【vistlip インタビュー】
よく自分たちのこと考え、
見つめ直して
ベストアルバムを出そうと思った
2008年のデビュー以来、バンドの考え方としてベストアルバムは制作しなかったvistlip。そんな彼らが“ファン投票”と“メンバーセレクション”という2枚組32曲のベストアルバム『MEMENTO ICE』をリリースする。この作品に着手した背景、ベストアルバムならではの制作過程について、智(Vo)、Yuh(Gu)、海(Gu)に話を訊いた。
ベストアルバムは解散する時に出すもの
という考えを持っていた
今回、vistlipにとって初めてのベストアルバムがリリースされますが、なぜこのタイミングだったのでしょうか?
智
僕らはベストアルバムにすごく後ろ向きというか、解散する時に出すものという考えを持っていたから、過去にインタビューでもそう答えていたんです。なので、そこはファンへの筋を通したくて、何があっても頑なに出さなかったんです。でも、こういう状況でよく自分たちのことを考え、見つめ直して、YouTubeチャンネルでやっている『REMOTE the vistlip』の中でファンに投げかけたんですよ。そうしたら逆にファンは“なぜ出さないの?”ぐらいな感じで(笑)。ベストを出さない話を知らない子も増えてきたし。
海
知っている子は知っている子で、こっちの言っていることは理解してくれたし。
智
後ろ向きのファンはいなくて、むしろ“vistlipをプッシュするべきじゃないの?”と言ってもらえたので、自分たちのためにも、いろいろな人のためにも、初めてリリースしてみようと思ったんです。
vistlipの最近の動きとしては、コロナ禍の中でメンバーの素の姿が観れるオンライン生配信トーク『REMOTE the vistlip』などを積極的に取り組んでいますよね。
智
メンバーがただ遊んでいる姿を観てもらってる感覚が強いですけど(笑)。
海
でも、それをやったことによって“早く音楽をやりたい”という想いは強くなったかもしれないけどね。
Yuh
うちはライヴ配信には慎重で。それでもみんなの前には出たいということで、自分たちが今までやってた『ROUGH the vistlip』(毎回CDの初回生産限定盤のLimited Editionにのみ収録されるオリジナル映像)とかもろもろの経験を振り返って、こういうのなら定期的にできるんじゃないかということで、『REMOTE the vistlip』をやり始めたんです。
智
視聴者数を見ると顕著に“俺らのニーズはやっぱり音楽なんだな”とすごく感じてて。以前にライヴDVDの映像を発信した時、リモート配信の何倍もの視聴者数だったので、そういうのを見ると安心しますね。僕らのニーズは音楽なんだというのが分かっているから、結構自由にやってます。
ライヴの配信に慎重なのには何か理由が?
智
たぶんvistlipのライヴの良さが伝わらないと感じていて。うちは空気感やライヴの中でのストーリー…それこそ照明だったりを全部込みで魅せるバンドなので、配信ではマイナスに働いてしまうんじゃないかと。
海
メンバーによっていろいろ理由はあると思うけど、やるのなら配信だからこそっていう作り込みをしないと気が済まなくなっちゃうと思うんですよ。そうなると会場も費用も人員も時間も相当かけないといけない。ライヴDVDに近いレベルのものじゃないと、自分たち的に納得しなくなる気がして。おそらくファンの人たちは普通に配信しても“良い”と言ってくれると思うんですけど、“良い”と言ってくれるからやるべきなのか、自分たちが納得するものをやるべきなのか…。当然、会社からもいろいろ言われたりもするし。
なるほど。今回のベストアルバムの話に戻りますが、ファンとメンバーセレクトの2枚組という形態にした理由というのは?
智
あまりにも曲が多すぎて、欲を言えばあと一枚足したかったんです。13年分ですからね。でも、どうにかコンパクトに提供したかったというのが第一で。それは昔から関わってくれている事務所の人からも“vistlipをプッシュしたいからこそリスナーの手に取りやすい値段にしたいんだ”と言われ、“確に! じゃあ、2枚組でいきましょう”となったんです。“2枚組だったら対になるものは何だろう?”ということで、ファンセレクトとメンバーセレクトなのかなと。ただ、その場合はファンセレクトが投票になるじゃないですか。それを優先的に収録していくと、そこから漏れたものでメンバーセレクトになってくるわけで。それって本当の意味でのメンバーセレクトではないじゃないですか。とういうことは、基本的にはファンセレクトなんですよ。メンバーが入れたかった曲が被っていたら、それはそれでいいかなと。だから、メンバーが何を選んだのかはvister盤に同梱されるDVDの中でお観せするということで、時系列順に収録していくことにしました。
ファンの人の投票結果を見て、どんなふうに受け止めましたか?
智
順当というか、昔から選ばれ続けている曲がいっぱいありました。ただ、俺の病気明けの復活ライヴ(2019年7月7日)で1曲目に演奏した「Legacy」とか、近年の中からも自分たちが“すごく自信ある”と発信してきた曲なども入ってきていたので、そこはみんなにも思い入れがあるんだなと思いました。
海
7割ぐらいは“あぁ、そうだよね”と思いましたけれど、3割くらいは“へー! そうなんだ!?”という結果でしたね。
Yuh
僕はもともと結果を予想していなくて、結構無頓着でした(笑)。ファンのみんなの趣味嗜好が少し見えたかなとは思いましたけど。
智
ライヴで定番の曲でも、激しめのものはあまり入ってこなくて。
智
なので、自分たちを考える機会になりましたけどね。
Yuh
そこに関してだけは予想していたものと合っていて。やはりシングルベスト的なかたちになると、シングル曲とか、曲らしい曲が選ばれてくると思っていたから。
海
でも、僕らはカップリングやアルバムの曲のほうがライヴで盛り上がるものが多いから、“シングル曲が数曲だったらどうする?”という話を投票前にしていたんですよ。
智
そう、それはすごく不安だった(笑)。“シングル曲が少ないとベストではないんじゃない? 新しく手に取ってくれた人に対して、それはどうなの?”と思っていたので。
海
最終的に総票の上位から選んでいるので、結果として俺らが危惧していただけで、思った以上にみんなやっぱりシングルにも思い入れがあるんだなと。
智
最初はもっとシングル曲がいっぱい入っていたのですが、“シングルばかりだと嫌だ”とメンバーが言い出して…まぁ、その気持ちも分かるし、それもベストじゃないと思うので、最終的に減らしました。
メンバーが選んだ曲はファン投票とどのくらい被っていました?
海
もともと投票する前にメンバーで入れたい曲を選んでいて、瑠伊やTohyaが選んだものはほぼ投票曲に入ってましたね。
海
ファン投票からは漏れたけど入れたのは、俺と智だけです。
海
あなた、「Underworld」でしょ! “「Underworld」は入れるべき”って話したじゃん。
智
そうだ! 海は「FIVE BARKIN ANIMALS」で。
海
“これは入れないと!”ってね。“vistlipはこういうバンドだよ”という曲うちの一番右翼みたいな曲だから。ビジュアル系ファンの人たちが“何、これ!?”となる曲なので、これがないと雰囲気が伝わらない気がすると思って。でも、なんとなく入ると思っていたから、初めは選んでなかったんだよね。
選曲基準としては“vistlipとはこういうバンドだよ”と分かるものをセレクトした?
海Tohyaと瑠伊はそういう目で選んでいる気がする。
Yuh
あっ、そう言ってた。だから、ふたりがセレクトしたものは結構入っている。
海
ここのふたり(海、Yuh)は完全にただの趣味です。俺が選んだものはほぼ入らない。
Yuh
俺はジワジワと“あぁ〜、いい曲だな”となるのが好きなので、そういうのを選びました。
海
智は智で歌詞重視で。たぶん“自分の歌”という目線で選んでいたと思う。