半世紀以上に及ぶ活動の中で
最高傑作のひとつに挙げられる
ロッド・スチュワートの
『ナイト・オン・ザ・タウン』

『A Night on the Town』(’76)/Rod Stewart

『A Night on the Town』(’76)/Rod Stewart

ロング・ジョン・ボールドリーのフーチー・クーチー・メンを皮切りに、ジェフ・ベック・グループやフェイセズといったブリティッシュロック界の名グループを渡り歩き、ソロシンガーとして頂点にまで上り詰めたロッド・スチュワート。若いロックファンからすると、現在のロッドはポップスシンガーにしか見えないかもしれないが、彼はミック・ジャガー、ロバート・プラント、ポール・ロジャースらと並ぶブリティッシュのスターシンガーのひとりだ。60年代後半から70年代にかけて彼がロック界に与えたインパクトはとても大きい。今回紹介する『ナイト・オン・ザ・タウン』は自身初のアメリカ録音となった前作の『アトランティック・クロッシング』(’75)と対をなす作品で、彼の長いキャリアの中でも、間違いなく最高の瞬間を記録したアルバムである。

ジェフ・ベック・グループ〜フェイセズ

1965年にロンドン東部で結成されたスモール・フェイセズは、スティーブ・マリオットの黒っぽいヴォーカルが売りのR&Bをベースにしたビートグループ。当時のモッズたちのお気に入りはマニアックなR&Bで、そこにぴったりハマったグループがスモール・フェイセズだった。ライヴでは圧倒的なパフォーマンスで観客を魅了したものの、ヒット曲を作るためのスタジオ作業に嫌気が差したマリオットは、真のロックを求めてハンブル・パイを結成するために脱退する。

69年にジェフ・ベック・グループが解散した後、ロッド・スチュワートとロン・ウッドは流行になりつつあったハードロック系のサウンドではなく、ルーツロック系の音楽を模索していた。当時、ロッドとロンはイギリスのアーティストたちの間で大きな話題となっていたザ・バンドの『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』(’68)の音作りに惹かれていたからである。スモール・フェイセズからマリオットが脱退したことを知り、グループのメンバーで旧知の間柄のロニー・レインとコンタクトを取り、ふたりの参加が決まった。彼らの加入を機にスモール・フェイセズはフェイセズと改名する。

アメリカへ渡りスーパースターに

ロッドはフェイセズの活動を並行してソロ活動を行なっていた。ソロシンガーとしては「マギー・メイ」(全英1位、全米1位)の大ヒットで成功するのであるが、グループの運営やレコード会社とのトラブルなどで行き詰まり、75年にフェイセズは解散する。精神的にも肉体的にも疲れたロッドはアメリカへと向かう(イギリスの重税から逃れるという理由もあった)。心機一転、トム・ダウド(アレサ・フランクリン、デレク&ドミノスなど)をプロデューサーに迎えて、初のアメリカ録音となる6thソロアルバム『アトランティック・クロッシング』(’75)をリリース、収録曲の「セイリング」が世界的な大ヒット、アルバムも全英1位、全米9位という輝かしい結果となる。

『アトランティック・クロッシング』には彼の尊敬するソウルシンガー、オーティス・レディングのバックグループのMG’s(ブッカー・T・ジョーンズ、スティーブ・クロッパー、ドナルド・ダック・ダン、アル・ジャクソン)や、マスルショールズ・リズム・セクション(ジミー・ジョンソン、デビッド・フッド、ロジャー・ホーキンス、バリー・ベケット)、メンフィスホーンズら南部のスタジオミュージシャンをはじめ、デビッド・リンドレー、ジェシ・エド・デイヴィス、リー・スクラー、ボブ・グロウブ、フレッド・タケットら西海岸を代表するスタジオミュージシャンの豪華なメンバーが参加したというだけでなく、憧れのバックメンに支えられてか、ロッドのヴォーカルも冴え渡っていた。この作品にはメンター・ウィリアムスの「ドリフト・アウェイ」、ジェリー・ゴフィン&バリー・ゴールドバーグの「イッツ・ノット・ザ・スポットライト」、ダニー・ウィッテンの「アイ・ドント・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・イット」といった名曲のカバーが収録されているのも大きな魅力になっている。

OKMusic編集部

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