読モ出身ガールズバンド、本格派への
道の原点にあったロックなルーツ

今回フィーチャーするのはガールズバンドSilent Siren。メンバー全員が人気雑誌で活躍する読者モデルという4人組だ。2014年はテレビ朝日系『関ジャニの仕分け∞』への出演などもあって広く注目を集め、2015年1月17日にはメジャーデビューから2年2カ月というガールズバンド史上最速での武道館公演も実現。チケットもソールドアウトし、まさに破竹の勢いでブレイクを果たしてきた。

とはいえ、読モやテレビでの華々しい活動とバンドとしての地道な音楽活動を両立させるのはひと筋縄ではいかなかったはず。人気の高まりと同時に彼女たちのことを冷ややかな視線で見る人もいただろう。以前には「“読者モデルだから本気でやってないんじゃないの?”とか、“どうせアイドルっぽいんでしょ?”とか言われるのが嫌で、とにかくロックをやりたいと思った」とインタビューで語っていたこともある(『Billboard JAPAN』2013年8月)。今回の記事では、そんな彼女たちのロックなルーツを解き明かしていこう。
“サイサイ”ことSilent Siren のメンバーは、すぅ(Vo&Gu/吉田菫)、ひなんちゅ(Dr/梅村妃奈子)、あいにゃん(Ba/山内あいな)、ゆかるん(Key/黒坂優香子)の4名。結成は2010年、きっかけはとある雑誌の撮影現場のスタジオで10-FEETの「RIVER」が流れてきて、それにすぅとひなんちゅが反応したことから意気投合したのだという。
サイサイ楽曲のほとんどの作詞を手掛けるすぅは、小学校時代からピアノを習っていた経歴の持ち主。バンドでヴォーカルをしていた姉の影響で中学生時代からバンドに興味を持ち、高校1年の時に同級生とガールズバンドを組んでいた。「アニメ『けいおん!』の曲もやったし、マキシマム ザ ホルモンにも手を出したし、Hi-STANDARD、GO!GO!7188…いろいろやってましたね」とのことだ(『BEEAST』2013年8月)。影響を受けたアーティストには、10-FEET、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ONE OK ROCK、WHERE'S ANDYなどを挙げている。
一方、ひなんちゅは幼少期からバイオリンを習い、BUMP OF CHICKENをきっかけにバンドに興味を持ち、ドラムに開眼した経歴の持ち主。高校時代は軽音楽部に入ってGO!GO!7188やグリーン・デイ、JUDY AND MARYのコピーをやっていたそうだ。オフィシャルブログの記事(2013年3月)によると、初めて音楽を聴くようになったのは、小学生時代のB'z、サザンオールスターズ、椎名林檎など。中学生時代はインドネシアで暮らしていたこともあって、アヴリル・ラヴィーンやリンキン・パーク、ミューズ、カサビアン、オアシス、マルーン5などの洋楽を聴いていたようだ。さらに高校時代はKen Yokoyama、locofrank、Hi-STANDARD、HAWAIIAN6、PINKLOOP、10-FEETなどのジャパニーズパンクに憧れ、高円寺20000Vでライブをやったこともあるという。
あいにゃんも高校時代にバンドを組んでGO!GO!7188や椎名林檎の曲をコピーしていた経歴の持ち主。兄がコピーしていたACIDMANの楽曲を聴いたことがきっかけで“バンドっていいな”と思うようになったのだとか。オフィシャルブログの記事(2010年6月)によると、好きなバンドはACIDMAN、RADWIMPS、チャットモンチー、椎名林檎、GO!GO!7188、アルカラで、尊敬しているアーティストはaikoとのこと。一方、メンバーの中で唯一バンド経験がなかったのがゆかるんで、加入前はももいろクローバーZなどのアイドルポップを好んで聴いていたそうだ。
つまり、90年代から00年代のJ-POPや邦楽ロック、パンクやメロコアがサイサイの共通する音楽的な背景と言える。初ライブを行なったのは2010年9月のことだが、そこから数年間は徐々にバンドとしての地力を付け、2012年2月に初のミニアルバム『サイサイ』をリリースする。ただ、インディーズ時代は『東京ガールズコレクション』のオープニングアクトを務めたり、『HARAJUKU KAWAii!! FES 2012』に出演するなど、ファッション業界やカルチャー方面からの注目が高かった。本格的に音楽シーンでの評価が高まっていくのは、2013年に1stアルバム『Start→』をリリースしてから。特にここ2年は「ビーサン」や「BANG!BANG!BANG!」などアップテンポなサマーソングを引っさげて数々の夏フェスに出演し、ロックファンのハートを掴んでいった。
こうしてファッションと音楽、その両面でのつながりを増やしていった彼女たち。2014年には初の主催イベント『サイサイフェス』を新木場STUDIO COASTで開催し、真空ホロウ、住岡梨奈、PASSPO☆、KEYTALKを招き、アーティストの枠組みを超えたラインナップを実現している。また、ガールズバンド同士のつながりも深く、ひなんちゅはブログでも“親友”と綴るSCANDALのRINA(Dr)や先輩格のロリータ18号のTO-BU(Dr)との交流をたびたび明かしている。
というわけで、色眼鏡で見られた時期もあったが、今のサイサイは、バンドとして本格的な飛躍を果たしつつある。1月14日には8thシングル『KAKUMEI』が発売、2月25日には3rdアルバム『サイレントサイレン』がリリースされる。2015年の躍進も楽しみだ。

著者:柴 那典

OKMusic編集部

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