寺岡呼人『Golden Circle Special い
つかの僕らの夢、星になれたかな』千
秋楽レポート、桜井和寿、はっとり、
長屋晴子と共に輝かせた奇跡の星

『Golden Circle Special いつかの僕らの夢、星になれたかな』2023.3.28(TUE)大阪・大阪城ホール
3月28日(火)、大阪城ホールで『Golden Circle Special いつかの僕らの夢、星になれたかな』が開催された。2001年からスタートした、寺岡呼人のライフワークとも言える音楽イベント『Golden Circle』は、世代を超えたさまざまなミュージシャンが参加することが特徴だ。今回の開催は、盟友であるMr.Children桜井和寿と共作した「星になれたら」(『Kind of Love』収録)の発表から30年を記念したもので、2016年に行われた『Golden Circle Vol.20』以来、『Golden Circle』名義のイベントはおよそ7年ぶりの開催となる。
2月21日(火)の日本武道館に続いて行われた本公演は、2公演目にして千秋楽。ゲストには桜井和寿と、2020年代の音楽シーンを牽引する若手代表格のマカロニえんぴつ・はっとりと緑黄色社会・長屋晴子が登場。SPICEでは東京公演の模様もレポートしたが、大阪公演を控えていたため、ネタバレなしの内容となっていた。今回のレポートでは、余すところなくその模様をお届けしよう。
会場に入ると巨大なステージセットが視界に飛び込んでくる。2月の武道館と同様にステージの360度、観客が着席できるスタイルで、花道が用意されスタンド席からも出演者が間近に感じられるようになっていた。頭上に組まれたイベントロゴの星と同じ形状のトラスが照明装置とオブジェの役割を担う。メンバーが立つステージのセンターにも、きらりと星が光っていた。
超満員の客席からは高揚感が漂い、開演の時を今か今かと待ちわびる。定刻になり客電が落ちると、声出し解禁とあって、ものすごい歓声が湧き上がった。会場に設置されたビジョンにオープニング映像が映し出される。オーケストラアレンジの「星になれたら」に乗せて、キービジュアルにちなんだ主役の4人の映像が流れてゆく。アップになった寺岡が伸ばした拳を握ると画面いっぱいに光が溢れ、実際に照明が光り輝くという演出が期待感をマックスに高める。
バンドメンバーの芳賀義彦(Gt)、林由恭(Ba)、ミトカツユキ(Key)、松本圭司(Key)、林久悦(Dr)に続いて、寺岡、桜井、はっとり、長屋が登場すると、客席は待ってましたとばかりに大歓声をあげて総立ちに。「星になれたら」のイントロが鳴り響くと同時に、ジャンプ&クラップが自然発生。会場の熱がぐん! と上昇した。
寺岡呼人
桜井が嬉しそうに「大阪ー!」と叫び、「星になれたら」と「ミュージック」を披露。それぞれ名の知れたボーカリストが並んで歌声を響かせる様子は、とにかく圧巻。寺岡と桜井はリラックスした表情でアコースティックギターをかき鳴らす。はっとりは後ろで手を組み、長屋は手を伸ばしながら、堂々とした佇まいで歌唱していた。演奏を支えるバンドメンバーも実力者揃いで、ハイクオリティなアンサンブルを繰り出してゆく。序盤からあたたかい空気が会場を包み込む。『Golden Circle』には、初見の人もウェルカムで迎えてくれる雰囲気がある。寺岡と彼の仲間が長年培ってきた賜物だと言えよう。実に包容力のあるイベントだ。
そして寺岡が「大阪! 『Golden Circle』、2日目にして千秋楽の夜になります。僕たちも1ヶ月ぶりに4人揃うんですけども、今日を最後にしばらく会えないと思うと、後悔がないぐらい盛り上がっていきたいと思いますので、皆さんもめちゃくちゃ盛り上がって帰ってください!」と挨拶すると、言わずもがな熱狂の歓声が湧き上がる。
長屋晴子、寺岡呼人 、桜井和寿、はっとり
観客の歓声は間違いなくこの日のハイライトのひとつだった。徐々に声出しが緩和されたとはいえ、3月13日にマスク着用が任意となり、声出し解禁のムードが世間的にも高まってきた。約1万人の歓声を生で浴びる体験は、やはり形容しがたい素晴らしさがある。曲間に出演者の名前を呼んだり大阪特有のユニークな「ガヤ」も続々と飛び出し、本当にライブが戻ってきたという実感があった。
はっとりと長屋を紹介したのち、一旦掃けた2人を見送った寺岡と桜井。寺岡に「我が親友を紹介したいと思います。Mr.Children、桜井和寿!」と振られた桜井は「さすが大阪! 久しぶりの大阪ですけど、これが大阪ですというのを味わってます! これが大阪です! 最後まで楽しんでってね!」と笑顔で挨拶。そして「親友です。寺岡呼人!」とお互いを紹介し合った。

桜井和寿

2月に55歳の誕生日を迎えた寺岡。「5年前に作った「ゴジュウレンジャー」を「ゴジュウゴ」レンジャーということで、親友と一緒にぶちかましたいと思います!」と『秘密戦隊☆ゴジュウゴレンジャー』を演奏。寺岡はアコギからベースに持ち替え、桜井はハンドマイクでステージを軽やかに動きながら、歌詞の<ゴジュウ>を<ゴジュウゴ>に変えてロックに歌う。<負けることを覚えた 心優しき戦士達>。年を重ねてこんなにもカッコ良く、晴れやかなヒーローがいるなら大丈夫と思わせてくれる素敵な楽曲だ。次世代に向けた想いも伝わってくる。
寺岡呼人
ここからはそれぞれの持ち曲を披露するセクション。まずは寺岡がソロ曲をプレイする。「2023年はソロ30周年になりまして、気づけばこんなに長くやることができました」と、最新曲の「馴染みの店」を弾き語り。柔らかい歌声とノスタルジックな雰囲気が会場を満たしてゆく。続く「スマイル」ではギターを置いて花道へ。ゆっくりと歩きながら、観客と目と目を合わせて丁寧に歌い上げる。想いに応えた客席は<ワハハノハ>とシンガロング。距離の近さも相まって、大らかでスペシャルな空気が作り出されていった。
はっとり
続いてははっとりの出番。MCでは、オープニング映像撮影時の初対面の思い出を回顧しながら「先輩2人が緊張をほぐしてくださって。初とはいえないゆるい会話してました」(はっとり)。「その時もだし、その後曲を決めるのに4人でご飯食べに行きましたよね。最後、結構酔っ払ってたよね」(寺岡)。「そうなんですよ〜。何か失礼なこと言ってました?」(はっとり)。「めちゃくちゃ失礼だった」(寺岡)。「うわ〜笑」(はっとり)と、仲の良さが伝わるトークを繰り広げ、寺岡は「イベントに積極的に参加してくれる姿勢がすごく嬉しかったです」とはっとりを賞賛。そしてマカロニえんぴつの「なんでもないよ、」をパワフルに披露した。寺岡はコーラスにも参加しながら、サポートに徹してゲストボーカルを立てる。
寺岡呼人、はっとり
マカロニえんぴつの「ヤングアダルト」は桜井が一緒に演奏したいとリクエストしたそうで、こっそりステージに上がる桜井。しかし、控えめにしていても漏れ出るオーラをはっとりに突っ込まれ笑いを誘う。寺岡のベースと桜井のギター、さらにバンドメンバーという貴重な編成に囲まれて、充実感を滲ませて歌うはっとりの姿が印象的だった。
長屋晴子
続いて長屋が呼び込まれ、演奏する緑黄色社会の「想い人」の話へ。この曲も桜井のリクエストで、4人で食事をした際にBluetoothスピーカーを持ち込んだ桜井がウキウキで「ここのメロディはどうやって作ったの?」と長屋に質問したという。キャリアを重ねた今もなお止まぬ、桜井の好奇心を感じさせるエピソードだ。「想い人」は緑黄色社会のギター・小林壱誓による作曲。長屋は「(小林は)ミスチルが大好きで、実はミスチルをイメージして作った曲なんだよねと言ってたんですよ。その曲を桜井さんが良い曲だよねと言ってくれたんです。私的には通じるものがあった」と喜びをあらわに。どこまでも透明感をもって響き渡る長屋の歌声は本当にパワフルだ。2番のAメロでは桜井が主旋律を歌い、すぐさまコーラスに移る。その模様も見事だった。後半にいくにつれ増す多幸感と垣間見えるチームワークも素晴らしかった。
寺岡呼人、長屋晴子、桜井和寿
続けて緑黄色社会の代表曲「Mela!」を疾走感たっぷりに披露。長屋は「『Golden Circle』の活動をバンドにも還元できてすごく良かったです」と振り返り、寺岡も「会った数はまだ少ないけど、チーム感ができてきた」と手応えを口にしていた。
長屋晴子
ここからは、ゲストの3人が選んだ曲を演奏するカバーセクション。長屋はKiroroの「Best Friend」をチョイス。「小中の時に歌った」と思い出を話し、じわりと優しい歌声で会場を魅了した。はっとりチョイスの楽曲はH2Oの「想い出がいっぱい」。「カラオケでよく歌っていた」(はっとり)と、ここでも軽妙なトークを繰り広げつつ、はっとり節をきかせて丁寧に歌い上げる。卒業シーズンならではの2曲には、懐かしさがこみ上げた人も多いのではないだろうか。
はっとり
そして最も「まさか」と思わされたのは、桜井チョイスのBABYMETALの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」だろう。白のVネックTにグリーンのシャツという衣装にチェンジして登場した桜井は、「我々の年代に歩み寄ってくれた選曲でしたね」と2人に賛辞を送り、「僕も僕なりに歩み寄ったかどうかはわかりませんけども、BABYMETALの曲をやります。子供同士のイジメもダメですけど、社会人になってからの大人のイジメもダメです。世界的に起こってる国際的なイジメもダメです」と力強く想いを述べる。
寺岡呼人
ひとたび演奏が始まると、目が覚めるようなゴリゴリのヘヴィメタルが爆音で奏でられる。桜井のシャウトが炸裂し、ものすごい轟音と真っ赤に染める照明演出がステージをド派手に彩る。突如浴びたヘヴィメタの洗礼に戸惑いつつも、高い熱量で<飛べ! 飛べ! 飛べ! 飛べ!>と煽られると客席もジャンプ! さすがの牽引力だ。豪速球で駆け抜けると、真剣な眼差しで魂を込めて歌っていた桜井がホッとしたように笑顔に戻り、カバーセクションは終了した。
寺岡呼人、桜井和寿
寺岡はWBCの話題に触れ、「メジャーリーガーもそうなんですけど、往年のスター選手が年を取って、監督やコーチ、解説者になったり、色んな人たちが野球を支えてる姿も垣間見れて。僕たち音楽も、色んな人と音を出すことで何か継承できるものがあるんじゃないかなと前から思っていたんですけど、それを数年前に2人で曲にしました」と寺岡と桜井が詞を共作した「バトン」を披露。2人で交互に歌い紡ぐ様は、この楽曲の本分を確実に体現していて、その想いはしっかりと伝わり、客席は手を挙げて応えていた。
そしてMr.Childrenの「Tomorrow never knows」と「innocent world」が続けて披露される。これにはもう会場全体が大興奮。イントロが流れた時の鳥肌は今も忘れられない。文字通りの大合唱が生まれ会場をひとつにする。誰もが知る名曲が繋がりや居場所を感じさせてくれるのは、国民的ミュージシャンの偉大なところ。胸がぎゅっとなる瞬間が何度も訪れた。
いよいよ本編も終了。寺岡は「本当に今日はありがとうございました! 外見たら桜が満開でね、今日の日を祝ってくれてるようだと勝手に理解しております」と述べて、はっとりと長屋を呼び込む。「おかしくなっちゃいそう。最高すぎないですか。嫌なこと全部忘れられそうな1日ですね。素敵です」(はっとり)、「贅沢だね!」(長屋)と、裏でも盛り上がっていたと口を揃えた。
『Golden Circle Special いつかの僕らの夢、星になれたかな』
本編最後に届けられたのは、寺岡呼人&Golden Circle of Friends名義の「フォーエバーヤング」。「大人になって、社会人になって、音楽をやって、友情ってどうやって続くんだろうって歌にしたかったんですよ。音楽で繋がる友情って永遠なのかなって気持ちで作った曲です。今日お2人を招いて、また友達が2人できたような日です」と寺岡が述べると、桜井は愛おしそうに目を細めて微笑み、はっとりは感慨深そうに、長屋は胸に手を当てて喜んでいた。あたたかい空気の中で歌われた4人のハーモニー。寺岡がラストのワンフレーズを大切に響かせた後の<ラララ>では、ミラーボールが幾筋もの光を放ち、オレンジ色の優しいライトでGolden Circleの星が輝いた。希望、未来、友情、夢、約束、継承。全てを照らすような素晴らしい演出に、ただただ優しい時間が満ちる。ステージ上のメンバーはもとより、その場にいた全員が笑顔になった瞬間だった。
『Golden Circle Special いつかの僕らの夢、星になれたかな』
贈られた大きな拍手はすぐさまアンコールに変化。しばらくして、寺岡と桜井がイベントTシャツを着てステージに現れる。はっとりも意気揚々とペッパーミルパフォーマンスで登場したのだが、実は出番はもう少し後。気付いた長屋が「ここじゃないの私たち」と優しく連れ戻していた。この様子には「良いの見れたよ〜!」と先輩2人も笑顔でほっこり。
寺岡は「僕は1986年に広島から出てきて、音楽の道なんて夢のまた夢みたいな学生でした」と、自身の音楽キャリアを語り始める。「上手いベーシストがいっぱいいて、俺なんて生き残れないと思ってたんです。でも、こうやって35年も(続けてこれた)」ソロツアーで「リチャードギアに似たMr.Childrenのボーカルに電話して、一緒に旅に出ない?と話したところから僕らの友情が始まって。そこから30年、この戦友と同じ舞台に立てるのが本当に幸せです。ありがとうございます」と感謝を述べる。
それを受けた桜井は「僕からするとまだアマチュアだった21歳とか22歳の頃、寺岡呼人というあのJUN SKY WALKER(S)のベーシストが声をかけてくれて、ツアーに連れていってくれて。Mr.Childrenは当時100人も入らないようなバンドだったんですけど、一緒にツアーを回って「星になれたら」という曲を一緒に作って、ライブで演奏したらめっちゃ盛り上がって、一夜にしてスターになったような気持ちになって嬉しくて。そのライブを見てくれた方が口づてに良いと言ってくれて。音楽ライターさんが僕らに興味を持って雑誌に載せてくれて。呼人くんとの出会いがあったから今の自分があると、そしてプロとしての自分があると思ってます。僕はもう決めてることがあって。寺岡呼人からオファーを受けたら絶対断らない。こうやってはっとりくんと長屋さんとの出会いを、このバンドとの出会いをくれて。その度に僕も成長できるので、感謝しています。今後ともよろしくお願いします」と語ると、寺岡は嬉しそうに破顔した。
もう一度寺岡と桜井の2人で「星になれたら」を歌い始める。この日の始まりの「星になれたら」とはまた違う眼差しで受け止める客席。サビでは言わずもがな手が左右に振られる。2番では寺岡がギターを置いて、桜井と肩を組みながら花道へ。なんと贅沢な時間だろう。1回目と同じように<虹になれたらいいな>で、電球色の照明がレインボーに変わる演出があり、本当に綺麗で素晴らしかった。
再びはっとりと長屋を呼び込み、最後に贈られたのはMr.Childrenの「GIFT」。桜井、長屋、はっとり、寺岡と順に感情を込めて歌を紡いでゆく。出演者同士、ステージと客席がお互いにギフトを与え合った瞬間で、最後の一音まで美しかった。最後の最後、桜井が高ぶるように叫んだ姿もエモーショナルだった。
「はっとりくん楽器持ってて花道行けなかったから、最後に皆で花道行きましょうか」との寺岡の計らいで、4人で花道を一周。その間ずっと惜しみない拍手とあたたかな歓声が降り注いでいた。はっとりの投げキッスを真似する桜井の姿もキュートだ。そして、4人で肩を組んで深々とお辞儀をし、先にはっとりと長屋が名残惜しそうにステージを去る。「最高の夜をありがとうございました! もう一度僕から親友を紹介させてください。Mr.Children、桜井和寿!」「そして誰より、何よりこの人! 寺岡呼人!」と、お互いを紹介し、がっちりとハグ。会場からは割れんばかりの拍手が贈られた。満足そうな表情を浮かべ、最高のベストフレンドの2人は共にステージを後にした。
長屋晴子、寺岡呼人 、桜井和寿、はっとり
たっぷりのMCと全17曲(1曲 x 2回)で構成された充実の2時間半は、あっという間に過ぎ去った。「いつかの僕らの夢、星になれたかな」という問いの答えは、誰もが納得のイエスだろう。寺岡がイベントサイトのコメントで「星=夢」と表現していたが、はっとりと長屋という若手ミュージシャンの「星」がい、今日の日の経験がまた世代を超えて「星」として引き継がれたことも、紛れもない事実だろうと思う。それはきっとオーディエンスにとっても同じこと。それぞれの胸の「星」を輝かせ、奇跡の「星」を抱かせてくれたに違いない。
『Golden Circle Special いつかの僕らの夢、星になれたかな』はこれにて終幕。まさに特別で、忘れがたい幸せな2公演だった。まだまだ続くであろう彼らの旅路を、これからも見守っていたい。
寺岡呼人、桜井和寿
取材・文=久保田瑛理 撮影=Hoshina Ogawa、Yusuke Hayashi_Ri

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