【奥華子 インタビュー】
デビュー15周年記念だし、
このタイミングで
全部出し切りたかった
認めてくれる人がひとりいるだけで
自分を好きになれたり、自信が持てる
あと、今回のベストには前述の新曲「はなびら」が収録されているわけですが、これは映画『殺さない彼と死なない彼女』の主題歌という。
もともと原作の4コマ漫画を好きで読んでいて、自分が書く歌詞の世界観と似ていると思っていたんですよ。“君の隣で、世界は変わる。”というキャッチフレーズの通り、ひとりの人によって自分の世界は変わるし、それぞれ孤独を抱えているけど、孤独だからこそ誰かとつながりたいと思えたり、生きる意味を探せると思うんです。映画の主題歌だから映画に寄り添ってるんですけど、この映画を観てない人にも届くような、光が見えるような曲にしたいと思って作りました。
《あなたが名前を呼んでくれた時 はじめて自分を好きになれたの》というフレーズが印象的でした。
自分を認めてくれる人がひとりいるだけでいいんですよ。それだけで自分を好きになれたり、自信が持てたりするから。それってこの映画もそうだし、そこが私の書く歌詞とも共通しているテーマなような気がするんです。もちろん“ひとり”は誰でもいいわけじゃなくて、《あなたじゃなければ》ってことなんですけど。自分も誰かのそういう人になりたいっていうことも含めて。この映画を観た時に“誰かの心の中に一瞬でも自分の生きた証を残せたらいい”って思ったし、はなびらのように一瞬で散ってしまうものでも、その人の心の中にずっと残るもの…そういう人でありたいと思って“はなびら”というタイトルにしたんです。
《花びら舞い散るように あなたがそばにいてくれたから》ということですね。儚いけど、大切に思うというか。
長さじゃないんですよね。それこそ人生なんて一瞬だと思うし。その一瞬のうちに、誰の心の中に自分を残せるのかっていうことですね。
原作の中に“ひとりは我慢できたけど、孤独は耐えられない”というような台詞もありましたけど、そういう人の存在の大切さもありますよね。これは心の中に残されたほうの気持ちでしょうけど。
うんうん。そういう人に出会えるだけでも幸せだと思えますしね。
併せて劇伴も手掛けられたわけですが、もともと映画音楽には興味があったのですか?
全然なかったです(笑)。小林啓一監督は今までご自分の作品にあまり音楽を付けていなくて、今回も3曲くらいというお話だったんです。“3曲なら頑張れるかな”と思ってお引き受けしたら、結局20数曲作ることになって(笑)。でも、すごくいい経験をさせてもらいました。
“奥華子=失恋ソング”と言われていたり、歌声が評価されているわけですけど、歌のないインストに奥華子の色を求められていたわけですよね。
う〜ん、どうなんだろう。そこは自分では意識してませんでしたね。“そのシーンに音がないと笑っていいのかも分からないから、それをピアノの音で導いてほしい”というのは監督さんから言われました。あと、“歌舞伎の三味線みたいな合いの手となる音楽が欲しい”とも言われましたね。だから、台詞の一部のような音楽を求められて…そうじゃないものもあるんですけど、それがめちゃくちゃ難しかったんですよ。最初の10曲くらいは“弾きすぎてます”ってダメ出しされたし、奏でないことの難しさは究極でした。でも、音楽によってまったく観え方が変わるんだなって勉強になったし、誰かと一緒に作品を作ること…自分の作品でもアレンジャーさんと作ったりはしますけど、それとはまた違う喜びみたいなものがありました。
自分の作った音楽と映像が合わさったものを観ての感想は?
最初に監督さんにダメ出しされた時に“なんでなんだろう?”って思ってたんですけど、完成したものを観た時にすごく納得しましたね。“あっ、こういうことだったのか‼”って。
では、デビュー15周年を迎えたわけですが、どんな15年でしたか?
私の場合は曲がなかなかできないので、ずっと苦しんでいる気がするんですけど、そう言いながらも15年やってきて、よく10枚もアルバムが作れたなって。いつも締め切りに追われているし、アルバムが完成したと思ったらすぐにツアーがあるし、走り続けてきた感じがありますね。それだけ健康なんだと思います(笑)。1回もライヴをキャンセルしたことがないですから。
きっと止まるとダメなんでしょうね。
あー、それはありますね。ツアーが終わった次の日は絶対に熱を出してますもん(笑)。
(笑)。最後にうかがいたいのですが、奥華子がこの先に目指すものは?
今回のベストで全部出し切ったので、それを見付けるまでは大人しくしていようと思ってます。来年以降のスケジュールも白紙ですし。
熱が出ますよ(笑)。
あははは。でも、そういうことができるのは今しかないと思うので、しばらくはインプットする時期というか、それを見付けたりしたいですね。
旅行に行ったり…っていうタイプでもないですね(笑)。
どこにも行きたくないです(笑)。家で今はまっている『キングダム』をずっと観ていたい(笑)。人生、何があるか分からないし、そんなに長くもないから、後悔のないように生きたいと思うので、今は“何をしよう?”って考えるのを楽しんでいるところですね。
取材:石田博嗣
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オクハナコ:シンガーソングライター。キーボード弾き語りによる路上ライブをはじめ1年間で2万枚のCDを手売りし驚異的な集客力が話題となり2005年メジャーデビュー。劇場版アニメーション『時をかける少女』の主題歌「ガーネット」で注目を集める。聴く人の心にまっすぐ届く唯一無二の歌声は年齢問わず幅広く支持されている。また数々のCMソングや楽曲提供を手掛けるなど活躍の場を広げている。奥華子 オフィシャルHP
「はなびら」MV
(映画『殺さない彼と
死なない彼女』Ver.)
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