【スターダスト☆レビュー
インタビュー】
60歳を超えたおっさんたちが作った
という意味ではかなり活気的な作品
今のスタレビは笑っていいんだ、
楽しくていいんだ
また、サウンドも多彩で。しかも、音楽好きがニヤッとしそうなオマージュも各曲各所で見受けられます。
そうですね。音を聴いてくれた人がニヤッとしたり、“すげぇ!”と感じてくれることが一番の喜びでもあります。過去の要素をどう自分流に料理できるかにマニアは愛情を抱くわけで(笑)。一般の方の多くは歌やメロディー、歌詞を楽しみますが、音楽をより楽しむ方々はサウンドや各楽器、アレンジまでも聴き込むので、我々オタクが作る音楽はついついその傾向が強くなりますね。でも、それによってこだわりばかりが強調され、聴きづらい作品になっては本末転倒で。スタレビを聴く方々にはとにかく心地良さを提供したいですから。とはいえ、その心地良さだけで終わっていくのも嫌で(笑)。
わりと両極ですからね(笑)。両立が難しそうです。
そう考えるとプロデューサーの力は大きいですよ。さすが佐橋です。彼はいつもデモテープより実際に目の前で僕が歌った歌を聴いて、パッと…例えば“これはトッド・ラングレンだね”とアイデアを出してくれたり。あえてそこからコード進行もトッド・ラングレン風に寄せたりして。そうやって作っていくうちに、聴き手のニヤッとする顔が浮かんできて、ふたりでさらニヤッとなるんです(笑)。
私がもっともニヤッとなったのが1曲目の「働きたい男のバラッド」でした。
実は、この曲のもとは90年代に作っていたんです。林とサラリーマン讃歌みたいなのを作ろうって。ちょうど“企業戦士”なんて言葉も出した頃だったんで。周りから“サラリーマンの経験がない奴の歌なんて信憑性がない”と却下されてしまったんですけど、それをもとに些細なデモテープを作っていたんですね。今回、それを佐橋に聴いてもらったら“これはすごい! 絶対にやりましょうよ!”と(笑)。で、今の時代向けに歌詞を書き直したんです。
現代に則しつつも、今の時代、忘れ去られた昭和~平成初頭のサラリーマン気質の同居も感じました。
今って働き方改革やコンプライアンス等で、本来働きたくてウズウズしている人たちも無制限に働けないじゃないですか。僕らはたまたまライヴ好きで歌いたいだけ歌えてたけど。そうしたらこのコロナ禍の自粛や新しい生活様式等で思いっきり働けない世の中の状況と重なったっていう。
いやー、これはアルバムの1曲目にしてかなり痛快で。“やられた!”感すらありました(笑)。
1曲目に持ってくるのは周りから猛反対を食らったんですけどね(笑)。いわゆるスタレビのアルバムの1曲目っぽくないと。だけど、自分の中では“今のスタレビは笑っていいんだ。楽しくていいんだ”というのが根底にあったので、そこは強引に通しました。歯ごたえのないアルバムにはしたくなかったし、40周年だし、自分たちの意志の込った、今までになかったアルバムにしたかったので。おかげさまでかなり雑多で統一感のないアルバムになっちゃったけど(笑)。でも、“40年もやってきてアルバムのまとめ方も知らないのか?”っていうアルバムにしたかった自分もいて。もうここまできたら、“さすがベテランだね”と感心させる作品は自分の中では失敗作だとさえ思ってます(笑)。むしろ、“何なんだ、この若造みたいなアルバムは!?”と称してほしいぐらいですから(笑)。
取材:池田スカオ和宏
「偶然の再会」MV
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