IRIS MONDOの最新曲『本音』について…。
何時頃からだったろうか、くるみスカイウォーカーがポエトリーというスタイルを持って、自分の本音を、より赤裸々に語るようになったのは…。
昔から、楽曲の中へ”本音”は詰め込んでいたと思う。ただ、”語るように歌いだした”ことで、彼女が胸の奥に宿していた”本心”が、より生々しく伝わるようになった…。
今のIRIS MONDOの楽曲は、”歌という手紙”なんだと思う。
それがラブレターであれ、家族や友達に向けた、言葉では言いづらい思いを託したものであれ、手紙という形を通すことで、口には出せない本心が、不思議と素直な言葉になって、紙の上で暴れ出す。素直になればなるほど、手紙に綴る言葉が暴れ出すのも、本当の自分を解き放っているからだろう。真夜中に書いたラブレターを一晩置いて読み返すと、いいようのない恥ずかしさを覚えるのも、気持ちが素直に暴走しているからだ。
きっと、くるみスカイウォーカーは、そのハンドルさばきが上手いから、みずからの生きざまを記した痛々しい感情の数々を、赤裸々なほどロマンチック(共感意識を持って)にまとめあげていけるのだろう。『Day.1』は、まさにそうだ。
さて、IRIS MONDOの最新曲『本音』についてである。。。
セルフライナーノーツに、くるみスカイウォーカーは「この”本音”で、同じ思いをしてる人がいることを知って欲しい」と記している。
『本音』を聴いたとき、「ここまでぶっちゃけるんだ」と思ったのが、本音だ。
おそらく、この世に生まれた人たちの大半が、「夢」という妄想を心の中に思い描き、その夢に挑戦しては、挫折を経験してきたのではないだろうか。一度はその夢を実現しても、今度は、夢の中に隠れていた現実が大きくなり、夢を継続してゆくことへ難しさを覚え、夢を思い出に変えてしまった人たちだって、けっして少なくはないだろう。
IRIS MONDOの2人は、「音楽という現実で生きる」ため、今も必死にもがき続けている。『本音』には、頑張っても、頑張っても、自分たちが思うような結果を導きだせず。だからと言って、あきらめきれず、ずっと音楽にしがみついて生きている2人の本音が綴られている。
くるみスカイウォーカーは、こう歌っている。
人生は⼀度きり
うんざりするほどに言われてきた
ありふれた言葉
いつも分かったようなフリをして
取り繕ってかっこつけて情けない僕だ
命をかけて求め続けてきた生き方を捨ててしまうことは、けっして格好悪いことではない。
夢という霞を食べながら音楽にしがみつく生き方も、確かに格好いいのかも知れない。
でも、人は飯を食わなきゃ死んでしまうし、住む場所がなければ心が追い詰められてゆく。
まして、守るべき存在がいたら、そこには”守る責任”が生まれる。
確かに人生は一度切り。だから、死ぬまで「好き」を貫けるのなら、そのほうが幸せだろう。
大好きな音楽だけで一生生きていけるのなら、そんな幸せなことはない。
でも、音楽を奏でるためには、お金も、家も、必要だ。
だから、仕事だってしなきゃいけないという人たちも、たくさんいるだろう。
破天荒なロックスター気取りなんて、結局は、若いうちの特権なんだと思う。
(ずっと破天荒を貫く人もいるから、すべての人ではないとも言っておく)
IRIS MONDOの2人が、音楽だけで食べているのか、生活のために働いてもいるのか…。
『本音』には、何度も挫け、何度もあきらめようとした彼女たちの本心が綴られている。
夢に恋している若いミュージシャンたちの中には、「何、糞格好悪い言い訳を歌ってんだよ」と言う人たちもいるかも知れない。
でも、現実の中に何十年と生きてきた立場からすれば、ここまで弱音を吐き出した、糞情けない姿がめちゃめちゃ格好いいんだよ。
だって、普通なら言えないもん。
きっと、IRIS MONDOの2人は、自分をスーパースターにしてくれる「ステージという魔法」を解きたくないんだと思う。
それが、どんな規模であろうと、集客人数がどうであれ、ひとたびステージの上に立ち、スポットライトを浴びながらガツンと音を鳴らし、歌いだせば、その舞台に上がっている間、自分はスーパースターになれるんだもの。
彼女たちはずっと、その魔法の虜でいようとしている。
だから、『本音』を通してここまで本心をぶちまけている。
この歌は、自分を肯定するための情けない言い訳なのかも知れない。
でも、ここまでぶっちゃけられる勇気こそが、彼女たちの揺るがない信念を作りあげる力になっている。
取り繕った言葉よりも、無様なほどに自分をさらけ出した言葉が騒ぐ手紙こそ、人の気持ちを殴ってくれる。
取り繕っていた自分の心を裸にしてゆく。
確かに、 人生は一度きりだ。
その深い意味を理解したうえで、彼女たちは音楽という魔法を信じ続ける道を選択した。
いや、とっくにしていたけど、それを『本音』という歌の手紙を通して改めて伝えてきた。
この歌は、自分たち自身に向けている。
そのうえで、自分らと同じような仲間たちへ呼びかけ、誘いをかけている。
きっと、さびしいのかな??
でも、それでいいじゃない。
消えそうな”想い”の灯火でも、寄り添えば大きな炎になる。
その炎となる一助に、自分もなれたら嬉しい。
『本音』を何度も何度も聴き返しながら、いまだ情けない僕にも、この歌がそれを教えてくれた。
自分が信じたことへ本気でぶつかり続けている。
その姿こそが、人の心を惹きつける光なんだということを…。
それが、『本音』という真(まこと)の剣を振りかざして未来を切り開いてゆく、IRIS MONDOの今の姿だということを…。