【PERSONZ インタビュー】
“バンドであることの意味”
みたいなものも含んだ行為
今回すごく理解できて、
“洋楽みたいでカッコ良いな”
って思った
そして、完成した音源ですが、いい意味でアレンジには大きな変化がないと思って聴かせてもらいました。例えば、8曲目「C'mon Tonight」がサビ頭になっていたりするところはありますが、メロディーやリズムが大きく変わっている箇所はないですし、それこそJILLさんのキーも変わってないですよね。
渡邉
僕に関して言うと、『ROMANTIC REVOLUTION』と『POWER-PASSION』を聴き直して、昔に出ていたスコアも見ながら、できるだけオリジナルに近いフレーズを弾こうという感じで臨みました。“何となくやる”というのはすごく嫌だったんで、昔やっていたことを一回取り込んで…フレーズは何カ所か変えているところもありますが、基本的には全部コピーした上で変えてますからね。“当時の自分はどういう気持ちでこういうのを弾いていたんだろう?”というのを自分なりに思い出しておくことは大事かなと思って。それを分かった上で変える分にはいいかなと。
藤田
ドラムに関して言えば、フィルが当時よりは増えたくらいなもので、初期の頃のリズムアレンジって何か妙に凝ってるというか、ひねくれているっていうか、そういう部分がPERSONZの特徴だったような気もするんですよね。僕も聴き直して“どうしてこんなことやってんだろう?”みたいな部分がたくさんあったんですけど、そこはきっちり再現しかったです。どういう意図だったか分からないけれども、それがリズム隊のアピールだったんだろうと思ったわけですよ(笑)。そこはしっかり再現しました。
なるほど。ギターの演奏についてはどうでしょう?
本田
必要なものというか、確実にこのメロディーじゃなきゃいけないものはそれを弾いてます。それがその曲の顔だったりするんで、ギターソロの頭のメロディーだったりはほぼほぼトレースしているものも多いです。ただ、その頃から自由にやっていたアドリブ性の高いものに関しては、自分でも何が出るか分からないんで、その時の興奮のままに弾いてます。あと、昔の機材でやっていたもので、当時はそれでしか録れなかったけど、今の機材ならこういうふうにできるというのは入れてます。なので、そういうところを聴いてもらえたらと思いますね。
JILLさんは今回のサウンド面についてはどんなふうにとらえていますか?
JILL
「Dear Friends」はこれまでに死ぬほどやってるんで、その世界観はひとつなんですが、あとの曲に関してはすごく新鮮でしたね。特に「PARADE」なんて当時は窮屈な感じがしてて、ライヴでやってても“観ている人はどう乗るのかしら?”ってこっちが思っちゃうところがあったんですけど、今になって思えば“ものすごくカッコ良いものだったんだな”と。AメロやBメロがはっきりしている歌でもないから、ずっと “何なんだろうな?”って思いながらやっていたのが、今回すごく理解できて、“洋楽みたいでカッコ良いな”って思ったんですね。そんなイメージかな?
今回の「PARADE」はグルービーですよね。バンドが演奏していることがしっかりと感じられるというか。過去の「PARADE」は確かに、きっちりしている印象が強いですね。
JILL
今は職人作業というか…例えば、渡邉さんが曲を持って来たとしたら、それぞれが“じゃあ、こっちはこうしよう”っていうふうにスパスパッて仕切っていくんだけど、当時はスタジオでああでもないこうでもないってやる時間が非常に長かったので。とにかく時間だけはたくさんあったから(笑)、スタジオでこねくり回した結果、「PARADE」はああいう曲になったんですよ。「Dear Friends」はわりとデモ通りだと思うけど、「Modern Boogie」なんて“どうしてこうなっちゃったんだろう?”といういうくらい変わったんで(笑)。若かったというか、“とにかくやってみよう!”みたいな感じだったから。
あと、“Modern Boogie”というタイトルが象徴しているように、“新しいことをやろう!”“既存のものにとらわれないものをやろう!”という意識は強かったように思うのですが。
渡邉
ベースのアプローチなんかは、今とは随分と違うと思いますね。当時はベースで何かを主張したい想いが非常に強かったというか…僕はもともと曲を作ったりする人じゃなかったから、プレイヤーとして生きていこうとしていて、“この人のベースは面白いな”と言われるようにアプローチしていた思うんですね。さっきJILLさんも言ったように、すごく時間があって、3日間かけて一曲やるとか、とにかくそれぞれが納得するまで突き詰めていたので。でも、その積み重ねの経験がバンドの財産になっているというか。だから、今はデモテープを作った時点でどうなるのか何となく想像ができるし、しっかりとPERSONZらしくなることが分かるので、やっぱりインディーズの頃にスタジオにこもっていたことは大切なことだったと思います。
同じリズム隊であるところのドラムはどうでしたか?
藤田
当時よく聴いていた音楽の中でも風変わりというか、ニューウェイブの中でもより先鋭的…というとおかしいけど、ちょっとエキセントリックなドラムをはめ込もうとしてた時期ではありましたね。興味を持ったものをそのまま出してたというか。あんまり咀嚼もせずに出していたような感じでした(笑)。
本田さんはいかがでしょう?
本田
藤田くんが言ったように、その頃に好きだったバンドだったり、デジタルなイメージの音だったりをやる上で、“ギターはどういう音にしたらいいだろう?”って探しているうちに、“こういうものだったら合うかな?”とエフェクターをいっぱい使ったり…というような音になっというか。だから、自然とそうなったという感じで、特にそこだけを意識したわけではないんですよね。僕はこの音しか出せないんで、こんな感じになってしまったという(笑)。
そうですか。楽器隊の3人が個性的なプレイをバンドにぶつけていたからこそ、他にないものが生まれたきたのだろうと、ここまでのお話を聞いて思いました。あと、先ほど、JILLさんが「PARADE」の話をされた時に少しおっしゃっていましたけど、洋楽的な構成もありましたよね。
JILL
当時は曲を作った人がガイドラインみたいものを持ってきてたと思うんだけど、「PARADE」のBメロみたいな英語で言ってるところとかはメロディーの指定がなくて、“ここは適当に言っていいよ”みたいな感じだったんです。ちょっとうろ覚えですけど(笑)。それで、私も洋楽が好きだったし、最初はなんちゃって英語をはめてて、そのあとでちゃんとした英語にして…という。私に“ここは勝手にやってもいいよ”というところを残しておいてくれたから(笑)、“よしよし”って楽しんでやってましたね。
ということは、ヴォーカルも含めて、それぞれが感じたことを楽曲に持ち寄るのが、最初期のPERSONZのスタイルだったと。
JILL
うん。まだ何も決め事がなくて、本当に自由だったというか。誰かが引っ張っていくわけでもないし。楽曲作りに関しては、みんな楽しくて仕方がなかったんじゃいですかね? いくらでも時間があるし、“こんなことやってみようか?”っていくらでもできたから。
で、「Dear Friends」を例に上げるまでもなく、その作り上げたサウンドにキャッチーで分かりやすいメロディーを乗せているというのは、PERSONZの特徴であると思いますし、今回の『ROMANTIC REVOLUTION/POWER-PASSION』で最初期からそのスタイルが確立されていたことを確認できると思うんです。“もともと曲を作ったりする人じゃなかった”とおっしゃっていた渡邉さんが、その10曲中5曲を手がけられているわけですが。
渡邉
ですよね…。PERSONZを始める前にいたパンクバンドでは基本的に曲を作る人も歌詞を作る人も決まっていて、そういう状態でずっとやっていたから、JILLさんと本田さんがやっていたバンドをお手伝いでやっていた頃は、いつものように与えられた楽曲をベースで表現するというスタンスだったんですけれども、藤田くんが入って来た時に、藤田くんが僕より先に曲を作ってきたんですよ。それでJILLさんと本田さんからすごく褒められていたんです。“すごいな、勉ちゃん、曲作れるんだ!?”みたいな感じで。それからなんですよ、俺が“曲作らないとマズい”と思ったのは(笑)。
藤田さんに対する対抗意識という(笑)。
渡邉
“藤田くんはあとから入ってきたのに!”って(笑)。だから、今回収録されている何曲かは、僕が曲を作るようになって2曲目とか3曲目とか、ほんとそんな感じなんですよ。たぶんにビギナーズラック的なこともあったんでしょうけれども、藤田さんのおかげで僕も曲を作ることに目覚めたので感謝しています(笑)。
だそうですが、藤田さん(笑)。
藤田
全然記憶にないっすよ(笑)。渡邉さんの話は潤色されていますし、捏造もありますから気をつけてくださいね(笑)。
渡邉
いやいや、本当だって! そうじゃないと作ろうって気にならないじゃん!
JILL
でも、藤田くんが最初に作ってきた曲が何だったかは覚えてるよ。
真偽はともかく(笑)、それまでベースだけ弾いていればいいと思っていたという人が、“PERSONZと言えば「Dear Friends」”というくらいバンドの代表曲と言っていいナンバーを、しかも結成からそれほど経ってない時期に作っていたというのは改めて驚きです。
そんなことはないでしょうけど(笑)。そんな渡邉さんにしても本田さんにしても、『ROMANTIC REVOLUTION/POWER-PASSION』収録曲のメロディはキャッチーなものがほとんどなんですが、おふたりともご自身のメロディーについてはどう自己分析されているんですか?
本田
自分ではあんまりそうは思ってないんですよ。でも、昔のデモが入ったカセットテープを聴いたすると、自分で歌ってるんですね。下手なりに(笑)。“絶対にバンドは歌ありき”というふうな想いがあったんだと思うんですよ。だから、歌メロってすごく大事だと思ってたんじゃないですかね?
渡邉さんはいかがしょう?
渡邉
自分が曲を作る中で“JILLさんははっきりとしたメロディーを歌ったほうがいいんじゃないかな?”というのはあったんですよ。分かりやすく言うと、ブルース系ではなくて、JILLさんも好きなポップス系ですね。音階がはっきりとしているほうが声に合ってるし、JILLさんの歌い方は今でこそグルービーなんですけど、昔はストレートな感じだったんですよ。声の出し方も含めて。初期の頃は“JILLさん、ここは好きに歌っていいよ”ってことが時々あったと思うんですけど、しっかりとメロディーを指定してあげたほうがいいというのは意識してました。
先ほどのサウンドの話もそうですけど、このメンバーじゃないとこの楽曲にならなかったということがよく分かります。JILLさんにとっても、本田さん、渡邉さんのおふたりが作るメロディーは歌いやすいですか?
JILL
うん。やっぱり大好きな世界は、サビがパーッと広がるとか、展開があるとか…あと、当時は気づかなかったんですけど、実は転調しているとか。だから、世界を広げてくれる曲という気がしますね。
ツボを押さえているというか、ヴォーカリストとして気持ち良いところを作ってくれている?
JILL
以前は「PARADE」みたいに“ここは好きに歌っていいよ”っていう場所があるのが楽しかったんですけど、プロデュースされる側になった時に、自分のいいところが出るキーを選んでくれているし、もっと自分が伸びる楽曲を投げてくれる…その当時は気づいてなかったけど、“もっともっとやんなきゃいけないんだ”と分かってきたんだと思う。昔はぶっきらぼうにしか歌えなかったから(苦笑)。ワビサビも間もない、とにかく直球でしか歌えなかったのが、だんだんと変わってきたのは、そういう楽曲に鍛えられてきたからなんでしょうね。