第12回 フランスへのリベンジ〈中編
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その前回、フランスでの取材メニューに当時世界の音楽通を震撼させていたゴタン・プロジェクトのフィリップ・コーエン・ソラルに会うというのがあった。グループ名からもわかるように彼らの音楽性には、タンゴとそれにまつわるいろんな要素を現代のエレクトロニック・ミュージックに落とし込むというのがある。デビューアルバム『La Revancha Del Tango』(2001年)はインディーズからのリリースにも関わらず各国でトップセールを記録、全世界で百万枚を売りさばく。
そうしたこともあって同時期、アルゼンチンをテーマにしたCD企画をドバッと片づける。最新の音源をDJミックスした『フォルクロニカ!』『〃2』から旧譜の編集盤『ブロンカ・ブエノスアイレス』といったものまで(以上2004年作品)。こういうものをまとめてつくろうとするパワーはいまないかもしれない。そうおもうと、すこし悲しくなるが。
フォルクローレという扉
「タンゴの影響ももちろんですが、それ以上にフォルクローレではないでしょうか。ドミンゴ・クーラをご存じですか? わたしの大好きな奏者ですが、ゴタンの作品からは彼の残像が浮かんで見えるときがある、とくに“La del Rus”という曲は……」
ゴタンの急所をつく
「まったくそのとおりだ。アルバムを出してからいままで世界中のジャーナリストがわたしと会話をしてきたけど、その名前を出してきたのはキミが初めてだよ。そして、その指摘はまちがっていない。これは初めて話すことになる。いいかい、ゴタンを立ち上げたのはドミンゴ・クーラがきっかけだった。彼の音楽に衝撃を受けて“これだ!”とおもったのさ」
このときのわたしはきっと、小鼻をピクピクとさせていたにちがいない。以上のようなこともあって帰国後、アルゼンチン企画にクーラのベスト盤をくわえることをディレクターに進言。コーエンからの推薦文も取りつけ完成させたのが『ドミンゴ・クーラ・アンソロジー』(2004年)だった。
ミーティア
「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。