【ライブレポート】R指定主催<メン
ヘラの集い 2019>。ミオヤマザキら
一筋縄ではいかないメンツが集結

R指定が主催するイベントライヴ<メンヘラの集い 2019>が、8月12日に大阪・服部緑地野外音楽堂にて開催された。
前日11日には同じ場所で<R指定真夏の単独公演 スーサイドサマーキラーズ3>が行われたのだが、その熱が冷めやらないうちに二日間続けてライヴが観られるというのは、ファンにとっては嬉しいことだろう。なお、本イベントの主催者であるR指定は、現在のヴィジュアル系シーンを牽引しているバンドではあるが、その他の出演者に関しては、敢えて同じジャンルではないところから誘っている。ジャンルの枠を飛び越えて良い音楽を聴き手に届けたいという主催者の想いはもちろんのこと、<メンヘラの集い>というライヴタイトルからもわかるように、一筋縄ではいかない癖のあるメンツが一堂に会した。
正午過ぎ、焼け付くような暑さの中でオープニングアクトを務めたのは、NANIWA TAKOYAKI ROCKERS。メンバー全員、お揃いのタコのぬいぐるみ付きヘアゴムで前髪を結んでの登場だ。1曲目から「人、集まってなさすぎやろっ!」と悪態を付きながら歌うマモ(Vo)。確かに、集客を観る限り昨日と比べて寂しい感じはしたが、NANIWA TAKOYAKI ROCKERSの正体がR指定だとわかっていたら、会場は超満員になっていたはずだ。彼らはKinKi Kidsの「ジェットコースター・ロマンス」を披露するなど、いつもとは違う一面を見せながらも、たったの3曲をすばやく演奏すると「今日1日楽しんで帰って下さい!」と言い残し、ステージを後にした。
続いて登場したのは、小島ふかせ(Vo/G)率いるジャズクラシックハートフルジャパニーズポッププログレッシブロックバンドの哲屑廃棄。メンバーはどこからどう見ても真夏の野外ライヴとは不釣り合いとも思える容姿なのだが、阪神タイガースのユニフォームを着用して「六甲おろし」をリハーサルから本気で歌うなど、最初から観客の目を惹いていく。そのまま本番がスタートすると、本能のままに歌い、演奏する姿に客席からは拍手がこぼれる。「拍手禁止」とボソリと呟く小島。そのあとには「3日前から来てました。帰りたくないので、帰らせないように頑張って下さい」と言うと、テンションを変えることなく、「バーサス」「アドバンス」と最後まで一気に駆け抜けたのだった。
「呪」がコンセプトの4人組アイドルグループ・じゅじゅがステージに現れると、男性ファンは大きな歓声を上げてステージを盛り上げようと努める。客席だけでなく、会場後方の芝生エリアからも彼女たちを応援するファンの姿は実に爽快であり、曲中に行われる合いの手があることで楽曲がより引き立っているとも言える。メンバーのねうに向かって“かっこいいー!”という声がたくさん聞こえた「非実現聖少女」は、8月6日にリリースされたばかりの新曲。作曲を手掛けたのは、本日の出演者でもあるアーバンギャルドの松永天馬(Vo)によるもの。それだけに楽曲の良さはお墨付きだが、彼女たちの透き通るような歌声と切れ味抜群のダンスを観て、ファンだけでなく初見の人もハマッたに違いない。
本日のイベント出演者の中で最も人数が多いグループといえば、虚飾集団 廻天百眼だ。“美しく激しく狂おしく、この世とあの世の境界劇を演じる暗黒エンターテイメント劇団”とあって、個性的なメンバーが集まっている。それだけに、ステージのどこを見ても楽しめること間違いなしであり、一瞬でも目を離してしまったらもったいないというパフォーマンスが続いていく。この日は野外での公演というだけに、「深淵のパレード」では客席に向かってメンバーが柄杓で水をかけるという涼しいサプライズもあった。他にも、艶やかなパフォーマンスは続き、最後まで観客に対して“魅せる”ということに徹底したステージングだった。
“ぴかりん!待ってました!”というファンの大きな声と共に、ぴかりんこと椎名ひかりが登場。キュートな笑顔に、会場にいた誰もがメロメロ。だが、ただの可愛らしい女の子と思ったら大間違いだ。「ドゲザナイ」ではサッと客席に降りるや否や、その場で跪くファンの上をズカズカと歌いながら踏み歩いていくという悪女っぷりを発揮。新曲の「魔界狂操曲」ではステージ端にあるスピーカーに勢い良く乗るなど、やりたい放題。まるで子猫のように無邪気にはしゃぐ姿はファンならずとも魅了される。もちろん最後はお決まりの台詞、「アリガタキ!」で締め括ると、元気いっぱいにステージを後にした。
イベントの中盤で登場したのは、見世物パンク一座、ストロベリーソングオーケストラだ。彼らもR指定のライヴには事あるごとに出演しているだけに、指定女子(R指定ファンの総称)からの認知度も高い。それゆえ、客席のあちらこちらから“座長~!”と黄色い歓声が沸き起こっていた。また、イベントライヴといえども自分たちのスタイルを崩すことはない。「二十一世紀狂闘旗手」で見せてくれた重厚なパフォーマンスは鳥肌モノ。だが、さすがに外の気温が暑かったせいなのか、MCでは「R指定は何でこんな暑い日にイベントをやったんだ? マゾなのか、あいつら?」と吐露する。楽曲の持つ重々しさとは裏腹に、こうした一瞬のコミカルさが指定女子に人気の理由かもしれない。
夕方になったというのに日が陰ることはなく、むしろ暑さは増す一方。そえゆえ、アーバンギャルドのリハーサルでは、ヴォーカルの浜崎容子が日傘にサングラスという日焼け対策を完璧にしながらの登場という、とてもレアな姿を見ることができた。そこからしばらくして本番に入ると、お人形のように真っ白な肌がよく映える赤いミニドレスを纏って観客の前へ。息を飲むほど美しいその横で、松永天馬(Vo)と、おおくぼけい(Key)が今日も個性的に暴れ倒す。「メンヘラでー?」“ごメンヘラ~!”という松永と客席のやり取りも楽しかったが、やはり印象に残ったのは、演奏中に撮影してOKという前衛的な楽曲「自撮入門」だろう。その後もアーバンギャルドワールドをとことん見せ付けてくれた。たっぷりと見せてくれたがそれでも物足りないと思った人は、9月8日に彼らが主催するイベントライヴ<鬱フェス>が東京・TSUTAYA O-EASTにて行われるので、是非とも足を運んでいただきたい。R指定やじゅじゅといった“闇を抱える”アーティストが多数出演する。
R指定のライヴに出演することも多いミオヤマザキ。だが、この日は決して条件の良い中でライヴができたわけではなかった。というのも、炎天下のせいで本番前にパソコンがぶっ壊れ、そのあとすぐにベース機材もぶっ壊れたからだ。ここにくるまで、<47都道府県完全無料ワンマンツアー>や<ROCK IN JAPAN FESTIVAL2019>とライヴ三昧の夏を送ってきたのに、なんという仕打ち。“R指定め、真夏の野外でライヴをやりやがって……”とメンバーが言ったかどうかは定かではないが、心の中でひっそりと中指ぐらいは突き立ててほしいという願望は、我々ミオラー(ミオヤマザキ ファンの総称)にはある。

何にせよ、好条件でのスタートではなかったのだが、そこはライヴ百戦錬磨の彼ら。「ミオヤマザキです、始めます」の合図と共に、順調にライヴを展開していった。mio(Vo)の畳み掛けるようなリリックに合わせ、スタイリッシュな演奏が脳内を刺激していく。来年1月には横浜アリーナでワンマンライヴが決まっているミオヤマザキ。それだけに、今日のような明るい日差しの下、近距離で彼らのライヴが観られたことはかなり貴重だ。
トリを飾ったのはR指定、本日のイベントの主催者だ。それにしても、オープニングアクトのNANIWA TAKOYAKI ROCKERSとしてステージに出てから、既に5時間以上が経過している。すっかりお疲れ気味かと思いきや、冒頭から「いけるか、大阪! やれんのかー!」とマモが煽る。なんということだ、今からライヴが始まりますよというぐらいのテンション感ではないか。一体どこからそんな元気が出てくるのか。それはもう、ライヴが好き、それだけの理由によるものだろう。「喪失-soushitsu-」でカウンターパンチをくらわせたあとは、「あのこ」や「アイアムメンヘラ」といった、“メンヘラによるメンヘラのための楽曲”を立て続けに披露。

中盤のMCでは「陰キャのみんなも今日だけは陽気になって帰って下さい」と皮肉めいたことを言うも、「メンヘラの皆さんにぴったりの曲です」と「殺したいぐらい愛してる」を。「魅惑のサマーキラーズ」では、ミュージックビデオにも出演した椎名ひかりがゲストとしてステージに呼ばれるなど、イベントらしい面白さもあった。ラストの「波瀾万丈、椿唄」では、楓(G)と七星(B)が演奏しながらハイタッチを交すなどどこまでも陽気だった。「大阪~、めっちゃ好きやねん!」というマモの一言でR指定のライヴは終了。
続いて、アンコールセッションとして、「病ンデル彼女」が披露されたのだが、ここでは今日出演したアーティストが総登場して会場を湧かせた。中でも目立ったのが、この日誕生日を迎えたアーバンギャルドの松永天馬にバースデーケーキが振る舞われるサプライズがあったことだろうか。出演者と観客によるバースデーソングの熱唱に、サプライズを知らされていなかった松永は大いに喜ぶ。だが、ここは<メンヘラの集い>。
そのまま普通にケーキを食べさせてもらえるはずはない。最終的には、喜ぶ松永に向かって顔面ケーキがお見舞いされるはめに。炎天下の中、客席からの「顔面ケーキ」コールに応えるべく、以前、松永とドラマ共演したことのある椎名ひかりがケーキを思い切り投げ付ける小気味良さといったら。これで、松永としても歴代の誕生日を振り返ったときに今日の出来事はなかなか忘れることはできない思い出となったはずだ。
ジャンルの壁を越えて楽しめるイベントを作りたい、それこそがR指定が<メンヘラの集い>を立ち上げたきっかけだ。だからこそ、“ヴィジュアル系だから”、“アイドルだから”、なんてカテゴライズするのはナンセンスではないだろうか。何に対しても、“こうあるべき”というのは演者自身が決めることであり、アーティストが楽しんでいる様子を観られることが我々オーディエンスは1番嬉しい。それだけに、<メンヘラの集い>のようなイベントは音楽シーン全体にとって必要であると思うし、年々、規模を拡大して続けていってほしいと思う。

取材・文◎水谷エリ
撮影◎菅沼 剛弘

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