REPORT | 第14回 金音創作奨(Gold
en Indie Music Awards)台湾インデ
ィの祭典『GIMA』現地レポート。シー
ンの創造性を後押しする音楽賞の在り
方 台湾インディの祭典『GIMA』現地
レポート。シーンの創造性を後押しす
る音楽賞の在り方
Photo by Official
10月28日(土)、台湾の音楽アワード『第14回 金音創作奨(Golden Indie Music Awards/以下、GIMA)』が台湾・台北市の台北流行音樂中心で開催された。
その名の通りインディ音楽に焦点を当て、様々なジャンルによってカテゴライズし、音楽に携わるスペシャリストたちが忖度なしで審査員を務める『GIMA』。そのフェアな仕組みや特徴、“台湾のグラミー賞”とも言われている『金曲獎(Golden Melody Awards / GMA)』との違いについては、先日寄稿した下記の記事を確認してほしい。これまでに数多くの独創的なアーティストたちが注目を集めるきっかけを作ってきた意義深いアワードでもある。
■ 【FEATURE】 第14回 金音創作奨(Golden Indie Music Awards)(https://spincoaster.com/feature-the-14th-golden-indie-music-awards)
注目のパフォーマンスが連日繰り広げられた『亞洲音樂大賞』
また、Gummy Bは楽曲「敦化南路(Revisit)」で「ベスト・ヒップホップ・ソング賞」も受賞し、音楽を作り続けてきた自身を称えるとともに「これからも書き続ける」と飽くなき意欲を示し、大型新人の威風を放っていた。
対するRobot Swingは高度な演奏技術に加え、ボコーダーを多用したボーカルが加わることで、まさにロボットが演奏しているかのような“Sci-Fi R&B”とも呼べるサウンドで、すでに固有のスタイルが確立されているのが伺えた。途中からLEO37が参加し、トレードマークの長髪を振り乱しながら熱烈にライムを繰り出す。LEO37の煽りにオーディエンスも手拍子や歓声で応え、会場は一気にヒートアップ。“パーティ”の名に相応しい形で大団円を迎えた。
授賞式で存在感を放っていたアーティストたち
今回の授賞式の概観としては、意外性のある選出や新鮮な驚きが多く、その予定調和の少なさから、逆に審査プロセスへの信頼感が増した。筆者は常日頃から台湾の音楽を追いかけているつもりだが、知らなかったアーティスト/作品が数多くフィーチャーされており、台湾音楽の“今”を反映するのみならず、先見性を持ったアワードであると改めて感じた。
本来であれば授賞式の一部始終を伝えたいところだが、文字数も限られているため、とりわけ印象的だったアーティストたちをいくつかご紹介したい。その選定について、少なからず筆者のバイアスがかかってしまっている点についてはご容赦いただきたい。
まずは「ベスト・ニュー・アーティスト」を受賞した気鋭のR&Bシンガー/SSW、鶴 The Crane。日本のアーティスト・SIRUPとのコラボも記憶に新しい彼は、若手の中でも突出した才能と作品の完成度の高さが評価された。彗星の如く現れた印象もあるが、ソロ・デビューする前はSSW・HUSHのツアー・ミュージシャンを務めたり、鄭宜農(Enno Cheng)のアルバム『給天王星』にプロデューサーとして参加するなど、裏方として活動していたようだ。
受賞スピーチでは「他のアーティストたちが音楽と真剣に向き合っているのを知る度に、音楽制作には謙虚さが必要であるということを感じます。私たちが理解していないことは常にたくさんあります」と地に足のついた姿勢をのぞかせた。また、自身のデビュー・アルバム『TALENT』について、「アルバム名は“才能”を意味しますが、その内容の多くは私がこれまでに積み重ねてきた努力と経験についてです。私は最初から全てを完璧にこなすタイプではありません。高くジャンプするためには、長期間のスクワットが必須です」と語った。
The Craneは今回「ベストR&Bアルバム賞」も受賞したほか、「ベスト・アルバム賞」、「ベスト・シンガー・ソングライター賞」、「ベストR&Bソング賞」の3部門にもノミネートされており、圧倒的な存在感を放っていた。日本では“台湾のアップカミングなアーティストのひとり”という認識だったが、現地で大歓声を目の当たりにしたことで、期待値の大きさを実感した。
「ベスト・バンド賞」を受賞した露波合唱團(The Loophole)も目立っていた。2017年に結成された5人組で、バンドとしての一体感と音楽的な独創性の高さが評価された。今年リリースされたアルバム『美麗新世界』は「ベスト・アルバム賞」にもノミネート。受賞スピーチでは本アルバムの収録曲「腦海中(In My Head)」をカバーした落日飛車に感謝の気持ちを伝えるとともに、「バンドを運営することは非常に難しい」、「この旅が長く続くことを願っています」とも語り、感慨深げな様子だった。
また、若池は二胡奏者の鍾於叡(Zhong Yurui)、琵琶奏者の梁建寧(Jenning Leung)と結成したユニット・菩花樂集のアルバム『𨑨迌』が「ベスト・フォーク・アルバム賞」を受賞し、再び壇上へ上がった。受賞スピーチでは、「私は台湾に住む日本人で、インド音楽を演奏しています。なので、私の音楽的バックグラウンドは少し複雑です」と語り、台湾に来た際、「私の音楽的アイデンティティは何なのか」と葛藤があったことも明かした。
外国人で、ポピュラー・ミュージック以外の音楽をやっているミュージシャンであったとしても、優れた作品を作ればしっかりと評価され、スポットライトを浴びる機会があるのは素晴らしいことだし、改めて『GIMA』の懐の深さを感じた。
もちろん作品のクオリティに加え、高い知名度・セールスを併せ持つアーティストも数多くいるし、それも素晴らしいことだ。ただ、どのようなジャンル、スタイルであれ“評価される場がある”と思えるのは心強いし、“もっと自由に表現していいんだ”と背中を押されるアーティストも多いのではないだろうか。そしてそんな音楽賞がある台湾を、筆者は少し羨ましくも感じたのであった。
『第14回金音創作獎(14th Golden Indie Music Awards)』
会場:台湾・台北市 台北流行音樂中心
■ 『金音創作獎(Golden Indie Music Awards)』 オフィシャル・サイト(https://gima.tavis.tw/winner_nomination.php)
Text by Toshiyuki Seki(https://twitter.com/tsekimusic)
Photo by Official
10月28日(土)、台湾の音楽アワード『第14回 金音創作奨(Golden Indie Music Awards/以下、GIMA)』が台湾・台北市の台北流行音樂中心で開催された。
その名の通りインディ音楽に焦点を当て、様々なジャンルによってカテゴライズし、音楽に携わるスペシャリストたちが忖度なしで審査員を務める『GIMA』。そのフェアな仕組みや特徴、“台湾のグラミー賞”とも言われている『金曲獎(Golden Melody Awards / GMA)』との違いについては、先日寄稿した下記の記事を確認してほしい。これまでに数多くの独創的なアーティストたちが注目を集めるきっかけを作ってきた意義深いアワードでもある。
■ 【FEATURE】 第14回 金音創作奨(Golden Indie Music Awards)(https://spincoaster.com/feature-the-14th-golden-indie-music-awards)
注目のパフォーマンスが連日繰り広げられた『亞洲音樂大賞』
また、Gummy Bは楽曲「敦化南路(Revisit)」で「ベスト・ヒップホップ・ソング賞」も受賞し、音楽を作り続けてきた自身を称えるとともに「これからも書き続ける」と飽くなき意欲を示し、大型新人の威風を放っていた。
対するRobot Swingは高度な演奏技術に加え、ボコーダーを多用したボーカルが加わることで、まさにロボットが演奏しているかのような“Sci-Fi R&B”とも呼べるサウンドで、すでに固有のスタイルが確立されているのが伺えた。途中からLEO37が参加し、トレードマークの長髪を振り乱しながら熱烈にライムを繰り出す。LEO37の煽りにオーディエンスも手拍子や歓声で応え、会場は一気にヒートアップ。“パーティ”の名に相応しい形で大団円を迎えた。
授賞式で存在感を放っていたアーティストたち
今回の授賞式の概観としては、意外性のある選出や新鮮な驚きが多く、その予定調和の少なさから、逆に審査プロセスへの信頼感が増した。筆者は常日頃から台湾の音楽を追いかけているつもりだが、知らなかったアーティスト/作品が数多くフィーチャーされており、台湾音楽の“今”を反映するのみならず、先見性を持ったアワードであると改めて感じた。
本来であれば授賞式の一部始終を伝えたいところだが、文字数も限られているため、とりわけ印象的だったアーティストたちをいくつかご紹介したい。その選定について、少なからず筆者のバイアスがかかってしまっている点についてはご容赦いただきたい。
まずは「ベスト・ニュー・アーティスト」を受賞した気鋭のR&Bシンガー/SSW、鶴 The Crane。日本のアーティスト・SIRUPとのコラボも記憶に新しい彼は、若手の中でも突出した才能と作品の完成度の高さが評価された。彗星の如く現れた印象もあるが、ソロ・デビューする前はSSW・HUSHのツアー・ミュージシャンを務めたり、鄭宜農(Enno Cheng)のアルバム『給天王星』にプロデューサーとして参加するなど、裏方として活動していたようだ。
受賞スピーチでは「他のアーティストたちが音楽と真剣に向き合っているのを知る度に、音楽制作には謙虚さが必要であるということを感じます。私たちが理解していないことは常にたくさんあります」と地に足のついた姿勢をのぞかせた。また、自身のデビュー・アルバム『TALENT』について、「アルバム名は“才能”を意味しますが、その内容の多くは私がこれまでに積み重ねてきた努力と経験についてです。私は最初から全てを完璧にこなすタイプではありません。高くジャンプするためには、長期間のスクワットが必須です」と語った。
The Craneは今回「ベストR&Bアルバム賞」も受賞したほか、「ベスト・アルバム賞」、「ベスト・シンガー・ソングライター賞」、「ベストR&Bソング賞」の3部門にもノミネートされており、圧倒的な存在感を放っていた。日本では“台湾のアップカミングなアーティストのひとり”という認識だったが、現地で大歓声を目の当たりにしたことで、期待値の大きさを実感した。
「ベスト・バンド賞」を受賞した露波合唱團(The Loophole)も目立っていた。2017年に結成された5人組で、バンドとしての一体感と音楽的な独創性の高さが評価された。今年リリースされたアルバム『美麗新世界』は「ベスト・アルバム賞」にもノミネート。受賞スピーチでは本アルバムの収録曲「腦海中(In My Head)」をカバーした落日飛車に感謝の気持ちを伝えるとともに、「バンドを運営することは非常に難しい」、「この旅が長く続くことを願っています」とも語り、感慨深げな様子だった。
また、若池は二胡奏者の鍾於叡(Zhong Yurui)、琵琶奏者の梁建寧(Jenning Leung)と結成したユニット・菩花樂集のアルバム『𨑨迌』が「ベスト・フォーク・アルバム賞」を受賞し、再び壇上へ上がった。受賞スピーチでは、「私は台湾に住む日本人で、インド音楽を演奏しています。なので、私の音楽的バックグラウンドは少し複雑です」と語り、台湾に来た際、「私の音楽的アイデンティティは何なのか」と葛藤があったことも明かした。
外国人で、ポピュラー・ミュージック以外の音楽をやっているミュージシャンであったとしても、優れた作品を作ればしっかりと評価され、スポットライトを浴びる機会があるのは素晴らしいことだし、改めて『GIMA』の懐の深さを感じた。
もちろん作品のクオリティに加え、高い知名度・セールスを併せ持つアーティストも数多くいるし、それも素晴らしいことだ。ただ、どのようなジャンル、スタイルであれ“評価される場がある”と思えるのは心強いし、“もっと自由に表現していいんだ”と背中を押されるアーティストも多いのではないだろうか。そしてそんな音楽賞がある台湾を、筆者は少し羨ましくも感じたのであった。
『第14回金音創作獎(14th Golden Indie Music Awards)』
会場:台湾・台北市 台北流行音樂中心
■ 『金音創作獎(Golden Indie Music Awards)』 オフィシャル・サイト(https://gima.tavis.tw/winner_nomination.php)
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