【渋谷すばる リコメンド】
全身全霊の10曲にあふれていた
“歌が必要だ”と思う理由
“まだ見ぬ誰か”から
世界中にいる“誰か”へ
自分がやりたい音楽を楽しみながら夢中で届けたデビューアルバム『二歳』は、第一に“渋谷すばる”というひとりのアーティストを掲げたパーソナルな作品で、“まだ見ぬ誰かに宛てた歌”という印象があった。誰に届くのか漠然と想像を膨らませながら制作をするのは、この先も変わらないことではあると思うが、『NEED』ではその“誰か”の輪郭が少し見えてきている気がする。というのも、「Noise」に《抗うより他の答えを 見つけられるよ 僕らなら》と一人称複数の“僕ら”を使った心強いフレーズがあることや、「素晴らしい世界に」では《心を繋いでみないか/君と僕の心を》と背中を押すような問いかけをしていたりと、誰かと想いを重ね合わせている様子がうかがえるからだ。それらの言葉選びを聴いて、誰のことも傷つけない音楽をやることや、葛藤した時間も込めて言葉を紡ぐことなど、今作の制作で明確になったスタンスもあるのではないかと感じる。また、『二歳』をリリースして出会った人や再会した人のことはもちろん、彼の中で自分の音楽を届けたい人が世界中にいることがより鮮明になっていったのではないだろうか。
最後に収録された「Sing」は、幸福感のあるサウンドと渋谷の高らかな歌声に続いて、ライヴでオーディエンスがシンガロングしてこそ完成すると言える一曲。出だしの《言葉では言えない事も 心から心へと繋がる》には、音楽だからこそ素直な自分が表現できる渋谷の真摯なアーティスト性と、これまでに音楽で感じてきた愛の数々が受け取れる。《ここから どこまで/飛んで行けるかな》と未来への期待を馳せる場面もあり、冒頭で聴いたアカペラの熱量とは異なる柔らかな印象を受けるが、そこに詰まった純粋で切実な想いはアツく届く。“歌が必要だ”と歌うそのわけは、音楽を聴いて受け止めた情熱が自分の活力に変わったり、ニヤリと好奇心を突く瞬間や、誰かを包み込むやさしさが生まれたり、身に起こったことを受け止める勇気が湧いたりと、この10曲の中にあふれていた。そして、歌には雑音や悲しみも含めた、流れる時の中で触れるもの全てが必要なのだろう。渋谷が「Sing」の曲中にフェイクで乗せた想いはとても開放的で、昨年ひとりで音楽の世界に飛び込み、孤高のアーティストだった彼が、またたくさんの愛と喜びを抱えて駆け出したようだった。
最後に収録された「Sing」は、幸福感のあるサウンドと渋谷の高らかな歌声に続いて、ライヴでオーディエンスがシンガロングしてこそ完成すると言える一曲。出だしの《言葉では言えない事も 心から心へと繋がる》には、音楽だからこそ素直な自分が表現できる渋谷の真摯なアーティスト性と、これまでに音楽で感じてきた愛の数々が受け取れる。《ここから どこまで/飛んで行けるかな》と未来への期待を馳せる場面もあり、冒頭で聴いたアカペラの熱量とは異なる柔らかな印象を受けるが、そこに詰まった純粋で切実な想いはアツく届く。“歌が必要だ”と歌うそのわけは、音楽を聴いて受け止めた情熱が自分の活力に変わったり、ニヤリと好奇心を突く瞬間や、誰かを包み込むやさしさが生まれたり、身に起こったことを受け止める勇気が湧いたりと、この10曲の中にあふれていた。そして、歌には雑音や悲しみも含めた、流れる時の中で触れるもの全てが必要なのだろう。渋谷が「Sing」の曲中にフェイクで乗せた想いはとても開放的で、昨年ひとりで音楽の世界に飛び込み、孤高のアーティストだった彼が、またたくさんの愛と喜びを抱えて駆け出したようだった。
文:千々和香苗
「Sing」MV
「風のうた」MV
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