KIRITO

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【KIRITO インタビュー】
何から何まで自信を持って
“これだよ!”と言いたい想いがある

自分のスタイルとして
確立することが大事

KIRITOさんのお話をうかがって思ったのですが、人間というものは真理を知るために生きていて、神や宇宙、神秘といったものを解明したくて科学も発達してきたような気がします。

それはあると思いますね。自分が量子力学的なものを歌詞の世界観に入れたいと思うきっかけになったのは、量子力学も以前はアインシュタインの相対性理論のセオーリが主体で、アインシュタインが最後のほうに量子力学に対して言ったのが“神はサイコロを振らない”という言葉だったんです。相対性理論は物理学を極めた理論なわけで、宇宙のバランスだったり、重力だったり、光だったりといったものを追究し尽くしたアインシュタインが、これは偶然で出来上がる代物ではないという答えに行き着く。人知を超えた神か何か、絶対的なものが創造したとしか思えないと。それを知ったことで、歌詞を書くにあたって量子力学を裏づけにしたいと考えるようになったんです。

私はスピリチュアル方面に惹かれる人間ですが、KIRITOさんのお話をうかがって、科学にも興味が湧いてきました。ただ、このインタビューを読んでKIRITOさんの音楽は難解なのかなと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、そういうことはなくて、上質かつ良い意味で聴きやすい音楽であることは分かっていただきたいです。

僕が考えていることは狂っているかもしれないけど、僕が作る音楽は決して取っつきにくいものではないです(笑)。

そして、狂ってもいないです(笑)。話が少し逸れましたが、『ALPHA』には「hope」という美麗なバラードも収録されているのも特筆すべきところかなと。

この曲はバンドサウンドとはすごく離れたところで、アンビエントな空間の中に歌があるというイメージです。映像が自分の頭の中にあって、それを音にしていく作業だったけど、マニュピレーターの草間 敬さんの力が大きかったですね。もちろんしっかりとした骨組みは自分で作ったけど、その上でこの曲はシンセが果たす役割が大きいと思ったので。僕のすごく抽象的なイメージを草間さんに音にしてもらうやりとりの中で、自分の頭の中にある映像をどんどん明確にしていった感じでした。ただ、この曲はシンセが主役でギターは最小限でいいと思っていたけど、実際にギターを入れ始めると、なんか厄介なギターを入れたくなるんですよ(笑)。それで、結果的にギターもたくさん入っている曲になりました。それこそ曲の後半のほうになると、“これを入れますか?”というような歪んだ音の結構エグいリフが入っていたり(笑)。まぁ、そこが自分らしいところだと思うのですが。

いろいろな曲がある中で、常にKIRITOさんが香っていることも魅力になっています。魅力と言えば、「hope」は深い喪失感を描きつつ、でも最後に《希望を胸に歩き出そう》という前向きな言葉で締め括っているのもいいですね。

「hope」は歌詞全体で見るとほぼ絶望だけど、それだけの歌にはしたくなかったんです。これも進化につながっているんですけど、“圧倒的な絶望の中で希望が生まれる”ではなくて、“希望を作る”ということを歌っています。めちゃめちゃ人工的な希望を無機的に自分の胸の中に放り込んでおけば、いつかそれは次に向かう力になるんじゃないかという悲痛な願いみたいな。なので、タイトルを全部小文字にしたというのもあるんです。

先人の教えで、“つらい時ほど笑顔でいなさい”という言葉がありますよね。無理してでも笑うことで運気が上がると。

そういう感覚ですね。そして、“絶望の中でも無理してでも笑いなさい”というのは宗教的な教えなわけだけど、それも自分の中では科学的に説明できることなんじゃないかという側面で見てしまうんですよ。笑顔でいることで傷んだ精神が治っていく、身体も治っていくというのは、科学的に立証できるんじゃないかと。そういうことに面白さを感じるんです。

私もそう思うようになりつつあります。『ALPHA』はさまざまな情景が描かれていったあと、ハートウォームな「DEAR PLUS ALPHA」で締め括る構成も絶妙です。

これはもう“ALPHA”というコンセプトの中で最初からありました。“ALPHA”というキーワードを自分で描くにあたって、絶対的なものでしたね。1曲目「THE ULTIMATE BEGINNING「ALPHA」」の“ALPHA”というのは、ある種狂気的でもあるし、独裁的な強さだったり、絶望だったりといったものを全部巻き込んだ上で、力強い存在の究極の始まりを表現していて。それに対して、“ALPHA”という言葉が持つもうひとつの意味…“プラス・アルファ”と言われるような“自分以外のもうひとつ”というものを「DEAR PLUS ALPHA」で最後に描くことはマストだった。そうやって、ちゃんとストーリーを完結させたかったんです。

「DEAR PLUS ALPHA」は映画のエンドロールを思わせる曲であることも含めて、KIRITOさんはアルバムという作品を作るのが本当に好きなことが分かります。

好きですね。それはデビューした時から言っていましたから。シングルはやりたくないと。“シングルはアルバムに入れないとダメなんですか?”とかね(笑)。

やはりそういうタイプなんですね。もうひとつ、『ALPHA』を聴かせていただいてらためて思ったことがありまして、KIRITOさんはエモーショナルな歌声もシャウトもともに魅力的だなと。

シャウト系の自分のスタイルということをちゃんと考えるようになったのはAngeloの後半からだし、もっと言えば『NEOSPIRAL』から構築し直した感じがあるんですよ。自分のもともとの歌のスタイルで言うと、やっぱり歌モノなんですよね。だけど、それと同じように別のジャンルとして独自のシャウトを確立するにはどうしたらいいかを考えるようになって。だから、いわゆるデスヴォイスみたいなものは、自分としてはやっていないつもりです。どっちかと言うと中高音域で声を潰していくような出し方ですね。

長いキャリアを重ねてきた上でシャウトも取り入れようという気持ちになり、さらにシャウトも自身のスタイルを確立されたことは本当にリスペクトします。

今さら誰かのスタイルを真似ることはできないし、やっぱり何をやるにしても自分のスタイルとして確立することが大事ですよね。僕の中には恥ずかしく感じるラインがいっぱいあって、何かの借りものをやるのはすごく嫌なんです。“自分のやり方で”というところまで持っていって出さないと恥ずかしくなる。そういうところで、リフがあって、シャウトがあってという楽曲も独自のスタイルじゃないと意味がないと思っていたんです。同時に、シャウトを多用していてもアルバム全体で聴いた時に、しっかり歌えていることを示さないと自分じゃない。なので、そこのバランスは意識しました。

エモーショナルな歌もシャウトも魅力的で、それぞれがそれぞれを際立たせ合っています。さて、『ALPHA』は『NEOSPIRAL』から1年という短いスパンで作られたとは思えない上質なアルバムに仕上がりました。そして、同作を携えた全国ツアーが11月から来年1月にかけて開催されることも注目です。

ツアーは本当に命を懸けたいですね。全部を出しきって、命懸けのステージというのを自分で作っていきたいと思っています。自分の年齢的なものだったり、キャリア的なものを考えると、僕ほどそういったことに逆行してハードなところに向かっているアーティストはいないと思うんですよ。逆行すると決めた以上は実践していかないといけなくて、フィジカル面も含めて全部逆行するつもりでいるから、やればやるほど命懸けになっていくという。でも、その道を選んだのは自分だから、それを証明していきたいですね。ただ、“俺がそういう意識でライヴをするんだから、お前らも気合いを入れて来いよ!”みたいな気持ちはまったくありません。自分は勝手に命を懸けるけど、みんなは楽しんで観てくれればいいと思っています。

取材:村上孝之

アルバム『ALPHA』2023年11月15日発売 blowgrow
    • 【初回限定生産盤】(CD+DVD)
    • IKCB-9586〜7
    • ¥4,730(税込)
    • 【通常盤】(CD)
    • IKCB-9588
    • ¥3,300(税込)

ライヴ情報

『KIRITO Tour 2023-2024「ALPHA-CODE」』
11月18日(土) 神奈川・YOKOHAMA Bay Hall
11月19日(日) 神奈川・YOKOHAMA Bay Hall
11月23日(木) 神奈川・CLUB CITTA'川崎
11月28日(火) 東京・新宿BLAZE
11月29日(水) 東京・新宿BLAZE
12月02日(土) 北海道・札幌PENNYLANE24
12月06日(水) 宮城・仙台Rensa
12月09日(土) 愛知・名古屋 ボトムライン
12月10日(日) 大阪・umeda TRAD
12月17日(日) 福岡・DRUM Be-1
12月25日(月) 東京・Spotify O-EAST(FC限定)
[2024年]
1月06日(土) 東京・Spotify O-EAST
1月07日(日) 東京・Spotify O-EAST

KIRITO プロフィール

キリト:PIERROTで1998年にシングル「クリア・スカイ」でメジャーデビューを果たし、06年4⽉12⽇に解散する。同年10⽉4⽇にPIERROTのメンバーであるKOHTA、TAKEOとともにAngeloを結成。また、ソロとしては05年にシングル「DOOR」をリリースし、バンド活動と並⾏しソロ活動を始動。22年1⽉に代々⽊第⼆体育館2デイズ公演をもってAngeloが無期限の活動休⽌に入ったことを機に、本格的にソロ活動を展開している。KIRITO オフィシャルHP

「BALANCE」MV

『ALPHA』全曲ダイジェスト

OKMusic編集部

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