【chelmico インタビュー】
明るいイメージ?
そんなに単純じゃないです
曲を通して問いかけてる感じで
自分と向き合いたかったのかも
なるほど。それにしてもアルバム名を先に決めてたのが意外でした。「Fishing(Interlude)」の中でぼやかすように話されてたので、“なんで“Fishing”にしたの?”ってめっちゃ聴きづらいですけど…。
あはははは!
Mamiko
あのトラックで話してる通りなんですよ。その時に釣りをやりたかったし、語感がかわいらしいのもあったし。“いろんな人々を釣っちゃうぞ”とか言ってますけど、本当に聴いてくれる人が広がってきたからね。
Rachel
最近は小学生や3〜4歳の子もライヴに来てくれるもんね。だから、自分たちが挑戦しつつ、いろんな人たちをさらにガッと掴みたい。chelmicoに付いて来てほしいっていう意味も含めてます。
歌ってて、特に新鮮な曲を挙げるとすると?
「12:37」ですね。
Rachel
これは小袋成彬くんがメロディーを最初に書いてくれて、それに合わせてリリックを作っていったのと、ラップが短めでほとんど歌なのが新しい!
Mamiko
ギターから入るロックっぽいトラックも新鮮だったし、切れ目なくずっと歌ってるのも面白くて、この異質なトーンが小袋節って感じです。歌詞の内容はあまり清純ではないんですけど(笑)。
Rachel
タイトルの数字は小田急線で下北沢から新宿に行く時の終電の時間なんですよ。下北沢に住んでる子を、都合良く新宿に呼び出してしまうっていう曲。
Mamiko
相手と自分の視点が混ざり合ったリリックで、不思議なテイストだよね。小袋くんはもともと友達なんですけど、久しぶりに会った時に“もうすぐロンドンに住むんだよ”なんて言うんで、“えー! 寂しいね。それなら曲作ろうよ”って。結局はあっちに行ってから作ったんですけど、小袋くんも“あのタイミングで一緒に作ることになって、いい曲ができて本当に良かったよ”って喜んでくれて、“エモー!”ってなりました(笑)。
「BEER BEAR」ではお笑い芸人のトンツカタンの森本晋太郎さんが参加されてますが、これは導入の部分?
Rachel
そうです。ナレーションをやってもらいました。“ゲストヴォーカルで参加”ってアナウンスしちゃったから、歌ってるみたいな触れ込みになって慌てたよね?
Mamiko
そうそう! 森本も芸人仲間にすごく訊かれたって(笑)。“ラップしてるの?”みたいな。
Rachel
chelmicoのライヴのMCを何度かやってもらったりもしてるんですよ。
Mamiko
インターナショナルスクールを出てて英語ペラペラだから、あんな感じで物語の冒頭を彩ってもらいました。いい声なんですよ。
「ひみつ」「Navy Love」「Balloon」の流れもいいですよね。陰のある感情を上手く表現してて。
Rachel
意外となかったタイプの温度感の曲ですね。手放しで“楽しい!”だけじゃ終わらないというか。
Mamiko
「ひみつ」は“前科”をイメージして書いたんです。Rachelは恋の罪、私は誰かを殺してしまった罪を裏テーマに据えてね。人それぞれ秘密って絶対にあるし、広くとらえられるようにはしてます。
Rachel
全曲ポップだけど、一歩引いた目線があったりして、結構シニカルなんですよ。
Mamiko
「EXIT」もね。トラックがスペーシーな感じだったから、人間を俯瞰して見た時のことを書きたいと思ったんです。地球に遊びに来ている設定で。
あと、全編を通して“自分は自分でありたい”という想いが強く出てる気もしました。「Summer day」で《それが なにか 何様ですか》と歌ってたり。
Rachel
言われてみると、どの曲も尖ってますね(笑)。
Mamiko
「BEER BEAR」もかわいい曲のようで、何気に怖いからなぁ。なんか、ひとつひとつの曲を通して問い掛けてる感じですね。“あなたの生活はどうなの?”って。たぶん、自分と向き合いたかったんでしょうね。自分のスタイルをちゃんと持ってるのが、ラップが上手いってことだと思うし。
Rachel
釣りに行きたいと思ったのも、自分たちのことに集中したかったからなのかもしれないね。
シニカルな一方で、人間臭くもありますよね。「仲直り村」の《言葉にすればするほどなんか離れてくよな でも言葉にするのやめたらやっぱそれは違うな》のリリックとか。
Mamiko
こんなに叫ぶように歌う曲もなかったもんね。
Rachel
そうだね。キーが高くて、もう絶唱してる感じです!
取材:田山雄士