【GOOD ON THE REEL
インタビュー】
めちゃめちゃバラエティー豊かで、
非常に癖になるアルバム
新たなサウンドメイキングも含め、最高にバラエティー豊かなオリジナルフルアルバム『P.S. モノローグ』が完成した。それが逆境を乗り越えようと挑んだ成果というところが実に頼もしい。GOOD ON THE REELはここからさらなる高みを目指す!
いろいろな可能性が見えたから、
始まりにはなり得る
5作目のオリジナルフルアルバム『P.S. モノローグ』は楽曲ももちろんなのですが、いろいろ新しいことに挑戦したサウンドメイキングも含め、とても聴き応えがありました。
宇佐美
今回、秋窪博一さんというエンジニアさんと初めて一緒にやらせてもらったんですけど、それが大きかったです。レコーディングしながら音色はもちろん、アレンジについてもいろいろ提案してくれて。僕たちからは出てこない発想がたくさんあったし、僕らも“いいね!”ってなって、そんなふうに秋窪さんも含めてみんなで作っていく感覚が楽しくて。秋窪さんはメンバーそれぞれの中から出てくるものをすごく活かしてくれるんですよ。ここ最近はどちらかと言うときれいに録ろうとしていたんですけど、今回はバンド感というか、多少きっちりいっていない演奏でも勢いがあれば、それはそれでいいんじゃないかと生感を活かしてくれたので、楽しくできたし、それが今回のバラエティーの豊かさにもつながっているんじゃないかと思います。
千野
そういう録り方だったので、メインの歌録りが過去一で速かったんです(笑)。そのぶん、“コーラスを入れてみない?”とか“パーカッションを加えてみない?”って、秋窪さんはそういうことにも時間をかけるエンジニアなんですよ。今回はエンジニアが秋窪さんに変わったことも然り、伊丸岡が参加していないことも然り、いろいろ状況が変わった中で生まれたアルバムなので、メンバーそれぞれに“ここを乗り越えるぞ!”という意思が表れたのかなとも思いますね。だから、結構アグレッシブなアルバムというか、全員で曲作りに取り組んだ結果、めちゃめちゃバラエティー豊かになりましたし、非常に癖になるアルバムになったと思っています。
岡﨑
伊丸岡が休みということで自分が担当するパートが増えて、僕の中ではかなり修行の一枚になりました。スケジュールの問題もありますからね。そんな中でできるのかなと最初は不安だったんですが、やってみたら…もちろん他の3人に頼ったりしながらですけど、その逆境を普通に楽しめたっていうのが、このアルバムには一番合っていると思います。宇佐美も言ったように、秋窪さんといろいろやってみる中で、即興でギターを弾いたりもしたんですよ。これまでやったことはなかったんですが、1分だけ考えて、フレーズを録るみたいなことも含め。そのフレーズも実際に入っているし、そういうライヴ感、生感もパッケージできたという意味では、かなり熱のあるアルバムになったと思います。
高橋
それにアレンジャーさんが入った曲が少ないんですよ。ロックバラードの「0」とWEAVERの杉本雄治くんにやってもらった「同じ空の下で」だけで、あとはメンバーがデモから作っていて。ドラムのフレーズもデモ段階で作り込んでくれたおかげで、それをもとにメンバー間でやりとりしながら事前にブラッシュアップできたので、録りもスムーズだったし、すごく楽しかったというか、楽しむ余裕がありました。
なるほど。今のお話から想像すると、今回は過去最高にバラエティー豊かになったことや、バンドの生感を生かしたアルバムになったのは、最初からそういう作品を作ろうとしたわけでなくて、伊丸岡さんが活動を休止している逆境を乗り越えようとした結果、そういう作品になったようですね。
千野
それが一番大きいかな? あとは、秋窪さんがメンバーみたいな気持ちで一緒に遊んでくれたことも大きかったですね。
秋窪さんと組んだのはどんなきっかけかからだったのですか?
千野
アルバムに先駆けて配信リリースした「0」はアレンジャーさんに入ってもらった曲だったので、本チャンのレコーディングの前に仮歌をしっかり録ったほうがいいということになり、その仮歌を録ってくれたのが秋窪さんだったんです。新しいことばかりやっているアルバムだから新しいエンジニアさんと組んだら面白いんじゃないかってなったんですけど、実は全曲お願いしようと考えていたわけではないんですよ。何曲かやってもらったら、“これは全曲やってもらわないと統一感が出ないんじゃないか?”ってなったんです。それに秋窪さんの人柄やスタンスも面白かったので、結果的に全曲やってもらおうってなりました。
『P.S. モノローグ』というアルバムを完成させて、ここからまた新しいスタートという気持ちもあるのですか?
千野
いろいろな可能性が見えたアルバムだから、始まりにはなり得るのかな?
「0」以降、今回のアルバム制作の道筋を作るきっかけになった曲はありましたか?
千野
「0」のカップリングだった「Fade out」のシティポップ感というか、ちょっと大人っぽい感じは、みんなで話し合って目指したいところではありました。そこから「シネマスコープ」とか、シンセがバンバンに入った「ファンファーレ」みたいな曲ができてきたのかな?
岡﨑
まず、あがってきたデモをジャンル分けしたんですよ。シティポップっぽい曲、踊れる曲、GOOD ON THE REELらしい曲、バラード…ってジャンル分けしながら詰めていった感じです。候補曲はいっぱいあったんですが、最終的に今回の10曲になりましたね。
シティポップ感というのは、これまではあえて出してこなかった要素なのですか?
岡﨑
好きだね。だから、僕がゴリゴリに作ると自然とそっちに寄っちゃうっていうのはありますね。
では、GOOD ON THE REELの曲の幅をグッと広げたという意味で印象に残っている曲を挙げるとしたら?
そうですよね(笑)。
岡﨑
僕的には「シネマスコープ」ですね。これもかなりシティポップ感がある曲で、もっとR&Bに寄った曲があってもいいんじゃないかと思わせる曲だと思います。
千野
僕も「シネマスコープ」と「WonderWant」がかなり衝撃的なんじゃないかと思います。「シネマスコープ」はデモの段階から絶対にやりたいと思っていました。こういう音数が少ない音楽というか、音を削っていく作業をずっとやりたかったんですよ。海外のアーティストってオケが超薄の曲があるじゃないですか。でも、センスで成立させてるみたいな。「シネマスコープ」はオケに空間があって、なおかつその中で歌がR&Bっぽいところが気持ち良くて。「WonderWant」はそれとは逆にゴリゴリでイケイケっていう(笑)。そういう曲をここまで踏み込んでやったことはなかったから、思いきり振り切れているところが癖になると思います。
「WonderWant」のギターソロはエキゾチックなフレーズを含め、サーフロックというか、ディック・デイル感がありますね?
岡﨑
そうなんですよ。デモの段階ではスプリングリバーブをかけて、もっとサーフな感じだったんですけど、レコーディングしながら秋窪さんと話してたら、どんどんサイケデリックになっていって、“あれ、こっちに行くんだ!?”みたいな(笑)。秋窪さんも結構ひねくれていて、“デモはこうだったけど、俺はこうしてみた”みたいなことを言っていたから、真逆に行こうとしているなって。それで結構サイケデリックな感じになりましたね。
メンバーも秋窪さんのアイデアを面白いと思ったということですね。
千野
そうですね。もちろん場合によっては譲らないこともありましたけど、全部試してから選んだので、そういうところも楽しかったです。