特集上映『ドゥミとヴァルダ、幸福に
ついての5つの物語』公開記念トーク
ショーに青柳文子が登壇!

—ジャック・ドゥミと聞いて、すぐに思い浮かぶのは港町だ。
どこからか人が辿り着き、そして静かに去っていく。と、書きながら、それはそのままフランス映画、ヌーヴェル・ヴァーグ作品の魅力を意図せず暗喩したようで、思わずはっとする。
静かでありながら、情緒的。燃え上りながらも、沈みゆく。その波止場の黄昏のような作品に、私たちは今もなお胸を熱くする。
『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』など、後世に語り継がれる名作で世界に魔法をかけたままこの世を去ったジャック・ドゥミ。
そして、女性映画監督の第一人者であり、“ヌーヴェル・バーグの祖母”との異名も持つアニエス・ヴァルダ。
夫婦として支え合い、同士として刺激しあった、ロマンチックで、憧れで、伝説的なふたり。
そんなふたりの輝ける作品の中、珠玉の5作品がスクリーンに蘇る。
題して、『ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語』。
その公開を記念して、代官山蔦屋書店でトークイベントが開催された。
ビギナーでも聞いていて楽しめる映画の魅力を、優しく丁寧な進行で伝えてくれたのは、ライターの小柳帝さん。その道を極める小柳さんだから知っている、当時の撮影秘話や公開の流れ、ヌーヴェル・ヴァーグの定義など、知ってから観るとより深く楽しめる専門的なプラスアルファを教われたのも、若い世代にとっては、貴重だ。
そんな小柳さんに、直感的ながらも鋭い疑問や、純粋な想いをぶつけるのは、
ゲストの青柳文子さん。人気モデルとして活躍する傍ら、近年はその独特の雰囲気と感度を以って、映画や舞台など、女優としての活躍も目覚ましい。ドゥミとヴァルダを始め、当時のフランス映画はよく手に取るという。「二回目以降でも、絵のような感覚で、音を出さずに部屋で流しているだけでもいい。どこを切り取っても素敵」とその魅力を語った。
「この時代の映画やドゥミとヴァルダの映画は観ていてどうでしたか?」という小柳さんの問いかけには、
「会話の運びが素敵で、間を重んじる感じが好きです。説明しすぎない、語りすぎないのがフランス映画という印象」と回答。
小柳さん曰く、当時の映画はあえて、「ジャンプカット」という説明を省く撮影法を用いているそう。行間と余韻が一際観る側に委ねられているように感じる、フランス映画。その魅力の裏には直感的な決断と緻密な編集があったのかもしれない。  
今回の特集上映作品のうち、カラー作品は1作のみ。その折に触れて、「モノクロ映画はどういう印象ですか?」という質問が小柳さんから青柳さんへ投げかけられた。
「観ているうちに自然に色が見えてきて、想像の時間を楽しめます」と答えた上で、「でも、『幸福(しあわせ)』を観た時にあまりに色彩感覚が素敵で、こんなに素敵なら過去のものもカラーでも観たい!と勿体なく思う気持ちもありました」と、映画史の転機とも言える、モノクロームからカラーへの変遷にも思いを馳せた。
総合的な感想として、素直な疑問と独自の解釈も語った青柳さん。「あんまり“家族”が描かれないのかなって。結婚しても、子どもがいても男女というか。淡々と情熱を描くフランス映画故になのかなって考えていました。子どもの存在も出てきてはいるけど、多少扱いがぞんざいな気がして(笑)それがまた興味深かったです」
「すごく面白いですね! 確かに、監督も俳優陣も当時こういった映画で活躍した人たち自体がみなさんとても若いんですよ。だからあんまり“家族”のリアルさが描かれてないのかもしれませんね」と小柳さん。
それぞれの視点からの考えや魅力を交え、映画談義は最後まで白熱した。
「フランス映画やヌーヴェル・ヴァーグって、完成度が高くて、美しくて、今の私たちからするとすごく崇高なものに見えるんです。でも同時に、自分の今いる世界が、未来においてこんな風に文化として大切にされたり、憧れられたりするものになればと思います」と、今後の活動への展望と未来への想いを馳せて、青柳さんは壇を後にした。
青柳さんがトークを締めくくったこの言葉がとても印象的だった。
半世紀経っても今なお語り継がれる監督・作品を前に、今を生きる私たちが思うこと。それは、色褪せない輝きであり、煌めきであり、やっぱりその眩さからの刺激だ。
これまでドゥミとヴァルダを知らなかった人や、この特集上映でフランス映画を初めて観るという人。これら宝石のような作品が、より多くの人の心に留まることを切に願う。  
 
 
特集上映〔デジタル・リマスター版〕
ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語
シアターイメージフォーラムほか全国順次公開中
ジャック・ドゥミ作品からは、ヴァルダの監修によって完全修復された『ローラ』を始め、劇場正式初公開となる『天使の入江』。
アニエス・ヴァルダ作品からは、ファッショナブルで哲学的なガールズムービーの走りとも言える『5時から7時までのクレオ』、シニカルで無邪気な視点と深い余韻を以って、その言葉の意味に立ち返らずにはいられない『幸福(しあわせ)』、そして、生涯の伴侶であるドゥミのルーツを愛と切望によってフィルムに焼き付けた『ジャック・ドゥミの少年期』が上映される。
出典:She magizine

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