松室政哉『毎秒、君に恋してる』インタビュー Part.2「松室政哉 × イラストレーター坂内拓 対談」

松室政哉『毎秒、君に恋してる』インタビュー Part.2「松室政哉 × イラストレーター坂内拓 対談」

松室政哉『毎秒、君に恋してる』イン
タビュー Part.2「松室政哉 × イラ
ストレーター坂内拓 対談」

ー 今のスタイルでクライアントがいる場合、かなり要望は変わってきますか?

坂内

:そうですね。切り絵ではない方が良いと言われる場合もあるし、あまりテクスチャが出ない方が良いと言われる場合もあります。そこでどう自分が出せるかが勝負だと思います。音楽もそういうところないですか?

松室

:あります。制限や要望が多い時はその中でどう表現して、どう自分を出せるかが勝負だし、余地がある場合だって別の意味でやりがいはある。僕はそういうことに燃えるタイプなんです。勿論それは自分を表現出来て、自分の名前が出ることが分かっているからなんだけど。だからさっきのように絶対世に出ない状況だとテンション上がってこないかもしれない。

坂内

:そうそう、そこなんですよね。僕も結構クライアントさんの要求に応えることは好きなんです。たとえ無茶なことを言われても…(笑)。

松室

:無茶なこと言われます?(笑)

坂内

:たまに(笑)。でもそれは松室さんと一緒で、世の中に出るものを作れるからこそ、そういう状況でも頑張れると思うんです。

ー お二人がそれぞれ作品を作る上で大切にしている点は?

坂内

:松室さんが先程言ってくださった、行間というか余白みたいな部分を一番大切にしています。人が僕の絵を見た時に想像出来る余地を残しておきたいんです。だからあまり絵の中で説明しすぎないようにはしています。

松室

:じゃあテンションが上がって増やしちゃった時は、後で一旦冷静になってという感じですか?

坂内

:そうそう(笑)。

松室

:やっぱりそういう点も近いかも。僕もテンションが上がってくると、伝えたいことがいっぱい出てくるんだけど、意外と辻褄が合わなくなってきちゃったりとか、翌朝起きて見直してみたら「何だこれ?」ってなったり(笑)。

坂内

:(笑)。

松室

:でも、更に1日空けてもう一度見直してみると、やっぱり良いなと思ったり。これって体調にもよるんですよね。それをどれだけ冷静に見られるかが重要なんだろうけど。

ー ではお二人が仕事を通じて関心、興味があることは?

松室

:僕はやっぱり映画の音楽をやってみたいかな。

坂内

:それは僕もありますね。映画も松室さんよりは観ていないけど、頭に残っているシーンが元になって作品を作ることがあるんです。

松室

:ああ、そうなんですか!でも確かに坂内さんのInstagramにもそういう作品っていくつかありましたよね?

坂内

:そうですね。僕はイギリス系の作品が好きで、例えばケン・ローチとかジム・ジャームッシュ作品とか。『さらば青春の光』のシーンをもじった絵を描いてみたりします。映画とか音楽は興味ありますね。

松室

:分かります。僕もそうなんです。生きている上で、そんなにドラマチックなことってそうは起こらないじゃないですか。物凄くアンテナをはって、目を凝らしても限界はあるし…。でも映画の中のキャラクターたちは、約2時間の中で凄い人生を歩んでいるから、たとえその瞬間に曲が出来なくても、そこからヒントを得たりします。

ー 坂内さんは絵を描く時に音楽は聴くんですか?

坂内

:ほぼ聴いています。

松室

:へー、そうなんですか!どういう音楽を聴くんですか?

坂内

:結構昔のUKモノが好きで。スミスが多いかな。

松室

:それってどういう絵であろうが、どういう雰囲気の作品であろうがスミスやUKロックを聴いているっていうことですか?

坂内

:わりとそうかな(笑)。

松室

:それは、いつものフラットな状態にするためのルーティーンみたいなことなんですね。

坂内

:そうですね。あと良い絵を作る時はわりと自分の好きなものばかりを聴いて、あえてそういうモードに持っていったり。だから僕にとって音楽は大切なんです。

松室

:あとはどういう音楽を?

坂内

:あとはマイブラ(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)とか。80年代UKのニューウェーブの頃のものは結構聴いています。

松室

:『シング・ストリート 未来へのうた』観ました?

坂内

:観れていないんですよ。観ました?

松室

:観ました!完全にあの時代のUKが題材で、当時の音楽に憧れた少年たちがバンドを組む話で。僕、昨年観た映画の中で一番良かったです。

坂内

:そっか。気になりますね。

松室

:是非観て下さい。…って、別に僕はこの映画に関わったわけじゃないですが(笑)。

ー 今回、松室くんの楽曲を初めて耳にした印象はいかがでしたか?

坂内

:すごく絵に描きやすかったです。入り込めるというか、僕の中でシーンがパッと出てくるんですよ。

松室

:嬉しいなぁ。

ー 内容によってはなかなか発想が湧いてこないこともあるんですか?

坂内

:ほぼ湧いてこないですね(笑)。

松室

:いやいやいや(笑)。

坂内

:でも発想が湧いてこない時は、イメージが降りてくるのをひたすら待つんです。色々描いてみて、手は動かすんですが、そうしながら形が出て来るのを待つ。だから今回のように歌詞やメッセージがある時は、すごく描きやすいんです。松室さんは?

松室

:近いかもしれません。曲であれば出来るだけ手を動かしてみる。そういう時に映画とか観ちゃうと、まるであらすじを書いているような歌詞になっちゃうから(笑)。

坂内

:なるほど(笑)。

松室

:そうやって手を動かしていると、急に発想が出てきたりするんですよね。それが作業の100/1なのか1000/1なのかは分からないけど。

ポップシーン

ポップシーンは、ポップカルチャーからカウンターカルチャーまで、流行にとらわれない独自の目線で、編集部オススメのピックアップ記事や、インタビュー、ライブレポートなど、音楽を中心としたカルチャー情報をお届けするFANZINEスタイルのウェブメディアです。

新着