INTERVIWE / 雨のパレード原点回帰の
雨パレ、やりたいことを突き詰めた新
作『Human Being』制作背景 原点回帰
の雨パレ、やりたいことを突き詰めた
新作『Human Being』制作背景

結成10周年を過ごす雨のパレードが、新作EP『Human Being』を10月4日(水)にリリースした。

単曲の発表はあったものの、まとまった曲数をパッケージした作品は『Face to Face』以来、実に2年10ヶ月ぶりである。これまでも多様な音楽性を取り込み発展してきたバンドだが、本作ではソウルやファンクからの影響がこれまで以上に前景化。mabanuaのプロデュースで話題になった「paradigm」をはじめ、ちゃんMARI(ゲスの極み乙女)、MELRAW、タブゾンビ(SOIL&”PIMP”SESSIONS)ら豪華なゲストミュージシャンが参加している。その音から活力や華やかさを感じるのは、生音で録ることを重視したということと無関係ではないだろう。「心からいいと思える音楽を作っていきたい」という3人に、新作について語ってもらった。

Interview & Text by Ryutaro Kuroda(https://twitter.com/KURODARyutaro)
Photo by Mado Uemura(https://www.instagram.com/uemura_mado/)

――そこで音楽的にフォーカスしたことはありますか?

Fukunaga

:前作(『Face to Face』)、前々作(『BORDERLESS』)のアルバムとは反して、生の気持ち、人のグルーヴみたいなものを意識していました。なので、デモ音源もほぼ生楽器で作っています。他のアーティストの新譜を聴いていても、最近はそういうムードのある作品に惹かれることが多くて。

――なるほど。

Fukunaga

:mabanuaさんはいわゆるメインストリームのマナーみたいなものがちゃんとある方だと僕は思っていて、「paradigm」のアレンジも、そのマナーを守って返してくれたと思うんです。自分が当初想定していたものとは違う角度で返ってきたにも関わらずそれを上回る、“めっちゃいいな!”って思える感覚があって。上の帯域に入っているキラキラしている音とか、しっかりリバース・シンバルが入ってきて、サビでバン! と派手になってくところとか、クラップ音もmabanuaさんが入れてくれて。自分たちが作ったデモから、テンポも構成楽器もほとんど変わってないのに、グルーヴ感が増して返ってきたのは驚きでした。

――YamasakiさんとOsawaさんは、『Human Being』に対してどんな手応えを持ってますか。

Kosuke Yamasaki(Gt.)

:マンパワーの強い作品になったかなと思います。録りものに関しても生楽器が中心で、人間そのままのプレイが音になっている。その感覚は割と久しぶりだったりして、自分も楽器のプレイヤーなのでそういう音は肌感的にしっくりくるんですよね。

――ギタリストとして活力を感じるところはありましたか?

Yamasaki

:いや、ギタリストとしてはあんまりないですね。

Mineho Osawa(Dr.)

:(笑)。

Yamasaki

:ギターは割とスピーディーに録ったので(笑)。それよりも自分が打ったピアノの音やフレージングを、ちゃんとした土台のあるピアニストに弾いてもらうことで肉付けされていくときに手応えを感じました。

Osawa

:「paradigm」のリリースからちょっと期間が開いた分、今回のEPはしっかりと曲を作り込むことができました。蔦谷さんとやったことで、DTMでの制作をバンドに落とし込むことができるようになって、そこで吸収したことを踏まえてドラムも叩けたかなと思います。今回はほとんど生ドラムで録っているんですけど、まずは打ち込みでビートを考えて、フィルもしっかり作り込んでから録っていったので、すごく満足のいく作品になっています。ツアーも7カ所回るので、この曲を届けるのがとても楽しみです。

――“マンパワー”という言葉もありましたが、EPのタイトルも『Human Being』ですし、人間性にフォーカスしたような作風を意識していたのでしょうか。

Fukunaga

:蔦谷さんとやった時期から、“多くの人に届ける”という意識でバンド活動をしていましたし、前のレーベルもそういう風に売っていきたいっていう思いがあったんですけど。そこで思っていたような結果が出せなかった、という事実があるわけですよね。レーベルを離れるということに至ったとき、改めて自分が伝えたいことはなんだろうって考える時間ができて。もう一度原点に戻って、人間味のある部分や嘘っぽくない感情の所作を書きたいと思ったんです。だからこそ、人間性が出ている作品になったのかなって。

「祈ること自体の大切さ」──作詞面の変化

――EP全体を通して、ブラック・ミュージックからの影響がこれまで以上に色濃く出ているように思います。

Fukunaga

:個人的にもブラック・ミュージックは大好きで、これまでも作品には反映させてきたつもりなんです。今回は参加してくれたサポート・ミュージシャンのおかげもあって、そこを色濃く出せたのかなと思います。今後どうなっていくかはわからないですけど、このEPでは自分たちのやりたいことをやろうって決めたので。

――制作中、3人の中で共通言語になるような音楽はありましたか?

Fukunaga

:自分が聴いている新譜から影響を受けることが多いですね。

Osawa

:それを3人で一緒に聴いてから曲作りしたり、途中で聴き比べて、(アイディアを)拾っていったりはしましたね。

Fukunaga

:たとえばAdi Oasisが今年リリースしたアルバム(『Lotus Glow』)がすごくよくて、その作品も大体が生楽器なんですよね。シンセも結構入ってますけど、いわゆるアナログ・シンセみたいな音だったりして。

――作品全体を通して、歌詞では祈りと後悔が主軸になっているように感じます。

Fukunaga

:「paradigm」以降、神とか偶像みたいなものを歌詞に落とし込めるようになったんです。そういうものが今まではしっくりこなかったんですけど、なんかいいなあって思えてきていて。神にまつわる言葉が今回の5曲には入ってますし、それは結構意識して書いたものです。

――なぜそういう意識になったんだと思いますか?

Fukunaga

:なんででしょうね……。存在として信じているわけではなくて、祈ること自体の大切さというか、その意味を楽しめるようになってきたっていう感じですかね。何を神とするかという話だと思うんですけど、たとえば自分が作りたいものや、信念みたいなものを崇めたりする行為に近いと思います。

――なるほど。

Fukunaga

:あと、今まではサビの歌詞に意味を持たせるのが普通だと思って書いてきたんですけど、この曲はそれがしっくりこなくて、ずっと言葉がハマらない気持ちがあったんです。でも、シャワーを浴びながら考えていたときに、Aメロに意味を持たせてサビを抽象的にするのはいいのかも、っていうアイディアが浮かんできて。それで「Praying Hands」では、サビの歌詞を情景的にして、Aメロのブロックに言いたいことを詰め込んでいます。

――「Praying Hands」に関して、プレイの面で気をつけたことはありますか。

Yamasaki

:コーラス、クワイア、ハーモニーの多い楽曲は、やっぱりラインを一番気にします。ハーモニー・ラインでパワーのある感じに持っていくことは意識しました。

変化し続ける雨パレ、10周年を経たその先のヴィジョン

――先ほどちゃんMARIさんも同郷という話がありましたが、「Praying Hands」と「complicated」の鍵盤を、彼女に依頼した理由というのは?

Fukunaga

:上京してからライブハウスを紹介してもらったり色々とお世話になっていて。かつ、ずっと飲み仲間という繋がりもあったんですよね。今回mabanuaさんとやったときに、細かいオカズみたいなフレーズで鍵盤のオブリをリクエストしたら、めちゃくちゃいいものを入れてもらえて。そこも「paradigm」で得た感覚なんですけど、それによってリズムも出るし、アレンジで飽きなくなるなと思って。それで今回は鍵盤を誰かにお願いしたいと思い、マリさんにお願いしました。

――「complicated」は包み込むようなミッド・バラードになっていますね。

Osawa

:まさに包み込むような感じの曲になればいいなと思っていました。あと、自分たちの曲でリムショットを久しぶりに使ったので、ちゃんといい音でリムショットを出すぞ、という気持ちはありましたね。Aメロの大事な部分でずっと鳴っているので、レコーディングするときにそこは気をつけて叩きました。

Yamasaki

:デモではスネアの立ち位置にリムがあって、それは生ドラムのサンプリングなんですけど、デモの雰囲気をまるっと生ドラムで再現するのって、あまり生産的な行為ではないじゃないですか。それでデモの雰囲気も残しつつ、生ドラムのよさが出ればいいなあと思ってレコーディングしていて。結果的にいいエアー感が出たし、パンッと抜けていく煌びやかな部分も出せたのはよかったですね。

――Fukunagaさんはこの曲でイメージしていたものはありますか。

Fukunaga

:自分の声はバラードと相性がいいと思っているので、こういう曲は作るのも好きだし、歌詞も書きやすいです。

――《この声はまだ Nobody knows》という歌詞が印象的です。

Fukunaga

:デモにはデタラメ英語で歌詞を載せているんですけど、同じような母音でこの言葉が乗ったので、《Nobody knows》をそのまま活かすように歌詞を書きました。「complicated」は『ラブ トランジット』という恋愛リアリティーショーを観て、めっちゃいいやん! と思ってから1日2日で書き上げた曲でした。すごく合うので、番組内でもこの曲を使ってくれないかなあって思っています(笑)。

――(笑)。「Blindness」は本作の中ではデジタルなサウンドが印象に残る曲ですね。

Fukunaga

:プロデューサーのA.G.Oさんにアレンジをお願いした曲です。この曲もデモは生楽器ばかりだったんですけど、A.G.Oさんとやり取りしていく中でこの形に落ち着きました。最初に返ってきたものに比べると、完成したものはより人間味が出ている気がします。「paradigm」を転機にしてカラーを変えていきたい気持ちもあったので、「Blindness」もその方向性で作っていこうとしていました。

Osawa

:この曲はA.G.Oさんの作り込んだビートで構成されているんですけど、曲全体のビートの組み方が勉強になりました。あと、いつもライブで弾いてもらっているベースの永井さん(永井隆泰)がいいグルーヴを出してくれていて、打ち込みの音と人のうねりがいい感じにマッチしていると思います

Yamasaki

:この曲はデモに入れていたギターの音が根幹になっているんですけど、レコーディングでちゃんとした環境で録った音より、なぜかデモのときの限られた環境で録った音の方がいい感じで。それを活かしたアレンジに仕上がったのはよかったです。それとアコギを久しぶりに録っていて、アシッドなサウンドの中にふっくらとしたサウンドが入っているのも、奥行きが出るエッセンスになったのかなと思います。

Fukunaga

:仕上がったものは大分方向性が違いますけど、FLOというアーティストが90年代のR&Bのような世界観の曲を出していて、それを聴いてアコギがパパっと入ってくるものをやりたいと思って入れました。

――充実のEPになっていると思いますし、今年はバンドの10周年なんですよね。

Fukunaga

:ほんとに目の前のことをやってきたら10年経っていた、という感じです。体験したことのないことばかりバンドで経験させてもらえたので、常に新鮮だったと思いますね。

――これからの10年をどんなものにしたいと思ってますか?

Fukunaga

:誇れるようなバンド、自分が好きなバンドであり続けたい、という感じです。

Yamasaki

:僕は常に新鮮さを持っていたいなって思います。キャリアを経た重みみたいなものも大事ですけど、なりたいものへとずっと進んでいくような新鮮さを持って活動していきたいですね。

Osawa

:ジャンルレスに曲を作ったり、体制も変わったり、きっとこれからも変化し続けるんだろうなって感じています。ただ、その中でも自分たちに正直に曲を作り続けるっていう部分はブレないようにしたいですね。あと、個人的には海外での活動も増やしていきたいです。

――どこに行きたいですか?

Osawa

:コロナ禍前は上海や台湾などでもライブをしていたんですけど、最近はなかなか行けていなくて。なので、まずはアジアへ行きたいです。SNSでメンションを飛ばしてくれたりするファンの方もいるので、その場に行って直接自分たちの曲を届けたいなっていう気持ちがあります。
【リリース情報】

雨のパレード 『Human Being』

Release Date:2023.10.04 (Wed.)
Label:HILSS RECORDS
Tracklist:
1. Praying Hands
2. individuality
3. paradigm
4. complicated
5. Blindness


【イベント情報】

『ame_no_parade 10th Anniversary Tour〜Progress〜』

日時:2023年10月12日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:愛知 Nagoya CLUB QUATTRO
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-567/ローソン(Lコード) 42783
問い合わせ先 ジェイルハウス 052-936-6041 www.jailhouse.jp

==

日時:2023年10月18日(水) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:福岡 BEAT STATION
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-606/ローソン(Lコード) 83219
問い合わせ先 キョードー西日本 0570-09-2424 www.kyodo-west.co.jp

==

日時:2023年10月20日(金) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:鹿児島 SR HALL
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-607/ローソン(Lコード) 83225
問い合わせ先 キョードー西日本 0570-09-2424 www.kyodo-west.co.jp

==

日時:2023年11月9日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪 Umeda CLUB QUATTRO
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-589/ローソン(Lコード) 51977
問い合わせ先 グリーンズ 06-6882-1224 www.greens-corp.co.jp/

==

日時:2023年11月16日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:北海道・札幌 cube garden
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-410/ローソン(Lコード) 11693
問い合わせ先 スマッシュイースト 011-261-5569 www.smash-east.com

==

日時:2023年11月18日(土) OPEN 17:00 / START 18:00
会場:宮城・仙台 Rensa
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-610/ローソン(Lコード) 21453
問い合わせ先 キョードー西日本 0570-09-2424 www.kyodo-west.co.jp

==

日時:2023年11月27日(月) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京・恵比寿 LIQUIDROOM
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-540/ローソン(Lコード) 74195
問い合わせ先 キョードー西日本 0570-09-2424 www.kyodo-west.co.jp

==

・チケット
一般発売:9月30日(土)10:00〜

※枚数制限:お一人様4枚まで
※発券形態:紙、電子チケット併用
※個人情報取得:購入者のみ取得
※入場制限:未就学児入場不可、小学生は保護者同伴にて入場無料

■ 雨のパレード オフィシャル・サイト(http://amenoparade.com/)
結成10周年を過ごす雨のパレードが、新作EP『Human Being』を10月4日(水)にリリースした。

単曲の発表はあったものの、まとまった曲数をパッケージした作品は『Face to Face』以来、実に2年10ヶ月ぶりである。これまでも多様な音楽性を取り込み発展してきたバンドだが、本作ではソウルやファンクからの影響がこれまで以上に前景化。mabanuaのプロデュースで話題になった「paradigm」をはじめ、ちゃんMARI(ゲスの極み乙女)、MELRAW、タブゾンビ(SOIL&”PIMP”SESSIONS)ら豪華なゲストミュージシャンが参加している。その音から活力や華やかさを感じるのは、生音で録ることを重視したということと無関係ではないだろう。「心からいいと思える音楽を作っていきたい」という3人に、新作について語ってもらった。

Interview & Text by Ryutaro Kuroda(https://twitter.com/KURODARyutaro)
Photo by Mado Uemura(https://www.instagram.com/uemura_mado/)

――そこで音楽的にフォーカスしたことはありますか?

Fukunaga

:前作(『Face to Face』)、前々作(『BORDERLESS』)のアルバムとは反して、生の気持ち、人のグルーヴみたいなものを意識していました。なので、デモ音源もほぼ生楽器で作っています。他のアーティストの新譜を聴いていても、最近はそういうムードのある作品に惹かれることが多くて。

――なるほど。

Fukunaga

:mabanuaさんはいわゆるメインストリームのマナーみたいなものがちゃんとある方だと僕は思っていて、「paradigm」のアレンジも、そのマナーを守って返してくれたと思うんです。自分が当初想定していたものとは違う角度で返ってきたにも関わらずそれを上回る、“めっちゃいいな!”って思える感覚があって。上の帯域に入っているキラキラしている音とか、しっかりリバース・シンバルが入ってきて、サビでバン! と派手になってくところとか、クラップ音もmabanuaさんが入れてくれて。自分たちが作ったデモから、テンポも構成楽器もほとんど変わってないのに、グルーヴ感が増して返ってきたのは驚きでした。

――YamasakiさんとOsawaさんは、『Human Being』に対してどんな手応えを持ってますか。

Kosuke Yamasaki(Gt.)

:マンパワーの強い作品になったかなと思います。録りものに関しても生楽器が中心で、人間そのままのプレイが音になっている。その感覚は割と久しぶりだったりして、自分も楽器のプレイヤーなのでそういう音は肌感的にしっくりくるんですよね。

――ギタリストとして活力を感じるところはありましたか?

Yamasaki

:いや、ギタリストとしてはあんまりないですね。

Mineho Osawa(Dr.)

:(笑)。

Yamasaki

:ギターは割とスピーディーに録ったので(笑)。それよりも自分が打ったピアノの音やフレージングを、ちゃんとした土台のあるピアニストに弾いてもらうことで肉付けされていくときに手応えを感じました。

Osawa

:「paradigm」のリリースからちょっと期間が開いた分、今回のEPはしっかりと曲を作り込むことができました。蔦谷さんとやったことで、DTMでの制作をバンドに落とし込むことができるようになって、そこで吸収したことを踏まえてドラムも叩けたかなと思います。今回はほとんど生ドラムで録っているんですけど、まずは打ち込みでビートを考えて、フィルもしっかり作り込んでから録っていったので、すごく満足のいく作品になっています。ツアーも7カ所回るので、この曲を届けるのがとても楽しみです。

――“マンパワー”という言葉もありましたが、EPのタイトルも『Human Being』ですし、人間性にフォーカスしたような作風を意識していたのでしょうか。

Fukunaga

:蔦谷さんとやった時期から、“多くの人に届ける”という意識でバンド活動をしていましたし、前のレーベルもそういう風に売っていきたいっていう思いがあったんですけど。そこで思っていたような結果が出せなかった、という事実があるわけですよね。レーベルを離れるということに至ったとき、改めて自分が伝えたいことはなんだろうって考える時間ができて。もう一度原点に戻って、人間味のある部分や嘘っぽくない感情の所作を書きたいと思ったんです。だからこそ、人間性が出ている作品になったのかなって。

「祈ること自体の大切さ」──作詞面の変化

――EP全体を通して、ブラック・ミュージックからの影響がこれまで以上に色濃く出ているように思います。

Fukunaga

:個人的にもブラック・ミュージックは大好きで、これまでも作品には反映させてきたつもりなんです。今回は参加してくれたサポート・ミュージシャンのおかげもあって、そこを色濃く出せたのかなと思います。今後どうなっていくかはわからないですけど、このEPでは自分たちのやりたいことをやろうって決めたので。

――制作中、3人の中で共通言語になるような音楽はありましたか?

Fukunaga

:自分が聴いている新譜から影響を受けることが多いですね。

Osawa

:それを3人で一緒に聴いてから曲作りしたり、途中で聴き比べて、(アイディアを)拾っていったりはしましたね。

Fukunaga

:たとえばAdi Oasisが今年リリースしたアルバム(『Lotus Glow』)がすごくよくて、その作品も大体が生楽器なんですよね。シンセも結構入ってますけど、いわゆるアナログ・シンセみたいな音だったりして。

――作品全体を通して、歌詞では祈りと後悔が主軸になっているように感じます。

Fukunaga

:「paradigm」以降、神とか偶像みたいなものを歌詞に落とし込めるようになったんです。そういうものが今まではしっくりこなかったんですけど、なんかいいなあって思えてきていて。神にまつわる言葉が今回の5曲には入ってますし、それは結構意識して書いたものです。

――なぜそういう意識になったんだと思いますか?

Fukunaga

:なんででしょうね……。存在として信じているわけではなくて、祈ること自体の大切さというか、その意味を楽しめるようになってきたっていう感じですかね。何を神とするかという話だと思うんですけど、たとえば自分が作りたいものや、信念みたいなものを崇めたりする行為に近いと思います。

――なるほど。

Fukunaga

:あと、今まではサビの歌詞に意味を持たせるのが普通だと思って書いてきたんですけど、この曲はそれがしっくりこなくて、ずっと言葉がハマらない気持ちがあったんです。でも、シャワーを浴びながら考えていたときに、Aメロに意味を持たせてサビを抽象的にするのはいいのかも、っていうアイディアが浮かんできて。それで「Praying Hands」では、サビの歌詞を情景的にして、Aメロのブロックに言いたいことを詰め込んでいます。

――「Praying Hands」に関して、プレイの面で気をつけたことはありますか。

Yamasaki

:コーラス、クワイア、ハーモニーの多い楽曲は、やっぱりラインを一番気にします。ハーモニー・ラインでパワーのある感じに持っていくことは意識しました。

変化し続ける雨パレ、10周年を経たその先のヴィジョン

――先ほどちゃんMARIさんも同郷という話がありましたが、「Praying Hands」と「complicated」の鍵盤を、彼女に依頼した理由というのは?

Fukunaga

:上京してからライブハウスを紹介してもらったり色々とお世話になっていて。かつ、ずっと飲み仲間という繋がりもあったんですよね。今回mabanuaさんとやったときに、細かいオカズみたいなフレーズで鍵盤のオブリをリクエストしたら、めちゃくちゃいいものを入れてもらえて。そこも「paradigm」で得た感覚なんですけど、それによってリズムも出るし、アレンジで飽きなくなるなと思って。それで今回は鍵盤を誰かにお願いしたいと思い、マリさんにお願いしました。

――「complicated」は包み込むようなミッド・バラードになっていますね。

Osawa

:まさに包み込むような感じの曲になればいいなと思っていました。あと、自分たちの曲でリムショットを久しぶりに使ったので、ちゃんといい音でリムショットを出すぞ、という気持ちはありましたね。Aメロの大事な部分でずっと鳴っているので、レコーディングするときにそこは気をつけて叩きました。

Yamasaki

:デモではスネアの立ち位置にリムがあって、それは生ドラムのサンプリングなんですけど、デモの雰囲気をまるっと生ドラムで再現するのって、あまり生産的な行為ではないじゃないですか。それでデモの雰囲気も残しつつ、生ドラムのよさが出ればいいなあと思ってレコーディングしていて。結果的にいいエアー感が出たし、パンッと抜けていく煌びやかな部分も出せたのはよかったですね。

――Fukunagaさんはこの曲でイメージしていたものはありますか。

Fukunaga

:自分の声はバラードと相性がいいと思っているので、こういう曲は作るのも好きだし、歌詞も書きやすいです。

――《この声はまだ Nobody knows》という歌詞が印象的です。

Fukunaga

:デモにはデタラメ英語で歌詞を載せているんですけど、同じような母音でこの言葉が乗ったので、《Nobody knows》をそのまま活かすように歌詞を書きました。「complicated」は『ラブ トランジット』という恋愛リアリティーショーを観て、めっちゃいいやん! と思ってから1日2日で書き上げた曲でした。すごく合うので、番組内でもこの曲を使ってくれないかなあって思っています(笑)。

――(笑)。「Blindness」は本作の中ではデジタルなサウンドが印象に残る曲ですね。

Fukunaga

:プロデューサーのA.G.Oさんにアレンジをお願いした曲です。この曲もデモは生楽器ばかりだったんですけど、A.G.Oさんとやり取りしていく中でこの形に落ち着きました。最初に返ってきたものに比べると、完成したものはより人間味が出ている気がします。「paradigm」を転機にしてカラーを変えていきたい気持ちもあったので、「Blindness」もその方向性で作っていこうとしていました。

Osawa

:この曲はA.G.Oさんの作り込んだビートで構成されているんですけど、曲全体のビートの組み方が勉強になりました。あと、いつもライブで弾いてもらっているベースの永井さん(永井隆泰)がいいグルーヴを出してくれていて、打ち込みの音と人のうねりがいい感じにマッチしていると思います

Yamasaki

:この曲はデモに入れていたギターの音が根幹になっているんですけど、レコーディングでちゃんとした環境で録った音より、なぜかデモのときの限られた環境で録った音の方がいい感じで。それを活かしたアレンジに仕上がったのはよかったです。それとアコギを久しぶりに録っていて、アシッドなサウンドの中にふっくらとしたサウンドが入っているのも、奥行きが出るエッセンスになったのかなと思います。

Fukunaga

:仕上がったものは大分方向性が違いますけど、FLOというアーティストが90年代のR&Bのような世界観の曲を出していて、それを聴いてアコギがパパっと入ってくるものをやりたいと思って入れました。

――充実のEPになっていると思いますし、今年はバンドの10周年なんですよね。

Fukunaga

:ほんとに目の前のことをやってきたら10年経っていた、という感じです。体験したことのないことばかりバンドで経験させてもらえたので、常に新鮮だったと思いますね。

――これからの10年をどんなものにしたいと思ってますか?

Fukunaga

:誇れるようなバンド、自分が好きなバンドであり続けたい、という感じです。

Yamasaki

:僕は常に新鮮さを持っていたいなって思います。キャリアを経た重みみたいなものも大事ですけど、なりたいものへとずっと進んでいくような新鮮さを持って活動していきたいですね。

Osawa

:ジャンルレスに曲を作ったり、体制も変わったり、きっとこれからも変化し続けるんだろうなって感じています。ただ、その中でも自分たちに正直に曲を作り続けるっていう部分はブレないようにしたいですね。あと、個人的には海外での活動も増やしていきたいです。

――どこに行きたいですか?

Osawa

:コロナ禍前は上海や台湾などでもライブをしていたんですけど、最近はなかなか行けていなくて。なので、まずはアジアへ行きたいです。SNSでメンションを飛ばしてくれたりするファンの方もいるので、その場に行って直接自分たちの曲を届けたいなっていう気持ちがあります。
【リリース情報】

雨のパレード 『Human Being』

Release Date:2023.10.04 (Wed.)
Label:HILSS RECORDS
Tracklist:
1. Praying Hands
2. individuality
3. paradigm
4. complicated
5. Blindness


【イベント情報】

『ame_no_parade 10th Anniversary Tour〜Progress〜』

日時:2023年10月12日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:愛知 Nagoya CLUB QUATTRO
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-567/ローソン(Lコード) 42783
問い合わせ先 ジェイルハウス 052-936-6041 www.jailhouse.jp

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日時:2023年10月18日(水) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:福岡 BEAT STATION
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-606/ローソン(Lコード) 83219
問い合わせ先 キョードー西日本 0570-09-2424 www.kyodo-west.co.jp

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日時:2023年10月20日(金) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:鹿児島 SR HALL
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-607/ローソン(Lコード) 83225
問い合わせ先 キョードー西日本 0570-09-2424 www.kyodo-west.co.jp

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日時:2023年11月9日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪 Umeda CLUB QUATTRO
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-589/ローソン(Lコード) 51977
問い合わせ先 グリーンズ 06-6882-1224 www.greens-corp.co.jp/

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日時:2023年11月16日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:北海道・札幌 cube garden
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-410/ローソン(Lコード) 11693
問い合わせ先 スマッシュイースト 011-261-5569 www.smash-east.com

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日時:2023年11月18日(土) OPEN 17:00 / START 18:00
会場:宮城・仙台 Rensa
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-610/ローソン(Lコード) 21453
問い合わせ先 キョードー西日本 0570-09-2424 www.kyodo-west.co.jp

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日時:2023年11月27日(月) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京・恵比寿 LIQUIDROOM
料金:¥5,500(各1D代別途)

チケットぴあ(Pコード)252-540/ローソン(Lコード) 74195
問い合わせ先 キョードー西日本 0570-09-2424 www.kyodo-west.co.jp

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・チケット
一般発売:9月30日(土)10:00〜

※枚数制限:お一人様4枚まで
※発券形態:紙、電子チケット併用
※個人情報取得:購入者のみ取得
※入場制限:未就学児入場不可、小学生は保護者同伴にて入場無料

■ 雨のパレード オフィシャル・サイト(http://amenoparade.com/)

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