『リオ』

『リオ』

『リオ』で踊れるロックの先駆者、
デュラン・デュランを再評価せよ!

『リオ』に足りないのはBPMの速さだけ

 この『リオ』はデビューアルバムのヒットを追い風に彼らが82年5月にリリースした2ndアルバム。久しぶりに聴き返してみたら、32年も前の作品にもかかわらず、全然古臭いと感じなかった。それどころか、今っぽい――エレクトロなサウンドとダンスビートを追求するロックバンドが増え、そういうサウンドがトレンドのひとつと言ってもいいほど支持を集めている、現在の日本でこれほどジャストなサウンドはないだろうと思った。
 80年代当時は、表現のひとつとしてヴィジュアルにも力を入れていた上に、いい男揃いだったことや、ちょうど新しいメディアとして大きな力を持ち始めたミュージックビデオを効果的に使っていたことが災いして(「ガールズ・オン・フィルム」のビデオは必見!)、一部のマスコミから“外見ばかりで中身がないバンド”と非難されたが、それを鵜呑みにしたまま、いつまでもその偏見を改めようとしない石頭の洋楽ファンはこの際、どうでもいい。むしろ、今、いわゆる踊れるロックやEDMに夢中になっている若いリスナーに聴いてもらって、どう思うか尋ねてみたい。かつて、チャラいと言われたルックスも今なら普通に受け入れられるんじゃないか。最近のものと比べて、このアルバムに足りないのは、たぶんBPMの速さだけだ。
 「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」「セイヴ・ア・プレイヤー」「リオ」という3曲のヒットシングルを生み、前作を上回る全英2位、全米6位の大ヒットを記録したこのアルバムを足がかりにデュラン・デュランはさらに大きな成功を収めるのだが、ここからはそれと引き換えに彼らが失ってしまう尖った感性がまだまだ聴き取れる。
 また、このバンドに居場所はないと感じたのか、3作目のアルバムを最後にバンドを脱退するアンディ・テイラーのギターも思いの外、ハードだ。その意味ではカルチャー・クラブらとともにニューロマンティック・ブームの旗手と謳われるデュラン・デュランもまだこの頃は、ポストパンク/ニューウェイヴの延長にあるバンドだった。いや、アンディだけじゃない。音数の多いジョン・テイラーのベースも、エキセントリックなフレーズを奏でるニック・ローズのキーボードもアグレッシヴ。それぞれに主張しようとする個性がぶつかりあい、熱気を放っている。そんなところも今っぽい。今こそトリビュートアルバムが作られるべきだ。日本の踊れるロックバンドのみなさん、ぜひ!

著者:山口智男

OKMusic編集部

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