【インタビュー】IKUO、超絶テクのマ
ニアックな音楽性ながら爽快感に溢れ
た聴きやすいロック・アルバム『Eas
y come,easy core!!』

超絶的なテクニックを備えたベーシストとして、プロミュージシャンも含めた多くのプレイヤーから支持を得ているIKUOが、6年ぶりとなるソロアルバム『Easy come,easy core!!』を完成させた。同作はIKUO自身がボーカルを取ったラウド&キャッチーなナンバーを核に据えた楽曲群や、ヴィジュアル系シーン屈指のテクニックを誇るギタリストのLedaとテクニカルドラマーのKenT(The Winking Owl)、IKUOによるバンド感のあるサウンド、全編で披露されているトップレベルのベースプレイなど、注目ポイントは実に多い。マニアックな音楽性でいながら、爽快感に溢れた聴きやすいロックアルバムに仕上げた手腕はさすがといえる。意欲に溢れた『Easy come,easy core!!』について、IKUOにじっくりと話を聞いた。

■常にチャレンジしたいという気持ちがあるんです
■何事に対してもだけど特に歌に対しては強いかもしれない

――『Easy come,easy core!!』の制作は、どんなふうに始まったのでしょう?

IKUO:前にソロアルバムを作ってから6年が経っていて、新しい作品を作るにはいいタイ ミングかなというのがあった。ただ、アルバムを作りたいという気持ちはあっても、スケジュールの調整がつかなかったんですよ。そうしたら、予定していた案件がひとつ飛んでスケジュールが空いたので、ソロアルバムを作ることにしました。

――仕事が飛んだから休もうではなくて、違う仕事をしようと思われたんですね。

IKUO:そうです。前作の『R.E.D. ZONE』は、ゲストを30人呼んで作ったんですよ。僕が辿ってきたキャリア......フュージョンやヴィジュアル系、ラウド、アニソンといった、いろ んなジャンルで関わった人達を招いて、僕のカタログみたいなアルバムを作った。2作目もそういう方向でいくのはちょっと違うだろうというのがあって、前回とは全く違うものを作りたいと思ったんです。それで、“だったら、今回は歌物をメインにしましょう”という話になって、それはいいんじゃないかなと思ったんですよね。僕は、実はインストゥルメンタルを作るのが苦手なんです。

――それは、ちょっと意外です。

IKUO:いや本当に。インストゥルメンタルといっても、フュージョンなのかいま流行りのジェントなのか、ポリフィアみたいなギターオリエンテッドなのか...というように選択肢はいろいろありますよね。そういう中で、スラップをバキバキにやるインストゥルメンタルだとどうしてもフュージョンに寄るけど、僕はちょっと苦手なんですよ。そういうインストゥルメンタルは、テクニックのひけらかしのような気がしてしまう。で、歌モノを作るのは得意というか、慣れているんですよね。僕はBULL ZEICHEN 88でもRayflowerでも曲を書いているし作家もやっていたから。それで、歌モノをやりましょうということになったけど、そうなるとゲストボーカルを入れてやるのかということになりますよね。でも、ゲストボーカルを入れてやると、BULL ZEICHEN 88とかRayflowerと変わらない。“じゃあ自分で歌います”となって、基本的に歌が中心でインストゥルメンタルが数曲というアルバムを作ることにしました。

――IKUOさんの歌を聴きたいと思っているリスナーは多いでしょうから、嬉しいプレゼントといえますね。

IKUO:それはどうかわからない(笑)。だけど、今回は自分で歌うことにして、次にメンバーを考えたんです。自分が歌うということはベース&ボーカルになるわけで、ライブも想定するとゲストミュージシャンを何人も呼ぶんじゃなくて、固定メンバーにしてバンドっぽくしようと思ったんです。そうすれば、そこでも前作と差別化を図れるし。それで、自分がベース&ボーカルの3ピース・バンド形態でいこうと決めて、その次は音楽性をどうしましょうかという話になった。ラウドなのかポップなのかミクスチャーなのかとなった時に、僕は全部好きだけど、ジャンルでいうと“イージーコア”をやりたいと言ったんです。イージーコアというのは、日本ではあまり馴染みがない。僕の周りでもイージーコアを知っているのは相当若い子ばかりで、イージーコアという言葉が浸透していないなと思って。イージーコアというのは、ポップパンクにコアなアレンジが入っているみたいな感じなんですよ。明るい楽曲だけど、ギターはダウン・チューニングで“ゾンゾン”している...みたいな。日本にはあまりいないけど、僕は海外のイージーコアで好きなバンドが沢山いるんです。特に、チャンク!ノー・キャプテン・チャンク!とかはポップさとコアのバランスがすごく良い。そういうことを今回やりたいですとディレクターに話したら、“それ、いいね!”ということになりました。
――イージーコアという音楽性を先に決めて、その後ギタリストとドラマーを決めたんですね。

IKUO:そう。ただ、やりたかったのはイージーコアではなくて、“イージーコア風の何か”。とにかくキャッチーなポップミュージックを、ヘヴィなバンドサウンドで仕上げたいなと。イージーコアのヘヴィネスは7弦ギターの“ローB”くらいが主流だけど、もっとヘヴィにしたくて、それこそ“ローF#”までいきたくなった(笑)。そこで、“8弦ギターを使う”というテーマが出てきて、その時点でイージーコアというジャンルではなくなって、“8弦ギターを使ったポップな音楽”にシフトしたんです。それで、8弦の使い手ということでパッと浮かんだのがLeda君で、オファーしたところ快諾してくれました。ドラムのKenTは、もう昔から大好きなドラマーです。僕は声優の喜多村英梨ちゃんのサポートをしたことがあるんですけど、その時のドラムがKenT君で、すごいドラマーだなと思ったんです。要は、喜多村英梨ちゃんはメタルコアなんですよ。で、リハの初日からKenTのドラムには本当に驚いた。何でもできるし足も速いし身体のバネもすごいし覚えるのも早い...という感じで。人間性もルックスも良くて、いつか一緒にやりたいなと思っていて、今回のタイミングで声をかけさせてもらいました。

――『Easy come,easy core!!』はヘヴィ&メカニカルなサウンドにキャッチーなメロディーを乗せた楽曲が核になっていますが、どの曲もメロディー先行で作れられたのでしょうか?

IKUO:そう。リフやオケから作ってそこにメロディーを乗せたように感じるかもしれないけどそうじゃない。どの曲もしっかりしたメロディーやコード進行があったうえで、今の形にアレンジしました。そういう方向性で行こうと決めた時にパッと閃いたのが、カバーを何曲かやりたいなということだったんですよ。僕はアニソンの主題歌を作ったりキャラソンを作ったりしていて、「ヒラリ」という『デジモンセイバーズ』の曲をヘヴィにアレンジしたら面白いんじゃないかなと思ったんです。原曲は全くヘヴィではなくて軽やかなポップ・チューンなんですけど(笑)。「ヒラリ」は僕が曲を書いてアレンジをして和田光司さんが歌われた曲なんですね。和田さんは亡くなってしまって、去年の8月に3回忌追悼ライブがZepp Tokyoであって、僕は「ヒラリ」を歌うボーカリストとして呼ばれたんです。そこでベースを弾きながら1曲歌わせてもらったんですけど、その時にせっかくボーカリストとしてZepp Tokyoという場に立たせてもらっているんだから、自分はもっとボーカリストとしてちゃんとしないともったいなと思ったというのがあって。そういうきっかけになった曲なので、「ヒラリ」はアルバムに入れたいという強い気持ちがありました。今回のアルバムのボーカル曲は、「ヒラリ」がスタートになったともいえますね。

――メロディーがしっかりした素材をヘヴィにアレンジすることで、独自のロック感を生み出しています。ただ、コード感のないオケに合わせてキャッチーなメロディーを歌うというのは、難しいことのような気がします。

IKUO:難しいですね。僕は自分の声があまり好きじゃないんですよ。歌うこと自体は好きだけど、そんなに練習しているわけではないし。サイドボーカルとして歌うことを練習したり、最近はBULL ZEICHEN 88でスクリームやシャウトの練習をしたりしていますけど。元々はBULL ZEICHEN 88のスクリーム担当ではなかったけど、自分がやることになってシャウトとかスクリームをメチャクチャ研究して、この歳になってずっと練習しています。今までは歌う喉とスクリームする喉は別物だと思っていたけど、意外とそうでもないんですよね。喉を酷使するというのはいいことで、自分の歌声もちょっと変わってきた気がす るんですよ。なので、今回のアルバムでは「Fly」や「Pride in motion」「Hands Up!」といった曲で、歪ませた感じの歌い方もしてみました。

――今なお新しいことに挑戦されているのは、さすがです。

IKUO:僕の中には、常にチャレンジしたいという気持ちがあるんです。何事に対してもそういう気持ちがあるし、特に歌に対しては強いかもしれない。それは、自分はなぜ歌モノが好きなのかということにもつながっていて、僕はボーカリストが好きなんですよ。西川(貴教/T.M.Revolution)君にしても、田澤(孝介/Rayflower)君にしても、栄二郎 (BULL ZEICHEN 88)にしても、歌が本当に上手い。そういう人達と一緒に活動していると、やっぱりボーカルはバンドの顔だなと思うし、本当は自分が憧れている職業なんじゃ ないかなという気がすることがある。だから、歌は上手くなりたいという気持ちは、常にあります。

――IKUOさんはエモーショナルさと力強さを併せ持った歌声ですし、ビブラートも心地好いですし。

IKUO:ビブラートは濃いほうですよね。僕は、アース・シェイカーとかが好きだったから。そういえば、僕はTETSUYA(L'Arc-en-Ciel)さんのライブで「READY STEADY GO」を歌ったことがあるんです。TETSUYAさんはベースを弾くから、僕に歌ってほしいということで。その時に西川君が観にきていて、“IKUOさんは、マーシー(西田昌史/アース・シェイカー)みたいだ”と言われたんです(笑)。それは、歌い方もビブラートも濃いということが言いたかったんだと思います(笑)。

――でも、クドい歌ではないです。

IKUO:そう言ってもらえると安心します。今はビブラートをあまりかけずに歌う人も結構いますよね。ビブラートをかけることで古クサく感じさせるものになってしまう危険性もあるけど、ビブラートをしっかりかけるのが自分のスタイルで、変えられないんですよ。

――メニカルなサウンドとエモーショナルなボーカルのマッチングを活かした独創的なナンバーを軸としつつ「Confession」や「僕らの約束」「Hand’s Up!」といったストレートな ロック・チューンも収録されています。

IKUO:その3曲は今回新たに作った曲ではなくて、ストックしてあったものです。作家をやっていた頃のストックがあって、今回の3曲は実は結構古い。「僕らの約束」は10年前くらいに作った曲で、「Confession」はもっと前だったかもしれない。

――昔に書かれた楽曲でもメロディーが古びた印象がないことから、普遍的なメロディーセンスを持たれていることがわかります。

IKUO:そう言われると嬉しいですね。僕自身も、その時代に流行っていたものを作ったと いう意識はなくて、昔ながらのアメリカンロックなどをイメージして書いた感じなんです。「僕らの約束」は、僕が好きなハンドレッド・リーズンズやオルタナティブロックがベースにある気がする。「Confession」は、元々はタンバリンやオルガンが鳴っていて、すごく古クサい昔ながらのアメリカンロックみたいなサウンドだったのをラウドにアレンジし直したんです。その2曲は元々リフはついていなくて、メロディーやコード進行が自分の中で好きだったんですよ。だから、いつか形にしたいと思っていたけど、BULL ZEICHEN 88にも、Rayflowerにも合わなかった。だから、今回ようやく披露できて良かったです。

――IKUOさんのアレンジ力の高さなどを、あらためて感じます。

IKUO:アレンジに関しては、こういう8ビートのシンプルなものを8弦ギターを使って仕上げるという難しさがありましたね。「Confession」と「僕らの約束」はそこに苦労しました。でも、ポップチューンで8弦ギターが鳴っているというのが今回一番意図したところだったので妥協したくなくて、いろいろ試行錯誤して今の形に落とし込みました。

――3曲入っているインストゥルメンタル曲に関しては、「Make you free feat.まらしぃ」でピアニストのまらしぃさんとコラボされていることがトピックですね。

IKUO:まらしぃ君は有名なピアニストで、YouTubeの“弾いてみた系”でトップクラスの子です。若い世代のプレイヤーだけど、SIAM SHADEのファンだったりするんですよ。僕は彼のアルバムに何度か参加しているんです。僕と淳士(dr/SIAM SHADE, BULL ZEICHEN 88等)君で参加したこともあって、それをまらしぃ君のYouTubeチャンネルで流してくれたりしているんです。今回1人だけゲストを呼びたいということで、まらしぃ君にきてもらうことにしました。まらしぃ君と淳士君と僕というピアノ・トリオ形態で、和田光司さんが書かれた「Butter-Fly」という曲を演奏したことがあって、それが動画にもなっ ているんです。それがすごく好きで、まらしぃ君に、あの感じを僕の曲でやってもらえませんかというオファーをして、『テニスの王子様』の主題歌だった「Make you free」を始めとして、僕が主題歌として書いた曲を3曲くらい送ったんです。そうしたら、まらしぃ君 が選んだのが「Make you free」でした。

――まらしぃさんのピアノを押し出した「Make you free feat.まらしぃ」は、アルバムの絶妙な彩りになっています。それに、打ち込みのように正確なプレイと人間味に溢れたプレイを使い分けるまらしぃさんのピアノは素晴らしいです。

IKUO:そう、彼はめちゃくちゃ上手くて、あらためてすごいと思いました。彼はピアニストとして高いスキルを持っていると同時に、ロックであることにすごくこだわりを持っているんです。今回も曲を送って、クリックは聴きつつも自由に弾いてもらって、そのトラックに僕と淳士君がリズム隊をつけたんです。

――ええっ! そうなんですか!?

IKUO:はい(笑)。抑揚があって、3人で“せーの!”で演奏したように感じると思うけどそうじゃない。彼のピアノは他の楽器を導いてくれるんですよ。彼が1人で弾いたトラックを聴くと、ドラムとベースはこうしたほうがいいというのがよくわかるんです。以前一緒に演奏したことがあるから、まらしぃ君もイメージしやすかったというのはあると思うけど、彼が独奏したトラックを聴いてビックリしました。そういう人だから、今回みたいな録り方ができたんです。
■落ち込むのと悔しいというのは似ているようで違うんですよね
■落ち込んだことを悔しさに変えれば前向きな気持ちになれる

――次に歌詞について。今作でIKUOさんが書かれた歌詞は、“自分を信じて自身が目指す未来へ突き進め”というメッセージが基盤になっていますね。

IKUO:今回僕が歌詞を書き下したのは「Fly」と「僕らの約束」「Road to tomorrow」の3曲ですけど、今回の制作で一番時間がかかったのが歌詞でした。とにかくテーマや言葉が出てこなくて、これは環境を変えたほうがいいなと思って、ファミレスに行く、街中に出てみる、自然の中を散歩するとかいろいろやってみたんですよ。RayflowerとかBULL ZEICKEN 88の歌詞を見直したりもしたけど、全然書けなかった。でも「Fly」は早く書けたんです。歌詞の量が少ないというのもあるけど、「Fly」は本当に自分が思っていることを形にしたんですよ。それを読んで、作詞家みたいな上手い言い方じゃなくてもいいから、自分が思っていることを書こうと決めたんです。「Fly」は言われたとおり前向きな歌詞だけど、それには理由がある。今年になって僕はかつてないくらいヘコんだことがありまして。“俺はダ メだ”と心の底から思って。

――IKUOさんの中では大きな出来事だったんですね。

IKUO:そう。人から必要とされなくなったら自分はどうやって生きていけばいいんだ...みたいな感じでしょうか。去年まで考えていなかったことを今年に入ってから考えるようになったんです。それで“ガーン!”ときて、その時に「Fly」の歌詞ができた。だから、前向きではあるけど自分を慰めたり鼓舞する歌ですよね、逆にいえば。“何度でもトライしてやる”と。悔しい感情というのはバネになる。落ち込むのと悔しいというのは似ているようで違うんですよね。落ち込んでばかりいると どんどんダメになっていくけど、それを悔しさに変えれば、またのし上がっていってやるという気持ちになれる。それで、ソロアルバムを作ろうと思ったわけで、そういう自分の内面を書いたのが「Fly」です。

――「僕らの約束」の歌詞は、昔のバンド仲間に向けたメッセージでしょうか?

IKUO:いえ、これは僕が飼っていた猫の歌です。今回のジャケットになっている、みーくんという猫。18年間飼っていて、今年の3月に死んでしまったんです。もともと心臓が悪くて薬を飲ませていたけど、18才になっても超元気だったんですよ。それが、突然目の前で スッと死んでしまった。家に帰ったら死んでいた...じゃなくて、目の前で息を引き取ったんです。「僕らの約束」は、みーくんと過ごした18年間のことを書きました。みーくん目線の歌詞で、“君”というのが僕のことなんですよ。みーくんのことを書こうと思ったけど、僕の目線だと悲しい言葉しか出てこなくて、それは違うなと思って。それで、みーくんの目線で僕のことを歌っている歌詞にしました。この歌詞はノン・フィクションです。“海の見える公園で”というのは、みーくんは当時一緒に仕事をしていた松本梨香さんが公園で拾ってきた猫で、“ボロく狭いワンルーム”というの は、当時の僕はそういう部屋に住んでいたんです。“AMAZE”というのは僕が使っているESPのベースのモデル名だし、“Long way”は僕のデビュー曲のタイトルなんですよね。“諦めないさ『誇り』なら迷わず手に入れろ”というのは「Long way」の歌詞なんですよ。だから、みーくんが僕にがんばれと言っているという歌詞です。
――リスナーの背中を押す曲になっています。では、続いて今作のベース・プレイについて話しましょう。

IKUO:ベースに関しては、今回は8弦ギターとベースをどう共存させるかということが一番大きなテーマとしてありました。8弦ギターは一番低い音が“F#”。ベースがF#でリフを演奏する時は4弦の2フレットになる。そうすると、かなり帯域が近くなるんです。ベースも“ローF#”まであれば下にいけるけど、僕はあえてレギュラーチューニングで、うまくベースとギターを絡めたかったんです。でも、そうするとベースの音が聴こえなくなってしまう。だから、エンジニアさんに前もって、どうやってベースを聴かせるかというところで苦労することになると思いますと伝えました。今回エンジニアはSTUDIO PRISONERというメタルコア専門のスタジオ......CRYSTAL LAKENOCTURNAL BLOODLUSTが愛用しているスタジオのHiro君にお願いしたんですよ。『Easy come,easy core!!』はポップな要素も必要なのでそこに対応できるかなという不安もあったけど、ここは8弦ギターのエキスパートに頼もうと思って。で、最初にあがってきたトラックはやっぱりベースが聴こえなかった。それで、ベースとギターをうまく共存させてほしいと伝えたら、“じゃあ、ちょっといろいろやってみます”とすごくいい形に仕上げてくれました。8弦ギターのローをかなりカットしたみたいですね。ギターのローをカットしてベースのハイ/ミッドを上げて、ベースはピッキングで聴かせる感じになっている。それが見つかったので、全曲このパターンでとお願いしました。

――クリア&ラウドなサウンドも今作の大きな魅力になっています。それに、こういう音像に持っていけたのは、Ledaさんがギターのゲインをかなり落としていることもポイントな気がします。

IKUO:STUDIO PRISONERのHiroさんというエンジニアはMETAL SAFARIというバンドのギタリストで、”今回ギターの音は僕が作ります”と言ってくれたんです。だから、Leda君はライン録りの素の音のデータをHiro君に渡して、それをHiro君がリ・アンプしたんです。8弦ギターで歪んでいないというのは、Hiro君のセンスなんですよね。バッキングはEVHの5150を使って、ソロはソルダーノを使ったと言っていました。で、彼はいろんなブースターを持っていて、見たことがないブランドのヤツなんですけど、“これが90年代のメタル・サウンド”“これが2000年くらいでこっちは2010年”とか言うんですよ。時代によってブースターを使い分けていて、それを駆使して今回のギターの音を創りあげたんです。

――ベース・プレイに関しては随所で超絶的なプレイを聴けますが、とりあえずライブで歌いながら弾くことは考えないようにしたのでしょうか?

IKUO:これでも制御しました(笑)。本当はもっと複雑にできたんですよ。BULL ZEICKEN 88みたいに、歌の後ろでもっとテクニカルなことをやりたかった。でも、これ以上やると歌えないというのがあったので。

――音源のベースであれば弾きながら歌える?

IKUO:わからない(笑)。これから練習するんですけど、自信はないです(笑)。サビの後ろで結構動いている曲が多くて、その辺は省略するしかないかもしれない。でも、ライブのことを重視し過ぎて極端にシンプルなベースを弾くというのは違うなというのがあったから。テクニカルな面とライブで歌いながら弾くことのバランスを考えて、ここかなというところに落とし込みました。

――ベースプレイで特に印象の強い曲をあげるとしたら?

IKUO:1曲目に入っているインストゥルメンタルの「EBM」ですね。1曲目に自分のテクニックを全部集約させようと思って、とにかくやりまくったので(笑)。たぶん、今まででも一番速いプレイをしています。

――スラップも含めて、かなりの高速プレイでいながら1音1音がクリアに聴こえることに圧倒されます。

IKUO:僕は、いわゆる“ロータリー奏法”というのを使っているんです。右手親指のアップダウンと中指のプルという3つの動きをはめていく奏法で、ちょっとハイポジにいった時は中指も加えた“ドドペペ”という4音になる。それを組み合わせています。「Pride in motion」の中間に出てくるメタルギターっぽいフレーズも、4音のロータリー奏法。ヴィクター・ウッテンがよくやる奏法で、今回はそれだらけです。これを売りにしたいという(笑)。

――IKUOさんならではの“饒舌ベース”にさらなる拍車がかかっていますね。

IKUO:「EBM」は、わざとそれを押し出しました。もうなにを言われようが最速にチャレンジしようと思って。それを「EBM」に集約させて、後は歌をしっかり聴かせるベースということを意識しました。

――とはいえ、他の曲もベースの聴きどころは満載で、特にベースソロはテクニカルなプレイが目白押しです。

IKUO:ベースソロは結構ありますね。ソロパートは全部アドリブです。なにも考えずにバァーッと弾くという。だから、二度と同じことは弾けない(笑)。

――ただ単に弾きまくっているわけではなくて、流れのあるソロになっていますよね。

IKUO:その辺は、事前に大まかな流れをイメージしているんですよ。でも、それくらいで、フレーズを決め込んだりはしない。あと、ギターソロはバックが地味になることが多いじゃないですか、特にベースは。だけど、70年代のラッシュやクリーム、ジミ・ヘンドリックスとかは、トリオでバトルするような感じになっていますよね。そういうトリオバンドならではのテイストを活かしたいというのはありました。

――バトルといえば、「Fly」のベース・ソロは掛け合いになっていますが、どなたかベーシストが参加されているのでしょうか?

IKUO:あの曲は、僕とLeda君のバトルです。ベース2本のように聴こえるけど、1本は8弦ギターなんですよ(笑)。8弦ギターというのは、スラップをやる人が多いんですよね。アニマルズ・アズ・リーダーズのトシン・アバシが8弦でスラップをやるのを流行らせたこともあって、ISAO君とかLeda君もスラップをするんです。「Fly」の裏テーマは“スラップ・バトル”で、実は2番のAメロのバッキングもベースじゃないんですよ。そこは、Leda君にスラップをしてもらってベースはお休みしています。「Fly」はMVも撮って、もうバトルだらけの絵にしました(笑)。

――8弦ギターのロー感というのはすごいですね。ベース・ソロでは、「Make you free feat.まらしぃ」のジャジーな速弾きも注目です。

IKUO:このソロはフュージョンを意識しました。これは3フィンガーを使っています。親指と人差指、中指で弾くパターン。ギターでアルペジオを弾くような感覚で、1本の弦を続けて弾くんです。ビリー・シーン的な3フィンガーではなくて、最近はそれを多用しているんですよ。自分の中で、僕の専売特許かなと思って(笑)。それに、「Make you free feat.まらしぃ」のソロはフレットレスっぽく聴こえるけど、普通のフレッテッドベースです。リアPUを使ってちょっとジャコ・パストリアスっぽくする...みたいな(笑)。

――『Easy come,easy core!!』は作詞/作曲ができて、歌も歌える超絶ベーシストというIKUOさんにしか作れないものですし、ベーシストのソロアルバムというイメージを覆す、聴きやすさも魅力的な一作になりました。

IKUO:そう言ってもらえると、めっちゃ嬉しいです。『Easy come,easy core!!』はベーシストに限らず、いろんな人に届くといいなと思っているんですよ。楽しんでもらえる自信はあるので、ぜひ聴いてみてほしいです。

――他では聴けない爽快感をぜひ味わってほしいですね。アルバムのリリースに加えて8月に東名阪ツアーも行います。

IKUO:今回はステージ上に3人しかいない形でやります。僕はベース&ボーカルというバンドのメインになる位置ですけど、とりあえずは演奏して、歌うことに必死だと思う(笑)。“ひぃひぃ”言いながらライブをするとは思いますが、楽曲はポップなのでお客さんにはもう好きにノッてもらって、思いきり楽しんでもらいたいですね。テクニックを目当てにきてくれる人はもちろん、楽器をやっていない人にも楽しんでもらえるライブになると思う。“Easy come,easy core!!”という言葉どおり、イージーな感覚で来てもらって、好きなように楽しんでスカッとして帰ってほしいです。

取材・文●村上孝之

リリース情報

『Easy come,easy core!!』
2019/07/24発売
KICS-3830 定価\3,000 + 税
1.EBM
2.Fly
3.Jumping out
4.Pride in motion
5.Confession
6.Arch of the rainbow
7.ヒラリ
8.僕らの約束
9.Hands Up!
10.Make you free feat.まらしぃ
11.Road to tomorrow
12.My Sharona

ライブ・イベント情報

<IKUO 2nd Live Tour ~Easy come,easy core!!~>
■出演
Bass.Vocal: IKUO
Guitar: Leda
Drums: KenT(The Winking Owl)
2019年08月04日(月曜日) 大阪MUSE(大阪)
問)サウンドクリエーター 06-6357-4400
2019年08月05日(火曜日) 名古屋ell.FITS ALL(愛知)
問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
2019年08月12日(月曜日) 高田馬場CLUB PHASE(東京)
[昼・夜2部制]
問)ディスクガレージ 050-5533-0888 ※昼と夜の公演は完全入替

関連リンク

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

新着