【ラムジ】“言葉”は顔を見ないと
なかなか形を成さない
“ケータイから名曲を♪”。そんなかつてない試みから誕生したラムジの新作『言葉』。切なさと感動が胸を打つ、彼らにとっての新境地だ。
取材:道明利友
タイトル曲の「言葉」は“GREE”(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)を経由して募集した、“携帯電話にまつわる恋愛エピソード”を曲にするという面白い企画から生まれたそうですね!
山下
そうなんですよ。最初は、その恋愛エピソードの中から優秀作品を選んで曲にするっていう話だったんです。けど、“500通から1個を選ぶのは失礼じゃねぇ?”って話になって。人のエピソードに上下とか順位なんてないわけだから。なんで、全部それを読んだ中で浮かんだ僕らなりのストーリーを作るっていう感じで始まったんですよ。
その“恋愛エピソード”が500通もあれば内容はそれこそ千差万別だったんじゃないですか?
SJR
はい。いわゆる、“失恋”的なもの…幸せじゃない方の話が多かったんで、これは楽しげな、アッパーな曲ではないだろうっていうことでバラードを書き下ろしたっていう。
山下
ほとんどなかったですね、ハッピーな話は。普通の恋愛は、むしろ少ない。あと、“携帯電話にまつわる”っていうくくりもあったんで、実際に会ってない人との恋愛っていう話もあったり…。いわゆる、バーチャルな。“GREE”の中で付き合ってる人がいるとか、そういう類の話もあってね。
へえぇ~っ。すごいですね、それは。何がきっかけで恋愛に発展するか分からないっていう、今の時代らしい話。
山下
そう! “本当にそういうことがあるんだ!?”って、すごいカルチャーショックを受けて。だから、“会えない”ということがキーワードになりましたね。実際に会って顔を見たら相手の気持ちが分かるけど、“言葉”だけだと分からないものもあるじゃないですか。携帯電話とかネットを通してやり取りする“言葉”がすれ違ったり。“言葉”は相手の顔を見ながら交わさないとなかなか形を成さない。離れてしまっている状況では。でも、前を向いているっていう。
“言葉”は切なくもあり、離れてるふたりの距離を埋めるのもまた“言葉”であり…。今までのラムジの世界観とはひと味違う感触で届きそうな、感動の物語ですね。
山下
ベタですよね、ある意味(笑)。でもその分、この詞の中の“君”と“僕”に当てはまる人がたくさんいてほしいなって思います。歌詞にしても、サウンドにしても、僕らもともとがヒネくれてて(笑)。単純なことは書きたくないとか、素直じゃないんですよ。そういうことを取っ払った曲ですね。
SJR
エンターテインメントというか。気持ちを盛り上げるところは生の弦を使うでしょうとか、曲の世界観をより良く作り上げるためにはある意味なんでもやろう、みたいな。曲の世界観に沿ったものなら、変なこだわりはなくして。だからそういう意味では、逆にすごく素直に作れましたね。こだわったところっていえば、僕らの音楽は“アコロック”なんだからアコギが入ってないとおかしいよなってくらいで(笑)。
テイストは多彩ですけど、アコギは今回全曲入ってますよね。それがなかったら、“アコロック”じゃないでしょう。
SJR
はい!(笑) アコースティックライヴの時も、いわゆるフォークとかのアコギの弾き方じゃないんですよ。歌とひとりのギターで“バンド”を再現してるっていう感覚で僕は弾いていて。それプラス、どの曲も全部、ふたりがいればできるっていう感じですね。ヤマ(山下)の歌声とギターがあればしっかり聴かせられるっていうのは、やっぱり僕らの基本なんで。
福岡県出身の山下祐樹(vo)と神奈川県出身の井上慎二郎(g)の2人からなるユニット。山下は全曲の歌唱と一部の作詞、井上は作詞・作曲・アレンジ・プロデュースを担当している。北九州よりただ「歌いたいから」という理由だけであてもなく上京してきた未完の大器・山下と、96年にシンガー・ソングライターとしてデビュー、以降吉田拓郎やPUFFY等への楽曲提供など幅広い音楽活動を展開していた井上。この対照的とも言える2人が03年に友人を介して奇跡の邂逅、ラムジ結成へと至ったのである。山下の強い存在感と魅力溢れるヴォーカル、そして井上の高い楽曲制作能力が見事に合致し、極上のサウンド・マジックが生まれた。05年発表の3曲入り1stシングル「1ラムジ」から「2ラムジ」「3ラムジ」とシングル・リリースを重ね、06年には待望の1stアルバム『ラムレンジャー』を発表。武部聡志がピアノで参加した「Chain」、山下の同郷175Rとのコラボ曲「PIECE」などが話題を呼んだ。ラムジOfficial Website
ラムジ オフィシャルサイト
オフィシャルサイト