【インタビュー】数字なんかで、人生は推し量れない。パノラマパナマタウンが考える最新曲「$UJI」とは?

【インタビュー】数字なんかで、人生は推し量れない。パノラマパナマタウンが考える最新曲「$UJI」とは?

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ンが考える最新曲「$UJI」とは?

SNSが生まれてからは、友達の数まで数値化される。それが、今の時代。
――配信シングルナンバー『$UJI』に投影したのが、社会が人の人生を数字を持って判断していくことや、それに対しての反抗心。想太さん自身も、自分の人生が数字によって縛られている意識を持っていることから、この『$UJI』が生まれたのでしょうか?
岩渕:そこまで数字に縛られて生きてるわけではないですけど、みずから数字のことを気にすることは多くなりました。たとえばの話、親や友達に「どんなアルバムなの?」「ライブはどんな感じ?」と聞かれると、真っ先に「何枚売れた」とか「動員がナンボで」と話しちゃう自分がいて。「なんでそういう視点で話すのか」と自分で自分に対して情けないと思ったことが『$UJI』が生まれる出発点でした。

――数字は、わかりやすい判断基準になりますからね。
岩渕:そう。数字って、気にしないで生きようと思えば生きられるんですけど、自分は何処か気にしてしまっている。そういうことを気にする人になりたくなかったし、もっと自分の心へ自由になろうとロックバンドを始めたのに、「なんでそう数字を気にしてしまうんだろう」と自分へふがいなさを感じることは正直あります。

――でも、生きてくうえで、数字はいろんな生活へ密接に絡んでくるものですからね。
岩渕:それは感じること。僕はまだ23年しか生きてないですけど、これまでの人生の中、数字で呼ばれる場面もいろいろとありました。だから「出席番号何番?」「死ぬまで剥がれん このナンバー」(マイナンバーのこと)などの言葉を書いたんですけど。それこそ入試だって、そう。「これだけの点数がないと、この大学には入れません」など、なんでも数値化される時代。そこは昔も今も変わらない数値化される事柄なら、昔は友達の数って数値化されることはなかったはずなのに、SNSが生まれてからは、twitterやInstagramのフォロワー数が何人だとか、LINEに友達の数が露骨に出たりなど、昔だったらあり得ないことまで数値化される時代になっているなぁと思って。僕は、そこに対しての違和感を、じつは小さい頃からずーっと感じてたんですよ。

――そこ、興味があります。
岩渕:数字が生活の中へ身近にある存在だとは、僕自身も思っていること。これは自分の価値観の話になるのかも知れませんが、たとえばの話、マイナンバーが送られてきたときに、僕はすごい気持ち悪さを感じました。何故なら、まだまだ短いながらも、自分が生きてきた人生の中には、自分の人生を左右するいろんなことがありました。もちろん、いろんな喜怒哀楽ある経験も重ねてきた。それくらい人間一人一人の人生にはいろんな感情を持ったドラマがあるのが当たり前なのに、それを無機質な数字に置き換えられ、「これがあなたの人生を現す数字です」と決めつけられるのって、すごく 恐ろしいことだなと思って。

――言われてみれば、確かにそうですよね。
岩渕:『$UJI』の一節に、僕は「命は一じゃない」と書いたんですけど。自分のマイナンバーの数字を一個ずらしただけで、まったく違う人の人生になってしまう。こんだけいろんな人生を背負った個性的な人たちがいる世の中なのに、与えられた数字の番号を一つ違って提示してしまっただけで、まったく異なる人の人生をその数字が与えてゆく。そこに対して「命や人生ってそういうものじゃないだろ」という想いが僕の中にあるから、数字によって現される怖さをずっと感じ続けていれば、数字が生活に密接になっているからこそ、一回疑ったほうがいいんじゃないかと僕は思ってるし、それを『$UJI』に投影したわけなんです。
今の自分が感じてる想いを全部出し切ることが、今の自分が歌えること
――何事も数値化される世の中だけど、でも、自分の個性は数値化されるものではないですからね。
岩渕:そうなんです。これもたとえ話になりますけど、その人が取ったテストの点数が何十点だから、それ以上の点数を取った人よりもその人は劣っているのかと言うと、けっしてそんなことはない。でも、世の中では「こんだけの点数を取っている人に比べたら、君は劣ってるんだ」と言われてしまうじゃないですか。僕自身、今までにもそういう経験はいろいろあったし。就職して働いているまわりの友達なんか、もっといろんなことを言われてる。それこそ数字という結果だけを判断基準に「お前の変わりなどいくらでもいるんだよ」と言われたり。でも、そういう言葉に敏感になり過ぎたらいけないなと思って。
人が決めた基準や尺度で、自分が持っている可能性を狭めてる人って、世の中にはいっぱいいるんだろうなと思う。だからこそ僕は、「人生や生き方ってそういうものじゃないだろ」という想いを持ってしまうんだと思います。
――とくに表現者の場合、数字に縛られもしなければ、数字では計ることの出来ない個性と言いますか、「俺はこうだから」という意志をどれだけ投影してゆくかが大切になることですもんね。
岩渕:それはあります。人の中にある「心の叫び」って、絶対に数値化出来ないものじゃないですか。それこそ、テストの点数をぜんぜん取れない人にだって、そこだけでは判断出来ない才能はあること。そういう数字にはたとえられないものを、僕は音楽を通して表現していきたい。『$UJI』の歌詞に「測らせてたまるか 煮えたぎる衝動を」と書いたのも、「自分の人生を。自分らの楽曲を聞いてくれる人たちの人生も数字なんかで測らせてたまるか」と思ってのことなんです。

――まさに『$UJI』という楽曲は、聴いた人それぞれへ一つの気づきを与える楽曲ですね。
岩渕:そうなってくれたらなと思います。僕自身、「数字のことなど一切気にしてないです」と歌うのは嘘になるなと思ってる。数字のことばかり気にしてる社会や人生、そうやって生きてる人ってなんか違うなと思いながらも、やっぱし、どこかで数字のことも気にする自分を否定は出来ないように、自分の意識や考えの中にも矛盾を感じているのが今の僕なんです。そこに葛藤を覚えているからこそ、『$UJI』を通し、その矛盾も含め、今の自分が感じてる想いを全部出し切ることが、今の自分が歌えることかなとも思ったんですね。だからこの歌には、「数字を気にしちゃうけど気にしたくないんです」という想いも出ていれば、それが、今の自分にとってのリアルだからこそ歌詞にもそう投影していきました。

――『$UJI』は、環境の変化によって生まれた意識や考え方という面もあるのでしょうか?
岩渕:そうですね。メジャーへと進み、そこでアルバムを出してからいろいろ思ったこともあれば、その意識が反映された面もあると思います。
奇麗事や嘘を歌ってもしょうがないし、楽しくないのに「楽しい」とは歌えないし、自分が本当に怒っていることにしか怒れない。けっして「さらけ出してやる」という気持ちではないんだけど、「さらけ出さずにいれない」。
――想太さん自身、身近な物事を題材に楽曲を作ることが多いのでしょうか?
岩渕:僕は、そうですね。自分が思ってないことは書けない性格。ミニアルバム『PANORAMADDICTION』の中にも、いろんな表情を詰め込んだんですけど。中でもとくに『フカンショウ』という楽曲が、いろんな人たちの心に刺さりました。『フカンショウ』は、自分の中にある一番どろどろとした想いを吐き出した曲であり、自分の気持ちを嘘無く歌った楽曲。自分の中でも、一番パーソナルな想いを詰め込んだ曲だったにも関わらず、その『フカンショウ』が一番強く支持を受けました。そのときに思ったのが、「どろどろとした感情も含め、自分の本音を出し切らないことには、人の心にも届かない」ということ。しかも、それを表現していくことが自分の持ち味であり、パノラマパナマタウンの魅力になるとわかったからこそ、余計に今は、自分が見えたものや感じた想いなどをリアルに楽曲へ投影するようになった。そうやって生まれた1曲が『$UJI』ですからね。

――確かに人は、奇麗事よりもリアルな心の叫びのほうに共鳴や共感を覚えますからね。
岩渕:今って、みんな嘘に敏感な時代じゃないですか。楽しくないのに楽しいと言ったり、本当はそんなに怒ってないのに「怒ってる」と歌ったり、そういう見え透いた書き込みや歌詞が多いなと思って。だからこそ自分は、本気でリアルな気持ちを歌いたいなと思ってる。何より、この『$UJI』に共感した人たちが、いっぱいライブに集まり、みんなで♪すうじー!!♪と叫びながら盛り上がってくれたら最高じゃないですか。そのうえで、僕らのライブを通し、「自分って誰かの定規に合わせて生きてたんだ」とか「つまんない 生き方をしてきたのかも知れないな」と思ってもらえたら嬉しいし、そういう気持ちさえライブを通して発散してくれたらもっと嬉しいなと思ってる。

――想太さん自身は、これからも自分の感情をさらけ出しながら歌い続けていくんでしょうね。
岩渕:いまさら奇麗事や嘘を歌ってもしょうがないし、楽しくないのに「楽しい」とは歌えないし、自分が本当に怒っていることにしか怒れない。けっして「さらけ出してやる」という気持ちではないんだけど、「さらけ出さずにいれない」というか。パノラマパナマタウンは、そういうことを歌うバンドでありたいなと思っています。

今は、人の判断基準を参考にするあまり自分での評価基準が希薄
――想太さん、普段から、疑問を感じることが多い方?
岩渕:「あれっ?」と思うことは多いように、歌の題材には困らないです(笑)。

――それだけ今は、生きにくい世の中なんでしょうね。
岩渕:生きにくさはすごく感じますね。ただし、数字で自分を評価されるって今に始まったことではなく、昔からずーっとある永遠のテーマだとも僕は思っていて。これまでだって、そういう想いをテーマに歌ってきた人たちはいっぱいいたと思うんです 。だからこそ、自分が歌える視点は何処かなと思ったときに見えたのが、「数字を気にしたくはないけど気にしちゃう」という感情でした。そこが、自分にとってのリアルだったからこそ、そこを一番の軸にしながら『$UJI』へも表現していきました。

――先にも発言が出ていましたけど、SNSの誕生によって、数字を通した判断基準が今の世の中ではさらに可視化されていますからね。
岩渕:そう。たとえばの話、1本の映画を観るにしても、先に誰かが評価した点数を、ネットを介して観れてしまうのが今の時代じゃないですか。どこかの定食屋へ入ろうと思ったときにも、事前に調べたら何点の評価なのかがわかったり。それこそ、1位じゃなくても、ネットで2位や3位のお店だって美味しいだろうし。人が1点しか評価してない映画でも、人によってはとても胸に突き刺さる映画かも知れない。なのに今は、人の評価の高さを判断基準にし、自分での評価基準が希薄になっている。そこもまたつまらないな と僕は思ってて。

――確かに、何か行動を起こすとき、他人の評価を一つの基準にしてしまうことはあります。
岩渕:そんなことを言ってる僕だって、「食べログ」をチェックし、評価の高い店を選ぶこともあるように、ネット上の評価基準を参考にもしてるんですけど(笑)。そこが恐ろしいなというか。別のとらえ方をするなら、誰もが失敗を踏まないような世界になっているのかも知れない。失敗をしない姿勢って、それはそれで怖いこと。それだけ今は、未知の世界へ踏み出そうとしている人たちが少なくなっている気がします。
――確かにそうだよなぁ。 
岩渕:『$UJI』の歌詞に、「俺の人生は映画じゃねぇんだ」と書いたんですけど。実際に僕は、自分の人生は映画じゃないと思っていて。

――それは、どういうことですか? 
岩渕:もし、人の人生が全部点数化されてるとしたら…。たとえばの話、公務員になることが80点だとすれば、バンドをやる人生ってけっして高い数字じゃないだろうなと思ってて。もちろん、公務員を選ぶ人生を否定もしなければ、それも素敵なことだと思うけど。たまたま自分は、バンドをやることが楽しかった。でも、この楽しさって、本来は点数化なんて出来ないこと。だけど、世間一般的に見たらバンド活動って社会的に評価も点数も低い。だからこそ、そこに惑わされちゃいけないなと思って。

――想太さん自身は、バンドという人生を選び、心の満足度を強く覚えているわけですもんね。 
岩渕:今は、バンド人生がとても楽しいです。いろんな疑問を持てば、そういう「何で?」と思うことを、そのまま表現していける。そこへすごく生き甲斐を覚えているように、自分の人生はここだなという気がしていますからね。
これまで人の心を動かせるなんて思っていなかったけど、今は、人の心を動かせるのが音楽なんだと思えるようになった。
――さっき、『フカンショウ』に対するリアクションがたくさん返ってきてたと語っていましたよね。 
岩渕:自分が「あれっ?」と思ったことに対して、いろんな人が、同じように「あれっ?」と思ってくれたというか。「わたしもほっといてくれと思うことがありました」や「『フカンショウ』の生き方に触発され、わたしも人に言われたのではなく、自分の決めた道を進むことにしました」など、自分だけが抱えていた想いだと思っていたことを歌を通して吐き出したとたん、いろんな人の人生に影響を与えるどころか、その人の人生さえも左右してゆくことにも繋がった。

僕は、自分のことを「人の人生を変えれるような人間ではない」と思っていたし、自分が変だと思ってることは、ただただ自分のみが抱えていることだと思っていたんですけど。その想いが人にしっかり届くんだとわかったことは、嬉しい発見でした。それもあるからか、今は、「聞いてくれる人たちの心にどんな風に歌が届くかな?」ということを考えて歌詞を書くようにもなりました。

――人の心を動かす力を持っているのが、歌であり、音楽ですからね。 
岩渕:本当に、そう思いますね。これまで人の心を動かせるなんて思っていなかったけど、今は、人の心を動かせるのが音楽なんだと思えるようになった。それって、バンド活動を続けてこなかったら気づかなかったこと。なんか、自分だけの違和感だと思っていたことが、そうじゃなかったんだと気づけたことも大きければ、今は、そういう接点をもっともっと求めたくなっている自分もいますからね。
『$UJI』を聴いた一人一人が思ったことが、その人にとっての正解
――想太さん自身、昔から数字で自分を括られることに違和感を持っていた人なんですよね。
岩渕:小学校に入って、出席番号を付けられたときから、自分を数字化されることには疑問を持ってました。まして、「2番の人」と呼ばれたりすると、「俺、2番の人なの??、俺って、岩渕想太じゃないの??」「なんで岩渕想太という名前があるのに、数字で呼ばれるの??」みたいな違和感は、小さいときからずっとありました。
そんなこと言いながらも、僕も受験の時期は、ひたすら点数を取ることへ必死になっていました。それこそ、つねに学年トップを飾る女の子がいて、それに負けないように、絶対に学年一位を取ってやることを目標に勉強をし、実際に一位を取ったり。でも、そういう数字ばかりを考えてきた時期も経験してきたからこそ、今、こうやって数字に縛られることに対して疑問を持って歌えるんだろうなとも思っています。

――これからも想太さんは、自分の心の中に芽生えた疑問をぶつけながら表現していくんでしょうね。
岩渕:自分の歌を通して、自分の生き方に気づく人が増えて欲しいなという想いも抱くように、そういう歌を届けたい自分もいます。ただし、自分と同じような人が増えていくのは、それはそれで気持ち悪いなとも思ってしまいますけど(笑)。
『$UJI』の最後に僕は、「あとは任せた」と歌いました。それは、『$UJI』が何かを断定したり、正解を提示する歌ではないから。『$UJI』は、「こうしてください」ではなく、あくまでも「自分なりのメッセージはこうだけど、あとは、聴いた人それぞれに考えて」という歌。この『$UJI』を聴いた一人一人が思ったことが、その人にとっての正解なんだと思います。

――なるほど。最後にひと言お願いしてもいいですか?
岩渕:自分が今、思い感じていることをそのまま素直に投影したのが『$UJI』になります。この歌が、どう人の心に伝わってゆくのか楽しみにしています。
TEXT:長澤智典
PHOTO:片山拓
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