湯浅政明監督(右)とフィルムアーキビストのとちぎあきら氏

湯浅政明監督(右)とフィルムアーキビストのとちぎあきら氏

湯浅政明監督、山中貞雄監督作鑑賞の
勧め「こんなすごい監督がいたことを
もっと知ってほしい」

湯浅政明監督(右)とフィルムアーキビストのとちぎあきら氏 日活の創立110周年を記念した特集上映「Nikkatsu World Selection」が開催中の東京・シネスイッチ銀座で11月5日、山中貞雄監督の「丹下左膳余話 百万両の壺」4Kデジタル復元版が上映され、湯浅政明監督がフィルムアーキビストのとちぎあきら氏とトークを行った。
 1930年代に活躍した、日本を代表する映画監督として知られる山中監督だが、5年で共同作を含め26本を監督するも、全編が現存するのは「丹下左膳余話 百万両の壺」を含め3本のみ。監督作は全て時代劇で、ほぼ全シナリオを自ら手がけた。欧米の洋画や親友・小津安二郎の影響もあり、侍も平民も等しく捉えたスタイルが特徴だ。
 「丹下左膳余話 百万両の壺」は山中監督25歳の頃の作品で、剣客・丹下左膳のイメージを逆手に取った涙あり笑いありの人情ドラマ。今回、戦後カットされた幻のシーンを加えて復元された。
 湯浅監督は20~30年前に時代劇の勉強のために名画座で山中監督作を鑑賞し、「戦前にこんなわかりやすく面白い映画があったとは……」と驚いたそう。「最初に見た時は音声もバラバラして聞き取るのが難しかったのですが、今回は見やすくなっていた。GHQに没収されてカットされたシーンや、後半の無音の乱闘シーンが足されたのかな」と修復版の感想を述べる。
 そして、山中監督作品の特徴を「他の時代劇に比べても段違いにあか抜けていて、優しい。暗くやるせない題材のものも、気持ちよく粋で内容がわかりやすい。そしてギャグもあったりして。殺陣もモダンでわかりやすい演出方法で、それはその後の昭和のアニメの様で、90年前にそういうことをやっていたのに驚きました。生きていたらどんな作品を作っていたのか……」と語り、その映像について「フィックスなのにカット割に違和感がない。わかりやすい構図で撮られているので、映像の文章的なものがドタバタせず、クリアに流れて入ってくる」と説明する。
 国立映画アーカイブの研究員でもあるとちぎ氏は「山中監督の作品は、お客さんから鑑賞後によく『清々しい感じになった』と言われる。90年近くたった今見ても、見て良かったなと改めて感じる作品」とコメントし、「キャラクターたちの描かれている目線が現代的」と評する。また、山中監督がアメリカ映画を数多く見ていたという記録があることから、当時のアニメーション「ベティ・ブープ」なども見ていたのではないかと推測した。
 湯浅監督は「山中さんの作品を見るたびに、ほかの作品を見たくなる。初めて見た人は驚くと思うし、それに影響を受けた人がいて、今の映画があるのかと。そう考えると映画を作ったり、見るのが楽しい。実際5年くらいしか監督されていなかったそうですが、ずっと脚本を書いていらっしゃって、この密度の作品を残されているので、自分も頑張らなければと思いました。こんなすごい監督がいたということを、もっと知ってほしいし、面白さを共有したい」と山中監督作品の魅力を熱く伝えた。
 特集上映では、山中貞雄監督「丹下左膳余話 百万両の壺」「河内山宗俊」のほか、「殺しの烙印」(鈴木清順監督)、「神々の深き欲望」(今村昌平監督)、「(秘)色情めす市場」(田中登監督)、「幕末太陽傳」(川島雄三監督)、そして田中絹代監督の「月は上りぬ」「乳房よ永遠なれ」の8本が上映される。11月10日まで。以降全国順次公開。

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