アルルカン(撮影・アナスタシア)

アルルカン(撮影・アナスタシア)

【写真満載】この夜を越えて――“ダ
メ人間”たちと叫んだアルルカン・ツ
アー最終日Zepp TOKYOライブレポート

2018年12月8日、東京・Zepp TOKYOにて『アルルカン 5th ANNIVERSARY ONEMAN TOUR Quint「」』が開催された。本記事ではその模様をレポートする。

本編終盤にさしかかった頃、暁(Vo)は“ダメ人間(アルルカンのファンの総称)”に向かって叫んだ。
この記事の完全版を見る【動画・画像付き】
「ダメ人間! 僕が僕たちを“ダメ人間”と呼んでいるのは、“そんなことないよ”なんて、他人に言ってもらうためじゃありません。悔しかったことを忘れないように、悔しかったことを何かに変えて、戦うためです。
欲しいものがあるのに、まだ手に入れてないものがある限り、俺たちは“ダメ人間”だ! 違うか? 戦おうぜ!」
どこまでも欲しがり、不相応でも欲しいものに手を伸ばす、この“渇望”と言うべき感情がこのバンドを駆動してきた。
結成から行き急ぐように駆け抜けていった感のあるアルルカンだが、今年2月に開催されたツアーファイナルでの暁の言葉を借りると、“これから続く未来のため”に、この1年はライブ本数も例年に比べて大幅に絞っていた。そして夏にリリースされた初のミニアルバム『BLESS』も、多彩な楽曲が散りばめられたものになっており、これまでとは違うアプローチを行おうとしていることが伺えた。
今年はアルルカンにとって地盤を固めるような1年だったように思う。“5番目”という名前が掲げられたツアー『Quint「」』は、今年のアルルカンの集大成と呼べるものになった。
まだ薄暗いステージに堕門(Dr)、祥平(B)、來堵(G)、奈緒(G)が静かに姿をあらわし、最後にゆっくりと暁が登場。恒例の「アルルカンです、よろしくおねがいします」という挨拶から、ミニアルバム『BLESS』と同じく『世界の端』でライブはスタートした。じわじわと迫りくるような低音が響く中、“さあ行こうか 果てしのない道なき道を歩いていく”と暁が歌い上げる。
続いて、やはり新譜に収録されている『黒犬』へ。お立ち台に立つ暁が「起きろよ!」とマイクを打ち付けた音を合図に、拳を高く突き上げる“ダメ人間”たち。フロアに負けじと、奈緒と來堵も演奏だけでなくパフォーマンスでも魅せつけてくれる。
スクリーンには大きくバンド名と骸骨が映し出され、曲調の変化と連動するかのように、色や形を変えていく。
「自分になんか負けてたまるか!」
『墓穴』、『影法師』とタイプの違う激しいナンバーを繰り出し、点滅する赤い照明とサイレンの鳴り響く中始まった『「私」と”理解”』では、暁がマイクをフロアに向けると、大きな声で”ダメ人間”たちが合唱する。波打つようなフロアにむかって暁がピエロのような笑い声をあげる。
一瞬の静寂ののち、暁が挨拶する。「よく来てくれました。真顔でもいいし、笑ってもいいし、泣いてもいいし、君のやり方で、君の選んでくれたこの場所で、吐き出して、吸い込んで帰って欲しいと思います」という言葉から、『カルマ』へ。独特の浮遊感をもった音がフロアに広がっていく。
「手を伸ばそう! 真っ直ぐに!」と力強く叫ぶ暁。『MAZE』では高速ビートを繰り出す堕門、ステージ前方に駆け出し、重心を低くし激しく頭を振る祥平。再び暁が何度も「真っ直ぐに!」と口にし、『好奇心、僕を生かす』へつなげる。曲の軽妙なリズムと同期するようにスクリーンの映像が有機的な模様を描いていく。
ディレイを効かせたベースから始まる『NEGA ABILITY』の曲間で暁がうずくまったかと思えば、「“君を愛して”なんて、どの口が言ってるのか、我ながら思うけど、そんなことはわかっている! そんなことが出来りゃもうとっくにやってるんだよ! それでも馬鹿なことを歌おうと思います」と、誰に呼びかけるでもなく、自分自身に呼びかけるように叫ぶ。
「自分になんか負けてたまるか!」
中盤に差し掛かると、背後のスクリーンが姿を消し、バックドロップが姿をあらわす。続いて『exist』を放ち、フロアからの歓声に「その声が僕たちを強くしてくれます」と始まったのは、アルルカンの代名詞である“切なさと激しさ”を最新系にアップデートしたような『Rem』。
『消えてしまいたい夜に』の前に暁がフロアに語りかける。
「ここが、大事なことを改めて思い出せる場所になったらいいと思います。それぞれにとって。ちょっとずつそれが強くなっているような気がして。許せなかったものすら、許せてしまうような場所になったらいいと思います。
僕が、出す言葉とか、皆の出す音、愛してくれる皆の熱とか、ちょっとでも不幸が薄まるような感じになったらいいなと思います」
暁はストレートな物言いを得意とするタイプではない。ゆっくり何かを思案するように、言葉を選びながら、彼らしい表現で、“ダメ人間”たちへ言葉を贈る。
「……何が言いたいかというと、君たちと一緒にいろんなものを見たいです。見限ってもらっても構わない。でも、もし、必要としてくれるなら、とことん付き合ってください、僕は君たちがいると“嬉しい”です」拍手で応える“ダメ人間”たち。
彗星のようにシーンに登場したが、彼らの5年間は本当に泥臭く、このライブ空間は数多の“ダメ人間”たちと時間をかけて作り上げたものだ。きっと、“ここ”にいる誰もが“消えてしまいたい”と思った夜があるのだろう。だからこそ“ここ”にきたのだろう。
自身の名前を冠した『暁』は1stアルバムに収録されたナンバーだが、ここ最近のライブではアウトロで「この夜を越えて」という一節が付け加えられている。高らかに宣言するかのように、その声を響かせる暁。
この変化は、きっと“成長”と呼んでいいものだろう。変わったのはもちろん暁だけではない。この日、何度も堕門のいるドラムの前に集合し、バンドの楽しさ、絆を確かめ合うような所作を繰り返していた楽器隊。この1年でアルルカンは本当に成長したと感じさせる光景を幾度となく目にすることができた。
「胸張って“カッコいい”って」
冒頭でもふれたように、力強い演説のような叫びで始まった『ダメ人間』では、火柱の熱気がフロアの熱を加速させる。奈緒と來堵がグルーヴィーなギターを奏で、祥平がフロアにむかって煽り、「胸を張れ!」と鼓舞する暁。“ダメ人間”とバンドの熱のやり取りが見ていて心地よい。
メンバーの名を呼ぶ声が絶え間なく響き渡るフロアを、ゆっくりと見渡すメンバー。数分ほど経過しただろうか、暁が口を開く。
「“もし”という言葉を使っている自分は逃げているんじゃないか。でも、俺は、俺が守りたいものを全部守りたいから。わからないままの過去も、まだ知らない未来も。真剣に考えようと思います。潰れないように、でも、無視しないように。だから、その”もし"を迷いながらでも、必ず手を伸ばし続けたいと思います」
そんな言葉から始まったのはもちろん『if』だ。これは、祈るのではく、願うのでもなく、自らの手を伸ばすための、“もし”。ミニアルバムのタイトル『BLESS』は“祝福”という意味が込められているが、確かにこの日のこの場所は祝福に満ちていた。
アンコールの声にこたえて再びメンバーが登場。暁がメンバーにコメントを求める。
「ここに初めて来たのはSEX MACHINEGUNSで、いつか絶対ここに立ちたかった。自分の中のひとつの目標がかなった。嬉しくて頭が真っ白。来てくれてありがとう!」と堕門が想いを込めて語り、「5本だと1本1本(ライブが)空いちゃうから、今日も久しぶりなわけだけど、やっぱりライブがないと、皆と顔を合わせないと気が狂いそうになってしまうから。この空間が大事だと改めて思いました」と祥平。
続いて奈緒が「今年ライブ少なかったじゃないですか、その分“濃くしよう”という1年だったけど、色んなことを考えて、色んなことを経験して、改めて音楽って聞く人だけじゃなくて、やってる方も救われるんだなと感じた1年で、アルルカンのことがもっと好きになった1年だった。この気持ちをもっと色んな世界の人を巻き込めるようなバンドになりたいな」と、来年についての希望を語り、彼のシグネイチャーモデルギターが発売されることを発表。大きな拍手に包まれた。
そしてこの日が誕生日の來堵。「胸張って“カッコいい”ってステージに立てているなと、達成感がある。このツアー、『Quint「」』の中を探していこうって感じじゃん。ひとつのものを目指して回ったツアーっていいな。完全にアルルカンって進化してるなって思って。でも(ライブ本数が少なくて)寂しかったでしょ? 来年はたくさん行くじゃん。しっかりついてきてよ」と語った。
暁がニューシングル『ラズルダズル』のリリースと、来年のツアーファイナルとして新木場STUDIO COASTでのワンマンを行うことを発表。「まだまだやれると思うんでよろしくお願いします」と結んだ。
アンコールは『Antidote.』、『omit』とアッパーチューンを繰り出し、バンドとフロアで再び熱を交わし、最後は『puzzle』で締めくくられた。
「また生きているうちに会いましょう」という言葉を残し、アルルカンはステージをあとにした。来年からは再び怒涛の(彼らにとっては“通常営業”なのかもしれないが)ライブが待っている。未来に手を伸ばし続けるアルルカンと“ダメ人間”に祝福を。そう思わざるをえない一夜だった。
セットリスト1.世界の端
2.黒犬
3.墓穴
4.影法師
5.「私」と"理解"
6.カルマ
7.MAZE
8.好奇心、僕を生かす
9.NEGA ABILITY
10.exist
11.Rem
12.消えてしまいたい夜に
13.暁
14.Eclipse
15.ダメ人間
16.if
Encore
1.Antidote.
2.omit
3.DOPLET
4.puzzle
スケジュール■2019.1.30 SINGLE『ラズルダズル』2TYPE RELEASE
【初回盤】GMCD-053A(¥3,500 tax out)
DISC1.(CD):1.ラズルダズル 2.着衣遊泳 3.餓えの自覚 4.Always 5.ラズルダズル-instrumental-
DISC2.(DVD):1. 「ラズルダズル」MUSIC CLIP +OFF SHOT
男限定ONEMAN LIVE『益荒男』公演ダイジェスト版
【通常盤】GMCD-053B(¥1,800 tax out)
DISC1.(CD):1.ラズルダズル2.着衣遊泳 3.餓えの自覚 4.Always 5.ラズルダズル-instrumental-
<LIVE>
■アルルカン ONEMAN TOUR 2019「razzle-dazzle」
2.11(月祝) 恵比寿LIQUIDROOM
2.16(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
2.17(日) 高松DIME
2.24(日) 浜松窓枠
3.2(土) 横浜NEW SIDE BEACH
3.9(土) 柏PALOOZA
3.23(土) 仙台darwin
3.30(土) 広島SECOND CRUTCH
3.31(日) 福岡DRUM Be-1
4.6(土) 金沢AZ
4.7(日) 長野JUNK BOX
4.13(土) 札幌cube garden
4.14(日) 札幌cube garden
4.16(火) 青森Quarter
4.20(土) 京都MUSE
4.21(日) 名古屋Electric Lady Land
4.30(火祝) HEAVEN‘S ROCKさいたま新都心VJ-3
5.1(水祝) 水戸ライトハウス
5.11(土) 高崎FLEEZ
5.16(木) 神戸VARIT.
5.18(土) 大阪BIG CAT
【TOUR FINAL】
6.22(土)新木場STUDIO COAST

ウレぴあ総研

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着