BABYMETALは言葉の壁を軽々越えた!
マーティ・フリードマン★鋼鉄推薦

 BABYMETALとはけっこう縁があるんだ。2年前くらいに雑誌の対談でメンバーと会ってるし、ボクのバンドのサポートギタリスト、大村孝佳クンはBABYMETALのバックバンド「神バンド」の一員でもあるしね。

 彼女たちの音楽はもちろん大好きだよ。でも、ボクが好きなJ-POPは大抵、海外の人には受け入れられないことが多いから、正直、この状況に戸惑ってる(笑)。こんなに海外でブレイクするとは思ってなかったんだ。

 フェスではメタリカ、スレイヤー、アンスラックスといったヘヴィメタル界の大御所と共演しながら、レディー・ガガのツアーのサポートアクトとしても起用。スゴすぎるよ。スレイヤーとレディー・ガガって、まったく違うジャンルの人じゃん? この両者と共演した人は世界中どこを探してもいないと思うよ。

 BABYMETALに関しては語りたいことが山ほどあるんだ。でも、うーん……何から話したらいいかな?

 そうそう。まず、語らなくちゃいけないのは、彼女たちがある偉業を成し遂げているということだよね。それが「言葉の壁」の問題。海外の人って基本的に、母国語じゃない音楽を聴かないんだ。日本人は英語の曲でも受け入れるけど、海外の人は「言葉がわからないから、いいや」って放り投げちゃうのが普通なんだ。

 ではなぜBABYMETALは、ビルボードチャートに入るほど受け入れられているのか? その理由は「これまでにない新しいイメージを持っていた」ってことだよね。

 ヘヴィメタルというジャンルはお約束だらけの世界で、男っぽさや激しいイメージを売るのが基本だし、音楽的にも幅が狭い。でもBABYMETALのイメージは【カワイイ】だった。メタルなのに女の子がスカートを履いて踊ってるし(笑)。そして、サウンドもそれまでのメタルとは異なってる。激しいギターや重たいドラムの上に女の子の歌声が乗っていたんだ。しかも、歌メロのサビは“超超超”ポップなメロディ。アルバムを聴くと、ヒップホップやEDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)の影響も感じられる。正直、こんなヘヴィメタルはありえないよ。もう、こうなると、言語云々の問題じゃなくなってしまう。海外の音楽ファンにとって、これは大きなカルチャーショックだったんだ。

 メタルっていうジャンルはあまり進化しない。他のジャンルの影響を受け入れない壁があるからね。だけど、それに飽きてきている人も多いはずで、何か新しい要素を入れていかないとジャンルとして長続きしない。そう考えると、幅広い音楽性を持つBABYMETALはメタルの生命を守ったと言えるかもしれない。彼女たちのやり方を受けて、カントリーメタルとか演歌メタルとかが出来てきてもおかしくないよ(これは冗談じゃなくて本当にそういうのが出てきて欲しい!)。

 一番のオススメはやっぱり『ギミチョコ!!』かな? この曲のサビはまるで日本のCMソングみたいだよね。でも「イントロ→Aメロ→Bメロ」と「サビ」でガラリと印象が変わるところは、海外の人にとってはすごく不思議に聞こえるだろうな。「途中でCD換えた?」って勘違いする人もいると思う(笑)。

 BABYMETALの人気をキッカケに、日本のアイドルにハマる外国人が増えてほしいな。本気でそう思うよ。


(構成・文/尾谷幸憲)
Marty Friedman
マーティ・フリードマン
ギタリスト、プロデューサー。全米で1000万枚以上のCDを売ったヘヴィメタルバンド「メガデス」に在籍。2004年から日本の音楽シーンでも活躍。ももいろクローバーZ『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」』への全面参加。ニューアルバム『インフェルノ』(ユニバーサル)が発売中。月刊エンタメにて誌面版「マーティ・フリードマンのヘドバン★鋼鉄推薦盤[メタルレコメンド]を連載中!
◆INFERNO JAPAN LIVE 2014
9月24(水)、25日(木)原宿アストロホールにて
19:00開演
(問)東京音協:03-5774-3030
【公式HP】

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