BABYMETALが幕張メッセの灼熱の渦で
「カモン幕張! スクリーム!」

熱かった夏も終わりを告げようとする、中秋の名月も過ぎた9月半ば。東京地方は、日中でも過ごしやすい天候の日が多くなってきた。しかしこの土曜、幕張は真夏日のような暑さが戻ってきた。BABYMETAL、怒濤のワールドツアーの最後を締めくくる2Days初日。ヨーロッパ、そして北米大陸での修行の成果を、ずっと待っていた日本のファンに届ける日がやってきた。日本では3月の武道館2Days以来半年ぶりとなるフルサイズのショウ。過酷な夏を経験して、3人は、そしてバンドはどんな成長を遂げたのか? 早朝から、早くも黒いTシャツに身を包んだ軍団が続々と海浜幕張に集結した。開場は16時半とまだ先。しかし物販を求める列は朝8時には既に100人を超え、そこかしこでBABYMETAL談義の花が開いている。物販の始まる13時には、行列のために設けられたスペースは、溢れんばかりの人で覆い尽くされていた。開場の時間になっても、行列は途切れることを知らない。いかに多くの人間がBABYMETALを待ち望んでいたのかがわかる。

 会場に入ると、場内はスラッシュ四天王(メタリカ、スレイヤー、メガデス、アンスラックス)のナンバーを中心としたBGMに、早くも大歓声が起こり、モッシュの始まっている場所さえある。ステージのバックドロップには、昨年の12月に同場所でライヴを行ったときのマリア像とはうって変わり、大きなスクリーンが設えられている。床から天井まで届く巨大スクリーンに配慮してか、本来中心部に置かれているドラムセットは上手側にかなり移動した格好だ。

 続々と埋まっていくフロアと観客席。今回は若いファンが比較的多い印象。BABYMETALのファンも随分と多様化してきた感がある。アンスラックスの初期の名曲『A.I.R.』が終わり、定刻より5分ほど遅れて客電が消えると、待ちきれぬファンは早くも大興奮。スクリーンに映し出された、『スターウォーズ』を模したワールドツアー仕様の動画に歓声が上がる。

 最初の曲はもちろん『BABYMETAL DEATH』。神バンドがかき鳴らす激しいサウンドの中、スクリーンには大きなBABYMETALのロゴが映し出され、ステージ中央のスモークの中から、SU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALが姿を現す。SU-METALとYUIMETALがキリッとした表情で自己紹介するのと対照的に、少しオトナっぽくなった表情でニッコリと微笑むMOAMETALの表情が印象的だ。

『いいね!』ではブレイク部分でお立ち台に上がったSU-METALが「セイホー!幕張!」と煽る。そしてこの初期の曲も今では完全にヘヴィメタルのバンドのサウンドとして違和感がなくなっていることも、進化の一つだろう。それは次の『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』も同様だ。バンドで演奏されることを前提には作られていなかったという初期の曲も、あたかも最初からバンド用に書かれていたと思えるほど自然に演奏してしまう神バンドのポテンシャルの高さも、BABYMETALを欧米に認めさせた一因となっていることは疑いようもない。

 大歓声の中3人がステージから姿を消し、その神バンドのソロタイムが始まる。今ではこのソロタイムを楽しみにしているファンも数多い。ひとりがソロを演じている間、他の神が観客を煽るというスタイルも、バンドの結束力の高さを物語っている。

 壮絶なソロの応酬が終わり、場内は一転、ダークなピアノの旋律がこだまする。SU-METALのソロ曲『悪夢の輪舞曲』。炎に包まれたステージで歌い上げるSU-METALがスクリーンにはモノトーンで映し出される。凜々しく、そして美しいその姿に、ひと夏を超えて明らかに成長した痕跡が見える。ヘヴィメタル界を代表するディーヴァと形容しても言い過ぎとは思えない表現力(歌唱だけでなく表情や身体全体での表現も含め)を備え始めている。低迷する日本のヘヴィメタル業界における一筋の光明と言えるのではないだろうか。

 ステージにコミカルな映像が映し出され、YUIMETALとMOAMETALの『おねだり大作戦』が始まる。スクリーンが2分割され、二人のキュートな表情が映し出される。彼女たちの表現力も日を追う毎に成長しているのがわかる。リアルにお願いされたら、何でも買ってあげてしまいそうなファンも増えていそうだ(笑)。

次ページはライヴ後半戦の模様を そして再び神バンドのソロの狂宴が始まる。スクリーンに神々の手元が映し出される。その超絶プレイに多くのキッズが目を奪われる。ベースの神の両手タッピングが大きく映し出され大歓声がわき上がり、『Catch me if you can』が始まる。MOAMETALがSU-METALの両足の間から顔を出すキュートなパフォーマンス。よくぞこんなフリを考え出せたものだ! コミカルな3人のダンスパフォーマンスに、フロアもヒートアップ。サークルが何個も作られ興奮度も高まる。

 次の曲は『君とアニメが見たい~Answer for Animation With You』。久々に演奏される同曲に、イントロでどよめきと歓声が交錯する。フロアにはこの曲の合いの手の入れ方がよくわからないファンも多いようで、そんなところにもBABYMETALのファンが急速に数を増やしていることが伺える。

 やがてピアノの切ない旋律が響き、厳粛な弦楽奏が後に続く。『紅月-アカツキ-』だ。"Unfinished Ver."の歌唱に始まり、途中からギターサウンドに変化するスタイルも最早定番になったようだ。黒と赤のマントに身を包んだSU-METALのボーカルは切なくも伸びやかで艶やか。その表情は既に神々しいとも言えるレベルに美しく輝いている。間奏のツインギターの神のソロの応酬が切なさに拍車をかけ、朗々と歌い上げるSU-METALの歌唱に涙を流すファンも多い。

 感動的なフィニッシュから一転、YUIMETALとMOAMETALの『4の歌』が始まる。ヘヴィメタル史上最もキュートな楽曲と言っても過言ではない同曲が始まると、フロアの盛り上がり方も最高潮に。ステージはクライマックスへと疾走を始める。『メギツネ』での艶のある女を感じさせるSU-METALの歌唱に3人のパフォーマンスに酔いしれ、『ド・キ・ド・キ☆モーニング』ではフロア一体のフリコピに身を委ねる。

 本編最後は『ギミチョコ!!』。昨年12月にこのステージで初披露された同曲も、今や世界に鳴り響くキラーチューンへと成長した。ブレイクでは3人が「カモン幕張! スクリーム!」、「聞こえない!」、「スクリーム!」、「レッツ・シング・トゥゲザー!」と煽り、フロア・客席一体となったシンガロング。お立ち台に上ったSU-METALは満足そうな笑顔でステージを見回し、「We Are!」「BABYMETAL!」と叫ぶ。

 フロアは大歓声の後、間を置かずアンコールを求める「We Want More!」の大合唱だ。5分程度のやや長いインターバルの間、止むことを知らないコールと拍手。そしてパイプオルガンの荘厳なメロディに大歓声が起きた。

『ヘドバンギャー!!』にフロアはまたも興奮のるつぼと化し、ヘドバン、モッシュ、クラウドサーフと渾然一体のエキサイトぶりだ。 そしてスクリーンにメッセージが流れ、ピアノのイントロとともに手拍子、そしてフロアには大きなスペースが作られる。SU-METALのスクリームとともにWOD(ウォール・オブ・デス)が始まる。『イジメ、ダメ、ゼッタイ』。ステージは一面炎に包まれその熱気は客席にも伝わりさらなる興奮を呼ぶ。一体となった壮大なダメジャンプとともにステージはフィニッシュへ。再びお立ち台に上がった3人が「We Are!」「BABYMETAL!」と煽るが、一度では飽き足らず3人は両サイド2階席の近くまで走って行き煽る。再び中央で煽り、最後は火花がステージ上を包んだ。

 鳴り止まぬ大歓声の中3人と神バンドが姿を消し、スクリーンにはNY・ロンドン公演の告知、さらには来年松の内明け、1月10日さいたまスーパーアリーナでの単独公演が発表された。いよいよ幕を開けるメタルレジスタンス第三章がどのようなものになるのか。これからの動向にも目が離せない。



◆セットリスト
01 BABYMETAL DEATH
02 いいね!
03 ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
04 バンドソロ
05 悪夢の輪舞曲
06 おねだり大作戦
07 Catch me if you can
08 君とアニメが見たい~Answer for Animation With You
09 紅月-アカツキ-
10 4の歌
11 メギツネ
12 ド・キ・ド・キ☆モーニング
13 ギミチョコ!!
アンコール
14 ヘドバンギャー!!
15 イジメ、ダメ、ゼッタイ竹崎清彦アイドル、ファッション、スポーツ、ゲーム攻略本など幅広く執筆。趣味はライヴ観戦。好きなアーティストを追いかけ世界中どこへでも行きます! 80年代モノに詳しい。

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