『Wacken Open Air』(2023.8.2) photo by Moritz Hartmann

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SABLE HILLS、
2年連続出場した独メタルフェス
『Wacken Open Air』で
現地のメタラーを完全掌握!

 毎年ドイツで開催されている世界最大級のメタルフェス『Wacken Open Air』に、SABLE HILLSが2年連続で出場を果たした。しかも、今年はメインアクト枠ということで、本場のメタラーたちに彼らはどんな風に受け入れられるのか。その様子をこの目でどうしても見届けたく、現地まで足を運んだ。これまでの流れを説明しておくと、彼らは昨年の『Wacken Open Air』内の「Metal Battle」にて日本人初の優勝を勝ち取った。今年は『Wacken Open Air』のメインアクト枠として、初日(8月2日)の「HEADBANGERS STAGE」に登場。ただ、ドイツは連日に渡って雨が続いており、この日も地面はぐちゃぐちゃの田んぼ状態であった。しかし、SABLE HILLSはそんな悪条件を跳ね返してドイツのメタラーたちを大暴れさせたのだ。
『Wacken Open Air』(2023.8.2) photo by  Moritz Hartmann

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 14時45分、SEとともにTakuya(Vo)、Rict(Gu)、Wataru(Gu)、UEDA(Ba)、Keita(Dr)のメンバー5人が揃うと、ショウは今年5月に配信リリースされた「BAD KING」でスタート。ド頭から新曲を振り下ろすところにバンドの自信がうかがえる。足元は劣悪な環境にもかかわらず、気づけば後方までぎっしりと観客で埋まっているではないか。やはり去年の評判を聞きつけ、このステージに駆けつけた人が多いのだろう。バンドもその期待に全力で応え、気迫漲る演奏を叩きつける。
『Wacken Open Air』(2023.8.2) photo by  Moritz Hartmann

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 そして、昨年出た2ndアルバム『DUALITY』収録の冒頭曲「The Envy」へ。哀愁を帯びたギターが曇天に響き渡り、Takuyaがクラップを煽ると、観客もそれに追随する形で一体感が生まれていく。後半には落差激しいブレイクダウンをかまし、Takuya、Rict、Wataru、UEDAのフロント4人がヘッドバンギングを決めて演奏に没頭。プレイだけではなく、視覚面からも観客の心を揺さぶり続ける。疾走感あふれる「Crisis」に入ると、観客によるサークル・モッシュは激しさを増し、膝まで泥だらけになって騒ぐ有様だ。曲終わりにはSABLE HILLSコールも起きるほどである。「カモン!」と歓喜の雄叫びを上げる男性もいて、現地の興奮ぶりを肌でひしひしと感じずにいられなかった。
『Wacken Open Air』(2023.8.2) photo by  Moritz Hartmann

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 その様子にTakuyaも「ダンケシェーン、ジャーマニー!」と感謝の言葉を述べ、次は「Recapture」をプレイ。濁声シャウト連発のヴォーカル、また、天に突き抜ける爽快なギターフレーズも相まって、サークルモッシュは過激になる一方だ。筆者の顔にも泥が飛んできて、思わず笑みが溢れてしまった。図太いヘヴィリフで畳み掛ける「Messiah」に移ると、今年正式メンバーになったWataruも歌で援護し、楽曲に新たな彩りを添えていた。Rictのクリーン・ヴォーカルもバンドの大きな魅力になっているものの、もう一人「歌えるギタリスト」が加わったことで、楽曲により一層の厚みを感じられる。他の楽曲でも積極的にWataruは歌っており、今後は彼が歌うパートがさらに増えるのではないか。
『Wacken Open Air』(2023.8.2) photo by  Moritz Hartmann

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 「On My Own」においてはUEDAの邪悪コーラスが楽曲の熱量を押し上げ、Rictによる泣きのギターフレーズもメタラーの琴線を刺激してやまない。凶暴性と叙情性をハイブリッドに昇華したサウンドは、SABLE HILLSの真骨頂と言えるだろう。「Snake In The Grass」の演奏が始まると、「サークルピット!」と煽り、今日イチの巨大なサークルモッシュが勃発。男女入り乱れて笑顔で走り回る様は壮観だ。ここでRictはMCを挟み、去年20分だったものの、今年は60分のショウを届けられることに感謝を告げ、ショウは後半戦へ。「No Love Lost」ではTakuyaとRictの掛け合いヴォーカルが冴え渡り、続いて1stアルバム『EMBERS』の冒頭2曲に繋ぐ流れも最高。ステージ中央にRictは立ち、インスト曲「Path」では哀切の頂点を極めたギターを披露。それから「Embers」へとシームレスに繋ぎ、巨大なサークルモッシュに加えて、観客同士が体をぶつけ合ったりと、凄まじい盛り上がりを記録した。
『Wacken Open Air』(2023.8.2) photo by  Moritz Hartmann

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 ラストは2ndアルバム収録の「Interlude」~「The Eternal」で締め括る。Keitaの切れ味鋭いドラミングが楽曲の火力を高めて、メタルコアの攻撃力を突きつける一方、歌やコーラスでスケール豊かに聴かせる曲調は野外フェスで映え渡る。とりわけ「ウォー! ウォー!」のシンガロング・パートを現地の観客が大声で歌う光景は感動的であった。ライヴ終了後、現地の観客がメロイックサインを掲げ、特大のSABLE HILLSコールが巻き起こり、60分のショウでも物足りない!と言わんばかりの大熱狂ぶり。間違いなく、彼らは今年の「Wacken Open Air」に深い爪痕を残した。昨年と比べてもバンドは腕力とスキルに磨きをかけているし、ステージの立ち姿からは揺るぎない貫禄を感じるほどだった。ドイツをSABLE HILLSのホームに変える日は遠くない。そう思わせる圧巻のパフォーマンスを魅せてくれた。

photo by Moritz Hartmann
text by 荒金良介
『Wacken Open Air』(2023.8.2) photo by  Moritz Hartmann

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OKMusic編集部

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