オリコンデイリー9位に入った無名の
地方アイドル"みきちゅ"とは

 正直なところ、みきちゅの名を知る人は一部のアイドルファンに限られるかもしれない。しかも彼女は、事務所に所属することなく、レーベルと契約することもなく、自分一人でライブのブッキングやCDショップでのイベント開催の交渉などをこなしている、いわば自給自足アイドルでもある。



 そんなローカルアイドルのみきちゅが、デイリーとは言えオリコンランキングで1ケタ順位に食い込んだのは快挙と言っていいだろう。そんな快挙のワケを、本人へのインタビューも交えて明らかにしていきたい。

今回のシングルにはみんなの気持ちが詰まっている

――『アイドルの秘密』が9位にランクインしたことを知ったのはいつですか?

みきちゅ 7月15日のインストアイベント(タワーレコード吉祥寺店)の直前でした。イベント中はそのことを言いたくてたまらなかったんですが(笑)、MCタイムまでガマンしました。

――デイリー9位にランクインした時の第一印象は。

みきちゅ もちろん嬉しかったんですけど、それよりもホッとしたという気持ちのほうが強かったですね。

――ホッとした?

みきちゅ 今回のシングル(アイドルの秘密)は、ファンや応援してくださる方みんなの力で作り上げたという気持ちがすごく強いんです。私が自分ひとりで作ったわけでもないし、誰かに作ってもらったわけでもない。応援してくれる人みんなの想いが詰まっているから、やっと恩返しできたという気持ちです。

――デイリー9位っていうのは自分の目でも確認したんですか。

みきちゅ しました! そのときは嬉しさが実感できてニヤニヤしちゃいました(笑)。
 デイリー9位という結果に喜びと安堵の両方を感じるみきちゅ。アイドルとしてはまだこれからという段階であり、アイドル横丁まつりやTIFといったアイドルフェスに出場した経験もないが、決して地下アイドルというわけでもない。業界では"これから来るアイドル"として注目されている一人でもあるのだ。

 みきちゅの活動で目立つのは、インディーズアイドルとしては異例なほどの、インストアイベントの多さだ。7月15日発売の3rdシングル『アイドルの秘密』では、地元の仙台店をはじめ、旗艦店の新宿店や大阪の難波店など複数のタワーレコードでインストアイベントを開催している。

 ほかにも吉祥寺店、秋葉原店、錦糸町店、名古屋パルコ店と各地を網羅しており、メジャーアイドルも顔負けの勢いである。その回数も相まって、『アイドルの秘密』はタワーレコード全店総合ランキングでデイリー4位にランクインを果たした。

 さらにタワーレコードに留まらず、新星堂(サンシャインシティアルパ店、カルチェ5仙台店)やソフマップ名古屋駅ナカ店、HMV仙台ロフト店など、複数のCDチェーン店でもインストアイベントを開催。彼女の人柄ゆえか、CDショップ店スタッフの受けがよく、それが次々とイベントが決まるひとつの理由になっているのかもしれない。
オリコンさんから直接、連絡がありました

――自分のCDがオリコンランキングのサイトに載っているって、ふつうはできない経験ですよね。

みきちゅ そのあとで、オリコンさんから直接、私に連絡があったんです。

――オリコンから連絡、ですか?

みきちゅ はい。私は事務所にも所属していないし、レーベルとかもないので、オリコンさんもどこに連絡したらいいのかわからなかったみたいなんです。だから、最初はタワーレコード仙台店に電話したそうなんですよ。

――仙台店はみきちゅさんの地元で、よくイベントやってますよね。

みきちゅ そのときに電話に出たのがたまたま、私を応援してくださっている店員さんで、「みきちゅの魅力を5分くらい説明しちゃったよ」って言ってました(笑)。

――あはは、そのあとで本人に連絡が来たと。

みきちゅ CDの流通をお願いしているダイキサウンドさん(※インディーズCDの流通・配信を手掛ける業者)にもオリコンさんから問い合わせがあったみたいで、「あとでみきちゅに連絡が行きます」って教えてもらいました。

――オリコンからの連絡って、何を聞かれるんですか。

みきちゅ アーティストとしての基本情報(※)みたいなものを、書類に記入して提出しました。

(※オリコン芸能人辞典に掲載するコンテンツなどと思われる)

――そういう書類があるんですねえ。

みきちゅ きっと普通は所属事務所のほうで書いてもらえるんだと思います。

――その無所属という点なんですが、事務所に所属する気はないんですか。

みきちゅ 一人でずっとやっていきたいわけではないんです。いくつかお話はいただいていますし、自分の方向性と合っているところがあれば一緒にやっていきたいですね。

――方向性というのは具体的に言うと。

みきちゅ いまはアイドルとしての活動を大事にしていますけど、いつまでもアイドルでやっていけるとは思わないし、たとえば30歳になってもアイドルというのは難しいですよね。

――将来的には方向転換の可能性もあるわけですか。

みきちゅ もともとは音楽をやりたくて弾き語りやバンドもやっていましたし、そのなかで自分自身がアイドルにハマって、自分でアイドルをやってみようと思ったのがキッカケなので、アイドルを辞めたとしても音楽は続けていきたいんです。

――実際に今でも、アイドルシンガーソングライターとして、自分で作詞作曲もしています。

みきちゅ 今回のシングル『アイドルの秘密』もそうです。いっぽうで、ギタリストの西川進さんにお願いしてギターを弾いていただいたり、クリエーターの方に編曲していただいたり、いろんな人の力をお借りするのは大事だと思っています。

――『アイドルの秘密』はYouTubeに上がっていた最初のバージョンに比べ、CD盤ではきっちりマスタリングされた音に仕上がっています。冒頭のピアノのタッチからして違いが判ります。

みきちゅ あのピアノは自分で弾いていますが、CD化に合わせて録りなおしたんです。マスタリングに関してはお金も掛けました。プロの方にやっていただくと、本当に音が変わっていくというのがわかって、いい経験になりました。

――そのお金に関して言えば、クラウド・ファンディング「CAMPFIRE」が成功したのは大きかったのでは。

みきちゅ 自分だけでは絶対に集められない金額(92万円)を支援してもらえたので、今回のオリコンデイリー9位という結果は、支援してくださったパトロンのみなさんの期待に少しは応えられたんじゃないかなと思います。

――パトロンもそうですし、リリースイベントでのファンの熱狂ぶりがスゴいですね。

みきちゅ みなさんのおかげで3rdシングルも出せましたし、いろんなイベントに出演できるようにもなりました。この前は沖縄のフェスにも出られましたし、月末には「TBC夏まつり」にも出演します。これまで出たい出たいと思っていたイベントに出られるようになって、少しづつ夢が叶ってきている想いです。

――そういう感謝の気持ちが、今日のイベント(タワーレコード新宿店)でも伝わってきました。

みきちゅ こんなにたくさん、いろんなところでイベントをやらせてもらえて、本当に嬉しいです。今日はタワーレコード新宿店さんで、明日は仙台に戻って大学に行って、明後日はまたタワーレコード秋葉原店さんでイベントをやります。

――リリイベの合間に大学に通うって大変ですよね。もうすぐ夏休みですからいまは試験時期なのでは。

みきちゅ 仙台に戻ったらレポート2本提出しないとならないんです……。でもそれが終わったらまたイベントができるから、頑張ります!

――無理しないで、と言いたいところですが、なんとか無理して頑張ってください!
 ライブイベント出演では、バーサスプロダクション主催の交フェスではほぼ常連となっているほか、全国各地のアイドルイベントに続々と参戦。7月6日には「瀬長島ガールズ・ポップ・フェスティバル2014」の出演ではるか沖縄まで遠征したほか、来たる7月21日には青森で「夏の魔物」、そして7月27日には地元仙台の「TBC夏まつり」にも出演が決定している。

 事務所に所属せず、移動手段や宿の確保もすべて自分で行なうため、金銭的な負担は決して小さくない。そのぶんフットワークが軽く、遠征費用が最小限で済むというメリットもある。なにより作詞作曲をはじめとして「すべて自分でやる」というスタンスが、ファンや関係者に「応援してあげたい」という気持ちを抱かせるのではないだろうか。

 そんなみきちゅは、次回作となる4thシングルでは、「自分一人でやるのはもう無理かも」とも語っていた。そして目下の希望は、オリコンのウィークリーチャートで50位以内に入ったら、「カウントダウンTV」でPVが流れるかもしれないということ。無所属ロコドルのPVが地上波で放送されるとしたら快挙である。それはまた、アイドルを目指す女の子たちに大いに希望を与えてくれる先例となるはずだ。



 なお、7月19日には、いずこねこ茉莉との2マンライブ「いずこねこ×みきちゅ」を新宿MARZで開催する予定。いずこねこは今後、元BiSのカミヤサキとのユニット「プラニメ」での活動が決まっており、"ねこちゅ"としての2マンライブはこれが最後の機会となりそうだ。


みきちゅ 1993年1月26日仙台出身、在住。 16歳でライブ活動を始め、弾き語りやバンド活動などを経て、自分で作詞作曲も手がける“アイドルシンガーソングライター“として活動中。これまで1stシングル『恋愛パズル』、2ndシングル『I☆SSW』をリリース。3rdシングル『アイドルの秘密』の制作資金をCAMPFIREで集めることに成功した。
■公式ブログ「ちゅぶろ。」

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