星になったベーシストに贈るPASSPO☆
涙のフライト
「453便」と名付けられた6月14日昼の部の公演。「453=ヨコさん」、PASSPO☆の心の父親であったThe Ground Crew、そして日本のメタル黎明期から現在まで最前線で活動してきたメタルバンドUNITEDのベーシスト横山明裕氏に捧げられた特別公演は彼女たちの5周年ツアーの初日、最初の公演に披露された。
セットリストは
セットリストは
を参考にしてもらいたいが、この日は横山氏へ向けた彼女たちメッセージを曲で伝えるために、メンバー選曲によるステージとなった。
スタートナンバーは『無題』、選曲は森詩織によるもの。「時には泣いてしまうこともあるけれどでも大丈夫 私たちは元気です」という詞、彼女たちから横山氏への誓いに映った。カラッとしたメロコアナンバー、陽の力に溢れた曲だからこそ胸を打つ。
『サンキューバースデイ♪』、互いに生まれ出会えてきたことを感謝する歌。1年半前、悩みの季節真っ只中にいた彼女たちにの心を支えた氏に対するために歌う。その後「また会えるよね きっと会えるよね」という詞がつづられた『Hello』で愛と偲ぶ想いをストレートにぶつけた。
MCもいつもの彼女たちにしたら極めて言葉数が少ない(それでも普通のアイドルたちよりよく喋るのがいかにもPASSPO☆らしい)。余計な言葉はいらない、氏の愛したPASSPO☆の楽曲があれば全て通じるからという想いのもとだろう。
バンドセットで披露された『少女飛行(ACO ver)』。セッション段階でビートが完成していたというドラム担当(この日はカホン)の玉井はクルーからの絶賛の声に照れ笑い。この吸収の速さは、横山氏も褒め讃えていた彼女たちの本気の姿勢の表れによるものだろう。着々とバンドとしての成長を見せたことができたことは、嬉しさと共に氏に向けて安心できる姿を見せられたのではないだろうか。
はっちゃけ隊『気分はサイコー!サイコー!サイコー!』では毎回ムチャぶりの餌食になるThe Ground Crewのメンバー、奇しくもこの日の生贄は横山氏。約束は守らんとばかりにダンボールゴジラとなり、赤坂の地に降り立った氏は“イイ顔”を振りまき最後の大暴れを演じた。踊るアホウに見るアホウ状態のBLITZはサイコー!の盛り上がりを迎えた。
勢いそのままに『Pock☆Star』では奥仲麻琴が普段は見せない激情をほとばしらせる。
しかし、「泣かないよ!」、「元気だから!」という言葉を届けるも、やはり別れは寂しい。涙をこらえ、その度に歯を食いしばり横山氏への感謝を叫んで奮い立たせる彼女たち。『With XXXX』では抑えきれない感情をグッとこらえ歌うクルー、声が滲む。本編最後となった『「I」』、ついに堪えきれなくなってしまった増井は涙をこぼす。止まらない、拭っても拭っても零れ落ちる。彼女に駆け寄っては優しく抱きしめるクルーも涙をこらえ優しい顔を浮かべる。
暗転、「アンコール!」の声は次第に「ヨコさん!」コールへと変わり、そして轟く。
暗闇の中ステージ中央に立つクルーが一人。パッと照明がつき照らされたのは増井。自身が作詞に携わった『おねがい』が始まる…しかし歌い出しから声が震えて歌えない。その彼女の代わりに歌いはじめるパッセンジャー。その瞬間笑顔をふと浮かべた彼女は、あらんかぎりに声を振り絞る。
ブログにて作詞時の気持ちを「自分の好きなことに時間をついやしたり~中略~だからこそ忘れないでほしくて、目をむけてくれた時間をなかったことにしてほしくなくて」と語っていた。いずれ終わりを迎えるのは分かっている、だからこそ忘れてはいけない時間があると伝える言葉は最後の弟子として彼女が一番伝えられる言葉だ。
続くは新曲『向日葵』。横山氏へと向けられた楽曲は突き抜けるほどの陽の力で「Nothing’s forever 追いかけた背中をどんな時も忘れたりはしないから」という詞と共に駆け抜ける。増井の表情は少しずつ笑顔へと変わり、最後に頂点へ拳を突き上げた瞬間はタイトルのようにまぶしいほどに晴れやかだった。
この日最後の曲となったのは『Let It Go!!』、横山氏が最も愛した楽曲。スクリーンが下り、映し出される横山氏、そして氏と笑いあうクルーの日々。森が張り裂けんばかりに「ありがとう!」と叫び、ビシリといつもの彼女たちの姿でキメた。
終演後、機長こと阿久津氏からUNITEDのギタリスト・大谷慎吾氏より承った横山氏のベースと楽譜が最後の愛弟子・増井に手渡される。その瞬間、声にならない声で感謝を伝える彼女にクルーもファンも暖かいまなざしが注がれる。涙声になりながらも根岸は「泣いてたらヨコさんに怒られちゃうよ」と笑いながら話す。そこに安斎が「ヨコさん、こんな姿見たら『泣いてんじゃねぇよ』って言いそうじゃん(笑)」と乗っかれば岩村は「(ヨコさんが見てるなら)もうワシら、悪いことできないね」と愛だけがこもった軽口をたたき涙を吹き飛ばす。この姿にはきっと氏もきっと安堵したに違いない。
終演後、会場を後にするクルー、そしてパッセンジャーを満面の笑みでスクリーン越しに見送る横山氏の姿がそこにあった。
田口俊輔 アイドル、映画、音楽などについて書きたい系フリーライター/編集。アイドル関係では『Top Yell』『日経エンタテインメント』『アイドル最前線』『アイドル楽曲ディスクガイド』などで執筆。現場は大切にしたい派
スタートナンバーは『無題』、選曲は森詩織によるもの。「時には泣いてしまうこともあるけれどでも大丈夫 私たちは元気です」という詞、彼女たちから横山氏への誓いに映った。カラッとしたメロコアナンバー、陽の力に溢れた曲だからこそ胸を打つ。
『サンキューバースデイ♪』、互いに生まれ出会えてきたことを感謝する歌。1年半前、悩みの季節真っ只中にいた彼女たちにの心を支えた氏に対するために歌う。その後「また会えるよね きっと会えるよね」という詞がつづられた『Hello』で愛と偲ぶ想いをストレートにぶつけた。
MCもいつもの彼女たちにしたら極めて言葉数が少ない(それでも普通のアイドルたちよりよく喋るのがいかにもPASSPO☆らしい)。余計な言葉はいらない、氏の愛したPASSPO☆の楽曲があれば全て通じるからという想いのもとだろう。
バンドセットで披露された『少女飛行(ACO ver)』。セッション段階でビートが完成していたというドラム担当(この日はカホン)の玉井はクルーからの絶賛の声に照れ笑い。この吸収の速さは、横山氏も褒め讃えていた彼女たちの本気の姿勢の表れによるものだろう。着々とバンドとしての成長を見せたことができたことは、嬉しさと共に氏に向けて安心できる姿を見せられたのではないだろうか。
はっちゃけ隊『気分はサイコー!サイコー!サイコー!』では毎回ムチャぶりの餌食になるThe Ground Crewのメンバー、奇しくもこの日の生贄は横山氏。約束は守らんとばかりにダンボールゴジラとなり、赤坂の地に降り立った氏は“イイ顔”を振りまき最後の大暴れを演じた。踊るアホウに見るアホウ状態のBLITZはサイコー!の盛り上がりを迎えた。
勢いそのままに『Pock☆Star』では奥仲麻琴が普段は見せない激情をほとばしらせる。
しかし、「泣かないよ!」、「元気だから!」という言葉を届けるも、やはり別れは寂しい。涙をこらえ、その度に歯を食いしばり横山氏への感謝を叫んで奮い立たせる彼女たち。『With XXXX』では抑えきれない感情をグッとこらえ歌うクルー、声が滲む。本編最後となった『「I」』、ついに堪えきれなくなってしまった増井は涙をこぼす。止まらない、拭っても拭っても零れ落ちる。彼女に駆け寄っては優しく抱きしめるクルーも涙をこらえ優しい顔を浮かべる。
暗転、「アンコール!」の声は次第に「ヨコさん!」コールへと変わり、そして轟く。
暗闇の中ステージ中央に立つクルーが一人。パッと照明がつき照らされたのは増井。自身が作詞に携わった『おねがい』が始まる…しかし歌い出しから声が震えて歌えない。その彼女の代わりに歌いはじめるパッセンジャー。その瞬間笑顔をふと浮かべた彼女は、あらんかぎりに声を振り絞る。
ブログにて作詞時の気持ちを「自分の好きなことに時間をついやしたり~中略~だからこそ忘れないでほしくて、目をむけてくれた時間をなかったことにしてほしくなくて」と語っていた。いずれ終わりを迎えるのは分かっている、だからこそ忘れてはいけない時間があると伝える言葉は最後の弟子として彼女が一番伝えられる言葉だ。
続くは新曲『向日葵』。横山氏へと向けられた楽曲は突き抜けるほどの陽の力で「Nothing’s forever 追いかけた背中をどんな時も忘れたりはしないから」という詞と共に駆け抜ける。増井の表情は少しずつ笑顔へと変わり、最後に頂点へ拳を突き上げた瞬間はタイトルのようにまぶしいほどに晴れやかだった。
この日最後の曲となったのは『Let It Go!!』、横山氏が最も愛した楽曲。スクリーンが下り、映し出される横山氏、そして氏と笑いあうクルーの日々。森が張り裂けんばかりに「ありがとう!」と叫び、ビシリといつもの彼女たちの姿でキメた。
終演後、機長こと阿久津氏からUNITEDのギタリスト・大谷慎吾氏より承った横山氏のベースと楽譜が最後の愛弟子・増井に手渡される。その瞬間、声にならない声で感謝を伝える彼女にクルーもファンも暖かいまなざしが注がれる。涙声になりながらも根岸は「泣いてたらヨコさんに怒られちゃうよ」と笑いながら話す。そこに安斎が「ヨコさん、こんな姿見たら『泣いてんじゃねぇよ』って言いそうじゃん(笑)」と乗っかれば岩村は「(ヨコさんが見てるなら)もうワシら、悪いことできないね」と愛だけがこもった軽口をたたき涙を吹き飛ばす。この姿にはきっと氏もきっと安堵したに違いない。
終演後、会場を後にするクルー、そしてパッセンジャーを満面の笑みでスクリーン越しに見送る横山氏の姿がそこにあった。
田口俊輔 アイドル、映画、音楽などについて書きたい系フリーライター/編集。アイドル関係では『Top Yell』『日経エンタテインメント』『アイドル最前線』『アイドル楽曲ディスクガイド』などで執筆。現場は大切にしたい派
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