いつかみんなの前でギターを弾いてみ
たかったあの曲
ミュージックソムリエ協会では、「こんな時に聞きたい音楽!」ということで、日常のヒトコマでふっと聞きたい音楽を選曲しました。選曲はすべて、ミュージックソムリエ(http://musicsommelier.jp)によるもの。
今回のテーマは、「いつかみんなの前でギターを弾いてみたかったあの曲」です。超絶テクニックで、みんなをあっと驚かせたり、気になる彼女へのアピールにしたり・・・・妄想が膨らむ曲をセレクトしました。
1.「Purple Haze」/Jimi Hendrix
フェンダー・ストラトキャスターの右利き用を左持ちにして、時には歯で弾いてみたり、ギターを燃やしてみたりと、強烈なパフォーマンスで、観客を釘付けにさせるのはモチロン、ディストーション(アンプで音をひずませる)を効かせた音を爆音でかます!どれを取ってもカッコ良い!こんな風にギターが弾けたら、みんなぶっ飛ぶこと間違いなしです。
(選曲・文章/阪口マサコ)
2.「Johnny B Goode」/Back To The F
uture
でも、マーティが入り込んでしまうのが分かるくらい、ノリが良い曲です。最高にカッコいいイントロが決まれば、演奏していて気持ちいいでしょう。「ノリノリかつ、引かれずに!」と言った感じで、いつか私も弾いてみたい!聴いた後に楽器屋さんの前を通る時は、ギターの衝動買いにお気をつけください。
(選曲・文章/和久井直生子)
3.「Smoky」/Char
ギターのカッティングが、心地よく耳に残るのも「Smoky」の魅力ですが、このカッティングは、フェンダーのムスタングだからこそ実現したものです。ムスタングは、スチューデント・モデルと言われる、初心者向けのようなギター。弦を抑える場所を示す「フレット」の幅が少し狭いため、特徴的なカッティングを生み出せたそうです。
初心者向けのギターを超級ギタリストが弾くと、こんな魅力が出るなんて!!ますますCharの凄さを感じてしまいます。「初心者向けだから・・・」なんて軽い気持ちで手に入れたギターを弾きこんで、みんなの前でクールにカッティングを決めて「Smoky」を演奏してみたい!
(選曲・文章/阪口マサコ)
4.「未来の破片」/ASIAN KUNG-FU GEN
ERATION
疾走感と力強さを兼ね備えたギター・リフは、今でもライブ会場などで、多くの人のテンションを見事にブチ上げています。発売から10年以上が経ちましたが、これまで多くの少年少女の手にギターを持たせるキッカケになったことでしょう。
パッと見た感じだと、大人しそうな青年のギター・ボーカルの後藤正文さんが、感情を表に出して情熱的に演奏する姿が、ロックンロールの元ある「抵抗」や「反骨」と言った感じを思い出させてくれます。
普段は、おとなしい人なんて思われている印象を打ち破って、みんなの前で披露したい曲です。
(選曲・文章/楠木智哉)
5.「Cause We’ve Ended As Lovers」/
Jeff Beck
ジェフ・ベックの美しいバラード曲「Cause We’ve Ended As Lovers〜哀しみの恋人達」は、恋人に捧げるのにオススメです。この曲を書いたのは、スティーヴィー・ワンダー。スティーヴィーが当時の妻シリータに捧げて書いた曲と言われています。
哀愁ただようメロディーをジェフ・ベックが情感をこめて奏でています。使用しているのは、ハムバッキング・ピックアップがついた特別仕様のフェンダー・テレキャスター。ギターという楽器はこんなにも人の心を揺さぶることができるのだなぁと思わせてくれる1曲です。
タイトルはともあれ、彼女をギターテクで泣かしてしまいたい、と妄想したくなります。
(選曲・文章/阪口マサコ)
6.「Mr.Big」/Free
シンプル過ぎる音の骨組みはじっくり聴けば一音一音、丁寧に作り込まれており、あたかも鉄筋のごとくに堅牢な骨組みである事が解るだろう。
そして、後半のベースとギターの掛け合い、彼らがカタルシスを感じてプレイしているように私には思えた。
ギターのPaul Kossoffは26歳で短い生涯を閉じた。繊細な感性をギタープレイによってすり減らしたとも言えるだろう。
ロックが最もエネルギッシュに輝いていた時代。ワイト島ライブのパフォーマンスは、自分にとって最高の演奏だと断言したい!
なお、1989年にデビューした米国ロックバンド「Mr.Big」は、この曲にちなんで、バンド名を付けたのだ。
(選曲・文章/田中孝典)
7.「More Than Words」/ EXTREME
学生時代の仲間たちが久々に集まった。当時は90年代半ば。卒業してもう20年近く経ってしまったなんて信じられない。「今やアラフォー、あっと言う間にアラフィフだよ~」なんて苦笑してはいるが、実のところみんな10代20代の自分を、昨日のことのように抱えている。
会場は布川(ヌノカワ)君の自宅。布川君は在学中音楽サークルに所属していて、ギターが上手だった。大学を卒業して、その腕前を見ることはなくなったけれど、部屋の隅にアコースティックギターが置いてあった。
少し埃をかぶっているそのギターを、思い出話の流れから、布川君がおもむろに手に取り埃を手で払った後、チューニングを合わせた。
談笑する声が、少しずつトーンダウンしていく。
みんな、何の曲が飛び出すか期待しているのだ
果たして、こなれたフィンガーピッキングから鳴らされた音。
90年代当時の空気が鮮烈に蘇り、みんなの表情が輝いた。
普段、音楽を熱心に聴かなくても「この曲は知っている」という人は当時多かったのだ。曲名は、「More Than Words」
EXTREMEは、ギタリストであるヌーノ・ベッテンコートの天才的なプレイを全面に押し出したファンキーなハードロックが身上のバンドですが、異色のアコースティカルなこのバラードが全米No.1を記録し、一躍有名バンドの仲間入りを果たしました。
当時、この曲が演奏したくて、エレキギターをアコースティックギターに持ち替えたギターキッズも少なくなかったはず。
(8.へ続く)
8.「Million Miles From Home」/キザ
イア・ジョーンズ
「おお~ギターバトル!」「いいね~!!」
仲間たちの声が弾む。
その声に応えるように、ファンキーでパーカッシヴなフレーズが飛び出した。今度は決して誰もが知っている曲という訳ではない。でも、その巧みなプレイに誰もが感銘を受けた。腕前は、学生当時から全く錆びついていなかった。いや、当時より切れ味を増していた。
「木澤、今でもギター練習してるんだなあ…」誰かが呟いた言葉に、不思議なほど胸が熱くなった。
その曲の名は、「Million Miles From Home」。キザイア・ジョーンズというアーティストのヒット曲だった。
(9.へ続く)
9.「禁じられた遊び」/ナルシソ・イエ
ペス
「成瀬、ギターなんて弾けたの?」
長い付き合いの仲間の知られざる一面に、ちょっとしたどよめきが起こった。「でも、木澤君のあのテクニックを駆使した見事な演奏の後に、何を披露するのだろう・・・?」みんな同じ気持ちでいるようだ。期待とも好奇心ともとれる視線が、成瀬君に集まった。
奏でられたのは、実に意外な調べだった。
流麗なクラシックギターの指使い。誰もが知っている悲哀に満ちたアルペジオとメロディ。「おおお~!?」と驚きの声が上がった。と、同時に、クスクスと笑い声も起こった。バカにしている訳じゃない。選曲も演奏ぶりも、あまりに意外だったからだ。
「ここで “禁じられた遊び" かよ~!」
演奏の手を止めず、成瀬君がニヤリと笑った。みんな「やられた」と思った。でも、みんな笑顔だった。
元々はスペイン民謡ですが、1952年に公開されたフランス映画「禁じられた遊び」のメインテーマとしてあまりにも有名。そのためこの曲自体が「禁じられた遊び」と呼ばれることが一般的になってしまいました。演奏はナルシソ・イエペス。
映画の制作費がかさんでしまい、サウンドトラックをナルシソ・イエペスによるギター1本の演奏のみにせざるを得なかった・・・という裏事情が、誰もが知る名演を生み出すきっかけになりました。
(選曲・文章/伊藤威明)
著者:ミュージックソムリエ協会
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