【totemぽぉる インタビュー】
“多くの人に届くように”
というより、
ちゃんと人に届くように作った
レコーディングでは、
やっぱり音楽って楽しいと再認識した
『Brand-New Band Story』での優勝の副賞としてメジャーデビューが決まった時、どう思いましたか?
栗原
優勝が決まった時は、全然実感はなかったですよ。だって、いきなりメジャーデビューってあり得ない話じゃないですか(笑)。
その後、バンドや音楽に取り組む気持ちは、ちょっとずつでも変わっていきましたか?
蘇我
変わりました。それまで僕にとって音楽は自分のエネルギーを発散させるためのものって認識だったんです。だから、“人に聴かせたらどう思うだろうか?”とか“この歌詞はこうしたほうが聴いた人に伝わるだろう”とか考えずに100パーセント、自己完結していたんです。最近は多くの人に届けるためにはどうしたらいいか…それは媚びるわけじゃないんですけど、そういうことをみんなで考えるようになりました。昨年はライヴを130本やっていたから、スタジオに入る余裕なんてなかったんですけど、今は週3、週4で入って、人に届けるってことを意識しながら曲を作っています。
今回、リリースする「LOVE」も“多くの人にどう届けるか?”ということを考えながら作った曲なのですか?
蘇我
そうです。“多くの人に届くように”というより、ちゃんと人に届くように作りました。
その「LOVE」はtotemぽぉるの基本姿勢というか、基本理念というか、totemぽぉるがなぜ音楽をやっているのかという根本の気持ちを歌っている曲なんじゃないかと感じたので、そういう意味でもメジャーデビューに相応しいと思いました。
蘇我
おっしゃるとおりです。SNSも苦手で、人に自分の気持ちがうまく伝わらないと思うことが多い僕の自己紹介というか、自分がずっと思っていることをシンプルに書きました。
栗原さんと関野さんは蘇我さんがこの曲を持ってきた時、どんなふうに感じましたか?
関野
最初は全然違う歌詞だったんですよ。それを何度も書き直して今の歌詞を書いてくれたんですけど、歌詞を見ただけですごくいい曲だと思いました。僕もメジャーからの一発目に相応しい曲だと思います。
栗原
歌詞ができたのがレコーディングの前日だったんですよ。3カ月くらいずっと書き直していて。でも、歌詞はこの曲の一番の武器だと思います。
どこをどんなふうに書き直したのですか?
蘇我
まぁ、全体なんですけどね(笑)。プロデューサーに“この歌詞ではちょっと”と言われた時、“いや、これでいいんです!”と自分でも言えなかったんです。確かに“もっといけるかも!?”と思っちゃって…やっぱりそこでも負けん気が出たというか、そこで“これでいいんです!”と言ったら負けた気になるというか。それって“これが精いっぱいです”と言ってるようなものじゃないですか。なので、“分かりました。もっといい歌詞を書いてみせます”と言って、それから毎日考えて、めちゃめちゃ頑張りました。1度書き上げた歌詞を変えるって、もうイメージが出来上がっているから難しかったし、そもそも歌詞を書き直すなんてことしたことないし、歌詞がダメだって言われたこともなかったから、すごく悔しかったんですけど、だからこそ今まで書けなかったような、いい歌詞が書けたんじゃないかと思います。
《世界を愛せない僕たちは》と歌っていますが、どんな世界だったら愛せると思いますか?
蘇我
自分本位な話になってしまいますけど、僕が悩んでいたら、みんなが助けてくれるような世界だったら愛せると思います。だから、僕も誰かが困っているなら助けてあげたい。でも、そんなことは不可能というか…もちろんできることはしますけど、不可能に近いことだから、せめてこの曲を聴いて、同じような気持ちになってくれたらいいなと。そうやって少しずつ少しずつ音楽で救われる人が増えていったらいいと思うし、この曲を聴いて楽しかった時のことを思い出してくれたら嬉しいですね。
カップリングの「夕方エンジェル」は壮大なことを歌っている「LOVE」に対して、個人的なことを歌った無邪気なロックンロールという印象でした。
蘇我
そうですね。「LOVE」は世界中の寂しい人や悲しい人というか、世界が大嫌いなあなたに向けて作りましたけど、「夕方エンジェル」は世界がどうとか言ってるけど、“君がいればそれでいいんだよ”っていう気持ちで作りました。ちなみに、その2曲を作っていた時、僕の中にキーワードみたいなものがあって、どっちも夕暮れなんですよ。
その2曲をレコーディングするにあたっては、演奏面においても多くの人に届けることを考えたと思うのですが。
蘇我
その意味では「夕方エンジェル」は、どう展開していったらみんなが飽きずに聴けるかを意識しましたね。単調にならず、だからと言って複雑になりすぎずというバランスを相談しながら作っていきました。逆に「LOVE」は、どれだけストレートに、どれだけ勢いで伝えられるかを意識しました。
各パートのこだわりも聞かせてください。
蘇我
「LOVE」のギターは《世界を愛せない》って歌っているくらいなので、世界を壊すくらいのつもりで絶望した時の音をイメージしました。この曲がすごくやさしくて、ドラマチックな音だったら嘘になると思うんですよ。だけど、そんな絶望の中に希望が少しだけ残っている…《世界を愛せない》と言いながらもどこか世界に期待してしまっているサウンドになればいいなと思って。逆に「夕方エンジェル」はポップめというか、ライトめというか、誰でも楽しめるようなサウンドを意識しましたね。共通認識だと思うんですよ。“好きな人がいてくれたら、もうそれでいい”っていうのは。そのキラキラした楽しさを表現したいと思いました。
リズム隊のふたりもお願いします。
栗原
「LOVE」はドラムがシンプルなんですよ。シンプルで疾走感もあって、スネアの音もでかめの破壊的な音をイメージしました。「夕方エンジェル」はサビの跳ねを含め、小技をきかせながらいろいろな展開を加えました。
関野
「LOVE」は力強い曲だと思ったので、これまでにないくらい歪みをかけて、音でも圧倒するような感じをイメージしました。「夕方エンジェル」はいつも以上にベースラインをしっかり考えて、“こういうのもできるんだぞ!”ってところをアピールしようと思いました。
レコーディングは楽しかったですか?
蘇我
楽しかったです! ギターサウンドを作る時、“こういう感じの音が欲しいんですよね”って感覚で伝えたら、ギターテックさんがぴったりの音を作ってくれて。“うわっ! こんな音を出せるんだ!?”みたいな。音作りってめちゃめちゃ重要だと思いましたね。みなさんリスペクトがあるというか、自分の役割に誇りを持っているというか、僕が言ったことに対して“分からないよ”って言うのではなく、僕が言おうとしていることをしっかり汲み取って音作りをしてくれたのが嬉しかったし、楽しかったし、音楽ってやっぱり楽しいって再認識しました。それは龍世も関野も同じだったと思います。
メジャーデビューをきっかけにバンドとしてどんなふうに飛躍していきたいですか?
蘇我
行き場のないエネルギーを抱えている若者たちにとって、そのエネルギーを発散できる場所になりたいです。今の音楽シーンでそういう若者たちが求めているのは、ロックバンドではなくてヒップホップだと思うんですよ。ヒップホップ、カッコ良いし、ワルそうだし、イカしてる人たちは、みんなヒップホップをやっているってイメージがあると思うんですけど、僕が憧れたのはロックバンドなので、ちゃんとロックバンドとして、行き場のない人たちの選択肢になりたいという気持ちでやっています。だから、どんなに人気が出たとしてもその気持ちは忘れずにやっていきたいです。
最後に、9月16日から始まるリリースツアー『ラブリーTOUR』の意気込みを聞かせてください。
蘇我
初めて行く場所もいっぱいあるので、行く先々で美味しいものをいっぱい食べたいです(笑)。
栗原
久しぶりのツアーなので、全会場でカマしたいです。
関野
僕がメインで運転するので、事故を起こさないように気をつけたいと思います(笑)。
蘇我
最後にもう1つだけ! 僕たちが昨年から主催している『totemぽぉるpre.タイムカプセル』というサーキットイベントを今年も11月3日に開催します。僕らがこの5年間で出会った仲間達が集まるイベントです。そういういろいろなつながりのある血の通ったサーキットイベントなので、ぜひ多くの人に来てもらえたら嬉しいです。
取材:山口智男
・・・
配信シングル「LOVE」2023年9月6日リリース
日本コロムビア
『Digital Single Release Tour「ラブリー TOUR 」』
9/16(土) 栃木・宇都宮 HELLO DOLLY
9/19(月) 京都・GROWLY
9/20(火) 大阪・BRONZE
9/21(水) 兵庫・神戸 太陽と虎
9/25(月) 福岡・Op’s
9/27(水) 愛知・名古屋R.A.D
9/29(金) 東京・下北沢 近松(ワンマン)
『totemぽぉる pre.「タイムカプセル」』
11/03(金) 下北沢ERA/下北沢UP/下北沢 近松/下北沢 近道/下北沢 LIVE HOLIC/mona records/Flower Loft
トーテムポール:宇都宮発、世田谷在住バンド。2019年3月に宇都宮の幼馴染みで結成して以降、拠点を東京に移し活動。22年にWACK×JMS共同開催オーディション『Brad New Band Story』にて優勝し、23年9月に配信シングル「LOVE」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。 totemぽぉる オフィシャルX