降ってきそうな満天の星空の下で聴き
たい音楽 –後編-
ミュージックソムリエ協会では、「こんな時に聴きたい音楽!」ということで、日常のヒトコマで、ふっと聴きたい音楽を選曲しました。選曲はすべて、ミュージックソムリエ(http://musicsommelier.jp)によるもの。
前回に引き続き、夏の夜を彩る美しい星空に似合う曲をご紹介します。お盆も明け、晩夏の切なさ、なんて言葉をふと思い出す、今日この頃。夏の星座を眺めながら聴くと、心地よい曲を集めました。過ぎゆく季節に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
1.「星屑の街」/The Gospellers
「大丈夫 ずっとこの歌とここまで来たよ」 結成から20周年を迎えたゴスペラーズ自身もまた、沢山の音楽と共に歩んだ全都道府県ツアー最終日、この歌を歌いました。星空は明日の朝日を運んできてくれます。星空に未来を思い描きながらまた明日への一歩を踏み出していきたいですね。
(選曲・文/宮川桃子)
2.「Comrade Conrad」/Bill Evans
Bill Evansは、その活動の初期に、非常にリリカルなピアノタッチと、音楽的教養でジャズの芸術的価値を押し上げる金字塔を打ち立てましたが、その後すぐに、盟友のベーシストの死により、試行錯誤の時代を余儀なくされます。ドラッグ癖や、近しい人間の死から破滅的な人生を送りますが、死の間際に異常な最後の輝きを見せます。
表題曲は、事故死した友人に捧げた自身の過去の曲であり、彼の最後のスタジオ録音。絶頂期に勝るとも劣らない若いベースとドラムに加え、管楽器2本をフューチャーした録音で、えも言われぬスワンソングのような、熱気溢れる演奏となっています。なぜ死の間際、またこの楽曲を取り上げたのか?他のアルバム収録曲”We Will Meet Again”は、亡くなった兄へ捧げられた皮肉なタイトルになっており、全体に耽美的な死のイメージが漂う作品です。
満天の星の一つになった友人に捧げます。
(選曲・文/田中 孝典)
3.「木蘭の涙」/スターダスト・レビュ
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モクレンは春に咲く花で、この曲も1993年3月にリリースされたアルバム『SOLA』に収録されています。ですが、シングルカットされたのは同年7月なので、今の時期、夏休みで訪れた海や山で夜空を見上げながら聴くのも素敵だと思います。
キラキラと瞬く可憐な音色と、ボーカル根本要さんの透き通る歌声を聴くと、辺りが凛とした空気に包まれるようで、日々の暑さも忘れられる気がします。
日常から少し離れて、普段滅多に見る事のできない満天の星空を眺めると、つい願い事をしたり、大切な人へ想いを馳せたりしたくなりませんか?そんな時、きっと心に優しく寄り添う曲になってくれると思います。
今回はアコースティックのライブバージョンでどうぞ。
(選曲・文/高原千紘
4.「TAKUMI/匠」/ 松谷卓
長野県の人里離れた場所を車で走っているとき、ふと寄り道した平原から見上げた 満天の星がとても美しく、たまたま流れていた音楽がこの曲だったのですが、星の輝き(かがやき)に、なんともフィットするフィーリングに、とても感動をしたのを覚えています。
曲想もとてもやさしい旋律なので、故人への追悼の気持ちにも結びつくような、素敵なご縁を感じる曲にも思えてなりません・・・。
(選曲・文/堀川将史)
5.「Cigarettes and Coffee」/Otis R
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流れ星を見つけては願い事をして、また、何をお願いしたのか訊ねたりはぐらかしたり。そうして明け方近くまで寄り添い合って空を眺めている時にオススメの1曲です。
煙草を吸い、コーヒーを飲みながら、恋人と午前3時近くまで話をして幸福感にひたっているひと時を、オーティス・レディングがしっとりと歌っています。個人的にも昔、しし座流星群を見に行った時にスティーヴィ・ワンダーの「リボン・イン・ザ・スカイ」とともにテープに録音してカーステレオで聴いた曲なのであります。恋人と星を眺めるロマンチックな夜に。
(選曲・文/阪口マサコ)
6.「Silent Lucidity(静寂)」/QUEENS
RYCHE(クイーンズライク)
美しくロマンティックなひととき…、というイメージを持つ方もきっと多いと思いますが、筆者が思い出すのは、子供の頃によく泊りに行った山間の祖父母の家です。そこは建物も少なく、電燈もまばらで、夜になると外では自分の手すらロクに見えないほど真っ暗。文字通り、「ド」が付くほどの田舎です。
見上げれば、巨大な暗闇に光り輝く星、星、星。天の川。
ずっと見ていると、自分が上を向いているのか下を向いているのか、位置関係が分からなくなります。そのあまりの大きさに、感動というよりも、人間の営みも、地球という星でさえも、ちっぽけで意味のない、とるに足らない代物のように思え、ひたすら畏怖を覚えたものです。
そういう夜には恐い夢を見ることもしばしば。
地球が爆発して、脱出したロケットの中には子どもの自分ただ一人。向かう先もなく、燃料も食料も尽き、ただ宇宙空間を漂うだけ、とか…。
そして夜中に目覚めた時に、当たり前のように自分の隣に眠っている家族の寝顔が、とても愛おしく感じられたものでした。
神様、どうかいつまでも、みんな一緒に暮らせますように。「満天の星空」というと、筆者はそんなことを思い出します。
この夏は、星空を見上げながら、大切な人と普段話せないことを話してみるのも良いかもしれませんよ。その時、この曲をかけてみてください。
(選曲・文/伊藤威明)
著者:NPO法人ミュージックソムリエ協会
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