca
こうなれば、トリを任されたfolcaも負けていられない。オープニングの「WANNA WANNA Be」から持ち前の艶っぽくウェットなロックを気合十分に轟かせ、エッジーなギターサウンドでタフに駆け抜ける「デザート」といった最新EP『uneksia』の収録曲も快調に披露。エモーショナルな歌声でバンドを高ぶらせる山下英将(Vo&Gu)、テクニカルかつアグレッシブなフレーズを次々に繰り出す爲川裕也(Gu)、そのエネルギーを活かしてタイトで攻めたビートを刻む藤田ケンジ(Ba)と、3人のオルタナティブな個性が早々に輝きを放ち、彼らをサポートするイトゥーナオヤ(Dr)のどっしりと安定感のあるプレイも素晴らしい。
時にステージを縦横無尽に奔走しながら、あるいは頭を激しく振りながら、ジャンプをしながら躍動するメンバーの姿にも胸が高鳴り、9mmやHEREと同様、folcaもまたライヴで聴き手を強く惹きつけられるバンドだということが序盤にして再確認できた。中盤では、ここまでブチアゲな選曲オンリーだった本イベントにおいて初となるミディアム曲「One Light Stand」を、人の繋がりを綴った温かい歌とともにしっとり届けるなど、空気をやさしく潤すようなアプローチも。
“19歳の誕生日に企画したイベントで自分たちがトップに出て後を託すって、本当にどうかしてますよね(笑)。どんな器やねん!”と9mmに感謝を伝える山下。加えて、9mmのサポートギターを爲川が務めるようになったのはHEREの武田が勧めてくれたおかげだと明かす。
そんな流れから、HEREの「己 STAND UP」と9mmの「Punishment」を絶妙にドッキングさせた超カオスなカバーでお返しするfolca。途中にまたもや“BODY&SOUL”ダンスを入れた「シリアスミステリアス」まで飛び出し、オーディエンスをどんどん興奮の坩堝に巻き込んでいったfolca。最後は“この3バンドが長く続けてこられたのはみなさんのおかげです。三角関係は奪い合う関係だけど、『逆三角関係』は与え合う関係なんだと思いました”と山下が美しくまとめ、ポジティブな想いを湛えた万感の「vision」で締め括った。
アンコールはこの日のオールキャストが再登場。folcaが「Passage」をパワフルに演奏する中で、菅原と尾形が下手から上手の柱までガムテープを張り巡らせたり、新宿BLAZEに忘れ物で溜まっていた大量のビニール傘をオブジェとしてステージに持ち込んだりと、恒例のインビシブルマンズデスベッド的な芸でハチャメチャに盛り上げまくって大団円。
- 01. WANNA WANNA Be
- 02. デザート
- 03. suspect
- 04. umber
- 05. One Light Stand
- 06. カバー(「己 STAND UP」(HERE)&「Punishment」(9mm Parabellum Bullet))
- 07. シリアスミステリアス
- 08. fractus
- 09. vision
- <ENCORE>
- Passage
“今日は9mmのイベントじゃなくて、みんなの周年を祝う3マンライヴだから。こういうことをさせてもらいました!”と笑顔を見せた菅原。そのめでたい記念日に、全バンドの盟友・稲村太佑(アルカラ)が19本の缶ビールを出演者へ差し入れていた事実も含め、何かと粋な計らいだらけの、まさに与え合う関係が随所で感じられた一夜だった。
なお、folcaは新作EP『uneksia』のレコ発ツアーファイナルとして、5月12日(金)に東京・渋谷Spotify O-Crestでなんとフリー(入場無料!)ワンマンライヴを開催するとのことなので、こちらもぜひ足を運んでみてほしい。
2023年3月17日 at 新宿BLAZE
撮影:SHIN-1/取材:田山雄士
9mm Parabellum Bullet プロフィール
キューミリ パラベラム バレット:2004年3月横浜にて結成。2枚のミニアルバムをインディーズレーベルからリリースし、07年にDebut Disc「Discommunication e.p.」でメジャーデビュー。09年9月9日に初の日本武道館公演を開催し、結成10周年を迎えた14年には日本武道館2デイズ公演を成功させた。16年に自主レーベル”Sazanga Records”を立ち上げ、メジャーデビュー10周年を迎えた17年5月に7thアルバム『BABEL』リリース。18年には期間限定無料ダウンロードというバンド初の試みを行なった「キャリーオン」(映画『ニート・ニート・ニート』主題歌)と、9月に開催した『カオスの百年TOUR』会場限定シングルとして「21g/カルマの花環」を発表。バンド結成15thアニバーサリーイヤーとなった19年には、4月に東京・大阪にて野音フリーライヴ開催し、8枚目となるオリジナルアルバム『DEEP BLUE』をリリース。そして、23年に結成19周年イヤーを迎え、『9mm Parabellum Bullet 19th Anniversary』を開催。1月から12月までの9日、もしくは19日と“9”がつく日には、アコースティックライヴの合わせると15公演を実施し、9月19日には9年振りとなる日本武道館公演も開催。9mm Parabellum Bullet オフィシャルHP
ヒア:2008年活動開始。ハイテンションという名の“熱中”を追求するロックバンド。18年5月に結成10周年を記念して『ハイテンションフェス』を初開催し、私立恵比寿中学、9mm Parabellum Bullet、アルカラなど親交のあるアーティストが集結。同年9月にはZepp DiverCity(TOKYO)でバンド史上最大規模のワンマンライヴを敢行。20年12月に6thアルバム『風に吹かれてる場合じゃない』を発表し、21年11月にはCD+DVD盤の売上げを『Music Cross Aid ライヴエンタメ従事者支援基金』に寄付するプロジェクト『POWER TO JAPAN 2021』を立ち上げた。HERE オフィシャルHP