車光子役の井上真央

車光子役の井上真央

【インタビュー】ドラマ「少年寅次郎
スペシャル」井上真央(車光子)「こ
のドラマには、相手を思うことの大切
さが込められています」

 最愛の妹さくらに見送られて葛飾・柴又を旅立った寅次郎(井上優吏)が1年ぶりに柴又に帰ってくるが…。昨年放送されたドラマ「少年寅次郎」のスペシャル版である「少年寅次郎スペシャル」が、12月4日と11日の午後10時からNHK総合で放送される。前回に続いて、寅次郎の育ての親・光子を演じた井上真央に今回の見どころや役柄について聞いた。
-1年ぶりの撮影の感想は?
 前回のドラマが終わったときに、本当にみんなが家族のように仲良くなって、この作品が大好きだったので、「また再会できたらいいね」なんて言っていました。それで「もし続きができたら、どんな感じの話になるんだろう」と。寅ちゃんが悪さをしようとすると、幽霊になった光子が出てきて「寅ちゃん!」って叱るという…。そんな浅い妄想をみんなでしたりしていました。その後、私の周りでも反響が大きくて、もしかしたら新たな形でやれるかもしれないということを耳にして、すごく楽しみにしていました。ただ、コロナで、どうなるのだろうというのがあったので、本当にやれるのかな、みんなと会えたらいいなと、そわそわしていました。少し状況が落ち着いて撮影が再開できることになり、岡田(惠和)さんの脚本が届いたときに、「なるほど。寅ちゃんが柴又に帰ってきて、私は回想という形で出るんだ」と。前後編の2回だけですけど、その続きが読みたくなるような脚本だったので、うれしかったです。最初のリハーサルのときに、皆さんホッとした感じでした。こういう大変な状況の中で“家族”に会えたことはすごく心強かったです。
-寅次郎を演じた子役たちと再会した印象は?
 「変わってないな」と思うことが多くてホッとしました。ただ、やっぱり会話をしていると、「あっ、ちょっと成長したな」というところもありました。大寅ちゃん(井上優吏)はすごく背も高くなって、大人に近づいているな、立派な子に成長しているな、という感じがしました。もともとシャイな子ですが、人見知り度が増していまして、今回も10回話し掛けて、やっと1回答えが返ってくるという感じで、「ちょっと、お母ちゃん寂しい」と思いました。ただ今回は、大寅ちゃんはお芝居的にもとても大変なシーンがあっただったので、彼なりに、前回よりも頑張らなくては、と思っている感じはしました。小寅ちゃん(藤原颯音)に関しては、ほとんど変わっていませんでしたが、若干口が達者になっていました。今回も彼の明るさに助けられました。「口が達者になったわ」と思ったのは、私がまだ私服を着ていたときに、「お母ちゃん、そんな恰好で来たの」と言うから、「何で、かわいいでしょ」と言ったら、「まあいいや。おいらお母ちゃんの顔しか見ていないから」って(笑)。そんなことを言うようになったのかと思いました。
-では“家族”と再会した気持ちは?
 今回は、車家の家族が全員そろう場面があまりありませんでした。特に私は回想という形なので、みんなと会話をする場面もなかったのですが、多くを語リ合わなくても、そこにいるだけでホッとする感じがしました。それはみんなも感じていたと思います。私は寅ちゃんと、おいちゃん(泉澤祐希)とおばちゃん(岸井ゆきの)はさくらちゃんとのシーンが多くて、お互いに「さくらちゃんどうだった。変わってなかった」とか、「今日、こんなことを言っていたんだよ」みたいな会話を結構していました。子どもの成長を見守るのを、みんなで共有し合っている感じでした。
-光子を演じる上で意識したことはありますか。
 前回も今回も、私の中で光子は結構難しい役です。もちろん、岡田さんとは何度も一緒にお仕事をしていますし、台本を読むと愛情も感じますが、自分の知らない時代ですし、3人の子どもを持った経験もないので、自分の中に共通するものがなかなか見付かりません。それなのに、光子のような、大きくて肝の据わったお母ちゃんを演じられるのだろうか、という不安が常にありました。前回は『男はつらいよ』の寅さん、渥美清さんが小さい頃のお話しで、その世界観を大事にしたいという思いがあったので、私もずっと映画を見ていましたし、ドラマを見た人が懐かしくなったり、映画を見返したくなるようになればいいなと思っていました。だから、ちょっとしたしぐさをまねしたり、取り入れたりもしました。今回は、どちらかと言えば、そういうものに自分がはまりに行こうとするのではなく、目の前にいる子どもに対して、自然に湧き上がる感情を大事にしたいと思いました。
-今回、光子を演じてみて改めて感じたことはありましたか。
 今回は、ぎりぎりまでフェースシールドを付けていたり、なるべく距離を置いて演じなければならなかったので、その分、人と触れ合うことの大切さを気づかされました。寅ちゃんにも、ハグしたくなるような瞬間がたくさんあったのに「あっ、ちょっと近いな」とか(笑)。何ということはない親子の触れ合いですが、そういう瞬間が親子っぽく見えるのかなと思いました。
-特に印象に残ったシーンはありますか。
 家族がそろうシーンで布団の打ち直しをするところがあって、その当時の普通の日常の風景なんですが、こういう一つ一つの作業をみんなでやっていたんだなあ、こういう時代だったんだなあと思ったことが印象に残っています。これを見て、懐かしいと思われる方もいらっしゃると思いますし、逆に新鮮に見ていただけるシーンでもあると思います。
-コロナ禍でのこのドラマの価値はどんなところにあると思いますか。
 私は、脚本を読んだときに、亡くなった祖父のことを思い出しました。祖父は渥美清さんの大ファンだったので、いろいろな思い出がよみがえってきました。前回のドラマもそうですが、きっと今報告したら、うれしがるだろうなとか、もっといろんなことを聞きたかったなあとか、そんなことを思いました。今回のスペシャルは、寅ちゃんが、大好きだったお母さんや家族のことを、思い返すという物語です。今、コロナ過で、会いたくても会えない人がたくさんいると思います。このドラマには、相手を思うことの大切さが込められているので、見終わった後に、会えないけど会いたいな、という大事な人のことを思えるような作品になっていると思います。
(取材・文・写真/田中雄二)

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