取材:上野三樹

新たな風で夏を駆け抜ける、チャットモ
ンチーのシングルが到着!

4月に日本武道館公演を終えて、チャットモンチーは今どんなモードですか?

高橋
武道館が終わってからすぐに沖縄でのライヴがあったり、仙台の『ARABAKI ROCK FEST.08』に出演したりと、先に先に進んでいる感じです。もう3rdアルバムの制作も始まってるし、夏フェスもあるし…満足してる暇もないくらいの勢いです(笑)。
橋本
今でも“武道館、良かったね”ってずっと言ってるくらいなんです。だけど、まだまだやらなきゃいけないことはたくさんありますね。
福岡
やっぱり武道館は特別で、大きな区切りになりました。その後のライヴの感触も違ってきています。

新曲「風吹けば恋」はどのようにしてできた曲ですか?

高橋
この曲の歌詞はもともとあったんですが、SEA BREEZEさんのCMソングになるということで堀北真希さんが走ってる映像を見せてもらった時に、これがぴったりだなと思ったんです。それでえっちゃんに曲を付けてもらいました。
橋本
歌詞がCMにぴったりだったから、疾走感のあるメロディーが似合うだろうなと思って。

もともと歌詞は、どんなきっかけで書いたものだったのですか?

高橋
ある映画を観て、その主人公の女の人がコンプレックスを抱えてたんですよ。自分のことが嫌いで恋愛も上手にできなくて。だけど、ある人を好きになったことで、今までの自分を変えるくらいに、その人に向かって突っ走っていくような…そんなストーリーに共感して書いたものです。恋愛だけに限らず、友達や家族、私だったらメンバーと一緒にいたら自分自身が変わっていくところも絶対あるし。影響を受けて、いいように変わっていく経験ってみんなあると思うから、いろんな人に分かってもらえるんじゃないかなと思いました。

サウンドはバキッとしたギターの音が印象的で、リズムも実は複雑ですよね。

高橋
そうなんです。一定のノリの中で、こういう複雑なことをリフとして入れるのはたぶん初めてかな。おかずとしてのタム回しとかじゃなくて、ちゃんと完璧にアレンジの中で組み込まれた、考えられたパターンで。納得のいく面白いものができたんじゃないかなと思います。
福岡
今制作中の3rdアルバムには、前回のシングル「ヒラヒラヒラク秘密ノ扉」から入ると思うので、アルバムの全体像も見ながらサウンドもワンランクアップしたものにしていこうという思いがありました。だから「風吹けば恋」はサウンド面でもいろんなことに挑戦しています。今は何をやってもチャットモンチーらしくなるっていう自信もありますし。だけどそこに留まったらいかんなとも思ってて。いつも新しいことをやることが、自分たちらしさやなってすごく思います。それに今までは既存の曲をリリースすることもあったけど、これは出すタイミングとして今一番の新曲なんですよ。

そうなんだ。ようやく追いついたって感じ?(笑)

福岡
そうなんですよ。今まで持ち曲がありすぎて(笑)、どの曲をどう出していって自分たちを見せていくかっていう考え方も、やっぱり今まではしてたから。でも、そうではなく現在進行形のものを出せるっていうのはすごくうれしいことだと思う。なので、今の自分たちと楽曲がこれで一致した感じがします。

なるほど。一方、カップリングの「推進力」は絵莉子さんの作詞作曲ですが、これも比較的最近作った曲なのですか?

橋本
これは初めて曲から先に作ったものなんですけど、その原型は1年以上前にあって、ちょこちょこ足していく感じで最近完成させました。
福岡
最初はインストを作ってたんですよね。
高橋
以前、合宿に行った時に“インストから作ってみない?”って、いしわたり淳治さんが言ってくれたんです。それで2曲作った中の1曲なんですよ。なのでいっぱい冒険しながらできましたね、足踏みや手拍子の音を入れたり。

後半部分なんて転調したりメロディーが跳ねたり、コーラスが入ったりといろんなことが起こりますね。

高橋
それもインストから作ったからっていうのが大きいと思うんですけど、歌詞が付いてからも“タイムスリップ”っていうところでは“タイムスリップしてるようなアレンジにしよう!”って感じで変わっていったんですよね。“しそ~ん”とか“せっしゃっしゃ~”なんてコーラス、あんまりないですよね(笑)。レコーディングも盛り上がりました。

歌詞も最初は日常のシーンを描いていたのに、だんだん世界へ飛び、そして最終的には時間軸もずれてくるという(笑)。かなりのスケール感が面白いですね。

橋本
はい、大変でした(笑)。私は普段、身近なところにある感じの歌詞を書くんですけど。でも、この曲のサビをどうしようかってふたりに相談した時に“hello!”から始まって、英語だからどこにでも行けるってことになって、どんどん広がっていったんです。

“持ち前の推進力でラッタッタ”っていうのは?

橋本
タイトルは“推進力”って最初に決まってたから、あまりにもタイトルとかけ離れすぎるのもなあと思って入れたんです。

あはははは!それもおかしな話ですね。

橋本
そう、最初は結構無理矢理だったんですけど(笑)。それがなんかいいまとめになったというか、“あ、推進力で飛び回って行けるんだ!”っていうことになりました。

では3人のアイデアが組み合わさって、楽しい曲が出来上がったのですね。

福岡
そうですね、みんなで“これがいいんちゃう? あれがいいんちゃう?”って言い合いながら作りました。歌詞に“日付変更線をまたいで”とあるので、日付変更線の左と右にある国が入るように気を遣ったり(笑)。
橋本
国もたくさん出てくるし、昔の人も未来の人も出てくるから、いろんな人が聴いても大丈夫! って感じがします。

そして3曲目の「three sheep」はデビュー前の自主制作盤に収録されていた曲ですね。

高橋
4年前に作った曲なんですけど、かねてから私たちがやりたかった初のセルフプロデュースでやることになって。その1曲目としてやるのであれば、これぐらい自分たちに馴染んでて自信を持ってやれる曲でやってみよう、ということになったんです。

アレンジもすごく丁寧ですよね。

高橋
作った当時から柔らかくてふんわりしたイメージがあって、歌詞もカチッとしてない感じが気に入ってます。

久美子さんが書かれた歌詞にも“ふくろう”や“森”が出てきて、まるで童話のような幻想的な感じがしますね。

高橋
そうですね。こういう歌詞も今は書けないなと思います。これ確か歌詞は…私がふたつ渡した歌詞をえっちゃんが混ぜたんよな。
橋本
(申し訳なさそうに)混ぜたんですぅ。上のワンブロックだけ別の歌詞を持ってきて、そこから下はまた違う歌詞で。その頃はね、いっぱいやってたんです、そういうこと。

曲になってみると歌詞が合体してる?

高橋
うん。(書いた側は)びっくりするけど、こういうのもありなんやなあって感じで。でも、ある時から、持っていった歌詞を上から下までほとんど変えることもなくえっちゃんが曲を作るようになって、それが今のスタイルになったんです。
橋本
それはいかんっていうことにデビューが決まる頃に気付いたんです。せっかく書いてくれてくれたものを変えてしまうのは話の辻褄も合わんし、意味ないなと思って。

なるほど。そういう意味でもレアな曲ですよね。そして“メロディはいつだって”と“あなたを乗せて”の部分で久美子さんと晃子さんがソロで歌われているのもすごく温かみが出ていていいですね。

橋本
ふたりが歌入れしているのを聴いてて“全然変わってないな”と思ってうれしかったです。
高橋
へえー。
橋本
おんなじ声や、と思って(笑)。
福岡
おんなじ声にしたの。この曲は全体的に当時の感じが残ってるので、その方がいいかなと思って。懐かしさもあるけど、初めてセルフでやったことで今の私たちの感じも出せて良かったなと思いました。

3曲ともに今のチャットモンチーの想いと挑戦が詰まった1枚になりましたね。では、3人それぞれの今後の目標を教えてください。

高橋
やっぱり3rdアルバムですね。1枚目は徳島時代のものを全部詰め込んだものになって、3枚目はライヴでもみんなが乗れるような心を開いた感じになったので、3枚目はもうちょっと違うチャットモンチーを見せていこうと思っています。今まさに楽しみながらやっている最中です。
橋本
個人的な目標としては、ライヴステージですね。やっぱり緊張感が勝ってしまって、終わってから“楽しかったな”と思うことが多いので。もっと余裕を持って楽しめるようになることは今後の目標です。
福岡
わたしは3rdアルバムに向けて、よりベーシストになろうと思っています。今までは“チャットモンチーを作る一員”という意識が強かったんですが、今はプレイヤーとしての意識をさらに高めながら新作に望んでいます。
チャットモンチー プロフィール

2000年徳島で結成。2005年メジャーデビュー。2006年リリースのSG.「シャングリラ」がヒット。2007年リリースの2nd AL.『生命力』に続き、09年リリースの 3rd AL.『告白』は、オリコン初登場 2位を記録。2008年には、初の日本武道館公演を開催。メジャーデビューから2年4か月での日本武道館2days公演は、女性ロックバンドとしては史上最短(※当時)で、現在のロックシーンを 代表するバンドへと成長を遂げる。2011年にDr.高橋久美子の脱退により、橋本、福岡の2ピース体制となる。2014年には、サポートメンバーを迎えた体制での活動を発表し、6th AL.『共鳴』を15年にリリース。そしてデビュー10周年の日本武道館公演を行い、2016年には郷里徳島で主催フェスを2daysで初開催。大成功を収めた。最新作は、シングル『Magical Fiction』(2017年4月リリース)。デュオ“橋本絵莉子波多野裕文”(橋本)やユニット“くもゆき”(福岡)での活動、CM歌唱(橋本)や徳島での多目的スペースOLUYOの運営(福岡)など、それぞれ多彩な活動を行っている。2017年11月23日、2018年7月をもって活動を「完結」させる事を発表した。チャットモンチー オフィシャルHP

OKMusic編集部

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