【詳細レポート】氷川きよし、20周年
&バースデーの大阪城ホール「愛を歌
うために生まれてきた」

9月6日、氷川きよしのデビュー20周年を記念したコンサート<デビュー20周年記念コンサート~あなたがいるから~in大阪城ホール>が大阪・大阪城ホールにて開催された。同会場では初の単独公演、そして公演当日が42歳の誕生日ということもあり、昼夜2公演で計1万6000人のファンが集結。メモリアルイヤーを祝う公演は7月に東京・日本武道館でも開催されていたが、この日は前回以上に気合に満ちた歌唱でファンを圧倒した。
開演時刻を少し過ぎたころ、場内が暗転すると雷鳴が轟くなかダンサーたちが怪しげに舞う。迫力満点の映像が映され、スモークが立ち込める会場はまるでファンタジー映画やRPGゲームの世界にでもいるような荘厳な音楽が流れ、これから何が起こるのか…観客らはただ静かにその時を待っていた。そしてステージ奥にある大きな扉が開き、氷川きよしが登場! そのままステージから伸びる花道中央へ進むと、グリーンカラーに煌めく洋装に黄金色の登り龍を纏い、未発表曲「龍翔鳳舞」を披露。小節をきかせた雄々しい歌唱、優しくもしっかりと前を向いた歌詞を持つ楽曲だが、歌唱中もステージはどんどんと高さが上がり、なんとステージ上5mの高さに! 龍の尾をイメージしたドレスのトレーンは長さ20m近くあり、ひらひらと舞う様も優美で、タイトルをそのまま体現したステージに会場からは大きな拍手が届けられる。
「自分にしか咲かせられない花を咲かせて。私らしく、そしてあなたらしく」という言葉とともに、真っ赤な花びらが舞う映像が映し出され、同じく未発表曲「それぞれの花のように」へ。“ファンのみなさんのための衣装”と、スタッフが話していた衣装は大輪の花を咲かせたような真っ赤なマーメイドドレス。客席へ向けて何度も何度も深くお辞儀する姿も印象的だ。続いては、ゴールドのスパンコールで輝くロングジャケット&パンツの衣装で「勝負の花道」へ。歌詞に合わせた観客との合いの手も息ばっちりで、氷川の表情にも朗らかな笑みが見える。
その後は「星空の秋子」「純子の港町」「雪子の城下町」と女性名シリーズをメドレー形式で。司会の西寄ひがしのナレーションで作品に思いを馳せつつも、観客はみなペンライト片手にうっとりとした恍惚の表情を見せる。それもそのはず、氷川が1人1人に目配せするように歌うものだから、みな一挙一動を逃すまいとステージに魅入っているのだ。

ステージはまだまだ序盤、氷川からの挨拶タイムも。オープニングに歌った2曲について「今の氷川きよしの心情と決意を歌わせてもらった」と曲に対する思いを語る。そして、初の単独公演となった大阪城ホールの会場の広さに感慨深そうな表情を見せ、集まってくれた観客へ感謝の気持ちを述べる。そして、7月の東京に次いだ大阪での公演に際し、公演名をあえて変えたことについて「大阪にいるあなたがいるから、氷川きよしはここまで歌ってくれた」と語り、「20周年、たっぷりと自分の歌を送りたい。最後の最後まで。全力で魂を込めてやります!」と、気合いの拳を掲げる。そしてデビュー当時を振り返りつつ、所属事務所の今は亡き社長への追悼の思いを込めた「櫻」、続く「出発」では健やかな笑顔を見せ、次への道へと進む姿を歌で表現する。その後は「東京恋始発」「面影の都」など、氷川節全開の歌声を聴かせ、指先の所作さえも美しい姿で観客を魅了していく。
ピンクをベースにしたモダンな着流しに衣装チェンジし、8月に発売されたシングル「大丈夫」へ。氷川はダンサーとともにフロートに乗り、会場をぐるりと一周。ご機嫌なリズムに合わせ、オッケーサインや手拍子で大盛り上がりの観客たち。「きよしの令和音頭」「ズンドコ節」と、アリーナ席の観客らは間近で歌う氷川の姿に黄色い歓声を上げ、合いの手もいつも以上に大きくなる♪ 花道中央へ戻り、次の曲へ…というところで、バースデーソングが流れ、大きな誕生日ケーキが登場! 大阪らしい、タコヤキ型のシュークリームケーキに「ホンマや~♪」と、関西弁で喜ぶ氷川。観客全員からのおめでとうの言葉に、「みんな好き♪ 間違いなく愛してます♪」と愛のメッセージも。そして、両親への感謝の気持ちも語り、「歌を聴いてもらうことが自分への励み。応援してくれる人に、生まれてくれてありがとうの気持ちを込めて」と、お祝いのお返しにと、幼少期の写真(未公開も多数!)をスクリーンに映しながら「素敵なバースディ」へ。“今日は私の特別な日♪”と歌い、時折目を潤ませながら歌う彼の姿につられ、すすり泣く観客の姿も。さらに、自身が歌う歌について「歌、平和、愛を歌っている。自分の歌を通してみんなが幸せになってくれたらいいなと思っている。それを伝えるために生まれてきたと確信している」と、改めて音楽に懸ける思いを語る。それでも「42歳にもなれば、自然体で生きるのが一番だと思う」と、会場をほっこりさせるシーンも。
ステージ中盤には股旅演歌シリーズとして、三度笠片手に股旅衣装に着替え、スクリーンに歴代のコンサートでの歌唱シーンが映されるなか、デビュー曲「箱根八里の半次郎」や「近江の鯉太郎」、「大井追っかけ音二郎」など続けて披露。キリリと男らしい姿を見せつつ、氷川節をこれでもかと聴かせ会場を盛り上げていく。衣装チェンジの合間には司会の西寄ひがしが氷川きよし20周年の活動についての思い出を語っていく。19年間寄り添ってきた彼だからこそ見える、思いのこもった語りはじわりと心に染み、観客からは大きな拍手が送られた。
演歌歌手・氷川きよしではなく、人間・氷川きよしとして歩んでいくため、枠に囚われないアーティストとしてのステージを見せたいと、歌手として新たな表情を見せた“ロック演歌”の代名詞ともいえる「男花」から、これまでとは違った妖艶でいて大胆なステージが繰り広げられていく。紫の紋付袴にシースルーの羽織、オールバックの長髪姿で艶を増した出で立ちで登場し氷川は生バンドの演奏をバックに、力強い歌声を聴かせる。また、「男の絶唱」「白雲の城」では迫力に満ち満ちた歌声で観客を圧倒!
楽曲ごとに様々な表情を見せる彼の魅力が溢れるステージはまだまだ続き、ステージは後半へ。サングラス姿にカラフルな洋装姿でダンサーたちとキレッキレのダンスを繰り広げながら「咲いてロマンティカ」「ときめきのルンバ」などポップなナンバーを次々に披露。アイシャドーもばっちりで妖艶な表情を見せつつ、熱情たっぷりに歌い上げると、あっという間に衣装を早替え! レインボーカラーのタイトなボディスーツの衣装で足を高く蹴り上げる大胆なパフォーマンスも飛び出していく。そして、この曲も忘れてはいけない! 「限界突破×サバイバー」では、8月に開催された<アニサマ2019>に出演したときの衣装をさらにバージョンアップさせ、真っ黒なアイシャドウに真っ黒な天使の羽を背負い、クレーンに乗って4mもの高さから熱唱! ハイトーンボイスを聴かせたと思いきや、ヘドバンあり、シャウトあり、ギターソロにドラムソロも入るなど、もはやロックアーティストのライブばりのパフォーマンスに観客は度肝を抜かれる!
本編最後にはグッズTシャツにダメージデニムパンツ姿と、ラフな姿で登場し、「(曲数)たっぷりでしょ? お買い得だと思います」と、この日のライブを振り返り、「hug」などのポップスナンバーを届ける。「人間、氷川きよしの人生を歌いたい。現在、過去、未来をテーマに、演歌では伝えきれない言葉をポップスや歌謡曲に乗せて表現することも大好き」と、自身の今の心境を描いた楽曲や幼少期の思いや苦悩を綴った楽曲など、曲それぞれに込めた思いを語り、「冬のペガサス」「メトロノーム」へ。演歌を軸にした歌声はロックやポップスになっても説得力や表現力豊かなままで、歌う言葉ひとつひとつがじっくりと聴く者の心に届いているのが伝わってくる。氷川自身も感情を込めるあまり、涙を浮かべ思わず声が詰まるシーンも…。そして本編最後は「碧し」、全身から声を振り絞り、顔をくしゃくしゃにして絶唱する姿に魅せられ、会場からは割れんばかりの拍手と歓声が送られた。
アンコールでは天使を思わせる、羽が舞うような真っ白なロングドレスを纏い、ステージ4mの高さのブランコに乗って「あなたがいるから」を歌う。ラストには会場を見渡し、ノーマイクのアカペラで渾身の歌声を響かせ、歌手・氷川きよしの確かな実力を見せつける。さらにダブルアンコールでは「これからも歌に思いをこめて、歌に全てを伝えて。命ある限り、歌い続けていきたい」と改めて思いを誓うと、再び「大丈夫」を披露。ステージを右へ左へと走り、「最高!!」と溢れる思いを叫び、全44曲のステージが幕を閉じた。
演歌歌手、そして歌手・氷川きよしの20周年の集大成となったこの日のコンサート。次のステージへさらなる歩みを感じさせてくれた彼の今後の活躍に期待したい。
取材・文:黒田奈保子

<氷川きよし デビュー20周年記念コン
サート~あなたがいるから~in大阪城ホ
ール>

2019年9月6日 @大阪・大阪城ホール
[ セットリスト ]
01. 龍翔鳳舞
02. それぞれの花のように
03. 勝負の花道
04. 星空の秋子
05. 純子の港町
06. 雪子の城下町
07. 櫻
08. 出発
09. 東京恋始発
10. 瀬戸内ブルース
11. 面影の都
12. 大阪とんぼ
13. 大丈夫
14. きよしの令和音頭
15. きよしのズンドコ節
16. 素敵なバースディ
17. 最上の船頭
18. 箱根八里の半次郎
19. 近江の鯉太郎
20. 月太郎笠
21. 大井追っかけ音次郎
22. 人情取手宿
23. 三味線旅がらす
24. 花の渡り鳥
25. ちょいときまぐれ渡り鳥
26. 番場の忠太郎
27. 男花
28. 時代(とき)をかける男
29. 一剣
30. 男の絶唱
31. 白雲の城
32. 咲いてロマンティカ
33. ときめきのルンバ
34. 愛しのテキーロ
35. 虹色のバイヨン
36. 酔わせてオルホ
37. 情熱のマリアッチ
38. 限界突破×サバイバー
39. hug
40. 冬のペガサス
41. メトロノーム
42. 碧し
【アンコール】
43. あなたがいるから
【ダブルアンコール】
44. 大丈夫

<氷川きよしスペシャルコンサート201
9~きよしこの夜 Vol.19>

12月11日・12日 東京・国際フォーラム
チケット一般発売:11月9日

氷川きよし『大丈夫/最上の船頭』D・E
・Fタイプ

2019年8月27日発売
「大丈夫」作詩:森坂とも / 作曲:水森英夫 / 編曲:石倉重信
「最上の船頭」作詩:松岡弘一 / 作曲:水森英夫 / 編曲:伊戸のりお
【Dタイプ】
COCA-17664 / 1,204円+税
C/W「あなたがいるから」
作詩・作曲:塩野雅 / 編曲:野中“まさ”雄一
【Eタイプ】
COCA-17665 / 1,204円+税
C/W「カシスソーダを飲みながら」
作詩・作曲:永井龍雲“編曲:萩田光雄
【Fタイプ】
COCA-17666 / 1,204円+税
C/W「きよしの令和音頭」
作詩:かず翼“作曲:桧原さとし“編曲:矢田部正

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