「マジで愛してるわ! ライブハウス
を守ってくれてありがとう!」Makiと
サバシスターが魅せた熱狂と臨界点、
『Maki Tour 2023「七対子」』ファイ
ナルレポート

『Maki Tour 2023「七対子」』2023.3.24(FRI)大阪・心斎橋BRONZE
3月24日(金)、3ピースバンド・Maki主催のツーマンツアー『Maki Tour 2023「七対子」』が、大阪・心斎橋BRONZEでファイナルを迎えた。クジラ夜の街鉄風東京、Jam Fuzz Kid、アルステイク、さよならユニバース(Blue Mash出演キャンセル)、UNFAIR RULEを迎え、2月の新潟から全国7箇所を回ってきた本ツアーファイナルの対バン相手は、2022年に結成したばかりの3ピースバンド・サバシスター。声出し解禁とともに戻ってきたライブハウスの熱狂は、とんでもなく美しい景色を見せてくれた。
まだ少しだけ寒さの残っていた3月。アメ村の賑やかな人波を抜けて心斎橋BRONZEに足を踏み入れると、既にすさまじい熱気が充満していた。この日はチケットソールドアウトで、フロアはぎっちりと人が詰まっており、会話やドリンクを楽しみながら開演の時を待っていた。マスク着用ながらも声出しがOKとなり、しかもMakiとサバシスターという組み合わせ。独特の高揚感がようやく戻りつつあるライブハウスのあるべき姿を予感させて、何だかドキドキした。
サバシスター
サバシスター (ID:0002)
先攻はサバシスター 。ビッケブランカの「Ca Va?」をSEに、なち(Vo.Gt)、るみなす(Gt.Cho)、ごうけ(Dr.Cho)、サポートのサトウコウヘイ(Ba)がステージに登場。盛大な拍手で迎えられ、軽快に「ナイスなガール」と「ヘイまま! プリーズコールミー」をドロップ。サビでは早くも手が挙がり、ごうけが嬉しそうに笑顔を見せる。MCではなちが「ツアーファイナルの対バンに選んでいただいて、本当に光栄ですというか恐縮ですという感じなんですけども、私たちなりに精一杯やりたいと思いますので、よろしくお願いします!」と挨拶し、ポップでキャッチーな「アイリー」を披露。フロアからはクラップが起こり、楽しい空気で満たされた。
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2度目のMCでは、彼女らも3月にリリースされた1st EP「アテンション!!」のツアー中で、大阪滞在3日目だと話す。BRONZEは「関西でも出たかったハコのひとつ」と喜びを述べて、次の楽曲「しげちゃん」の主人公であり、ごうけの家族&サバシスターの仲間のプレーリードッグのぬいぐるみ「しげっち」を紹介。ミドルテンポながら力強いリズム隊とギターリフ、張りのある歌声をじっくりと聞かせてゆく。さらにスケボーを盗まれた時の「スケボー泥棒!」、メルカリで狙っていたジャージを横取りされた時の「ジャージ」をロックに響かせる。誰もが共感できる等身大の歌詞とリズム感の良いメロディーは、サバシスターの特徴であり魅力だ。
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コロナ禍で結成されたサバシスターは人が飛び交うライブに参戦したことはあるものの、ステージから見たことはまだないと話し、「プラスマイナス全部受け入れて、また音楽を聴きにここに集まって、皆さんに会えたらとても嬉しいです!」と「タイムセール逃してくれ」でロックサウンドを加速。爽快感のあるアンサンブルをダイナミックに響かせ「最初から最後まで手挙げてくれたら嬉しいです!」と30秒の感謝ソング「サバカン」を豪速球でプレイ。両手でハートを作り観客に感謝を伝えたあと、そのままの勢いでラストチューン「サバシスター ’ s THEME」まで一気に駆け抜けた。キャッチーさの中にも骨太感があり、観客を牽引する力もある。改めて良い空気感を纏ったバンドだと感じさせられた。
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Maki
Maki (ID:0001)
サバシスターによって引き上げられたフロアの熱気は、Makiの登場でさらに高まる。サウンドチェックではDREAMS COME TRUEの「大阪LOVER」と奥田民生の「さすらい」をメドレーアレンジで披露すると、言わずもがな大盛り上がり。高ぶった会場の照明が暗転、MONKEY MAJIKの「Around The World」が流れると、期待感はMAXに。
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「RINNE」のイントロが聞こえた瞬間、悲鳴に近い歓声が湧き起こり、思わず鳥肌が立った。山本響(Vo.Ba)の優しい弾き語りが響き、暗闇の中で続々と拳が天に突き上げられる。「from Party’ z Maki、始めます」の言葉を合図に、まっち(Dr)の爆裂ドラムが叩き込まれるとフロアが大きく揺らめき、早速ダイバーが続出! そんな様子を見て嬉しそうに笑顔を見せた山本は「遊び方は自由! だけど最初に歌ったようにさ、誰かを傷つけて笑うのはやめようぜ。助け合って楽しもうぜ!」と叫び、「フタリ」を投下。佳大(Gt)のギタープレイが炸裂し、どんどんステージの方に引き込まれる。山本の歌声を引き立てる2人のコーラスも見事だ。
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続く「秋、香る」では山本のカリスマ性が爆発。「風が透き通ってゆく。時間を少し進めていく。今は春、次は夏。秋の匂いがする」という文学的なセリフに導かれたエッジーなサウンドで、フロアは熱狂の渦に。さらにドラムの緩急が情緒的な「五月雨」とアンセムを連続で披露した。開始10分でお祭り騒ぎだ。
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MCでは山本が「久々のBRONZEですよー!」と笑顔。佳大が今年大阪初ライブだと言うと「明けましておめでとうございます!」と遅ればせながらのご挨拶。「サバシスターもありがとう! ライブ見て俺まで若返ったわ。すげえパワーもらいました」と述べ、「サバシスターがコロナ前のもみくちゃのライブハウスに参戦してて、コロナ禍でバンド組んで、みたいな話してたじゃん。その頃を知ってる人って、今までのライブハウスが戻ってきたんだなと感じると思うんですよ。久々にできるのも嬉しいしさ、いますでに俺も頭の中、アドレナリンがばーばーなのよ。だけど昔みたいに戻ってきたねじゃなくて、昔よりもカッコ良いライブハウスになったねって言わせて帰りましょう!」と魂を込めて語り、「だって俺たちみんな、コロナ禍でただ我慢して我慢しての生活じゃなかったでしょう。どうやったらライブハウスが良くなるか、どうやったらカッコ良くなれるか考えてたと思う。それを全部見せてください」と火を点ける。

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コーラスワークも美しい「火垂る」を経て、フロアがモッシュ&ダイブで波打った「斜陽」では、「もっと見してやりてえ! 久々のBRONZEにもサバシスターにも! こんなに楽しい場所をもっと作りてえと思ってる奴らばっかっしょ! もう1回いくぜ! ついてこいよ!」と再び「斜陽」を歌う。<サバシスターと歌うよ><スケボーを盗まれたり色々あったけど>と、歌詞にサバシスターのことを織り交ぜたスペシャルな構成で大熱狂させ、「ユース」「soon」まで全身全霊で駆け抜ける。
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「めちゃくちゃ楽しいっすわ。手汗すごいもん。弦も服もビチョビチョだし、ビチョ濡れおじさんですわ」と言った山本が、さらにビチョビチョの佳大を見て「ビチョ濡れおじさんだ!(笑)」とほっこりする場面もあり、サトシ&ピカチュウの物語がこの日最終回を迎えるということでポケモン話に移行。夢をくれたポケモンにも感謝を述べつつ、「コロナのタイミングで俺が頑張って作った曲というよりかは、作るべくして作った曲があって。コロナが明けたり、守ってきたライブハウスが成長したタイミングで一緒に歌いたい曲。俺らと歌ってくれませんか」と「日常」をシンガロング。曲中、「戻ってきたんじゃないよ! 俺たちが、俺たちで守ってきたっしょ! BRONZEもParty’ zも、全国のライブハウスとともに心で歌ってきて、今は言葉で歌ってるよ。マジで幸せだよなあ!」と叫ぶMakiのライブハウス愛には、胸が熱くなった。
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山本は「ちょったのしー(笑)」と満足そうな表情を浮かべ、サバシスターのなち(5歳年下)が今年21歳になるという話から「わっかいなー。あの頃の気持ち、俺は全然忘れてないんだけど。あの頃に書いた曲、ちょうどいいからやろうかなと思って」と 「エバーグリーン」に続き、BRONZEのステージが真っ赤に染まった「朝焼け」へ。まっちと佳大も大声で声を張り上げる。そんな熱い想いを抱きしめて「シモツキ」で加速! 観客は心底気持ち良さそうにダイブしたり、拳を掲げて喰らいつく。お互いの居場所のような楽曲だ。さらに「このライブハウスで何回も歌ったよ」と「嫌い」を投下。ライブハウスへの想いが溢れる楽曲を連続で披露すると、観客も大興奮。ストレートに感情をさらけ出してぶつかれるこの場所が、どんなに尊くかけがえのないものかを噛み締める。早口ボーカルも交えて語りかけるように歌う山本に、フロアも全力で向かっていく。どちらも一切の手抜きなし。やがて感情をひとつに大合唱した美しい瞬間が訪れた。
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そして、麻雀用語の名前がつけられた本ツアーの思い出を振り返る。「やったことないバンドや自分よりちょっと若いなと思う人たち、出会えてない人たちに出会うツアーだと思ってます」。6箇所廻ってきて「得るものしかなかったです。俺らずっと先輩が多くてさ、先輩ばかり話したりライブで戦ったりしてて、先輩から盗めるもの全部盗もうとやり続けてたんだけど、俺らの知らないことを知ってるのは後輩も同じで、絶対俺の知らないことばっか知ってんだろうなと感じられるツアーでした。だから今までの曲も最高だけど、また良い曲できちゃうぞという感じです。どこに行ってもみんな楽しそうで、みんなの声を1番間近で聞けるツアーだと思ってたし、感無量です! ありがとう!」と感謝を伝えた。
「このツアーを通して思ったんだけど、楽しい時間が一瞬じゃなかったとしたら、今みたいに1曲1曲、1節1節、一瞬一瞬大事にできてなかったと思う。今も一瞬で過ぎていくからこそ美しい! 一瞬で過ぎていくからこそ今を楽しんで大事にしていこう! これからも共に年をとっていこう! 楽しい時間を愛していこう。今日共にライブできて嬉しかったです!」と熱いMCを経て本編ラストスパートへ。
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「boys&girls」では終始高い熱量でシンガロング。ガンガン加速するエモーショナルに導かれたフロアは、メロディアスな「ストレンジ」を受け止める。激しさの中に温かさが感じられるのはMakiの人柄もあるのだろう。そしてラストの「憧憬へ」。全力のメロディックパンクからの楽器レスで大合唱。1番後ろまで1人残らず全員の手が挙がる。何と美しい光景なのか。
アンコールでは山本が「熱いね、BRONZE。すごいね。Gパンぐっちゃぐちゃ」と笑い、<どうかまたー!>と歌い始める。「平凡の愛し方」だと察したフロアは拳を突き上げ、波のようにうごめく。「一瞬を楽しむ」。その約束を守るように全力で暴れまわる観客を愛おしそうに見つめるまっち。佳大は髪を振り乱してギターソロをバッチリキメる。願いが込められたハーモニーが全身を駆け巡る。山本は「何があってももう大丈夫だな。ずっと、ずっとライブハウスで歌おうな」と力強く語り、最後の1曲を「こころ」で締め括った。「マジで、マジで愛してるわ」の言葉と爆音を合図に、フロアは一瞬にしてもみくちゃ状態に。何と、サバシスターのなちもダイブ! そして高まった佳大もステージから後ろ向きにダイブ! 沸点をとっくに超えていた会場が臨界点を突破した。
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「大好きなライブハウス、愛してるぜ! これからも共に笑って歌って成長していこう!」と呼びかけてステージを後にした。メンバーの名前を呼ぶ声と「ありがとうー!」という声が止まぬ様子から、この日のライブがどれだけ素晴らしかったかを表していた。BGMには松本梨香の「めざせポケモンマスター」が流れ、観客は最高に充実した表情で帰路についていた。
ステージに吊られるバップドロップには「from Party’ z」の文字。Makiは今日も「この日々が俺たちの日常」「ライブハウスを一緒に守ってくれてありがとう」と何度も言ってた。きっとこの先も、ライブハウス出身である誇りと矜持を胸に突き進んでいくだろう。5月にはスリーマンライブ『Maki presents.三色』を東名阪で開催する。対バンだから起こる化学反応はもとより、Makiのライブへの情熱と愛情を感じに行ってほしい。
『Maki Tour 2023「七対子」』 (ID:0004)
取材・文=久保田瑛理 撮影=松本いづみ

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