ライ・クーダーらしさが際立つ
傑作セカンドアルバム『紫の峡谷』

『Into The Purple Valley』(’72)/Ry Cooder

『Into The Purple Valley』(’72)/Ry Cooder

ライ・クーダーはカントリーブルース、ヒルビリー、R&B等のルーツ音楽を土台にしつつ、その本質的な部分を壊さずにロックフィールを加味した音楽を提示したアーティスト。1970年、23歳の時に『ライ・クーダー登場(原題:Ry Cooder)』でソロデビューした。当時は卓越したスライドギター奏者であったことや、60年代にストーンズやキャプテン・ビーフハートらのバックを務めたこともあってロックアーティストとして扱われていたものの流行とは無縁の存在で、100年後にも決して古くならないような独自のサウンドを構築した。1970年と言えばロックはまだ発展途上であり、当時はギター中心のハードなロックに若者たちは熱狂していた(僕も含め)。プログレ、フォークロック、カントリーロックなども登場してきてはいたが、ジミ・ヘンドリックスやエリック・クラプトンらに代表される長尺のギターソロに人気が集まっていた時代である。そういう時代に現れたライ・クーダーは異色の存在であったと言えよう。今回は、戦前の古いブルースやヒルビリーを素材にしながらも、ライ・クーダー“らしさ”が確立された彼の2枚目となる『紫の峡谷(原題:Into The Purple Valley)』(’72)を取り上げる。

70年代前半のロックファン

僕が最初にライ・クーダーの音楽を聴いたのは本作『紫の峡谷』で、中3か高1の時である(ほぼリアルタイム)。この頃、デラニー&ボニーやレオン・ラッセルらに端を発するスワンプロックに注目が集まっており、ブリティッシュロック界でもローリング・ストーンズ、エリック・クラプトン、ジョージ・ハリスン、ロッド・スチュワート、トラフィックなどのイギリス勢もこぞってスワンプ的なアルバムをリリースしていた。スワンプロック以外でも、ザ・バンドやオールマンブラザーズ・バンドなどに代表されるルーツ系ロックの人気が高く、特に関西(僕自身が関西人なので)の若いロックファンの興味はハードロックから徐々にルーツロックやシカゴブルースへとシフトしていた時期であった。バンドを結成する中高生や大学生も増え、関西周辺ではブルースを聴かない奴はロックを演奏する資格はないという風潮にあった(少なくとも僕の周りではそうであった)。

日本各地でブルースフェスやブルーグラスフェスなどが開催されるようになり、ルーツ志向には拍車がかかっていたように思う。振り返ってみると、50年代後半からアメリカ各地で起こっていたフォークリバイバルの波が、日本にも波及していたのだろう。そういう時期であったからか、ライ・クーダーの音楽は心に染みた。商業的なロック作品とは正反対の仕上がりで、古いブルースやヒルビリーを独自の解釈で演奏していた彼の音楽はめちゃくちゃカッコ良かった。もちろんライ・クーダー自身もフォークリバイバルに影響されていたから、ウディ・ガスリー、レッドベリー、ブラインド・ウィリー・ジョンソンらをはじめとするルーツミュージックを、ロックという新しいフィルターを通して蘇生させようとしていたのだろう。

努力に裏打ちされたライ・クーダーの
ギターテクニック

では、なぜ非商業的な彼の音楽が当時は認められたのだろうか。ルーツ系音楽が多くの支持を集めていたからというのもあるが、彼の努力に裏打ちされたパフォーマーとしての圧倒的な力量が最も大きな理由ではないかと思う。特にギターをかじった人間にしてみれば、彼のようなギターを弾くためには長い時間をかけた訓練が必要だと一聴すればわかるはずだ。良いギターを弾くためには地道な練習こそが何より大切だということまで伝わってくるのも彼の音楽の凄いところである。そんなこともあって、彼の音楽は多くのロックアーティストたちに影響を与えることになる。

OKMusic編集部

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