【ONE☆DRAFT インタビュー】
これが最後のアルバムになっても
悔いがない
2017年3月にデビュー10周年を迎えたONE☆DRAFTが、通算8枚目のアルバム『ENDRUN』を発表した。心を打つメッセージの詰まった新作について訊く!
ニューアルバム『ENDRUN』はどんなアルバムを目指したのですか?
LANCE
僕らは高校野球を3年間やっていたっていうバックボーンがあるんですけど、まず最初にアルバムタイトルを決めたんです。スタッフと一緒に野球のワードで探して、辿り着いたのが“エンドラン”でした。エンドランって必ず打つ、次の1球で決まる、成功するか失敗するかどっちかしかない、って窮地に立たされてる状況じゃないですか。自分たちが窮地に立たされてるって意味じゃなくて、僕らは10年音楽をやってきて、もし2017年が最後だとしたらがむしゃらにやるだろうなと想像したんですよ。そういう気持ちでアルバムを作りたいと思って、このタイトルにしたんです。エンドランは英語だと“ANDRUN”ですけど、読み方のまま単語にして、デビュー10周年の締め括りに相応しい、これが最後のアルバムになっても悔いがないってものをリリースしようと思いました。
なるほど。リード曲の「Believe」は《一番 自分を信じて》と聴く人の背中を押す曲になってますね。
LANCE
「Believe」はサビの言葉数を少なくすることで、今までと違うアプローチの見せ方の曲になったんです。サビの手前で《自分を責める事なんてない どうせ他人が責めてくれる時代》って、僕の言いたいメッセージが出てるんですよ。これは“生きてく中で残念なこと、悔しいこととかあるけど、そんなに気にするなよ”って軽く話すようなイメージで言ってるんです。“自分を信じろ! お前はできるんだ!”って熱血じゃないんです。そこでメッセージを伝えてるから、サビであえて歌わず、トラックに任せて走っていく感じなんです。文字量は少ないけど、中身の濃い曲になりました。
MAKKI
初めて挑戦したEDM調の曲で、新しい方向性のひとつとしてチャレンジしたんです。ちゃんと歌があってのEDM的な曲なので、実際やってみたらONE☆DRAFTらしくなりましたね。
RYO
初めての曲調だし、これをライヴでどう披露したらいいのかなってことを考えました。実際に披露して、ツアーで実践して、とてもいい感じで盛り上がる曲になりました。
では、みなさんがそれぞれ印象に残ってる曲を挙げてもらえますか?
LANCE
「better days」は一番情景描写を意識して作った曲です。言ってしまうと、同棲とかしてた彼女が家を出て行くって、ひとつの別れをリアルに歌ったんですけど、その情景にどれだけ引き込めるかって書いた曲なんです。そもそも僕は引っ越ししまくる人で、今まで20回くらい引っ越ししてるんですよ。そうすると、毎回毎回引っ越しの理由も違うんです。明るい未来に対して引っ越すのか、未来が見えないから引っ越すのか。で、アルバム制作のタイミングでも引っ越したんですけど、体調を崩したり、犬との決別もあったので、すごく引っ越しって切ないなってところからこの曲につながったんです。
MAKKI
僕は自分も歌詞を書いた「君との足跡」です。ずっと連れ添ってた犬が死んじゃって…で、LANCEが線香をあげに来たんです。その時のうちの母親を見たLANCEが書いた歌詞があって、その続きを僕が書くことになったんです。誰でも愛するものと辛い別れがあると思うんですけど、その苦しいまんまをフィルターを通さずに書いたんです。いろんな人に届くように、大切な人を失ったり、人との別れとか苦しいところをちゃんと表現しました。
RYO
「君との足跡」はMAKKI主体で作るっていう今までにないやり方で印象に残ってるし、「Oh My Little Girl」もライヴでどうやったらいいんだろう?って考えましたね。僕とLANCEがメインのフレーズを上行ったり下行ったりを多く歌うので、そういうのってレコーディングで録っただけじゃ分からない時があるんです。ライヴで実際にふたりで歌ってみて掴んでいきました。あと、「作文用紙じゃ描けない」は今までで一番歌のキーが高くて、これも結構な挑戦でした。
新たなトライが詰まったアルバムですが、完成してどんな印象がありますか?
MAKKI
2017年はデビュー10周年ということで、ベストを出して、年の最後にオリジナルアルバムを出すっていうかたちになったんですけど、ほんと新しい挑戦もできたし、いろんなアプローチができたなって。僕らが進化していく上で欠かせない一枚になったと思います。
RYO
前の7枚目のアルバムが“スタートライン”で、今回いきなり“ENDRUN”なので、お客さんがびっくりするかなって思いつつ(笑)、いいアルバムができた手応えがあるので、みなさんが聴いてくれるのを楽しみにしてます。
LANCE
デビュー10周年とは言ってるんですけど、3人で祝福したことはなくて、これが11年目につながるためのものだって思ってるんです。そのために、エンドランで勝利するってことでもあるんですよ。でも、今回のアルバムの曲ってONE☆DRAFTを知ってもらうためにってよりかは、僕らのことはいいから、ONE☆DRAFTを知らない人たちに“何だこの曲?”って聴いてほしいんですよ。犬のブリーダーが「君との足跡」を聴いていい曲だなと思ってもらうのもいいし、小学生のLINE虐めされてる子が「Believe」を聴いてくれたら、“気にするな”ってその子に伝えたいし。一曲一曲全然タイプは違うけど、それぞれの人生に当てはめてほしいなって。でも、ほんといつ何が起こるか分からないじゃないですか。歌をリリースできることは、すごく貴重なんだっていうのを噛み締めますね。リリースって作った曲を世に手放していくってことですけど、毎週世の中にすっごいたくさんの曲がリリースされてるわけで。すっごいたくさんの人のラストチャンスの想いが込められてると思うと、そのどれよりも自分たち3人の想いのほうが熱くないとダメだなと思うんです。そこと改めて向き合いながら作れたアルバムですね。
取材:土屋恵介