INTERVIEW | OHTORA多彩なサウンド
で構築された2ndアルバム。OHTORAが
目指した「自分なりのJ-POP」とは 多
彩なサウンドで構築された2ndアルバ
ム。OHTORAが目指した「自分なりのJ
-POP」とは

SSW/プロデューサー・OHTORAがニューアルバム『TIGER POP』を本日1月26日(金)にリリースした。
自身のアーティスト活動に加え、作家としてもK-POPグループから国内メジャーアーティスト、VTuberなどへの楽曲提供、CM音楽制作など幅広く活躍するOHTORA。また、近年はプロデューサーユニット・NARROWORLDのメンバーとしても活動している。さらに、2020年12月にリリースされた“ツレナイズム”はSpotify台湾バイラルチャート1位を記録するなど、日本だけにとどまらずアジアを中心にリスナーを拡大させている稀有な存在だ。
およそ3年ぶりのニューアルバムとなる『TIGER POP』には、ヒップホップやR&Bを軸にロックやダンスミュージックなどの要素も取り込んだ色彩豊かなサウンドと、独自のワードセンスでられたリリックが印象的な一作に仕上がっている。今回はそんなOHTORAのユニークなポップセンスを紐解くべくインタビューを敢行。アルバムの制作プロセスについてじっくりと語ってもらった。(編集部)
Interview & Text by Naoya Koike(https://twitter.com/naoyakoike)
Photo by Maho Korogi(https://www.instagram.com/maho_korogi/)
自身の音楽とポップスを掛け合わせた『TIGER POP』
――『TIGER POP』リリースおめでとうございます。アルバムの内容に触れる前に、2023年はどんな年でしたか?
OHTORA:去年の3月くらいからアルバムの制作がスタートしました。作業は早い方なので2、3カ月で終わると考えていたんですけど、こだわって作業していたら半年以上かかってしまって。なので、ずっと制作していた印象が強いです。
――今作の印象的なタイトルとコンセプトについて教えてください。
OHTORA:日本に生まれたからには自分なりのJ-POPを作りたいなと思いました。だからR&Bやハウス、チルポップなど自分が得意としている音楽性全てを“ポップス”にまとめる意識で作りました。OHTORAの音楽とポップスを掛け合わせたという意味で、『TIGER POP』というタイトルが浮かんできました。
――1stアルバムっぽい名前でもあります。
OHTORA:たしかに。音楽活動を3年ほどやってきて、今振り返ると前作『EMPTIE LAND』は駆け出しのハングリー精神が溢れていましたね。でも、コンセプトや自分のやりたい方向性がはっきりしたのが今作です。
狙いは「ラップと歌を高いレベルで両立させる」ということ。日本だとそういうアーティストはまだ多くはないと思うし、自分が確立させるぞという気概で作りました。大げさかもしれないけど、「和製Childish Gambino」を目指すくらいの気持ちです。
――制作の取り掛かりについても具体的に教えてください。
OHTORA:先行シングルの“クソみたいな人生”と“Railway”から作り始めました。両方ともキャッチーな仕上がりで、「J-POPに寄った音楽も作れるな」という手応えを感じました。
そこからスイッチが入りましたね。他の曲でも自分の持ち味やエゴをポップに昇華していこうと。事務所としても本作を全力でサポートしてくれる体制で、メインプロデューサーもmaeshima soshiくんにお願いしました。
――maeshimaさんはもう相棒と言えるレベルの関係性なのでは?
OHTORA:この3年で、コンペに提出する曲なども含めれば数百曲ほど一緒に作っていると思います(笑)。彼も曲をまとめる力が大幅にレベルアップしていて。今はもうお互いのクセを理解しているので、作業のスピード感がかなり早いですね。あと彼のビートは情景が想像しやすいので、音からタイトルがすぐ浮かぶんです。
独特のワードセンス、Bimiとのコラボ
――せっかくの『TIGER POP』ですし、自分でビートも作るという発想はありませんでした?
OHTORA:収録曲で自分でトラックメイクしたのは“エイプリルサッド”だけですね。トラック作りは時間がかかるんですよね……。あまり得意ではないし、maeshimaくんやNew Kさんの方が完成度が高いのでお任せした感じでした。
――なるほど。曲順的に“Railway”に続く“Flight”はいかがでしょう。
OHTORA:“Flight”は実は3年半前まで組んでいたバンド時代の曲なんです。ギターとベースは当時のメンバーによるもので、ピアノとシンセは僕が打ち込んで、ボーカルはこのために入れ直しました。
「岐路」や「線路」を意味する“Railway”で恋愛の分岐点みたいなイメージを想起させてから、“Flight”で飛び立つという流れです。
――“クソみたいな人生”の次は、New Kさんがプロデュースした“アイランドスキン”が並びます。こちらについては?
OHTORA:New Kさんはレーベルメイトなのでこれまでも何曲かご一緒させてもらっていますが、絶対にいいものに仕上がる確信がありました。先行シングルを除いたらこの曲が一番の推しかもしれません。
サウンドを発注する時は「Aメロは軽やかなギターがあって、サビに向けて壮大にしてください」とオーダーしましたが、基本的には自由に作ってもらいましたね。自分で言うのもなんですけど、すさまじい曲だと思います。畳みかける感じで終わるのもいいし。
――タイトルもユニークだと感じたのですが、ワードセンスの着想はどこから?
OHTORA:フレーズの語尾やメロディにおける語感はめちゃくちゃ大事で、時間があるときに辞書などで言葉を漁ってます。一方でタイトルは捻らないことが多いんです。
“アイランドスキン”はウサギの換毛期にできる頭部分の毛の縞の症状、“エイプリルサッド”は組み合わせと響きで付けましたが、たしかに頭に残りやすいかもしれません。本当に思い付きなんですけど(笑)。
――Bimiこと廣野凌大さんをフィーチャーした“error feat. Bimi”についても教えてください。そもそもBimiさんとはどのようにして共作に至ったのでしょうか。
OHTORA:僕の所属レーベル〈SASAKRECT〉とBimiくんがもともと付き合いがあったので、その縁でオファーさせてもらいました。自分のなかでも名曲のひとつです。ビートを聴いた途端にタイトルが思い浮かんで、僕のヴァースを作り、Bimiくんに投げました。そうしたら「こんなに悶々とした歌詞は書いたことがない」という本人的にも新境地のデモが返ってきて。
その後にレコーディングだけは立ち会ったのですが、ディレクションはほとんどしませんでした。声はいいし、フロウも作り込まれているし、結局はただの見守り(笑)。モチベーションの高さを感じましたね。トップラインもパッションで作ったという実感があります。
現代SNS社会に感じる違和感
――“Nightmare”は2回連続で歌われる《鼻から吸ってみ?》というラインが言葉のおもしろさ的にも、リズム的にもクリエイティブでした。
OHTORA:ふと思い浮かんで、どうしても使いたかったんです(笑)。このワードはポイントですね。ラップで使いたいフレーズは基本的にメモするようにしていますが、「悪夢」や「浮遊感」のイメージから出てきた言葉を全部詰め込みました。
――ビートはII-V-I進行のメジャーコードなのに“Nightmare”、トロピカルっぽくはない4つ打ちで“Coconuts”と名付けるセンスも興味深いです。
OHTORA:明るめなコード感に重めな歌詞といった感じの意外性が好きなのかもしれません。竹内まりやさんみたいな。特に意識をしているわけでもないのですが、自然とそうなっちゃうんですよね。その“Coconuts”はmaeshimaくんにも唯一「ライブで絶対盛り上がる曲を作りたい」とお願いした曲でした。
――“Summertime Magic feat. ポチョムキン餓鬼レンジャー)”は意外なコラボで話題を呼びました。
OHTORA:ポチョムキンさんの方から「やろうよ」と声をかけてくださって、ちょうどアルバムリリースも予定していたので、僕の曲にフィーチャリングという形でコラボさせてもらいました。たぶん、元々〈SASAKRECT〉の作品やアーティストをチェックしてくれていたんだと思います。実際にお会いしてみると渋い人柄でしたね。「1コーラス目は朝や昼、2コーラス目からは夜になっていく世界観でリリックを書いてほしい」とアドバイスしてくださり、そこから調整して仕上げました。
――お気に入りに挙げていた、Childish Gambinoにも同名曲がありますよね。
OHTORA:正直に言って、意識してます(笑)。最初は違うタイトルでしたが、フックのリリックに《Summertime Magic》という言葉が入っていたこともあり、「“Summertime Magic”の方がいいんじゃない?」ってポチョムキンさんから提案してくれて。
Childish Gambinoは日本だと“This Is America”やラッパーであるといったイメージが一般的だと思いますが、個人的には“Summertime Magic”や“Redbone”といったメロウな路線の方が思い入れが強いですね。
――なるほど。そして“Digital Tattoo”も聴きどころのひとつだったのかなと。
OHTORA:僕としては「これぞmaeshima君」といったビートです。アルバムのなかで一番メッセージ性が強い曲で、現代のSNS社会に向けたリリックになっています。恋愛トピックで作ることが多いですが、生々しいストーリーにしたくて。
ここ4、5年は社会に対するSNSやインターネット上での反応が敏感過ぎる気がしていて。それを皮肉混じりに表現しました。道徳は大切ですけど、ちょっとした間違いで足を引っ張られることも多いじゃないですか。それが他人事とは思えないんです。
2024年は「挑戦」の年に
――それからアルバムの流れは“失楽”から“春ツラレ”とチルな方向へ向かっていきます。
OHTORA:段々と着陸に向けて低空飛行していく感じですね。“失楽”のフックのメロディは前から浮かんでいたもので、それをプロデューサー・Jr.TEAさんのビートに乗せました。もう理想通りという感じでした。
あと、“Musicholic”で少し上げて「また飛び立つのかな?」と匂わせています。音楽に狂わされた身としては、最後に音楽愛を語りたいんですね。だから最後はこれだなと。
――今後もMVのリリースなどを予定しているのでしょうか?
OHTORA:もちろん考えています。本作は早い段階でリリース告知するなど色々と動いてきましたが、まだまだ仕掛けがあるので楽しみにしていてください。リリースパーティなどもできたらと思ってます。
――「自分なりのJ-POP」を掲げたアルバムを作り上げたことで、ポップスに対する意識や考え方に変化は生じましたか?
OHTORA:今って何がポップなのか、キャッチーなのかっていう部分がどんどん曖昧になってきている気がしていて。昔はもうちょっと定石というか、「ポップスの作り方」みたいなものがあったと思うんですけど、それがどんどん崩れてきている。今はすごい尖った曲でもふとしたきっかけでバズることもありますし。結局のところ日本で生まれ育った自分がカッコいいと思う音楽を作れば、それが自然とポップスになっていくんじゃないかなって感じていますね。
――最後に2024年の抱負を教えてください。
OHTORA:去年はプロデュースワークで17曲リリースされているんですけど、今年も同様にそういった外部ワークにも力を入れつつ、軸であるOHTORAとしての活動も盛大にやっていきたいです。とにかくカッコいいものを作りたい欲が溢れていますね。これまでも攻めてきましたが、まだリスナーの方に見せてこなかった一面も見せつつ、模索していきたい。「挑戦」をテーマに掲げる1年になりそうです。
【リリース情報】
■OHTORA: X(Twitter)(https://twitter.com/mayonaka_orange) / Instagram(https://www.instagram.com/ohtora_official/)
SSW/プロデューサー・OHTORAがニューアルバム『TIGER POP』を本日1月26日(金)にリリースした。
自身のアーティスト活動に加え、作家としてもK-POPグループから国内メジャーアーティスト、VTuberなどへの楽曲提供、CM音楽制作など幅広く活躍するOHTORA。また、近年はプロデューサーユニット・NARROWORLDのメンバーとしても活動している。さらに、2020年12月にリリースされた“ツレナイズム”はSpotify台湾バイラルチャート1位を記録するなど、日本だけにとどまらずアジアを中心にリスナーを拡大させている稀有な存在だ。
およそ3年ぶりのニューアルバムとなる『TIGER POP』には、ヒップホップやR&Bを軸にロックやダンスミュージックなどの要素も取り込んだ色彩豊かなサウンドと、独自のワードセンスで綴られたリリックが印象的な一作に仕上がっている。今回はそんなOHTORAのユニークなポップセンスを紐解くべくインタビューを敢行。アルバムの制作プロセスについてじっくりと語ってもらった。(編集部)
Interview & Text by Naoya Koike(https://twitter.com/naoyakoike)
Photo by Maho Korogi(https://www.instagram.com/maho_korogi/)
自身の音楽とポップスを掛け合わせた『TIGER POP』
――『TIGER POP』リリースおめでとうございます。アルバムの内容に触れる前に、2023年はどんな年でしたか?
OHTORA:去年の3月くらいからアルバムの制作がスタートしました。作業は早い方なので2、3カ月で終わると考えていたんですけど、こだわって作業していたら半年以上かかってしまって。なので、ずっと制作していた印象が強いです。
――今作の印象的なタイトルとコンセプトについて教えてください。
OHTORA:日本に生まれたからには自分なりのJ-POPを作りたいなと思いました。だからR&Bやハウス、チルポップなど自分が得意としている音楽性全てを“ポップス”にまとめる意識で作りました。OHTORAの音楽とポップスを掛け合わせたという意味で、『TIGER POP』というタイトルが浮かんできました。
――1stアルバムっぽい名前でもあります。
OHTORA:たしかに。音楽活動を3年ほどやってきて、今振り返ると前作『EMPTIE LAND』は駆け出しのハングリー精神が溢れていましたね。でも、コンセプトや自分のやりたい方向性がはっきりしたのが今作です。
狙いは「ラップと歌を高いレベルで両立させる」ということ。日本だとそういうアーティストはまだ多くはないと思うし、自分が確立させるぞという気概で作りました。大げさかもしれないけど、「和製Childish Gambino」を目指すくらいの気持ちです。
――制作の取り掛かりについても具体的に教えてください。
OHTORA:先行シングルの“クソみたいな人生”と“Railway”から作り始めました。両方ともキャッチーな仕上がりで、「J-POPに寄った音楽も作れるな」という手応えを感じました。
そこからスイッチが入りましたね。他の曲でも自分の持ち味やエゴをポップに昇華していこうと。事務所としても本作を全力でサポートしてくれる体制で、メインプロデューサーもmaeshima soshiくんにお願いしました。
――maeshimaさんはもう相棒と言えるレベルの関係性なのでは?
OHTORA:この3年で、コンペに提出する曲なども含めれば数百曲ほど一緒に作っていると思います(笑)。彼も曲をまとめる力が大幅にレベルアップしていて。今はもうお互いのクセを理解しているので、作業のスピード感がかなり早いですね。あと彼のビートは情景が想像しやすいので、音からタイトルがすぐ浮かぶんです。
独特のワードセンス、Bimiとのコラボ
――せっかくの『TIGER POP』ですし、自分でビートも作るという発想はありませんでした?
OHTORA:収録曲で自分でトラックメイクしたのは“エイプリルサッド”だけですね。トラック作りは時間がかかるんですよね……。あまり得意ではないし、maeshimaくんやNew Kさんの方が完成度が高いのでお任せした感じでした。
――なるほど。曲順的に“Railway”に続く“Flight”はいかがでしょう。
OHTORA:“Flight”は実は3年半前まで組んでいたバンド時代の曲なんです。ギターとベースは当時のメンバーによるもので、ピアノとシンセは僕が打ち込んで、ボーカルはこのために入れ直しました。
「岐路」や「線路」を意味する“Railway”で恋愛の分岐点みたいなイメージを想起させてから、“Flight”で飛び立つという流れです。
――“クソみたいな人生”の次は、New Kさんがプロデュースした“アイランドスキン”が並びます。こちらについては?
OHTORA:New Kさんはレーベルメイトなのでこれまでも何曲かご一緒させてもらっていますが、絶対にいいものに仕上がる確信がありました。先行シングルを除いたらこの曲が一番の推しかもしれません。
サウンドを発注する時は「Aメロは軽やかなギターがあって、サビに向けて壮大にしてください」とオーダーしましたが、基本的には自由に作ってもらいましたね。自分で言うのもなんですけど、すさまじい曲だと思います。畳みかける感じで終わるのもいいし。
――タイトルもユニークだと感じたのですが、ワードセンスの着想はどこから?
OHTORA:フレーズの語尾やメロディにおける語感はめちゃくちゃ大事で、時間があるときに辞書などで言葉を漁ってます。一方でタイトルは捻らないことが多いんです。
“アイランドスキン”はウサギの換毛期にできる頭部分の毛の縞の症状、“エイプリルサッド”は組み合わせと響きで付けましたが、たしかに頭に残りやすいかもしれません。本当に思い付きなんですけど(笑)。
――Bimiこと廣野凌大さんをフィーチャーした“error feat. Bimi”についても教えてください。そもそもBimiさんとはどのようにして共作に至ったのでしょうか。
OHTORA:僕の所属レーベル〈SASAKRECT〉とBimiくんがもともと付き合いがあったので、その縁でオファーさせてもらいました。自分のなかでも名曲のひとつです。ビートを聴いた途端にタイトルが思い浮かんで、僕のヴァースを作り、Bimiくんに投げました。そうしたら「こんなに悶々とした歌詞は書いたことがない」という本人的にも新境地のデモが返ってきて。
その後にレコーディングだけは立ち会ったのですが、ディレクションはほとんどしませんでした。声はいいし、フロウも作り込まれているし、結局はただの見守り(笑)。モチベーションの高さを感じましたね。トップラインもパッションで作ったという実感があります。
現代SNS社会に感じる違和感
――“Nightmare”は2回連続で歌われる《鼻から吸ってみ?》というラインが言葉のおもしろさ的にも、リズム的にもクリエイティブでした。
OHTORA:ふと思い浮かんで、どうしても使いたかったんです(笑)。このワードはポイントですね。ラップで使いたいフレーズは基本的にメモするようにしていますが、「悪夢」や「浮遊感」のイメージから出てきた言葉を全部詰め込みました。
――ビートはII-V-I進行のメジャーコードなのに“Nightmare”、トロピカルっぽくはない4つ打ちで“Coconuts”と名付けるセンスも興味深いです。
OHTORA:明るめなコード感に重めな歌詞といった感じの意外性が好きなのかもしれません。竹内まりやさんみたいな。特に意識をしているわけでもないのですが、自然とそうなっちゃうんですよね。その“Coconuts”はmaeshimaくんにも唯一「ライブで絶対盛り上がる曲を作りたい」とお願いした曲でした。
――“Summertime Magic feat. ポチョムキン(餓鬼レンジャー)”は意外なコラボで話題を呼びました。
OHTORA:ポチョムキンさんの方から「やろうよ」と声をかけてくださって、ちょうどアルバムリリースも予定していたので、僕の曲にフィーチャリングという形でコラボさせてもらいました。たぶん、元々〈SASAKRECT〉の作品やアーティストをチェックしてくれていたんだと思います。実際にお会いしてみると渋い人柄でしたね。「1コーラス目は朝や昼、2コーラス目からは夜になっていく世界観でリリックを書いてほしい」とアドバイスしてくださり、そこから調整して仕上げました。
――お気に入りに挙げていた、Childish Gambinoにも同名曲がありますよね。
OHTORA:正直に言って、意識してます(笑)。最初は違うタイトルでしたが、フックのリリックに《Summertime Magic》という言葉が入っていたこともあり、「“Summertime Magic”の方がいいんじゃない?」ってポチョムキンさんから提案してくれて。
Childish Gambinoは日本だと“This Is America”やラッパーであるといったイメージが一般的だと思いますが、個人的には“Summertime Magic”や“Redbone”といったメロウな路線の方が思い入れが強いですね。
――なるほど。そして“Digital Tattoo”も聴きどころのひとつだったのかなと。
OHTORA:僕としては「これぞmaeshima君」といったビートです。アルバムのなかで一番メッセージ性が強い曲で、現代のSNS社会に向けたリリックになっています。恋愛トピックで作ることが多いですが、生々しいストーリーにしたくて。
ここ4、5年は社会に対するSNSやインターネット上での反応が敏感過ぎる気がしていて。それを皮肉混じりに表現しました。道徳は大切ですけど、ちょっとした間違いで足を引っ張られることも多いじゃないですか。それが他人事とは思えないんです。
2024年は「挑戦」の年に
――それからアルバムの流れは“失楽”から“春ツラレ”とチルな方向へ向かっていきます。
OHTORA:段々と着陸に向けて低空飛行していく感じですね。“失楽”のフックのメロディは前から浮かんでいたもので、それをプロデューサー・Jr.TEAさんのビートに乗せました。もう理想通りという感じでした。
あと、“Musicholic”で少し上げて「また飛び立つのかな?」と匂わせています。音楽に狂わされた身としては、最後に音楽愛を語りたいんですね。だから最後はこれだなと。
――今後もMVのリリースなどを予定しているのでしょうか?
OHTORA:もちろん考えています。本作は早い段階でリリース告知するなど色々と動いてきましたが、まだまだ仕掛けがあるので楽しみにしていてください。リリースパーティなどもできたらと思ってます。
――「自分なりのJ-POP」を掲げたアルバムを作り上げたことで、ポップスに対する意識や考え方に変化は生じましたか?
OHTORA:今って何がポップなのか、キャッチーなのかっていう部分がどんどん曖昧になってきている気がしていて。昔はもうちょっと定石というか、「ポップスの作り方」みたいなものがあったと思うんですけど、それがどんどん崩れてきている。今はすごい尖った曲でもふとしたきっかけでバズることもありますし。結局のところ日本で生まれ育った自分がカッコいいと思う音楽を作れば、それが自然とポップスになっていくんじゃないかなって感じていますね。
――最後に2024年の抱負を教えてください。
OHTORA:去年はプロデュースワークで17曲リリースされているんですけど、今年も同様にそういった外部ワークにも力を入れつつ、軸であるOHTORAとしての活動も盛大にやっていきたいです。とにかくカッコいいものを作りたい欲が溢れていますね。これまでも攻めてきましたが、まだリスナーの方に見せてこなかった一面も見せつつ、模索していきたい。「挑戦」をテーマに掲げる1年になりそうです。
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