【Sora インタビュー】
リスペクトしているのは
文学的に言葉で勝つみたいなラップ
性格の悪さを
ラップに活かせて良かった
Sam is Ohmさんがプロデュースしている曲も多いですが、B-Lovedで一緒に活動している仲間ですね。
はい。ダンスミュージックを作ることに長けている人ですし、ポップな要素を捨てていないので、一緒にやっていて勉強になります。
「パレット」はSam is Ohmさんのプロデュースで、その人ならではの色を肯定するメッセージが伝わってくる曲です。
ちゃんみなに“あなたにとっての正義は何?”と言われたことがあって。彼女は“私にとっての正義は自分のことを愛してあげることなんだよね。自分のことを愛さないと他人のことを愛せない”と言っていたのが印象的で、それがこの曲を書くきっかけになりました。あまり難しい言葉を使わないでJ-POP的に歌詞を書いています。これを作った当時はラップしかしていなかったので幅を広げたかったんです。
ラップが好きな人にも反応してもらえるタイプの曲だと思います。
ヒップホップの層と対バンしたいというのもありますし、バトルをしたいというのもあるんですよね。フリースタイルはずっとやっていましたから。
ヒップホップの世界にも偏見とかがないわけではないですけど、良いラップができれば評価される部分はありますからね。
ラップがうまければ勝てるし、下手だったら負けるっていう、それだけのことですからね。今のヒップホップは間口が広いですから、ラップのマナーを守るっていうところさえしっかりとしていたら、どんな人間でもありなんです。
「火と雨」もラップで培ったものが反映されている曲ですね。
言いたいことを言えていますし、パンチラインが多い曲なのかなと思います。自分のルーツのYouTubeに対しても言っていますし、音楽シーンのアーティストに対しても言えている曲です。ラップバトルが盛り上がっている中、音楽がスポーツ化していることへの違和感を覚えていた時に書きました。“音楽で本当に伝えたいことを伝えないと意味がないんじゃないの?”という意味合いもありますし、YouTuberに上げられる動画も意味がないものが多い頃だったんです。
抱いている違和感やフラストレーションを言葉遊びとかを交えてクリエイティブなものに昇華できるのはラップの良さだと思います。
そうですね。性格の悪さをラップに活かせて良かったです(笑)。
(笑)。「火と雨」からも感じますが、日本語を活かした表現を大事にしていますよね?
はい。基本的にあまり英語を使わないので。日本語ならではのやり方があると思っていますし、いろいろ探しています。
言葉遊びやライミングが粋な日本のラッパーはたくさんいますからね。
昨年7月に『加賀温泉郷フェス』に出させていただいたんですけど、夜にLITTLEさん、呂布カルマさん、輪入道さん、ミステリオ、GOMESSとお酒を呑んだんです。みんな、ずっと韻を踏んでいました(笑)。
(笑)。「Utopia」はどんな想いを込めて作りました?
今までにやっていなかった感じのヴォーカルに挑戦したかったんです。ファルセットに近いミックスのヴォーカルなんですよね。サウンドは結構最新のテイストだと思います。ザ・キッド・ラロイとジャスティン・ビーバーが一緒にやった「STAY」もちょっと意識して、ヴォーカルは浮遊感のある感じで作っています。
今作に収録されたのは7曲ですが、ライヴでやっている曲は他にもたくさんありますよね?
はい。昔からやっている曲も結構あるので、じゃんじゃんリリースしていきたいです。
家が近所のMvriaさんと一緒によく曲を作っていると先ほどおっしゃっていましたが、日常的に制作をしているんですよね?
そうなんです。フリースタイルで作ったりもしますし、再現なく作れるいい環境にいます。やりたいことがいろいろ明確にあるので。ライヴのことを考えると、バンドサウンドに近づけていきたいというのも思っていますね。
今作のリリース後はライヴをどんどんやっていくんですか?
はい。対バンイベントやリリイベもあるので。リリイベは初めて観てくれるお客さんもいるから、そこでも広げていけたらと思っています。
活動の場を広げていくのが今後の目標ということですね。
はい。フェスのステージでバチバチのラップからメロディアスなものまでやりたいというのもありますし。ヒップホップの進化に伴って自分自身も変えていかなきゃいけない部分があると思うので、そういうことはしっかりとやっていきたいですね。でも、次のアルバムでも1曲くらいバチバチにラップするものを入れたいです。
ラップから完全に卒業することはできないんじゃないですか?
できないです(笑)。今回もラッパーとしてやっている部分もあるので、韻を踏んでいるところとか分かってもらえたら嬉しいです。韻を踏んでいない曲はないですし、全曲をヒップホップマナーに基づいて作っているので。
ヒップホップの要素はJ-POPにもかなり浸透していますから、それを活かした表現はいろいろ可能性があると思います。
ヒップホップは多様性なので、誰がやってもいいんです。だからこそ僕がやることも許されているんでしょうね。ひとつしか正解がないものよりも、みんながヒップホップできる世の中になったらいいと思っています。
取材:田中 大
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